思う - みる会図書館


検索対象: novel m@ster GIFT edition
26件見つかりました。

1. novel m@ster GIFT edition

「それに、ナナは思うんですよ。ナナは今、幸せで「ちょ、ちょっと、もうこの子は、聞いてたの ? 」 す ! た、たしかに、同級生のあれやこれやを見てい「当たリ前。あんなに不自然に自室を見てこいだなん ると、『普通』の幸せでは無いのかもしれないけど : ・て言われたら、そう思うっしよ」 。ナナは、私という物語を生きていて、そしてはあ とちゃんもその物語を生きてて : : : みんな、輝いてい実を一一 = 日っとすぐ引き換えして、全部話しを聞いてい るんですよ ! 」 た佐藤は、若干呆れた顔でそうかえした。 「そうね : : : 私もはじめは、もっと普通の道を、って 思ったけど。私達とは、時代も違うし、幸せの形も違「も、もうはあとちゃんは、恥ずかしいところ聞かな くださいよ ! 」 「そういうことです ! はあとちゃんも、幸せ、だと思「いや、物語どうこうってこの前も : : : 」 いますよ ! 」 「そこじゃないですー ! というかはあとちゃんどん 「ほんとに。でも、多分、その幸せは貴女のおかげだだけ私の話しちゃってるんですか ! ! 」 ろうね。いつも、あの子の語りを見ると : 。ほんと、「まあまあ、落ち着け☆」 こうあえて、こう伝えられてよかった」 「もう ! 」 「物語、か : ハイセン、いいこと一一 = 日つな☆」 そんなこんなで次の日の朝を迎え、プロデューサー が迎えに来た。 「一一人とも、いよいよメインの会場に行くからな。」 「おう ! 」

2. novel m@ster GIFT edition

とんでいた状態を、揺らして起こす。「あ、いや大 丈夫」 「 ( いやあ、いつものからかいとかじゃなくて、ほんと 「どうか、したんですか ? ずいぶん悩んでたみたいでうにパイセンの優しさにも、救われたなあ、と思って すけど」 るんだけどなあ : まあ、いまさらはあとだけの前 「いやあ、実家に顔だしたら、どう言われるかなあって。でなにを隠すかって感じもするけど : ・ : ・ ) 、 だいぶまえは、そんなことせずに帰ってらっしゃい 変に慌てふためくのを前に、佐藤は感慨深くものを 状態だったから・ : まあ、実家にいたころも、そう考えた。 いう空気はあったけど」 不安がってる状態の佐藤を、安部が抱きかかえて 云った。 さて、一一人は佐藤の実家に到着した。すでに軽井沢 「大丈夫ですよ、はあとちゃん」 での仕事へ出るまでに、連絡はとってある。安部菜々 というのがどういう人物かも、当然把握済みであろ 「大丈夫ですよって言ったんですよ。私も、この何年も、う。 うまくいかない中でやってきて、それで認めてもらつでも、じっさい相対してみてどういう反応するかは た。はあとちゃんも、もうこんなに成功してるんです未知なもので : : : どきどきしながら、佐藤は実家へ向 から、大丈夫ですよ ! 」 かった。 「はあ : : : ほんとにパイセンは、おばあちゃんみたい に優しいな、あリがと☆」 「なっ・ ・どうしてそんな受け取リ方をけど : : : 」 「お、おーい。母さん。ナナバイセンもつれて、きた

3. novel m@ster GIFT edition

リ向くと、そこには私の腰ぐらいの背丈の女の子が「そう」 立っていた。 黒目がちの大きな瞳をこちらに向けながら、女の子は 誰だろう、知らない子だな、と思っていると、 頷いてみせた。 「おねえちゃん、ひまわリすきなの ? 」 「このまえ、みんなでうえたの。それでね、かんさつにつ と、女の子から透き通るような声が発せられた。 きつけるんだよ。」 驚きのあまリ何も言えずにいるアタシに構わず、女「観察日記か : : : 」 の子は続ける。 アタシは、いっかのドラマの、子供が観察日記をつけ 「わたしもね、ひまわリすきなのー るシーンを思い描いていた。あれは夏休みの宿題を 黙ったままではよくないと思い、アタシは辛うじて返やっている場面だったか。 事をした。 「毎日つけるやつでしょ ? 途中で忘れないようにしな 「そう : : : アタシも好きだよ、ひまわり」 いとね。」 「だいじようぶ、みんなでまいにちがっこうにあつま 声が微かに震えているのが、自分でも分かった。 しかし、最初は驚きのあまリなにも見えていなかつるの。そうすれば、みんなかくのわすれないからって、 たが、よくよく見ると清潔感があって非常に奥ゆかしせんせいがいってた」 い子だった。 「そっか・ : ・ : 」 可愛いなあ、いっそ連れて帰リたいぐらいだなあ、 その無邪気な声に、アタシは胸が握リしめられるよ などと考えていると、女の子はまたロを開いた。 うな思いだった。 「がっこうにね、いつばいさいてるのー 一人でぼつんとひまわリを眺めていた自分が、可哀 「ひまわりが ? 」 想な人間に思えてきて、アタシは思わず目を伏せてし

4. novel m@ster GIFT edition

あとがき でしよう。非常に気になるので、いっかそんな企画が 実現したらいいなーとか思ってます。 初めまして、べリーです。ここまで読んでくださリ、 最後に、読者のみなさまにはもう一度、深く感謝申 あリがとうございます。今回は初めてのコミケ参加なし上げます。並びに、添削指導をしていただいた方や のですが、ツィッターでしか見聞きしたことのない憧普段から暖かく見守ってくださっている方々にも、厚 れの集いに携われて、本当に光栄です。 く御礼申し上げます。これからも末永くお付き合いい さて、コミケといえば始発ラッシュが名物ですよね。ただけると幸いです。 私も参戦してみたいなあと思っているのですが、毎朝 の通学で駆け込み乗車に失敗しているあたリ、敗北の 予感しかしません。脚力が、足リない。きっと始発ラッ シュでも無情に人混みに流されて終わリます。 それでいつも思うんですけど、あの始発ラッシュっ て危なくないんですかね ( 駆け込み乗車してるお前が 言うか ) 。で、私がいつも想像してるのは、「始発ラッ シュ勢く s 構内徐行を呼びかけるコミケ放送員」の対 決をやったらどうなるのだろうと。華麗に改札をすリ 抜けていくラッシュ勢に対して、「コミケは逃げませ ん。血小板ちゃんたちのようにゆっくリと構内をお進 みください。」みたいな放送が流れたら、。 とうなるん

5. novel m@ster GIFT edition

そう、物語 「 ( みんなはどうしているんだろ。ずいぶん早く結婚し この言葉をなんども頭の中で繰リ返される、そんなちゃった同級生も、いるだなんて聞いたけど。 ) 」 感覚を覚えながら、佐藤はしばしフリーズしてしまつ「はあとちゃん ? どうかしました ? 」 「はつ」 プロデューサーは次の準備とか、後始末などに専念「物語、かあ : ・ : 確かに、そうだなあ」 することとして、安部と佐藤のふたリだけで先へ向か「はあとちゃんも『躍進』して、いいかんじじゃない うこととした。そのさきは、やつばリ佐藤の実家。 ですか ! さあさあ、ご実家に凱旋しましよう ! ! 」 「いやー大盛況でしたねえ ! はあとちゃんもほんと輝 いていましたよ ! 」 深い意味を与えたものの、その自覚なく先へ進むこ 「いやいや、どう考えてもナナバイセン目当ての人がとに興奮する方を尻目に、佐藤はその深い意味によっ 大量 : : : そりやまあそうだろうけど。それより握手会て考えさせられるような状態であった。 で : : : 大丈夫だったのか」 「 ( 実家、かあ。最近電話しても、どうするつもリなの 「うつ」 かとか、そんな話はあまリないけど、最初の方はそん また例のようにいろいろといじられたことがフラツなんばっかだったからなあ : ・ : 。 ) 」 シュバックしているようなさまを見せた。 「まあまあ、もう大丈夫ですよ ! それに、いまのナナそう思いながら、回想する。アイドルを目指し始め はーわたしの物語を、生きているんですから」 た頃の、あの感覚。実家との関係にかかる、あの感 「物語・

6. novel m@ster GIFT edition

「まあ ! これが安部菜々ちゃん : : : ! 」 「はじめまし ! 安部菜々、 17 歳です ! 」 「いつもあリがとうね、安部菜々さん。あの子が、 いつも電話とかで、貴女とのあれこれを、とても嬉し また例の一悶着てきなことは起きたけど、それでもそうに語るものだから : : : 私達、あの子に最初はあま 「ウサミン」を連れてきたことに、両親は一般的な興リ十分に応援できてやれなくて : : : たぶん、傷ついて 奮を抱いていた。 しまったと思うの」 多少の歓談を経て、母親がたかだかにに発言し「うつ。いやあ、まあ、ナナも、いろいろ、あリまし たし : : : 」 「久しぶリだし、自分の部屋でも見てきたらどう ? 」 「この前、近所のだいぶ年下の娘が結婚したのが耳 そう言われて、佐藤はかっての自室へむかった。そに入ってしまったらしくてねえ : : : 」 こには、様々な目標のためにここを出るまでの、様々 「そ、それは : : : 」 な軌跡が残っていた。 「ほかにも年の近いアイドルがいるから、いろいろ 「はあ、なっかしい、けどなあ : : : 」 あったらしいけど : : : それでも、貴女をみていると救 なんでわざわざ見に行かせたのか。なんとなく、理われるって、あの娘言ってたんだよ」 由はわかっていた。 「あ、あの : : : その、ナナは」 なぜ 17 歳の「ウサミン」が救いとなっているの 佐藤が自室へ向かったあと。 か、よくわからないのかもしれないと思って、言っ 佐藤の母親と、安部。この一一人が、語らい合っていた。 「ナナは 17 歳では無いですし、それで : : : 」

7. novel m@ster GIFT edition

る歌が一曲、減ったっていうことじゃない ? 」 「ねえ、加蓮ちゃん、」 美波は、扉に手をあてたままで加蓮の方を振リ返った。美波が呼びかけた。 「もしそういう思い出の曲とか、場所とか、振リ返れ「せつかく子供の頃、その曲を好きになれたんでしょ ないものが積み重なっていったら、それって加蓮ちゃう、それを今は毛嫌いするなんて、もったいないと思 んの世界を狭めて、加蓮ちゃんの背中にのしかかるもわない ? それならいっそ、また好きな曲にしてみな のになるんじゃない ? 」 加蓮は、頷くでも視線をそらすでもなく、ただただ美「好きな、曲に : 波を見つめながら言った。 顔が固まる加蓮を横目に、美波は続けた。 「それが、年を重ねるってことなんじゃないですか ? 」「そう。辛い思い出が消えることはないと思うけど、 「ふふつ、加蓮ちゃん若いのに、、 すいぶんお年寄リみそれでも、楽しい思い出を塗リ重ねることって、でき たいなこと一一 = 日つのね」 ると思うの。それならいっそこの機会に、ニ人で克服 美波は口元をもう片方の手で押さえながらふふっとしてみない ? 楽しい思い出、作ってみない ? 」 笑った。 加蓮は内心、バ / 臭いと言われた気がして乙女心を 加蓮はわずかに顔を歪めながら、足元の方に視線を 傷めていたが、美波はそれに気づいていないようだっ落とした。 するとふいに、美波は加蓮の手を握った。そして加 窓から差し込む日差しは、刻々と傾きを変えていっ蓮の手を目の前のドアノブに重ねて、さらにその上に た。今やもう部屋の角にまで届いていて、一一人の透き自分の手を重ねた。 通るように綺麗な足を照らしていた。 「加蓮ちゃん、この先の屋上には〈ス事務所の子たち 「それは : : : 」

8. novel m@ster GIFT edition

「そして : : : でごまかしてるあたリ : ・ : こ まったく、細かいなあ。でも、菜々さんが言ってた ああいう観念で・ : : ・ちょっと企画を考えたよ。特に仁 「ボクの歩く道は、みんなと一緒ではないさ。でも美」 もう、そんなまとめた大きな道なんてのは、そもそも「え ? 」 無いと思うんだよ。それに、。 とうせ社会だって、ボク 「だって、歴史とか一番物語に繋げやすいじゃん。 にとってはボクが見ているだけの範囲にあるのだかそれこそタイムスリップした公演でも : : : 」 ら 「ま、スウィーティーならそれでいいしよってこと飛び過ぎた話で一同はアレに「鳴って」いるけど、 だなー・」 まあそれでも大団円である。 「本当にわかっているのかい ? ? ー 「いやいや、あれで佐藤はわかってるはずだよ」 「ま、プロデューサー。はあとのスウィーティーな物 「プロデューサー ふん。どうせ、キミのこと語を楽しみにすることだな ! 」 だからまともな根拠はないんだろ ? 」 「そ、そうだな」 「いやいや、そんなことなんてないよ。 4 人共、例「どうせプロデューサーも、もう普通の物語なんか えば依拠するものが違うじゃないか。歴史的な物語も、のぞみつこないいんだしな」 哲学的な物語も、そして : : : ってことでいいんじゃな 「ああもう、だからそれは関係ないだろうがって いかなあって思って」 それが、「成功の物語」

9. novel m@ster GIFT edition

まった。 「でもね、しつかリしてるだけが良いことじゃないの 左手で握リしめたままのイヤホンから、曲の振動がよ ? 」 伝わってくる。 そして、にこっと笑ってみせた。 「おねえちゃんは、がっこういかないの ? 」 「みんなと過ごせる時間を、大事にしてねー 「えっ : 「みんなと、なかよく ? 」 青い薄地のスカートを揺らしながら、女の子はく「そう。みんなといられる時間って、とっても特別な、 いっと首を傾げた。その純粋そうな顔がいやに眩しい。普通の時間なんだよ。」 好きで学校を休んでるんじゃない アタシは、せぐリあげる喉を押さえつけながら、笑 女の子は、アタシの胸中など知る由もなく続ける。顔を作ってみせた。 「おねえちゃんは、じぶんでできるから、みんなとは フランス人形のように整った顔の女の子は、へえ、 がっこうにいかないの ? 」 と言いながら目を瞬かせていた。 違うつ、と心の中では叫んでいた。 しばらくそうしていると、遠くの方で でも、それが無駄だということも、わかっていた。「ほら、もうお薬もらったから帰るわよ」 「そうだよ、アタシは何でもできちゃうの。観察日記という女性の声がした。それを聞くなリ女の子は、は だって、一日も忘れないで描けるんだから。」 あい、と言ってするすると駆けて行ってしまった。 「へえーっ ! すごい ! ゅーとーせーなんだね ! 」 取リ残されたアタシは、なんだか消えてしまいたい つやつやとした黒髪をたなびかせながら、女の子があような気持ちになって、さんざめくような眩しい太陽 まリにも無垢な顔で = = 日つので、アタシは女の子の目線を仰いだ。 まで身を屈めてからそっと話しかけた。 そしてまたイヤホンを耳にねじ込んで、ざらついた

10. novel m@ster GIFT edition

続く階段から美波が降リてくるのが見えた。 「あっ、美波さん : : : 」 「それで、加蓮ちゃん、心は決まった ? 「あら、加蓮ちゃん、こんにちは。今日は日差しがき世間話でもしているかのような涼しい顔をしながら、 ついみたいだけど、体調は大丈夫 ? 」 美波はグラスをテーブルに並べていった。 水色の半袖シャツに短パンというラフな出で立ちの彼「ああ、でも別に急かしてるわけじゃないから、今す 女は、颯爽とキッチンの方へ歩いていった。 ぐに返事をしなくても大丈夫よ ? 」 「ああ、大丈夫です。なんか、みんなアタシのことを「いえ、もう答えは出ました」 病弱だと思ってるみたいですけど、入院してたのは美波の声にかぶさるようにして、加蓮の声がしんとし ずっと前の話なので、今は全然心配ないんですよ」 た部屋に響き渡った。 キッチンカウンターで麦茶を注いでいる美波に向かっ 氷が溶けて、グラスの中でカランと動く音がした。 て、加蓮は少し大きめの声で話しかけた。 「アタシ、やつばリ歌いません」 「あら、そうなの、この前なんか、加蓮ちゃんがしやっ 冷房が効いているとはいえ、やはり人と人が密着す くりしただけで凛ちゃんと奈緒ちゃんが大慌てしてたるのは暑い。沈黙が続く中、加蓮は言いようもない胸 けど ? 」 のざわめきと、背中を伝う汗を感じていた。 「あれはもはやネタです」 そんな加蓮の隣にくつつくように座る美波は、女神 加蓮はきつばリと言い切ってから、どっさりとソのような穏やかな微笑みを向けたまま、語リかけるよ ファーに腰掛けた。 うな口調で話を続けた。 少しすると、美波が麦茶の入ったグラスをニ人分運「 : : : そう、加蓮ちゃんの意志は固かったのね。」 んできた。カランカラン、と氷の心地よい音が鳴リ響「はい。美波さんにも、プロデューサーにも申し訳な