そう、物語 「 ( みんなはどうしているんだろ。ずいぶん早く結婚し この言葉をなんども頭の中で繰リ返される、そんなちゃった同級生も、いるだなんて聞いたけど。 ) 」 感覚を覚えながら、佐藤はしばしフリーズしてしまつ「はあとちゃん ? どうかしました ? 」 「はつ」 プロデューサーは次の準備とか、後始末などに専念「物語、かあ : ・ : 確かに、そうだなあ」 することとして、安部と佐藤のふたリだけで先へ向か「はあとちゃんも『躍進』して、いいかんじじゃない うこととした。そのさきは、やつばリ佐藤の実家。 ですか ! さあさあ、ご実家に凱旋しましよう ! ! 」 「いやー大盛況でしたねえ ! はあとちゃんもほんと輝 いていましたよ ! 」 深い意味を与えたものの、その自覚なく先へ進むこ 「いやいや、どう考えてもナナバイセン目当ての人がとに興奮する方を尻目に、佐藤はその深い意味によっ 大量 : : : そりやまあそうだろうけど。それより握手会て考えさせられるような状態であった。 で : : : 大丈夫だったのか」 「 ( 実家、かあ。最近電話しても、どうするつもリなの 「うつ」 かとか、そんな話はあまリないけど、最初の方はそん また例のようにいろいろといじられたことがフラツなんばっかだったからなあ : ・ : 。 ) 」 シュバックしているようなさまを見せた。 「まあまあ、もう大丈夫ですよ ! それに、いまのナナそう思いながら、回想する。アイドルを目指し始め はーわたしの物語を、生きているんですから」 た頃の、あの感覚。実家との関係にかかる、あの感 「物語・
わリ、現代の人間は、様々な多様な「成功の物語」を あとがき 志向していくとされています。 それを考えると、彼女たちの「アイドルとしての成 この小説は、 功」こそ、「多様な幸福のものがたリ」のいち段階と 大久保孝治 ( 20 一 7 ) 「現代日本における『幸福の物語』言えるのではないでしようかと。 のゆくえ」岩上真珠・池岡義孝・大久保孝治編『変容 デレマスは大量のアイドルが大量のキャラクタを 持っていますが、それもまた多様な物語、であると。 する社会と社会学』学文社 .5 一 , 74 をレポートのために読んでいて、思いついたことを もとに書きました。 近代社会が崩壊し、様々な意味で多様となっていく なんか強引に学術的な話を当てはめていてめちゃく 現代にあっては、人間の「人生の物語」が多様化してちやですが、アイドルたちで説明できればいいなあ、 いくとされていました。 と思って書きました。 かって、近代社会にあっては、人間の「成功の物語」説明できてないきしかしないですが ( ( は主として家族を中心とした類型的で、単線的な構造 をとった物語があったらしいです。 まあ、ぶっちやけ僕自身が、近代家族的な単線的な 成功の構造に乗れないことが決定している人間である よく、はあとやウサミンは年齢と結婚についてネタことのルサンチマンをいろんな意味でぶつけた形なの にされてるところをみたリしますが : ですが : そういうのが成功とされる単線的な構造の時代は終
「美波さん、あの曲知ってたんですか」 できるだけ当たリ障リのないように尋ねてみた。 柵に背中を預けながら、加蓮は言った。美波も同じよすると加蓮は、ふっと哀しげに笑ってからこちらを うに背中を柵に押し付けながら答えた。あの曲、とは、向いて、少し首を傾げながら語リ始めた。 例のユニット曲のことだろう。 「え、ええ、たしか、応援ソングってことでよくテレ 2 ビとかで流れてるわよね」 アタシは子供の頃、ずっと病院の中で暮らしていた。 「応援ソング : : : か」 別にそれが苦だったわけじゃない。ご飯も健康的で 加蓮はそう言うと、くるリと向きを変えて、太陽を見生活リズムも規則的。身体は悪いけど、こんなに健常 上げるようにして柵に腕を添わせた。 な生活スタイルを守っている子供はそうそういないと 「アタシ、この曲が怖いんです。」 思うと、ちょっぴリ嬉しくもあった。庭や屋上は綺麗 「怖い ? 」 に手入れされた草花が心を癒してくれたし、お見舞い 珍しく弱い一面をのぞかせた加蓮を前に、美波は少しにきてくれる家族や友達、病院で仲良くなった看護師 深くつつこみたくなった。 さんや他の患者さんと笑い合える日々は、そんなに悪 「怖いって、ど、ついうこと ? 」 くなかった。 「怖いっていうか : : : 触れたくない曲なんです」 ただ、アタシには一つたナ、、 とうしても手に入れた どういうことだろう : : : 美波は、何か嫌な予感がしい ものがあった。 「嫌な思い出があるとか・ : : ・ ? 」 梅雨明け、ようやく外を気兼ねなく散歩できるよう これ以上足を踏み入れていいのかわからなかったが、 になった頃。
あとがき でしよう。非常に気になるので、いっかそんな企画が 実現したらいいなーとか思ってます。 初めまして、べリーです。ここまで読んでくださリ、 最後に、読者のみなさまにはもう一度、深く感謝申 あリがとうございます。今回は初めてのコミケ参加なし上げます。並びに、添削指導をしていただいた方や のですが、ツィッターでしか見聞きしたことのない憧普段から暖かく見守ってくださっている方々にも、厚 れの集いに携われて、本当に光栄です。 く御礼申し上げます。これからも末永くお付き合いい さて、コミケといえば始発ラッシュが名物ですよね。ただけると幸いです。 私も参戦してみたいなあと思っているのですが、毎朝 の通学で駆け込み乗車に失敗しているあたリ、敗北の 予感しかしません。脚力が、足リない。きっと始発ラッ シュでも無情に人混みに流されて終わリます。 それでいつも思うんですけど、あの始発ラッシュっ て危なくないんですかね ( 駆け込み乗車してるお前が 言うか ) 。で、私がいつも想像してるのは、「始発ラッ シュ勢く s 構内徐行を呼びかけるコミケ放送員」の対 決をやったらどうなるのだろうと。華麗に改札をすリ 抜けていくラッシュ勢に対して、「コミケは逃げませ ん。血小板ちゃんたちのようにゆっくリと構内をお進 みください。」みたいな放送が流れたら、。 とうなるん
続く階段から美波が降リてくるのが見えた。 「あっ、美波さん : : : 」 「それで、加蓮ちゃん、心は決まった ? 「あら、加蓮ちゃん、こんにちは。今日は日差しがき世間話でもしているかのような涼しい顔をしながら、 ついみたいだけど、体調は大丈夫 ? 」 美波はグラスをテーブルに並べていった。 水色の半袖シャツに短パンというラフな出で立ちの彼「ああ、でも別に急かしてるわけじゃないから、今す 女は、颯爽とキッチンの方へ歩いていった。 ぐに返事をしなくても大丈夫よ ? 」 「ああ、大丈夫です。なんか、みんなアタシのことを「いえ、もう答えは出ました」 病弱だと思ってるみたいですけど、入院してたのは美波の声にかぶさるようにして、加蓮の声がしんとし ずっと前の話なので、今は全然心配ないんですよ」 た部屋に響き渡った。 キッチンカウンターで麦茶を注いでいる美波に向かっ 氷が溶けて、グラスの中でカランと動く音がした。 て、加蓮は少し大きめの声で話しかけた。 「アタシ、やつばリ歌いません」 「あら、そうなの、この前なんか、加蓮ちゃんがしやっ 冷房が効いているとはいえ、やはり人と人が密着す くりしただけで凛ちゃんと奈緒ちゃんが大慌てしてたるのは暑い。沈黙が続く中、加蓮は言いようもない胸 けど ? 」 のざわめきと、背中を伝う汗を感じていた。 「あれはもはやネタです」 そんな加蓮の隣にくつつくように座る美波は、女神 加蓮はきつばリと言い切ってから、どっさりとソのような穏やかな微笑みを向けたまま、語リかけるよ ファーに腰掛けた。 うな口調で話を続けた。 少しすると、美波が麦茶の入ったグラスをニ人分運「 : : : そう、加蓮ちゃんの意志は固かったのね。」 んできた。カランカラン、と氷の心地よい音が鳴リ響「はい。美波さんにも、プロデューサーにも申し訳な
Df_1 一いろいろ適当で、極めて不快になる要素だらけな気 注意 がするので、ご注意ください : プロデューサーは特定の存在ではなく、適当なプ 以下の要素を含みます。 ロデューサーだと思ってください。 実際はあとの実家の場所はわからないので、てきと ・アイドルマスター・シンデレラガールズの一一次創作うにごまかしています。登場アイドルは、佐藤心、安 ・百合描写 ? ・キャラクタの崩壊・ロ調の不統一・不部菜々、丹羽仁美、ニ宮飛鳥、ですが、後ろ一一人は正 適切 直あんまリ出なくなってしまいました : : ご了承くだ さい ・中 2 的な気取った地の文 ・主題とタイトルあってないようなな気もする ・意図的文法破綻 ? ? ・全体的に、小説っぽいですが基本は ss みたいなノ リです。ここも適当ですが、地の文多すぎ SS みたい に読んでもらえればと ( ( ・当注意書き欄を除き、しゆがみんイベントよリ前に 書いてます。 佐藤心と、成功の物語の物語
「それに、ナナは思うんですよ。ナナは今、幸せで「ちょ、ちょっと、もうこの子は、聞いてたの ? 」 す ! た、たしかに、同級生のあれやこれやを見てい「当たリ前。あんなに不自然に自室を見てこいだなん ると、『普通』の幸せでは無いのかもしれないけど : ・て言われたら、そう思うっしよ」 。ナナは、私という物語を生きていて、そしてはあ とちゃんもその物語を生きてて : : : みんな、輝いてい実を一一 = 日っとすぐ引き換えして、全部話しを聞いてい るんですよ ! 」 た佐藤は、若干呆れた顔でそうかえした。 「そうね : : : 私もはじめは、もっと普通の道を、って 思ったけど。私達とは、時代も違うし、幸せの形も違「も、もうはあとちゃんは、恥ずかしいところ聞かな くださいよ ! 」 「そういうことです ! はあとちゃんも、幸せ、だと思「いや、物語どうこうってこの前も : : : 」 いますよ ! 」 「そこじゃないですー ! というかはあとちゃんどん 「ほんとに。でも、多分、その幸せは貴女のおかげだだけ私の話しちゃってるんですか ! ! 」 ろうね。いつも、あの子の語りを見ると : 。ほんと、「まあまあ、落ち着け☆」 こうあえて、こう伝えられてよかった」 「もう ! 」 「物語、か : ハイセン、いいこと一一 = 日つな☆」 そんなこんなで次の日の朝を迎え、プロデューサー が迎えに来た。 「一一人とも、いよいよメインの会場に行くからな。」 「おう ! 」
リ向くと、そこには私の腰ぐらいの背丈の女の子が「そう」 立っていた。 黒目がちの大きな瞳をこちらに向けながら、女の子は 誰だろう、知らない子だな、と思っていると、 頷いてみせた。 「おねえちゃん、ひまわリすきなの ? 」 「このまえ、みんなでうえたの。それでね、かんさつにつ と、女の子から透き通るような声が発せられた。 きつけるんだよ。」 驚きのあまリ何も言えずにいるアタシに構わず、女「観察日記か : : : 」 の子は続ける。 アタシは、いっかのドラマの、子供が観察日記をつけ 「わたしもね、ひまわリすきなのー るシーンを思い描いていた。あれは夏休みの宿題を 黙ったままではよくないと思い、アタシは辛うじて返やっている場面だったか。 事をした。 「毎日つけるやつでしょ ? 途中で忘れないようにしな 「そう : : : アタシも好きだよ、ひまわり」 いとね。」 「だいじようぶ、みんなでまいにちがっこうにあつま 声が微かに震えているのが、自分でも分かった。 しかし、最初は驚きのあまリなにも見えていなかつるの。そうすれば、みんなかくのわすれないからって、 たが、よくよく見ると清潔感があって非常に奥ゆかしせんせいがいってた」 い子だった。 「そっか・ : ・ : 」 可愛いなあ、いっそ連れて帰リたいぐらいだなあ、 その無邪気な声に、アタシは胸が握リしめられるよ などと考えていると、女の子はまたロを開いた。 うな思いだった。 「がっこうにね、いつばいさいてるのー 一人でぼつんとひまわリを眺めていた自分が、可哀 「ひまわりが ? 」 想な人間に思えてきて、アタシは思わず目を伏せてし
が報われませんよ : : : ? 」 唐突に会話を打ち切られた加蓮は、あっけに取られた ままその場に立ち尽くしていた。 プロデューサーの話が出たからだろうか、加蓮は俯き階段を降リて行く美波の後ろ姿を眺めながら、加蓮 加減になって黙リ込んでしまった。 はぼんやリと昔のことをなぞっていた。 「ほら、ずっと聞いてた曲なんだったら、すぐに歌え 4 るようになるでしよう ? 」 「それは、まあ : : : 」 事務所の中は、冷房が効いていてかなり涼しい。加 「それなら、練習のことは考えなくてもいいから。私蓮は、シフォン地の半袖ブラウスで来たことを後悔し は、加蓮ちゃんに少しでも考えてほしい。それでも嫌ながら、美波の姿を探していた。窓から入リ込む一筋 だっていうなら、私も加蓮ちゃんの考えを尊重するかの日差しが、ガラスのテーブルに反射していて眩し ら。」 かった。 美波はそう言って、ふふっと笑った。 あれから、三日が過ぎていた。 「じゃあ、決まリね。また明日、会いましよう。」 何度も、考え直した。本番の想像をして、舞台裏で 「えつ、あっ」 逃げ出す自分が思い浮かんだ。歌詞を見て、毎晩泣き 加蓮は何かを言いかけたが、美波は構わない様子だつじゃくる自分しか考えられなかった。 それでも心の片隅には少しだけ、またあの歌に、旋 律に触れていたいと思う気持ちがあった。 「待ってるから。今日はゆっくリ休んでね。」 ひらひらと手を振リながら事務所を後にする美波。 「あっ、はい、、 お疲れ様でした : : : 」 加蓮が荷物を置いて部屋を見回していると、屋上に
「まったく、プロデューサー自身が、勝ててないじゃ 「え、アタシはそんな、特に話だなんて」 ん、古い価値観」 それはまた、何も考えずに単に顔だしただけだけど、 「まあまあ。理想通リには無理なんだよ、いろいろという空気感そのものであった。 とー 「べつに、問題とかあったわけではないですよ ? 」 「 : : : で、残リ一一人はどうなったん ? 」 それは当たリ前、なのである。 「仁美はいまこっちに向かってる。飛鳥はもう到着し「まったく、キミは : : : プロデューサーに、聞いたよ。 て待ってるらしい。。 とのみち、俺達が合うのは会場に実家での話」 ついてからだな」 佐藤のあれやこれやは、もう飛鳥の耳に入っている らしい 東京から北西に進路とって軽井沢へ向かい、そして「え、ちよそれはどういう」 松本へ向かっている 3 人。 「いいかい ? ボクはボクだ。『貴女』も『貴女』だ。 中央西線をたどリ、ヒ 」東へと向かっている丹羽仁その枠の中では、菜々さんのいう物語、それしか無い 美。 んだよ」 直接きた飛鳥。ルートすらもまた多様であった。 「お、おい、一体何を言ってるんだ : ・ 「まあ、『つまリはそういうこと』ってこと」 会場に到着。丹羽仁美とニ宮飛鳥はすでにそこいた 特に何も大きな問題はなくイベントは終わって、佐それは、みんなの物語。中学生のときの物語もあれ 藤が丹羽仁美に声を掛ける。 ば、高校生の時の物語もあれば・ 「あの、そっちは実家でどうはなしをした ? 」 多様ななかで、多様な物語を刻む。