だけの予定だった。 しかしその話を聞く中で地上への入口をこいしが知ると、こいしは 隙を見て地上へと飛び出していったらしい 「ありがとうおりん。こいしを逃がしてしまったのはダメね、でもそ れだけよ。これ以上自分のことを責めたら、それこそ私はあなたを乢 ります」 ありがと、つございます」 「それよりもこいし、あなた最初から地上への入口を聞いたらおりん の目を盗んで逃げだす気でいたわね ? 」 「はあ : : : 仕方がありません。地上に出るのを許可しましよう」 「さとり様 ! 」 「ただし、一人で地上に出ることは絶対に許しません。あなたが地上 「ばれちゃった、そうだよ。 に出るときは必す私もついていきます。それにあまり人が多い場戸 : だってどうしても地上に行きたかったんだもん ! 」 おりんとは対照的に反省の様子を全く見せないこいし。 は行きませんし、私たちの素性も隠して向かいます」 こいしはしぶしぶながらもこれには同意してくれた。私が付き添し むしろまた地上に行きたいと。地上は楽しかったと。 「私はあなたに散々地上は布いところだと伝えたでしよう、あなたは先導すれば、悪いものが見えたらこいしに見せないようにすれば、こ いしに地上の者の汚れた心を見せることはないだろう。 それでも地上に行きたいと思うの ? 」 「そうだよ、おねーちゃんは怖がりだもん。私にとって地上は楽しい ものかもしれないじゃない」 「あなたは地上の者に会っていないから分からないのです」 「分かってないのはおねーちゃんだよ、私と話したあの子は全然怖く なかったよ」 「あの子はただ特別だっただけで、あなたは他の地上の者には会って いないでしよう ? 」 「おねーちゃんはなんであの子だけが特別ってわかるの」 「私は地上の者の心を何度も見てきましたから」 「おねーちゃんはいつもその見たものを私に教えてくれないじゃない それからこいしは地上に抜け出すこともなく大人しくしている。た だ一つ、食事の度に私に地上に行こう地上に行こうと言ってくる以外 は。そろそろごまかすのも限界かもしれない。前回こいしを見つけた 場所まで、こいしを連れて行くことにしよ、つか 、、 ' 蒲できないの ? 」 「おねーちゃん、また準イ 「ちょっと待ってこいし、あなたなんでそんなに準備が早いのよ」 「だっていつでも地上に出られるように準備してたからね ! 」 わたしは地上をもっと見てみたいの」 このまま地上に出たらダメだと このままでは埒が明きそうにない 言い続けるだけでは、こいしはきっとまた抜け出して地上へと向かう のだろう。 「私は地上に出るのは諦めないよ」 089 純枠な棘
どうやって入ってきたのかはわからないけれど、私が出るとなるとそ うはいかない 出口の扉に触れただけでひどい痛みが走るのだ。 「やってみなきやわからないんじゃないかな、ほら」 「え、ちょっとまっ・ 「わわっ、大丈夫 ? 」 急に手を引っ張られて転びそうになっては、こいしさんが支えてく れる。 冫かい。支えてくれている彼女は、見た目私と同じくらいだと いうのにしつかりと支えてくれる 「ああ、ほらおいで ? 」 私だってそれなりに力がある方だとは思ったのだけど : : 。私の腕 を掴む彼女はとても力強かった。彼女と一緒に扉へ近づくと、過去の 一「ⅱ憶かぶり返す 「やつばり無理だよ、その扉は : : : 」 しかし、彼女は止まる気もなくふいに目を瞑ってしまう。 一歩。また一歩。歩いては。来る痛みに身構える。 : おかしい。 もうとっくに扉を越えたはすなのだ。だというのに 痛みどころか部屋の中では感じられなかった風が吹く。 びくつきながらも目を開いてみると。 懐かしい風景が広がっていた。もう何十年、いや何百年も見ていな い自室以外の場所。ふと横を見ればにこやかに笑う彼女の姿があった〔 ) 「ね ? 大丈夫だったでしょ ? 」 「一体なにをしたの ? 」 「ん 1 。なんとなく ? 」 なんとなくで越えられたというのもおかしいがそれよりも、今は部 屋を抜け出せたことに興奮を隠せないでいた。 「ほら、うちへ案内するよ〇こっち」 そのまま引きつられては館の外へと飛び出して行くのだった。 「ああ、 いないのバレたら怒られちゃうな」 なんて不安もあるけれど、今は彼女に連れられて久しぶりに外へ飛 び出すのが楽しかった。 こいしさんについていくと、どうやら洞窟 ? のようなところを通 しばらくすれば、町へと出る。地下だというのにかなり広い。 「ど、つして : : : ? 」 074
ハラソルに声を掛けると返事が帰ってきた。 、 ) 麦まどまた会うだろうからな、次のところへ向かいたま よま亠めしし / イ ( 「あなたが来るのがわかっていたから準備しておいてあげたのよ。あ りがたく思いなさい霊夢。」 「何よ引き止めたり止めなかったり、それに行く先々で私の行動先読 紅魔館の主である吸血鬼、レミリアスカ 1 レットである。 みされてる感じがするんだけどあんた何か聞いてるの ? 」 「紅茶も用意したのだからありがたく飲んで行きなさい。」 「私は何も ? なんとなくわかるのだよ。 「あらそう、なら同席させていただくわ、そういえば咲夜の姿が見え 疑間をぶつけてみたがはぐらかされてしまった。まあ確かにここに ないわねいつも隣にいるのに。」 居続けても何もなさそうだし、わかってるならこっちも手間が省ける いつ見ても後ろに彼女のメイド、十六夜咲夜がいるはすなのだが今 し。 日に限っておらすレミリア一人だった。 「じゃあ私はもう行くわね。」 「そうね、咲夜には少しお使いをしてもらっているわ。しばらくした 「うむ、次の者の所でも楽しくな。」 ら帰ってくるでしようし気にしなくていいわよ。」 「ええ、そういえばなんであんた一人だけで突っ立ってたの ? 」 ところで何で私が来ることがわかっていたの ? 何か行く 「留守番〇」 先々で似たようなリアクション取られたんだけど。」 そ、つ : 紅茶を飲みながら他と同じことを聞いてみる。なんかこの紅茶変な 味がするんだけど : なんだかんだで今まで異変で相手した人妖ってたくさんいたわね。 「さあどうでしよう、私は客人が来る運命が視えただけよええ。」 廻るだけでも結構な人数だわ。次は : : : あの館でいいわね。 そう言って紅茶をすするレミリア。なんだかこっちのことチラチラ 人里から少し離れたところに存在する湖。紅霧で幻想郷が覆われた見てくる気がする。 「じゃあ私はこれで行くわね。ごちそうさま。」 異変の時真っ赤な館が中心部に引っ越してきている。 紅茶を飲み干して席から立とうとするとレミリアが慌てだした。 「あの吸血鬼も結構長いわね、あの霧を最初に出してきたのはいつの しいと思わない 「ちょっと待って霊夢もう少しお話してっても、 ことだったかしら〇」 そんなことをばやきながら紅い建物、紅魔館の門を空から跨ぐと館れにまだ感謝の言葉聞いてないし : : : 。」 ん ? ちょっと聞き捨てならない一一口葉が の前の庭にガーデンテ 1 プルが置かれているのに気づく。 「ちょっと ! 今感謝云々って言ったわよねやつばり聞いてるんじゃ 「昼間から外に出てるなんて珍しいじゃない、健康的な生活でも始め ないの ! 」 る気 ? 」 やつばり紫のやっ根回ししてたんじゃないの。まあ確かにあまり外 「そんなんじゃないわ、ただの気まぐれ、たまにはこういった趣があ に出てなかったから顔出すのは悪くないけど : しいじゃない そ 096
景が見られるかもしれない、 またどこか周ってみようか〇今度は誰か を連れて : 「周りに見とれてたらいつの間にか着いたわね、よっと〇」 気がついたら守矢神社の境内が目に入る。此処から先は歩いて行こ う。さてさてあの面子はどんな反応をくれるだろうか その頃九天の滝。 「これでよかったんですか鳥天狗の文さん。」 「ええ、問題ないわ白狼天狗の椛。」 木の上で二人の天狗が横目で睨み合っている。色の違う天狗同士あ まり馴れ馴れしくしないようだ。 「侵入者を発見して止めようとしたところなのに急にやめろなんて私 達の仕事の邪魔ですか ? 」 白色の天狗が黒色の天狗に毒づく 「邪魔なんてしてませんよ。このことはすでに通してありますから。 私たちはあの巫女を眺めていましよう。」 黒色の天狗がサラリと流す。 「はあ : : : 貴方があの巫女を気に入ってるだけなのはい、 しですけど私 達まで巻き込まないでほしいんですけどね。」 「それだけ彼女が魅力的なんですよ。さあその目で彼女を追ってくだ レミリアが言っていた守矢へ行くと良いと言っていたのに従い、妖さい。」 屋の山にある滝を飛んでいく。普段哨戒天狗たちが見張っている筈の 白の天狗が諦めたようにため息をつく。 場所なのだが姿が見えない 「それに、私から感謝を伝えるなんて柄にも無いから : : : 」 「何でかわからないけど誰もいないわねー、でもここの景色なかなか 隣の天狗にすら聞こえない黒い天狗のぼやきは風に消える。 綺麗だから見るのに集中できて良いわね。」 普段登るのをプロックしてくる天狗をいなすのに集中していてあま 守矢神社に着いたのはい、 しものの、普段境内を掃除している早苗が り景色を見ていなかったことに気づく。他の場所も気づかなかった風見当たらない。 きっと屋内にいるんだろう。 「仕方ないわね : なんだかんだ言ってもあんた達といるの結構楽 しいわ、これからもよろしくねレミイ うおめっちや目がキラキラしてる〇本当に楽しみにしてたのか、か わいいなこいっ 「ふふん、その言葉しつかり聞き届けたわよ。それじゃこちらからも 嬉しそうな声で返事をしようとした : : : その時である。レミリアの 後ろから轟音が響く。 「ねえ、今の爆発って。」 亠をかけるとレミリアは背を - 回けながら。 「今のはフランの仕業ね、咲夜たちが居ないから少しはしゃいでいる のかもしれないわ。ちょっと面倒見てくるわ、お茶会はお開き、楽し かったわよ。」 いつの間にか普段通りの声音に戻ったレミリアが館へ歩いて行く。 私も次へ向かおうか 「そうそう、次は守矢のところへ行くと良いと運命が言っているわ。 それでは。」 振り返りながら最後にそう告げそのまま館へ入っていった。あ、窓 から火吹いた。 097 巫女感謝の日
人から同じくってわけ。」 「せいっ ! ( 凵立 0 ) はあっ ! ( 凵立さ ) 」 今なお轟音を起こし空気を振動させている張本人、聖白蓮が拳で鐘 「そう・ : 、で、ここでサポってるってわけ ? 」 を突いている。 少しくらい。で ? 霊夢は何しに来たの ? 」 「いいじゃない、 「何やっているのよあなたは : : : 」 「紫の気まぐれで色々なとこ廻るのよ。あんたたちのところも行こう 声をかけるとこちらに気づいたのか鐘を突く手を止め振り向いてく と田 5 ってたけどちょうどいいわ」 「あら霊夢さん、いらっしやっていたのですか。」 二人がよくわからない表情をしている。 「ええ、少し前からね。それで、あなたは一体何をしていたのかし 「主人にいつも郷の保持に貢献してくれてありがとうって伝えて頂 .4 乂 0 「見ての通り、感謝の 1 万回正拳突きですよ。」 さっきにも増して変な顔になった。ああもう最初から説明するか : 問いかけると鐘をベタベタ触れながら答えてくれた。 「わかったわ。」「ええ、伝えておくわね。」 「正拳突きって : : : また唐突な話ね。一体何があったのよ。」 あれ、あっさり受け入れられた。 「私もよくわかっていないのですが、なんでも今日は感謝を伝えると 「まあいいわ、よろしく頼むわね。」 良いと聞いたので、私なりに考えてみた結果です。」 で、それでねその時姫様が・ : 」「えつほんとに厚こ そう言いつつ拳を鐘に叩きつける。近くで聞くとなおうるさい。 こんなんでもいいでしよ、次はどこへ行こ、つかしら。 「まあその話が伝わっているのなら話は早いわ。異宗派のあなたに伝 えるのも癪だけど。 そういえばこの近くには命蓮寺もあったわね。丁度いいわ、次はそ こにしましよ、つ 「どうしました ? もしかして私に感謝の正拳突きですか ? もちろ 宝船が寺にトランスフォームし人里に居を構えた仏教の本陣、命蓮んそれなら抵抗しますよ、拳で。」 寺へと向かう。敷地もそこそこ広く寺だけに物静かな雰囲気を醸し出「違うわよ ! 言葉よ ! 言葉 ! とりあえす里のバランスの一角を 担ってくれてありがとう〇以上よ ! 」 している。では早速。 「あらあらまあ、お気持ちはありがたく受け取っておきますね。」 「お邪魔しま 1 す : ・ツ ゴーン、丁寧に鐘を突いて答えられた。 敷地の中に入った瞬間謎の衝撃が飛んでくる。弾、光、そして物理、 : ところで他の奴らの姿が見えないけどどこに 「確かに伝えたわよ : そのどれでもないそれは。 ごうおん 行ったのかしら ? 」 「ものすごい轟音ね : ・誰か戦っているのかしら。」 「星たちなら用事で出払っていますよ。」 結界で音を遮断していて気づかなかったが人 3 人分の大きさの鐘と 「ああ、なるほどそうだったのね。」 こ宀丁んでいる人物が目に入った。 それを前 : イ る。 094
「それは私に怒られたからです。挙句に、その便利な身体は、私が壺 千変万化 をすり替えたおかげとか言い出しまして」 神子と、青娥の視線が一気に布都に向く。 豊郷耳神子は、仙界から幻想郷を見下ろしている。その眼下では、 し方に転ん 「それはそっちから一言い始めたことじやろう。結果的にい、 人間と妖怪がーーー人間側は真実をしらないとはいえーー共存していた〇 だから水に流すって言ったのに、 ことあるごとに掘り返しおって」 神子が生きていた時代では、考えられない事だった。 神子と青娥は、今度は屠自子を見る。 「時代とともに、変わるものなんですね」 「一緒に太子様を支えようと持ちかけたのはそっちだろ。それなのに 「そりゃあ、千と四百年も経っていますから」 裏切って私を殺そ、つと・ーーー」 神子のそれは独り言のつもりだったが、声が返ってくる。振り向く 「まてまて、話が本筋からすれてきているぞ」 と、霍青娥が立っていた。 見かねた神子は間に入った。 「この風景をみてしまうと、眠り過ぎてしまったのではと、思ってし 「とりあえす、ますは壺の件。それはもう千四百年も前の話で、結果 的に二人とも私の元にいるから水に流してくれると嬉しい。次にお饅 まいますね。色々と変わり過ぎて不安になってしまいます」 「でも、変わらないのもいるみたいですよ」 頭の件だが、 さっき幻想郷を見ていたら、美味しいお饅頭を売ってい 青娥が、ほら、と指差した先では、バー 丿バリと雷が落ちているのが る店があるのをみかけた。今度みんなで食べに行くということで、ど 見える。そして、それから逃げる影と追う影が一つすつ。 、つだろ、つか」 「待て、布都 ! せつかく壺をすり替えた件については許してやろう 屠自子は、まあ太子様がいうなら、と渋々とうなすいた。神子はそ と思ったのに ! 」 れを確認すると、今度は布都に視線を送る。 「だから謝っておるじやろ ! あ、太子様 ! どうかお助けを ! 」 「うう : : : 屠自子、勝手に食べてしまって悪かった」 布都は、神子の姿を確認して、大きく手を振って助けを求めている。 「こっちも少し怒り過ぎてしまったよ。すまない」 やがて、神子の元まで逃げてきた布都は、彼女の背中に隠れて、屠自「さて道場の中も大分散らかしてたな。二人で片付けてきなさい」 子の様子をうかがっていた。 布都と、屠自子は、はー、 しと言って道場の中へと戻っていった。そ 「太子様、そこをどいてください。布都が私のお饅頭を勝手に食べたれを見送って、神子は独り言のように口を開く。 んです。今日こそ雷の一つでも、その愚か者に落とさないと気がすみ 「変わっていない彼女たちをみると、安心しますね。彼女たちには感 ません」 謝しないといけませんね」 青娥はそれを聞いて笑った。 それを聞いた青娥は、思わすと言う風に吹き出していたが、神子は それを気にすることもなく一一一口、つ。 「けれど、ちゃんと謝ったのだろう ? 」 057 東方一葉集 ~ 感謝異変十話
りの妹じゃない〇、 しつの間に後ろにいたのよ。」 「えっ ? 私すっとあなたの後ろにいたよ ? 気づかなかった ? 気づか 「はー疲れたわー。こんなに動いたの異変の時ぶりかしらね。」 なかったよね ? わー 大成功 ! 」 「おう、おかえりだ霊夢。どうだ ? 楽しかったか ? 」 黒の丸帽に青色の第三の眼が特徴的な覚妖怪が後ろに立っていた。 神社に戻ると魔理沙が出迎えてくれた。しかもお茶まで淹れてくれ ている、ありかたし 「お姉ちゃんがね ? ク私みたいな嫌われ者には無縁の日ですクって 一「ロって部屋に閉じこもっているのよ。」 「そうね、何か当初の目的から外れた気がするけれど概ね満足した 「ちょっ、こいし様そこにいらっしやるんですかしかも隠してい たことまでどうして : 「それは良かった。後で私にも話を聞かせてくれよな。 なんだか聞かなくてよかった事を聞いてしまった気がする。 そういえばこいつも随分長い付き合いよね。私がこの服を着る前か 「ま、まああの異変の時も別にあんた達が原因じゃないしそれにここ らだったかしら。あまり昔だから覚えてないけど。そうね、魔理沙に の管理もしつかりしてるわけだしそこのところは助かってるわよ。だ も一一一口くらい言ってあげても良いわね。 から出ておいで 5 。」 「そういえば紫から聞いたけど今日はなんかめでたい日らしいな ? 感 冗談を言った所でそろそろ神社に戻りましようかね。一通り周った 謝が 5 とか。霊夢、お前が居てくれるおかげで今の私があるくらいだ、 ような気がするし。 ありがとな。そしてこれからもよろしく : : なんてな ! お、どうし 「私もついていこうかな 5 こっちのほうがなんか楽しそうだし。」 た ? 目がまんまるだぞ。」 「あんたは姉のところに行ってあげなさいどうせしばらく帰ってな 「な、なんでもないわよ ! 」 いんでしよう。」 びつくりした : : まさかそんな一言葉がスラスラと出てくるなんて、 「えーしようがないなあ、じゃあまた後でね ! 」 構えてなかったからドキッとしちゃったわ。言ってもらったからには また後で。はて何人かにそんなことを言われたような。まあいいカ 私も返さないとね。 地上に戻ろう。 「魔理沙、私もーーー。」 その時である〇 なんだかんだで色んな所に行ったわね。幻想郷も結構広いものね。 いるよなー 「たのもー 霊夢いるかー 多分まだ行ってないところもあるしそのうち行きましようかね。 「チルノちゃん ! 待ってー ! 」 「ふう、あとは神社に帰るだけ : : : あら、何か来る前と景色が違うよ 「はしゃぎすぎると転ぶわよールナみたいに。 、つな。」 元気いつばいの妖精が。 出てきた時はこんなに桜が咲いていなかった気がする。とりあえす「やっと着いた 1 、荷物多すぎますよ幽々子様。わざわざ素材を持っ 戻ってから考えよう〇 てこなくても : : : 。」 おおむ 099 巫女感謝の日
魔理沙はそれを聞くと、あはははっと腹を抱えて笑った。ひとしき 日常 りそ、つした後、やっとという風に、一保目になりながらロを開く。 「月に行ったときは本当に折れてたからな、骨」 央晴のもとの博麗神社では、太陽は空高く昇っており、霊夢が、ひ 「他人事だから笑っていられるのよ。本当に痛かったのよ。あいつの なたばっこをするには暑すぎると感じ始めたころだった。彼女の視界弾幕なんか、もう思い出したくもないわ」 の端に、箒に乗った白黒の魔法使いが飛んでくるのが映る。タイミン ふうと、魔理沙は息をついて落ち着けると、大の字に両手を広げて、 グが悪いな、と霊夢はため息をついた 懐かしむよ、つに口を開いた 「霊夢、邪魔するぜ」 「いろんなことがあったな」 「本当に邪魔よ。考え事をしていたのに」 あまりいい思い出はないけど。と霊夢は愚痴を漏らして、そして口 を開いた 魔理沙は箒から降りると、お盆に置いてある湯呑が二人分なのをし つかりと確認して、霊夢の隣に、盆を挟んで腰かけた。 「体感だと、もの凄く長かった気がするわね」 「珍しいな、い つも悩みなんてなさそうにしているのに」 「どれくらいだ ? 」 霊夢は、んーと間延びした唸り声をあげると。 「二十年くらい ? 」 「魔理沙はまだ来ないのかなって、考えてたのよ」 「そりゃあないな」 それを聞いて魔理沙は、にいっとロ角を上げた。 魔理沙は勢いよく起き上がると、二人は顔を見合わせた。そして、 「今日はやけに素直だな」 霊夢はクスクスと、魔理沙は大きく口を開けて、笑った。 「冗談よ」 「来年はどうなるのかしらね 霊夢は即答だったが、魔理沙は気にした様子もなくお盆から湯呑を 「来年より、明日の事を考えようせ」 一つ、減っていない方を持ち上げて一口に仰ぐと、ぬるいな。と呟い 明日の積み重ねが来年になる。先を見通すのは大切だが、目の前に ある明日のことも考えられなくては、未来は空想のものになってしま 「そりゃあ、来るのがいつもより遅かったからね」 う。それが魔理沙の考え方だった。それを、霊夢はしつかりと理解し ていた。 女子にはいろいろあるんだよ、準備とか。と湯呑を置くと、魔理沙 はそのまま後ろに倒れた。女子って言い張るならもっと繊細にしなさ 「ふふ、そうね。明日はどうしようかしら」 いと、霊夢は心の中で突っ込む。 「ます、博麗神社に行くだろ。そして霊夢が淹れたお茶を飲む。その 「しかし、平和だな。異変の一つでも起こってくれないかな」 後は、世間話でもして、明日はどうしようか、そんな事を話す。どう 「冗談じゃないわ。ただでさえ、最近の異変解決には骨が折れるのに。 少しくらい休ませてほしいわ。弾幕休日よ」 「それって今日と変わらないじゃない」 060
し説教しなくてはいけませんね」 白蓮の目が笑っていないことに気づいて、三人は苦笑いをした。 「ご主人様、ただ今戻りました。聖、起きたんですね。怖い顔してど 冷たくて鋭い視が、白蓮を刺していた。展みの籠った目。失望し 、つしました ? 」 きった目。困惑している目。白蓮はそれらを一身に受けて、その場か 「ナズー丿 ン、お冖師りなさい。、 え、少し反省していない山彦がいる ら逃げ去りたくなった。しかし、体が動かない。そんな中で、白蓮のようなので」 視界は少しすっ狭くなっていく。やがて、視界はすべて閉ざされ、暗 スーリンは、ああと納得したように声を漏らすと、言った。 い昏い冥い闇の中で、白蓮は独りばっちになった。 「私と同じ動物妖怪のよしみなんだ。控え目にしてやってほしい」 そして、白蓮は目を覚ます。白蓮が寝ている布団の横では、寅丸星 「ナズ ーリン、響子は山彦ですよ」 が正座している。その膝の上には、たたまれた手ぬぐいが置いてあり、 星の一言に、えつ、とナズ ーリンは絶句する。そして、すっと大の その膝元には、汗をかいた水差しと、コップが置いてあった。「おはよ妖怪だと思っていたと、ショックを隠し切れす崩れ落ちる姿をみて、 うございます、聖。今日は遅いお目覚めでしたね」 白蓮たちは堪えきれすに笑った。 「星、おはよう」 しかし、と白蓮は全員を見渡して口を開く。 「随分うなされている様子でしたが、何か悪い夢でも ? 」 「このメンバーだけで食事、と言、つのは久しぶりな気がしますね そう言いながら、星はコップに水を入れて、聖に差し出した。聖は 最近は、命蓮寺も賑やかになってきていた。けれど、やつばり今い 身体を起こしてそれを受けとると、それを一口飲む。 るみんなは特別だと、妙連は思う。 「ええ、少しね。心配いらないわーーー他のみんなは ? 」 「ここに居るものはみんな、聖に救われたんですよね」 「いつも通りです。つまり、経を唱えたり、お寺の掃除をしたり、何 星は、感既深そうに言ったのを聞いて、白蓮は笑う。 処かへ遊びに行ったり。けど、そろそろ戻ってくるでしよう」 「そして、私も貴女たちに救われました」 お昼時ですから。そう言って、星は微笑んだ。 白蓮は改めて、全員の顔を見た。皆、数百年の時間が経っても、自 聖が着替えて食堂へ向かうと、一輪と水蜜が食事の準備をしていた。 分についてきた妖怪たちだ。白蓮が手を差し伸べて、そして白蓮を助 二人とも、聖の姿を認めると挨拶をする。 けに来てくれた大切な、仲間だった。 「今日は少ないですね、響子とぬえと、ナズ 1 リンもいませんね」 「みんなとは長い付き合いですが、これだけは言っておかないといけ 「ぬえは、いつもみたいにどっか行っちゃいました。響子は鳥獣枝楽ませんね。私はみんなと出会えて、本当によかったと思っています。 ーサルだとか」 ありがとう」 白蓮はそれを聞いて、眉間に皺をよせる。 「はあ、近所迷惑になっていなければいいのですが。帰ってきたら少 闇夜をこえて 056
「あと鐘の音がうるさいって行って一輪たちも出かけて行きました。」使っていいですよ ? 」 当たり前だ。 、いを読むんじゃない 、覚妖怪か。 「では私はこれで ) またいっか会いましよう。あ、この穴はあの廟に 未だに鐘を鳴らし続ける聖を後ろに命蓮寺の敷地を出る。私以外に つながっているのでご心配なくこ 今日の事を知っている人がいたという事は紫が吹聴して周っているん 一一口、つだけ一一一口って ~ 行ってしまった。 だろ、つか : 「なんか私の行動が先読みされてる感じだわ : : : 、紫の奴先に触れ込 まわ 「話が通っているなら手つ取り早いわね。さっさと周って帰りましょ みまわってるのかしら。」 そんなことを考えながら命蓮寺敷地から人里への道を歩いていると、 「本当にあそこに繋がっているのね。」 ふと足元に違和感を感じた。見たところ変哲も無い石畳だが、踏んで 青娥が開けた穴を通ると神霊が辺りを漂う空間へ移転していた。落 いる所の下が別の場所へと繋がっているようなそういう感覚。 下しながら下を見るとそびえ立っ塔が目に入る。幻想郷における道教 「異変の芽だったら良くないわね・ : 摘まないと ! 」 の総本山、神霊廟である。 強く踏みつけようとした瞬間、急に石畳がバカッという拍子抜けな 「珍しい客じゃないか、ここに来るのは秦氏の件以来かな。」 音を立てて開いた。そこに居たのは。 着地と同時に横から声が掛けられる。 「あら、霊夢さんじゃないですか。このようなところで会うなんて珍 「幻想郷の宗派三大勢力の一角である君が来てくれるとはね、あの尼 しいですわね。どうしました ? 狐に抓まれたような顔をして。」 を倒すために手を組みたいということかな。言わなくてもわかるぞう 銀色ではなく青髪の髪を揺らして石畳からインしてきたのは霍青娥、 娘々である。 「何も言ってないし能力でそれつほいこと思ってる風に言わないでち 「もしかしてあの寺への偵察ですか ? 何か見てはいけないモノでも よ、つだい ! 」 見てしまいましたか ? 隠しても見に行きますけど。」 降りたすぐそこに神霊廟の主、豊聡耳神子が立っていた。以前付 : 「ちがうわよ : : : ちょっとした用事で行ったのよ。偵察か何か ? 」 ていたマントは外されてラフな格好の出で立ちである。 問いかけると笑顔を崩さす返してきた。 「まあまあせつかく来てくれた客人だ、もてなしてあげようではない 「いえいえ、ちょっと彼女の様子を見に来ただけですわ。たまに様子か」 見ないと腐っちゃいますから。」 そう言、つと神子が左手を上げた。 : しかし誰も来なかった。 彼女、彼女の部下のキョンシー 宮古芳香のことであろうか。わざ わざここに穴を空けなくても直接住処の墓地へ空ければ良いだろうに。 師っていいかしら ? ・」 「ちゃんと意味はありますよ ? 教えて差し上げませんが。あ、ここ 「待ってほしい。そうだった彼女たちは出払っていたのを忘れていた 巫女感謝の日 095