13. 鶏の解体 ~ ボンジリ ~ これから、鶏の体を各部分ごとに解体して行きます。 まず、鶏の尻尾であるボンジリを本体から切り取ります。次に、下半身の背筋 ( 人間の体で言え ば、お尻の割れ目 ) に切れ込みを入れます。後の工程で両脚を本体から切り離すとき、この切れ 込みを境にして、両脚が左右に分かれて骨盤から離れます。 ①鶏の体をうっ伏せに寝かせます 首と両脚をつかんで、鶏の体をうっ伏せに 寝かせます。 14. 鶏の解体 ~ 食道 ~ 鶏の体を仰向けに寝かせます。喉元の皮を切り開き、食用にならない食道を指で吊り出します。 そして、喉元で切断し、捨てます。 ( 撮影の都合上、① ~ ③と、④は別の鶏の写真を使いました。そのため、④にだけ、頭がついた ままになっています。 ) ① 鶏の体を仰向けに寝かせます。 鶏の体を仰向けに寝かせます。 ② 喉元の皮を切り開きます。 1 食用にならない食道を取り除くため、喉元 の皮を指でつまみ上げ、刃を当てます。 ②ボンジリを切り取ります。 鶏の尻尾であるボンジリを切り取ります。 これは脂肪の塊で、焼いて食べると柔らか くて美味しいです。 ③ 喉元の皮を切り開きます。 2 指でつまみ上げた喉元の皮を切り開きます。 すると、皮の下に筋肉や内臓が見えます。 ③背筋の下半分に切れ目を入れます。 骨盤の上端の皮に刃先を突き刺します。 そしてボンジリの切り口の中央に向かって、 背筋に沿って、まっすぐに切れ目を入れ ます。 これは、本体から両脚を切り離しやすく するための準備です。 ④ 食道を切り取ります。 赤くてやや太い、 ミズのような器官が 食道です。 これは食用にならないので、指先を下側に 差し込んで皮の切れ目から吊り出し、長い 首から引き抜きます。 そして喉元で切断して、捨てます。 ヾ、
15. 鶏の解体 ~ 腿肉 ~ 鶏の本体から両脚を切り離します。まず最初に、腹側の皮を切り開いて、筋骨が露出した状鸛に します。 鶏の本体と太腿の間は、筋肉の筋目で分かれているので、刃物を使わなくても、親指の先を差し ます。 込み、筋肉の筋目に沿って双方を切り分け さらに、本体と太腿の谷間に親指を差し 押し開くようにして双方を引き剥がします。 太腿の付け根をもう片方の手でつかんで、 本体を片手でしつかりと押さえながら、 ③本体から太腿を引き剥がします。 1 ないように注意しましよう。 皮だけを切り、太腿と本体の肉を傷付け 脚の付け根の内側の皮を切り開きます。 ①で入れた 2 つの切れ目をつなぐように ②脚の付け根内側の皮を切り開きます。 注意して、皮を切り開きます。 そして太腿と本体の肉を傷付けないように つまみ上げて刃先を突き刺します。 反対側の足の付け根の皮も、同じように 注意しながら、皮を切り開きます。 そして太腿と本体の肉を傷付けないように ます。 ) ( 肉を傷付けないために、刃を上側へ向け 刺します。 脚の付け根の皮をつまみ上げ、刃先を突き ①脚の付け根の皮に切れ目を入れます。 込んで裂いてゆくだけで、きれいに分離することができます。 16. 鶏の解体 ~ 腿肉 ~ 人類 ( というより、あらゆる生命 ) は常に飢餓と隣り合わせで生きてきました。近所の民俗資料館に 行けば、ほんの 100 年ほど前まで、コメを手作業で作っていたことが分かりますし、それがいかに重 労働だったかも、展示してある原始的な農機具から、容易に想像できると思います。餓死・凍死の 危険が ( 少 ) ないだけでも、現代の私たちは極楽に生まれたとしか言いようがないと思います。 ④ ⑤ 本体から太腿を引き剥がします。 2 太腿をいつばいまで押し広げると、太腿の 関節が骨盤から外れて、白くて丸い球体が 現れます。 この関節の隙間に刃先を差し込み、関節を をつなげている軟骨や腱を切り離します。 骨盤から太腿を引き剥がします。 本体と太腿の谷間に親指を差し込み、親指 の先を 13 ページめ③で、あらかじめ切れ目 を入れておいた背筋の線の方向へ向けると、 骨盤の背中側の直線的な形が感じ取れるで しよう。 ⑥骨盤の背中から太腿を切り離します。 ⑤で探り当てた骨盤のラインに沿って、 無駄なく肉を削ぎ取るように注意しながら、 刃先で肉と皮を骨盤から切り離します。 左右の両脚を本体から切り離すと、固くて 鋭角的な骨盤の形が現れます。
17. 鶏の解体 ~ 腿肉 ~ 鶏の本体から切り離した両脚から、太腿と脛の骨を取り除きます。 脚の中を通る骨や関節周辺の軟骨は、筋肉にびったりと貼り付いているので、刃物の先を当て て丹念に削ぎ落としましよう。生きた鶏の血を抜いて殺すところから作業を始めてこそ、ひとかけら の肉も無駄にするべきではない、という気持ちが実感できるようになると、私は思います。 球体をつかみます。 本体と太腿をつなげていた、股関節の白い ⑦股関節をつかみます。 股関節から太腿の骨のカープに沿って刃先 ⑧太腿の肉を切り開きます。 ⑩膝関節を露出させます。 骨を露出させます。 骨側に残った肉を削ぎ落としながら、太腿 ⑨太腿の骨を露出させます。 の肉を切り開きます。 を進め、太腿の骨が露出するように、太腿 膝関節を露出させます。 堅い腱や細かな骨を肉から削ぎ取りながら、 膝関節まで刃先が達したら、膝関節周辺の 18. 鶏の解体 ~ 腿肉 ~ 太腿の骨、膝関節に続いて、脛の骨を露出させます。膝関節の隙間に刃先を差し込んで切断し 、ある程度、大きく抉り取らなくてはなりません。この部分の構造の複雑さからして、膝は鶏にとって 、太腿の骨を取り除きます。膝の関節の周囲は、細かい軟骨や骨片、腱の筋で覆われているので ⑩脛の骨を露出させます。 2 を刺し込み、脛の骨を露出させます。 その下に続く脛の骨のカープに沿って、刃 白く見える球体が膝関節です。 ⑩脛の骨を露出させます。 1 重要な器官であると想像できます。 次に、その先の脛の骨を取り除きます。 脚から太腿の骨を取り除いたところです。 ⑩太腿の骨を取り除きました。 つなげている軟骨や腱を切り離します。 膝関節の隙間に刃先を刺し込み、関節を ⑩膝関節を切り離します。 開きます。 脛の骨に沿って刃を進め、太腿の肉を切り 太腿の骨と同様に、刃先と指先の感覚で、
21. 鶏の解体 ~ 手羽 ~ 鶏の本体から手羽を切り離します。 15 ページから説明した、本体から太腿を切り離す手順と同様 、まず腹側の皮を切り開いて、筋骨が露出した状態にします。 本体から手羽を切り離す要領は、本体から両脚を切り離す要領とほとんど同じです。 当てます。 のうち、首側の端をつまみ上げて、刃先を ③で切り開いた手羽の付け根の皮の切れ目 ④首筋の皮に切れ目を入れます。 1 ないように注意しましよう。 皮だけを切り、手羽と本体の肉を傷付け に、手羽の付け根の皮を切り開きます。 ①と②で入れた 2 つの切れ目をつなぐよう ③手羽の付け根の皮を切り裂きます。 注意しながら、皮を切り開きます。 そして手羽と胸の肉を傷付けないように ます。 ) ( 肉を傷付けないために、刃を外側に向け 突き刺します。 手羽の脇の皮を指先でつまみ上げ、刃先を ②手羽の脇の皮に切れ目を人れます。 注意しながら、皮を切り開きます。 そして手羽と胸の肉を傷付けないように ます。 ) ( 肉を傷付けないために、刃を外側に向け 突き刺します。 手羽の肩の皮を指先でつまみ上げ、刃先を ①手羽の肩の皮に切れ目を入れます。 22. 鶏の解体 ~ 手羽 ~ 2014 年現在の日本では、少子高齢化の是正が論ぜられています。しかしこれは、「 60 歳定年→ 老後は若年者が扶養」という、日本史上前例のない、戦後のサラリーマン→年金保障社会を前提 にしていると思われます。やはり「死ぬまで活きて働く ( 肉体労働では必ずしもなく、何らかの価値 を創出して社会に提供し続けることを意味する ) 」が人間の掟と心得て強く生きて行くべきでしよう。 ⑤首筋の皮に切れ込みを入れます。 2 手羽と本体の肉を傷付けないように注意 しながら、首筋に沿って皮を切り裂き、 切れ目を広げます。 ⑥肩関節を切り離します。 1 本体と手羽をつないでいる肩関節の隙間に 刃先を刺し込みます。 ⑦肩関節を切り離します。 2 刃先を刺し込んで切り離した肩関節を切り 離します。 ⑧本体と手羽を切り離します。 1 手羽を掴み、肩関節の周囲の堅い腱や軟骨 と共に、本体から手羽を切り離します。
26. 鶏の解体 ~ 胸肉・鶏ガラ ~ 鶏の本体から左右の胸肉を切り離します。 ( → ) 、犠牲になられた方々がより強く望むのは、同様の悲劇を繰り返さないことと、その教訓を私 達の今現在の生き方に直接、反映させ続けることではないでしようか ? 私は自衛隊での訓練中、 配給された食料を前にする度に、サイバンで戦死した祖母の弟さんの最後の食事を想うのです。 ⑨ 本体から胸肉を引き剥がします。 2 本体の骨格と胸肉の隙間に差し込んだ親指 の先を下腹の方へ進めて、骨盤から胸肉を 引き剥がします。 25. 鶏の解体 ~ 笹身・胸肉 ~ 鶏の本体から左右の笹身と胸肉を片方ずっ切り取ります。 私が食べ物のありがたさを感じる機会の一つは歴史書を読むときです。特に、それなりに食糧の 安定供給に成功していた明治以降の日本社会が飢餓地獄に突き落とされた ( というより、自ら落ち 込んでいった ) 大東亜戦争の記録は酷烈です。戦没者を慰霊する行事も大事ではありますが ( → ) ⑤笹身を胸骨から切り離します。 笹身は胸骨の稜線下の L 字形の溝に沿って 貼り付いています。 笹身を傷付けないように注意しながら刃先 と指先を使って、胸骨から笹身を剥がし、 取り出します。 ⑥笹身を取り出しました。 笹身は脂身の少ない、あっさりとした淡白 な味です。 ⑩ 本体から胸肉を引き剥がします。 3 本体の骨格と胸肉の隙間に差し込んだ親指 の先を首の方へ進めて、肩甲骨・肋骨から 胸肉を引き剥がします。 ⑩ 骨格から肉が取り去られました。 これまでの作業で、本体から四肢と主要な 肉を取り去った結果、骨格と、その表面に こびり付いた肉片しか残りません。 残った鶏ガラもスープの出汁を取るなどに 有効活用したいものです。 ⑩ 鶏ガラ・胸肉・笹身に分けました。 左から鶏ガラ、胸肉、笹身の順に並べまし どれも、それぞれに特徴があって美味しい 味がします。 以上で屠殺と解体の説明を終わります。 ⑦背筋に切れ目を入れます。 背筋に沿って、腰骨の上端から首の付け根 まで切れ目を入れます。 これは、本体から両脚を切り取る前の準備 と同じく、本体力ら胸肉を切り取りやすく するための準備す。 ⑧本体から胸肉を引き剥がします。 1 ⑦で入れた切れ目に親指の先を刺し込み、 肩甲骨や肋骨から胸肉を引き剥がします。
05. 鶏の屠殺 ~ 屠殺の準備 ~ 06. 鶏の屠殺 ~ 屠殺の準備 ~ いよいよ、鶏を屠殺します。鶏に無用な苦痛を与えたり、肉を食べられなくしてしまったり、美味し 鶏は、両足首と羽根の付け根を紐で縛れば、動けなくなります。そして、あらかじめ垂らしておい さを損なったりしないためにも、作業は手早く、よどみなく、正確に行うようにしましよう。 た紐と足首を結び合わせて、逆さ吊りにします更に、鶏の体全体を覆うようにポリ袋を被せます。 とはいえ実際には、いざとなると多くの人は、鶏くらいの大きさの生きた温血動物 ( つまり、人間と こうすると、頸動脈を切ったときに流れ出る血カ周囲に飛び散らないので、後始末が楽になります。 DNA が近縁な生物 ) を直接、刃物で殺して解体することに、ためらいを感じるようです。 実際の放血では、大量の血液が噴水のように吹き出るというわけではありません。 ⑦鶏を取り出します。 両の羽根の付け根を縛ります。 ⑩ 屠殺するため、鶏を段ボール箱から取り出 両の羽根の付け根を紐で縛ります。 します。 鶏のくちばしや爪、羽などは固くて鋭いの で、必ず軍手をはめて取り扱うようにしま しよう。 0 ヾ、 ⑩ 鶏を逆さに吊るします。 用意しておいた紐に、鶏の足を縛った紐を 結び合わせて、鶏を逆さに吊るします。 ⑧両方の脚を縛ります。 左右の足首を紐で結び合わせます。 ここでは特に、固くて鋭い爪でケガをする 可能性がありますので、必ず軍手をはめて 作業しましよう。 ⑩ 血液を回収するポリ袋を被せます。 垂直に垂らした紐に、ガムテープでポリ袋 の端を取り付けます。 こうすれば、鶏の頸動脈を切って放血して も血液が周囲に飛び散らず、速やかに回収 することができます。 ⑨両方の羽根を縛ります。 左右の羽根の付け根を握ってまとめます。 ここでも、固くて尖った羽根の先でケガを する可能性がありますので、必ず軍手をし ましよう。
19. 鶏の解体 ~ 腿肉 ~ 太腿の骨を取り除いたら、その先にある脛の骨を取り除きます。私が一番美味しいと思った中華 粥は、香港の九龍半島の奥側にある下町の食堂の 300 円のものでした。そこでは鶏の頭部や足の 先まで鍋に入れていて、溶け出したタンパク質でトロトロになっているのです。これは日本国内の 中華街の有名店でも及ばない美味しさでした。鶏に捨ててよい部分は、ほとんどないのでしよう。 の背を当てて、振り下ろして脛の骨を折り 脛の骨を露出させたら、踵の上の辺りに刃 ⑩脛の骨を折ります。 ⑩脛の骨を取り除きます。 1 折ります。 そして両手で折れ目の左右をつかんでヘし ます。 離します。 軟骨と共に、膝の関節を太腿の肉から切り 脛の骨が露出したら、周囲の堅い腱の筋や ⑩脛の骨を取り除きます。 2 させます。 に無駄なく削ぎ落しながら、脛の骨を露出 刃先と指先を使い、骨側に残った肉を丁寧 20. 鶏の解体 ~ 腿肉 ~ 脚の肉から、踵から先を切り離します。更に、脛の骨の脇にある、爪楊枝のような細い骨を 取り除けば、柔らかくて美味しい太腿の肉が採れます。 取り除いた骨や足の先は、冷凍保存しておき、時間のある時にじっくり煮込めば、有名 フーメン店並みのこだわりの出汁を取ることができますので、是非、試してみて下さい。 ⑩ ⑩ ⑩ 脚の肉から脛の骨を離します。 19 ページの①で、刃の背で叩き折った部分 から、脛を骨を取り除きます。 採れました。 こうして、柔らかくて美味しい太腿の肉が のような細い骨を取り除きます。 切り離し、更に脛の骨の脇にある、爪楊枝 太腿の骨と脛の骨を取り除き、踵から先を 太腿の肉が採れました。 脚の肉から切り離します。 叩き折った部分に刃を当てて、踵から先を 踵から先を脚の肉から切り離します。