03. 鶏の屠殺 ~ 屠殺の準備 ~ これから、鶏を屠殺する前の準備について説明します。 回るので、翌日の作業直前まで、段ボールに入れたまま暗い部屋で保管しました。 ①鶏を吊るす紐を用意します。 鶏を逆さに吊るすための紐を用意します。 ここでは物干し竿に紐を結び付けて、下に 垂らしています。 04. 鶏の屠殺 ~ 屠殺の準備 ~ 逆さ吊りにした鶏の頸動脈を切って放血したら、すぐに鶏の体をお湯に浸けて温めてから、羽毛 をむしり取ります。お湯の温度は 60 ~ 70 ℃に調節しておき、沸騰させてはいけません。また、温め た体が冷えないうちに、全身の羽毛を手早く、もれなく引き抜かなくてはなりません。 鶏の体は、尖った部分が多いので、手のケガの予防に軍手を用意しておきましよう。 ⑤ 鶏を温めるお湯を用意します。 屠殺した鶏を温めて、羽毛をむしりやすく するためのお湯を用意します。 鶏の体が入る大きめ ( 直径 30 センチ位 ) の 鍋にたつぶりとお湯を沸かし、ガスコンロ や石油ストープ等で 60 ~ 70 ℃の温度に保温 しておきます。 お湯の温度が高過ぎると、浸けた鶏の皮膚 が柔らかくなり過ぎて、羽毛を抜くときに 破れたり、脂分が抜けてパサバサに乾燥し、 美味しさが損なわれます。 なので熱湯では不適当ですし、 60 ~ 70 ℃の 微妙な温度を正確に保つには、料理用温度 計が必要です。 私は、なるべく美味しい調理法を追求し、 かっ、できた料理に不服を言わずに残さず 食べるのが犠牲への敬意だと考えています。 ⑥ 鶏を用意します。 今回、屠殺した鶏は、卵を産まなくなった ものを養鶏場からいただきました。 鶏を輸送し、屠殺まで半日 ~ 1 日ほど保管 するには、段ボール箱に入れておくとよい でしよう。底に新聞紙を敷き、蓋を閉じて 暗くしておくと、おとなしくなります。 また、適度に狭い方が暴れません。 もし鶏が興奮して暴れると、体内に残った 卵が割れ、破片による傷害で、鶏が死んで しまう場合もあります。 鶏を入れた段ボール箱は暗くて静かな場所 に置いておくようにしましよう。 ただし実際には食品衛生の問題から、今日 では、部外者が養鶏場から生きた鶏を直接 調達するのは、簡単ではないようです。 ②真下に新聞紙などを敷きます。 血液が飛び散ったときのために、鶏を吊る す紐の真下に新聞紙等を敷いておきます。 風で吹き飛ばされないように、敷物の四隅 はガムテープで留めます。 実際には、それほど大量の血液が飛び散る わけではありませんが、血の痕を嫌がる人 も多いと思われるので、一応の配慮として 書き留めておきました。 ③血液を回収するポリ袋を用意します。 鶏の全体を包めるほどの大きさのポリ袋を 用意します。ポリ袋の底には、血液を吸い 取るためのボロ布を入れておきます。 このポリ袋は鶏の体からむしり取った羽毛 を回収するのにも便利ですので、必ず用意 しましよう。 ④屠殺する場所の全景です。 上記① ~ ③まで説明した、鶏の屠殺を行う 場所の全景です。 今回の撮影によって、結果的に、③のポリ 袋を使えば、②の敷物は敷かなくてもよい ことが分かりました。 1
05. 鶏の屠殺 ~ 屠殺の準備 ~ 06. 鶏の屠殺 ~ 屠殺の準備 ~ いよいよ、鶏を屠殺します。鶏に無用な苦痛を与えたり、肉を食べられなくしてしまったり、美味し 鶏は、両足首と羽根の付け根を紐で縛れば、動けなくなります。そして、あらかじめ垂らしておい さを損なったりしないためにも、作業は手早く、よどみなく、正確に行うようにしましよう。 た紐と足首を結び合わせて、逆さ吊りにします更に、鶏の体全体を覆うようにポリ袋を被せます。 とはいえ実際には、いざとなると多くの人は、鶏くらいの大きさの生きた温血動物 ( つまり、人間と こうすると、頸動脈を切ったときに流れ出る血カ周囲に飛び散らないので、後始末が楽になります。 DNA が近縁な生物 ) を直接、刃物で殺して解体することに、ためらいを感じるようです。 実際の放血では、大量の血液が噴水のように吹き出るというわけではありません。 ⑦鶏を取り出します。 両の羽根の付け根を縛ります。 ⑩ 屠殺するため、鶏を段ボール箱から取り出 両の羽根の付け根を紐で縛ります。 します。 鶏のくちばしや爪、羽などは固くて鋭いの で、必ず軍手をはめて取り扱うようにしま しよう。 0 ヾ、 ⑩ 鶏を逆さに吊るします。 用意しておいた紐に、鶏の足を縛った紐を 結び合わせて、鶏を逆さに吊るします。 ⑧両方の脚を縛ります。 左右の足首を紐で結び合わせます。 ここでは特に、固くて鋭い爪でケガをする 可能性がありますので、必ず軍手をはめて 作業しましよう。 ⑩ 血液を回収するポリ袋を被せます。 垂直に垂らした紐に、ガムテープでポリ袋 の端を取り付けます。 こうすれば、鶏の頸動脈を切って放血して も血液が周囲に飛び散らず、速やかに回収 することができます。 ⑨両方の羽根を縛ります。 左右の羽根の付け根を握ってまとめます。 ここでも、固くて尖った羽根の先でケガを する可能性がありますので、必ず軍手をし ましよう。
26. 鶏の解体 ~ 胸肉・鶏ガラ ~ 鶏の本体から左右の胸肉を切り離します。 ( → ) 、犠牲になられた方々がより強く望むのは、同様の悲劇を繰り返さないことと、その教訓を私 達の今現在の生き方に直接、反映させ続けることではないでしようか ? 私は自衛隊での訓練中、 配給された食料を前にする度に、サイバンで戦死した祖母の弟さんの最後の食事を想うのです。 ⑨ 本体から胸肉を引き剥がします。 2 本体の骨格と胸肉の隙間に差し込んだ親指 の先を下腹の方へ進めて、骨盤から胸肉を 引き剥がします。 25. 鶏の解体 ~ 笹身・胸肉 ~ 鶏の本体から左右の笹身と胸肉を片方ずっ切り取ります。 私が食べ物のありがたさを感じる機会の一つは歴史書を読むときです。特に、それなりに食糧の 安定供給に成功していた明治以降の日本社会が飢餓地獄に突き落とされた ( というより、自ら落ち 込んでいった ) 大東亜戦争の記録は酷烈です。戦没者を慰霊する行事も大事ではありますが ( → ) ⑤笹身を胸骨から切り離します。 笹身は胸骨の稜線下の L 字形の溝に沿って 貼り付いています。 笹身を傷付けないように注意しながら刃先 と指先を使って、胸骨から笹身を剥がし、 取り出します。 ⑥笹身を取り出しました。 笹身は脂身の少ない、あっさりとした淡白 な味です。 ⑩ 本体から胸肉を引き剥がします。 3 本体の骨格と胸肉の隙間に差し込んだ親指 の先を首の方へ進めて、肩甲骨・肋骨から 胸肉を引き剥がします。 ⑩ 骨格から肉が取り去られました。 これまでの作業で、本体から四肢と主要な 肉を取り去った結果、骨格と、その表面に こびり付いた肉片しか残りません。 残った鶏ガラもスープの出汁を取るなどに 有効活用したいものです。 ⑩ 鶏ガラ・胸肉・笹身に分けました。 左から鶏ガラ、胸肉、笹身の順に並べまし どれも、それぞれに特徴があって美味しい 味がします。 以上で屠殺と解体の説明を終わります。 ⑦背筋に切れ目を入れます。 背筋に沿って、腰骨の上端から首の付け根 まで切れ目を入れます。 これは、本体から両脚を切り取る前の準備 と同じく、本体力ら胸肉を切り取りやすく するための準備す。 ⑧本体から胸肉を引き剥がします。 1 ⑦で入れた切れ目に親指の先を刺し込み、 肩甲骨や肋骨から胸肉を引き剥がします。
13. 鶏の解体 ~ ボンジリ ~ これから、鶏の体を各部分ごとに解体して行きます。 まず、鶏の尻尾であるボンジリを本体から切り取ります。次に、下半身の背筋 ( 人間の体で言え ば、お尻の割れ目 ) に切れ込みを入れます。後の工程で両脚を本体から切り離すとき、この切れ 込みを境にして、両脚が左右に分かれて骨盤から離れます。 ①鶏の体をうっ伏せに寝かせます 首と両脚をつかんで、鶏の体をうっ伏せに 寝かせます。 14. 鶏の解体 ~ 食道 ~ 鶏の体を仰向けに寝かせます。喉元の皮を切り開き、食用にならない食道を指で吊り出します。 そして、喉元で切断し、捨てます。 ( 撮影の都合上、① ~ ③と、④は別の鶏の写真を使いました。そのため、④にだけ、頭がついた ままになっています。 ) ① 鶏の体を仰向けに寝かせます。 鶏の体を仰向けに寝かせます。 ② 喉元の皮を切り開きます。 1 食用にならない食道を取り除くため、喉元 の皮を指でつまみ上げ、刃を当てます。 ②ボンジリを切り取ります。 鶏の尻尾であるボンジリを切り取ります。 これは脂肪の塊で、焼いて食べると柔らか くて美味しいです。 ③ 喉元の皮を切り開きます。 2 指でつまみ上げた喉元の皮を切り開きます。 すると、皮の下に筋肉や内臓が見えます。 ③背筋の下半分に切れ目を入れます。 骨盤の上端の皮に刃先を突き刺します。 そしてボンジリの切り口の中央に向かって、 背筋に沿って、まっすぐに切れ目を入れ ます。 これは、本体から両脚を切り離しやすく するための準備です。 ④ 食道を切り取ります。 赤くてやや太い、 ミズのような器官が 食道です。 これは食用にならないので、指先を下側に 差し込んで皮の切れ目から吊り出し、長い 首から引き抜きます。 そして喉元で切断して、捨てます。 ヾ、
09. 鶏の屠殺 ~ 屠殺の実行 ~ 死んだ鶏の消化管の中には、未消化のエサや糞が詰まっており、腸内細菌が存在しています。 そして、鶏の体温の残りや気温によって細菌は活動を続け、腐敗が始まります。ですからもし、この 後に続く解体がすぐにできないようでしたら、取り敢えず羽毛をすべて取り除いてしまい、鶏の体を 新しいポリ袋に入れて、丸ごと冷蔵庫に入れて冷やし、なるべく早いうちに解体を再開しましよう。 ⑥鶏の体をお湯に浸けます。 お湯の温度と同じく、お湯に浸ける時間も キッチンタイマーなどを使って、 30 秒 ~ 60 秒間を正確に守りましよう。これより短い と羽毛が抜けず、これより長いと鶏の皮膚 が柔らかくなり過ぎたり、脂分が抜けて、 食感がパサバサになってしまいます。 ⑦お湯から引き上げます。 鶏の体をお湯から引き上げて、羽毛を抜く 場所へ移動させます。ここでも、ポリ袋を 使うと、余分なお湯や血液の残りが周囲に 飛び散らず、ボロ布に吸い取られて作業が しやすくなります。 10. 鶏の解体 ~ 解体の準備 ~ これから、鶏の体を各部分ごとに解体して行きます。作業中は刃物を握る手が脂と体液でベト ベトになり、滑りやすくなって危険です。手元にタオルを 2 ~ 3 枚用意して、小まめに手 と刃物の柄の汚れを拭き取りながら作業を進めましよう。また、切れない刃物の方が切る ときに余分な力が入って危険ですので、よく研いでおくようにしましよう。 ① 鶏の体をまな板の上に置きます。 鶏の体をまな板の上に置きます。 これからの作業では、刃物を握る手が脂と 体液でベトベトになって、滑りやすくなり ます。 なので、手元にタオルを 2 ~ 3 枚用意して 、小まめに手と刃物の柄の汚れを拭き取り ながら作業を進めましよう。 ② 頭部を切り落とします。 頭部は食用にならないので切り落とします。 首の骨は太くて固いので、無理に切ろうと すると刃が欠けてしまいます。なので、指 の先で骨の継ぎ目を探り当て、そこに刃先 を差し込んで、軟骨の感触を確かめながら 深く刃を入れて切り落としましよう。 ⑧羽毛をむしり取ります。 ポリ袋の中で、羽毛をむしり取ります。 お湯で温まった鶏の体が冷えないうちに 手早く、よどみなく作業を進めましよう。 手羽の固くて太い羽根は、生えている方向 に向けてまっすぐに引き抜きます。 それ以外の全身の細かい羽毛は、首から足 の先に向かって斜めに生えているので、逆 方向 ( 足先から首の方向 ) へ向かって引き ちぎるように引っ張ると、早く、きれいに 抜けます。 皮を食べたとき、ロの中に毛が引っ掛かる と気持ちが悪いので、できるだけ丹念に 細かい毛まで全て取り除きましよう。 ③ 肛門の周囲を切り開きます。 肛門の周囲を広めに切り落とすようにする と、アーチ形に体内への入り口が開けます。 肛門の裏には大腸がつながっていて、中に は糞便が詰まっていますので、この段階で は大腸を切り離さないようすると、周囲や 他の内臓を汚さずに作業ができます。 ④ 肛門の周囲を広げます。 この後から、手を体内に差し込んで、内臓 を取り出します。 まずは肛門の周囲を広げて、体内の状態や 内臓の配置を確かめます。 写真の黄色いものは、内臓脂肪です。
長寿漫画「一」 ・たかを氏の作品に「サバイバル」・がある。三の作品では、大 動物、特に小鳥やハムスターなどの小動物は、とても可愛い。 後の世界が舞台となっている。主人公の少年サトルは、大きな ゴヒ 運んでやったり、つぶらな目を見つめたりするのは、とても心和むものである。 ある日サトルは、荒野に残った樹の上に群れる、野生化したインコを見つけた。食料を確保する そこには小さいけれど、確かな生命が息づいている。 絶好の機会だ ! パチンコでインコを留めたサトル : 測月根をむしり取り、焚肉を炙る。そして その小鳥やハムスターを、自分の手でひねり殺すなど、到底できない尨ろう。例え、冗談分で 想像の世界の父は困惑で言葉を失っている。母や姉はインコを殺したサトルを回々に非難する。 その手 ( リを込めようとしても、潜在意識が強烈な抵抗を発して、手の自由・が利かなぐなるろう。 な小動物をいレめで殺しで面白・がるなんて、すごぐ気味の悪い人間だと思う。もっとも、大抵そんな 人物は多ぐの善良な市民から非難が殺到し、やがでは摘発される。それが第一、浄化作用 ~ ・だが私が想像するに、平和だった頃のサトルの家庭の朝の食卓には、ハムやソーセージや 茹で卵が並んでいたのではあるまいか。優しくで良識ある父も母も姉も、金で買った家畜の死体を というもの尨ろう。 まいか。なのに、 = してイシコを殺しで食べると怒るのか ? しかし、現代の日沐社会の日常的な様子を見ていると、全く無造作に大量べ物が捨でられ こう 0 次第に、善と悪、正気を狂気をの区別は判然としなぐなり、思考は混乱していく・・ 、 : 前著「発酵食製造マニ = アル」の前書きにも書いたが、目ー暮らしは印給自足を基本ど 占めている日常の風景の方も、かなり薄気味悪いと私は思う。 。しており、衣食住に供されるものは、ほとんどす一て自宅ので調達ー , 、た。しかし、 現代の日体に限らず古今東西の社会は一般に、文明化 こ、穏便に処理司又ゑ機構 を、、が整備阜のが常である。これら仏教で言われる生・病・老・死の四苦は人間個を人の存在 2010 年に拙著「新世紀和服 = = アル」き↓梓しで以来、私は「ひのまる呉服店」・の名ーの、 、社と歴史の基盤なのであるが、あまりにも厳を参っ赤裸タな臺を直視させられる毎日 しい視策で捉え直し、現代社姿での活用方法を ぎるので、これを社会的規模で糊塗し、忘却する方向へ仕向げる努力がなさ 提案する活動を行。てきた。新作を発表する度に、多くの方をからご協力と賛同 . ) れるのは、寧ろ人間の英知の所産なのかも知れない。 支持をいただいてきた。 しかし今回の作品は、これまでの文化的 ) のとは、まるで異質な内容であるまほとんどの方はを 生産と消費ー放もは「分断」 ) は、。今日もなお、益々推進されている。例えば鶏、 ' ショッキングな写真と描写にご気分を悪ぐされることだろう。あるいは長嬢間、憂鬱気彡蔀客。 は養成された後、洗練された流れ作業によ。て放され、羽毛を戸り除かれ、冷蔵され 必だろう。それが動物を殺して喜ぶ者を嫌悪し非難ー黶、人間としで正常な反応なのだ。自分の暴 羂 た状態で街なかの精肉店に配送されている。 ' 。 2 性を無力な者にをつけてデ方的に生命を奪うことを慎む奓きなのは、人間として当然のことだ。 これは経済的にも衛生的にも望ましい三量の供給とそれに伴。て発生づみる鼕物は ツヾ間は、多くの犠牲 ( 岐えらて毎日を生きている事実をもみと明確に実感すべきではないのか ~ ′私特に、これまでの私の作品に共感し 0 「、さ。た方々にを : そラー以い毟墨うのだ碆、 に触。た経験のない方が少なくないとも聞い虐生産 4 蕪通を遉費のライチ = ーンの細分化 、とは言・え私はヾ読者や全ての人々が生き物を殺す体験をす謇きだとまでは考えなと ) ↓い ・専門化が進むにつれて全般的な結果は高度化き奓 . 、後当程に携わる人は、則程のことを ) 。 : が実行したり体験したりしたことを社会の大勢が共有できるところに文字・図像を音磬 . 映像と印刷 ・通信の禾悲隷はだカらを活用たなばよいわけだ言しかし今回のテーは内容が内容な第 、 -10 こうした「見ない、見せない、見る機会もないし必要もない。そしそもそも知らない」という流れ だけに、商業べースの出版物や公共の通信媒体で発表するわけにはいかない。 の末「家畜の死」・は】最あツ、々にに蕪縁 / ミの、認識できないもの→存在しないものとな。て 豸そう一 0 ことは : よく分からないけ , ど、、牙導雲るディア見られる 第ったらこれこそは、半分個人鮑分祖絵的ー分閉鎖的で分開放的立場にある自費 が担イ毛ミぎ題材なはあるま。 可愛い生き物が殺されるのは許せなし心」という認識が社会の大多数を占めるようになったわけだ。 、うメディ とをうー、愈感に駆られ、例によ。で無数の試行 こ・エく 錯誤と多くの方々のご協ツ引豸上。て書き上げたのが本書である。 三れが本当に人間としであるべき生命観なのか。 ) か。私はそれを問いたくて、の本を書いた。 1 呂 0 ノ、、、 第 0 “
ことわり ことわり 29. スス、メのし、た日々 ~ 雛達が教えてくれた摂理 ~ 30. スス、メのいた日々 ~ 雛達が教えてくれた摂理 ~ しかしよく考えれば、雛鳥のうちは自分でエサを取ることができないから、親鳥が巣に運んでくる 会社から帰ると私の予想通り、雛達はユニットバスの中を元気に飛び回っていた。もう事実上、 エサだけが生きる資源の全てなわけだ。だが親鳥は、全ての雛を養うのに十分な量のエサを持ち 巣立っているようなもので、さえずる声も「ヂューツ ! 」と半ば怒気を含んだものになってきた。だが 帰って来られるとは限るまい。外界の事情が厳しければ、兄弟の一部しか養えない場合もあろう。 、そのくせ固い粒餌はまだ食べられず、私が練り餌を作って食べさせてやらねばならないのは相 ならば、あらかじめ兄弟間で生存権の優先順位を確立しておいた方が、家族全体としては、血筋 変わらずだ。自我に目覚め、独力で生きる強健な体力は整いつつも、まだ保護者の庇護を必要と を残せる可能性を高められるだろう。そこで優先される個体とは、その後も打ち続く試練にめげず、 する、反抗期の中学生に当たる状態と思われる。 やつばり子育てって、大変ですね・ 生き延びて子孫を残せる強健 私は、四角くて平たい鳥籠を買ってきて、雛達を水槽から移すことにした。籠の角には割り箸を , で積極的 ( あるいは攻撃的 ) な 差し込んで針金で固定した。野生に戻った時に安全な樹上で生活するには、止まり木の上で生活 個体ということになるのだろう。 する習慣を身に付けさせる必要があると考えたからだ。また、この鳥籠は、中央を網で仕切ることも 思えば、生まれて来る全ての できたので、私は大きな個体 1 号を一方に、 2 , 3 号をもう一方に収容した。私は、これで 1 号による 動植物が寿命を全うするとした 兄弟げんか ( というより、もはや「生命に危険が及ぶレベルの家庭内暴力」 ) を防げると安心した。 ~ 物い」ら、地球は瞬時に生物のスシ 野生では、練り餌を作って食べさせてくれる者がいるとは考えにくいので、イネ科の植物の実の 詰め状態になってしまう。 ようなものが主食になるだろう。なので、雛達を粒餌に慣れさせておかなくてはならない。私は試し ツ とすれば、肉親間での抗争も に、 1 号と、隣の仕切りにいる 2 , 3 号の足元に粒餌を撒いてみた。数日前までは、練り餌に混ぜて ィ ・自然界では、必要悪なのでは も吐き出していたのだが、 1 号は体だけでなく頭の発達もよいらしく、自分の足元に転がる小さな粒 ないのか。 を食べ物と直観したようだ。すぐに、くちばしでコッコッとつついては粒餌を飲み込むようになった。 いや、そもそも「善と悪」とは、 「小さな粒を見たら食べ物と思え」というのも、あらかじめ遺伝子にプログラムされているのだろうか。 いったい何を基準に定められ 進化論の発達に対して、いまだに造物主を信じる考えが根強く残っているのも無理はない。 た区別なのか。殺し合いも含め へた競争は一概に悪とは呼べず、 続いて、更に驚くべきことが起きた。仕切り越しに 1 号の行動を見ていた 2 , 3 号が自分の足元を 全く同一の事象を人間がその つつき始めたのだ。 1 号のしぐさと満足そうな様子 ( 人間の私には判別できないが ) から、「足元を 時の都合によって、あるいは善 つつく。→いいことがある。」 ( スズメにとって「いいこと」とは、エサにあり付くことくらいだろう ) という 、あるいは悪と呼んでいるに過ぎないのではないのか。一見、他者を傷付けていないシマウマが 因果関係を察知したのだ。しかし、仕切り越しなので、その満足の原因が小さな粒にあるということ 善で、それを襲って殺して食べるライオンは悪、非難され排除されるべき存在だと、誰が言えるの までは分からなかったらしい。 2 , 3 号が 1 号を真似て、やみくもに足元をつついても、ロに入るのは だろう。「平和」とは、生存環境が整備され、資源の供給が充分になったにも関わらず、本能のまま オガ屑ばかりであった。しかし、そのうち偶然にか小さな粒餌がロに入ったのだろう ( そして美味し 無益な競争を続けていては全体の利益よりも損失の方が大きいと判断されたとき、比較的に過激 かったのだろう ) 、以後は 2 , 3 号も的確に粒餌だけを拾って食べるようになった。 な競争が ( 組織化され洗練された、より強力な暴力その他の圧力によって ) 抑制された状態を指す 私はそのとき、「あらかじめ遺伝子が保有している情報と自らの体験を照合して、適切な行動を だけのことではないのか。餌を充分に得られる動物園でライオンがシマウマを食い殺せば問題に 会得する」と、「他者の行動を観察し、それを模倣して適切な行動を会得する」という、 2 つの学習 なるが、 ( その非暴力を支えているのは、コンクリートと鋼鉄で作られた檻であり、人間によって安定 行動が成立する、その瞬間を目撃したのである。それはまるで、歴史的な事件を目撃したかのよう 供給される、別の動植物の犠牲である。 ) 野生のサバンナでは殺し合いは放置されており、それに な感動であった。 干渉する方がかえって問題視される。善と悪との境界は、当事者達が置かれた環境によって変化 するのであって、それ自体が確固として存在できるものではないのだろう。 こうして私が練り餌を与える のではなく、ヒナ自らが粒餌 さて、ある日、仕事から帰ると一羽が、床の上に立っていた。つまりガラスの水槽の外に、である。 を食べるようになると 1 ~ 3 号 水槽の上にはプラスチックの蓋がしてある・・・。私は、自分の脳内の血流量が増しているのを感じ の体格の差は益々はっきりと ていた。スズメの肉体がガラスを透過したのか ? つまり、テレポーテーションか ? してきた。旺盛な食欲に任せ 私がスズメの雛と思って育てていたのは、実は異世界からやって来た謎の生物だったのだろうか。 て盛んにエサを食べる 1 号と、 しかし、よく見れば、プラスチックの蓋の角には、小さな切欠きがある。・・・飛んだ、ということか ? それほどでもない 3 号の格差 いやはや、動物の成長は速いものである。雛達を野生に返すことを前提にして育てていた私は、 は、もはや私が制御できない 厳しい自然界で生きて行けるように彼ら ( 彼女らかも知れないが ) を育ててやらねばならない。それ し、するべきでもない状態に には、雛達の遺伝子の発現に従って、その能力を最大限に伸長させる環境を用意するように努め なっていった。 なければならない。それがいよいよ、自由に飛び回れる広さがあって、かっ外敵に襲われたりケガ そんなある夜。バタバタと、 をしたりする心配のない場所を用意しなければならない段階に至ったようだ。そこで私は、出勤し 鳥籠から激しい羽音が聞こえ ている間、雛達をユニットバスの中に放すことにした。ュニットバスなら狭くて構造が単純なので、 てきた。すわ、 1 号による 3 号 雛達を水槽へ回収するのも容易だ。フンを散らかされても、シャワーで洗い流してしまえばよい。 へのイジメ ( というより「攻撃」、 迷い込んで溺れたりしないように、排水口には、あらかじめ雑巾を詰めて塞いでおくことにした。 もしくは「虐待」 ) かと身構えた 0 ! 3 、 009 / 05 / 30