23. 鶏の解体 ~ 手羽 ~ 本体から切り離した手羽の肘関節を切り離し、手羽を 2 つに分けます。 ところで、日本の適正人口は具体的には何人なのでしよう ? 私は人力で維持可能な最大限の 土地開発と生産収量で養える人数、つまり農業機械と化学肥料がなかった江戸時代末期の人口 が基準になると思います。輸出入を絶たれた最悪の状態でも日本国民は生存が可能だからです。 ⑨本体と手羽を切り離します。 2 本体と手羽を並べました。 24. 鶏の解体 ~ 笹身 ~ 鶏の本体を中央で切り分け、胸肉の内側に隠れている笹身を取り出します。笹身は、柔らかくて ちぎれやすいので、刃物の先で笹身の縁を囲むように切ったら、親指の爪を差し込んで、剥がす ようにすると、きれいに採れます。 ( 撮影の都合上、①④と②③は別の鶏の写真を使いました。その ため、①④は右側、②③は左側の胸肉を切り取っています。 ) ① 胸の中央を切り開きます。 1 胸肉の中央に刃先を突き刺し、縦に走って いる胸骨の稜線に沿って、胸肉を切り開き ます。 ⑩手羽の肘関節を切り離します。 1 本体から切り離した手羽の肘関節の隙間に、 刃先を刺し込みます。 ② 胸の中央を切り開きます。 2 ①で現れた胸骨の稜線の左右どちらかの側 に刃先を沿わせます。 深さ 1 センチほど刃先を刺し込み、深さを 保ったまま、胸肉を切り開きます。 胸肉の下に隠されている笹身を傷付けない ためです。 ③ 笹身を露出させます。 ②で入れた切れ目に指先を差し込んで胸骨 から胸肉を剥がすと、胸肉の内側に隠れて いた笹身が現れます。 笹の葉に形が似ているので、笹身と呼ばれ るようです。 ④ 笹身を露出しました。 胸肉の下に隠れていた笹身が現れました。 胸骨の稜線と胸肉の間に、笹身があること が分かります。 ⑩手羽の肘関節を切り離します。 2 手羽を肘関節から、手羽元と手羽先の 2 っ に切り離します。 0 ⑩手羽を 2 つに切り離します。 手羽が手羽元と手羽先の 2 つに切り離され ました。 左側の手羽元が、いわゆる「チューリップ」 です。
26. 鶏の解体 ~ 胸肉・鶏ガラ ~ 鶏の本体から左右の胸肉を切り離します。 ( → ) 、犠牲になられた方々がより強く望むのは、同様の悲劇を繰り返さないことと、その教訓を私 達の今現在の生き方に直接、反映させ続けることではないでしようか ? 私は自衛隊での訓練中、 配給された食料を前にする度に、サイバンで戦死した祖母の弟さんの最後の食事を想うのです。 ⑨ 本体から胸肉を引き剥がします。 2 本体の骨格と胸肉の隙間に差し込んだ親指 の先を下腹の方へ進めて、骨盤から胸肉を 引き剥がします。 25. 鶏の解体 ~ 笹身・胸肉 ~ 鶏の本体から左右の笹身と胸肉を片方ずっ切り取ります。 私が食べ物のありがたさを感じる機会の一つは歴史書を読むときです。特に、それなりに食糧の 安定供給に成功していた明治以降の日本社会が飢餓地獄に突き落とされた ( というより、自ら落ち 込んでいった ) 大東亜戦争の記録は酷烈です。戦没者を慰霊する行事も大事ではありますが ( → ) ⑤笹身を胸骨から切り離します。 笹身は胸骨の稜線下の L 字形の溝に沿って 貼り付いています。 笹身を傷付けないように注意しながら刃先 と指先を使って、胸骨から笹身を剥がし、 取り出します。 ⑥笹身を取り出しました。 笹身は脂身の少ない、あっさりとした淡白 な味です。 ⑩ 本体から胸肉を引き剥がします。 3 本体の骨格と胸肉の隙間に差し込んだ親指 の先を首の方へ進めて、肩甲骨・肋骨から 胸肉を引き剥がします。 ⑩ 骨格から肉が取り去られました。 これまでの作業で、本体から四肢と主要な 肉を取り去った結果、骨格と、その表面に こびり付いた肉片しか残りません。 残った鶏ガラもスープの出汁を取るなどに 有効活用したいものです。 ⑩ 鶏ガラ・胸肉・笹身に分けました。 左から鶏ガラ、胸肉、笹身の順に並べまし どれも、それぞれに特徴があって美味しい 味がします。 以上で屠殺と解体の説明を終わります。 ⑦背筋に切れ目を入れます。 背筋に沿って、腰骨の上端から首の付け根 まで切れ目を入れます。 これは、本体から両脚を切り取る前の準備 と同じく、本体力ら胸肉を切り取りやすく するための準備す。 ⑧本体から胸肉を引き剥がします。 1 ⑦で入れた切れ目に親指の先を刺し込み、 肩甲骨や肋骨から胸肉を引き剥がします。
03. 鶏の屠殺 ~ 屠殺の準備 ~ これから、鶏を屠殺する前の準備について説明します。 回るので、翌日の作業直前まで、段ボールに入れたまま暗い部屋で保管しました。 ①鶏を吊るす紐を用意します。 鶏を逆さに吊るすための紐を用意します。 ここでは物干し竿に紐を結び付けて、下に 垂らしています。 04. 鶏の屠殺 ~ 屠殺の準備 ~ 逆さ吊りにした鶏の頸動脈を切って放血したら、すぐに鶏の体をお湯に浸けて温めてから、羽毛 をむしり取ります。お湯の温度は 60 ~ 70 ℃に調節しておき、沸騰させてはいけません。また、温め た体が冷えないうちに、全身の羽毛を手早く、もれなく引き抜かなくてはなりません。 鶏の体は、尖った部分が多いので、手のケガの予防に軍手を用意しておきましよう。 ⑤ 鶏を温めるお湯を用意します。 屠殺した鶏を温めて、羽毛をむしりやすく するためのお湯を用意します。 鶏の体が入る大きめ ( 直径 30 センチ位 ) の 鍋にたつぶりとお湯を沸かし、ガスコンロ や石油ストープ等で 60 ~ 70 ℃の温度に保温 しておきます。 お湯の温度が高過ぎると、浸けた鶏の皮膚 が柔らかくなり過ぎて、羽毛を抜くときに 破れたり、脂分が抜けてパサバサに乾燥し、 美味しさが損なわれます。 なので熱湯では不適当ですし、 60 ~ 70 ℃の 微妙な温度を正確に保つには、料理用温度 計が必要です。 私は、なるべく美味しい調理法を追求し、 かっ、できた料理に不服を言わずに残さず 食べるのが犠牲への敬意だと考えています。 ⑥ 鶏を用意します。 今回、屠殺した鶏は、卵を産まなくなった ものを養鶏場からいただきました。 鶏を輸送し、屠殺まで半日 ~ 1 日ほど保管 するには、段ボール箱に入れておくとよい でしよう。底に新聞紙を敷き、蓋を閉じて 暗くしておくと、おとなしくなります。 また、適度に狭い方が暴れません。 もし鶏が興奮して暴れると、体内に残った 卵が割れ、破片による傷害で、鶏が死んで しまう場合もあります。 鶏を入れた段ボール箱は暗くて静かな場所 に置いておくようにしましよう。 ただし実際には食品衛生の問題から、今日 では、部外者が養鶏場から生きた鶏を直接 調達するのは、簡単ではないようです。 ②真下に新聞紙などを敷きます。 血液が飛び散ったときのために、鶏を吊る す紐の真下に新聞紙等を敷いておきます。 風で吹き飛ばされないように、敷物の四隅 はガムテープで留めます。 実際には、それほど大量の血液が飛び散る わけではありませんが、血の痕を嫌がる人 も多いと思われるので、一応の配慮として 書き留めておきました。 ③血液を回収するポリ袋を用意します。 鶏の全体を包めるほどの大きさのポリ袋を 用意します。ポリ袋の底には、血液を吸い 取るためのボロ布を入れておきます。 このポリ袋は鶏の体からむしり取った羽毛 を回収するのにも便利ですので、必ず用意 しましよう。 ④屠殺する場所の全景です。 上記① ~ ③まで説明した、鶏の屠殺を行う 場所の全景です。 今回の撮影によって、結果的に、③のポリ 袋を使えば、②の敷物は敷かなくてもよい ことが分かりました。 1
08. 鶏の屠殺 ~ 屠殺の実行 ~ 私の経験では、未経験で最初から鶏を殺せる人は少ないようです。上手か下手かということでは なく、殺す作業自体から遠ざかろうする人が大多数で、作業の直前までは、いろいろとウンチクを 語っていた人ほど、いざ実行となると、その場からさり気なくフェードアウトして行きます。 ( なのに 作業が終わって「鶏」が「食肉」になってしまうと、近寄ってきて、美味しいと言って食べます。 ) ③ 鶏の頸動脈を切ります。 写真のように、鶏の血の量はそれほど多く ありません。とはいえポリ袋の中にタオル 一枚分くらいの量のボロ布を入れておくと、 血が吸収されて後始末が楽になります。 鶏の腸内には雑菌が大量に存在しています し、家畜の中でも鶏の肉は腐敗しやすいの で、以後の解体から冷蔵庫に収めるまでは、 ②鶏の頸動脈を切ります。 鶏の細長い首の内部には、首の骨と筋肉の 本体があり、柔らかくて弾力のある食道と 頸動脈が本体に沿って通っており、これら を柔らかい皮が緩やかに包んでいます。 ですから、首筋に刃物を当てただけでは、 表面の皮と頸動脈がグニャグニヤと動いて しまうので、血管を的確に切ることはでき ません。 ④ 紐をほどきます。 首の本体を傷付けてしまうと、脳と心臓を 両の足首と羽根の付け根を縛っていた紐を つなぐ中枢神経が切断されて心臓の拍動が ほどきます。 停止し、体内の血液が十分に放出されなく 血を吸わせるボロ布をポリ袋に入れ、手に なるので、肉の味が血生臭くなってしまい 軍手をはめておけば、手が血でベトベトに ます。 なって扱いづらくなることがありません。 そこで、鶏の喉元の皮をつまんで切り開き、 切れ目に指先を差し込んで左右の頸動脈を 手前に引き出してから切断しましよう。 ⑤ 鶏の体をお湯に浸けます。 今回の作業では小型ナイフを使いましたが、 料理用ハサミの方が、作業がしやすいかも 用意しておいた 60 ~ 70 ℃のお湯に、 30 秒 ~ 知れません。 60 秒間、鶏の体を浸けます。 両足の先をつかんで、全身が満遍なくお湯 鶏は体も心臓も小さいので、動脈を切って で温まるように、ゆっくりと動かします。 も大量の血液が噴水のように吹き出すわけ ではありません。 しかし血液が抜けきるまでの間、しばらく は暴れるので、やはり、ポリ袋で包むのが 最もよい方法でしよう。 07. 鶏の屠殺 ~ 屠殺の実行 ~ 鶏の喉元の頸動脈を切り、血液を抜いて屠殺します。鶏の首は自由に動かせるように、細長くて 柔らかい皮袋の中を筋骨と食道と頸動脈が通っているような構造になっています。なので、喉に刃 を当てて引いただけは、表面の柔らかい皮が刃と一緒に横へズレるので、頸動脈を掻き切ることが できません。そこで、いったん喉の皮に切れ目を入れて、頸動脈を引きずり出してから切断します。 ①お湯の温度を再確認します。 屠殺した鶏は、すぐにお湯に浸けて羽毛を むしり取らなければなりません。 なので、放血する直前に鍋をストープから 下ろし、料理用温度計でお湯の温度が 60 ~ 70 ℃であることを再確認します。 1
09. 鶏の屠殺 ~ 屠殺の実行 ~ 死んだ鶏の消化管の中には、未消化のエサや糞が詰まっており、腸内細菌が存在しています。 そして、鶏の体温の残りや気温によって細菌は活動を続け、腐敗が始まります。ですからもし、この 後に続く解体がすぐにできないようでしたら、取り敢えず羽毛をすべて取り除いてしまい、鶏の体を 新しいポリ袋に入れて、丸ごと冷蔵庫に入れて冷やし、なるべく早いうちに解体を再開しましよう。 ⑥鶏の体をお湯に浸けます。 お湯の温度と同じく、お湯に浸ける時間も キッチンタイマーなどを使って、 30 秒 ~ 60 秒間を正確に守りましよう。これより短い と羽毛が抜けず、これより長いと鶏の皮膚 が柔らかくなり過ぎたり、脂分が抜けて、 食感がパサバサになってしまいます。 ⑦お湯から引き上げます。 鶏の体をお湯から引き上げて、羽毛を抜く 場所へ移動させます。ここでも、ポリ袋を 使うと、余分なお湯や血液の残りが周囲に 飛び散らず、ボロ布に吸い取られて作業が しやすくなります。 10. 鶏の解体 ~ 解体の準備 ~ これから、鶏の体を各部分ごとに解体して行きます。作業中は刃物を握る手が脂と体液でベト ベトになり、滑りやすくなって危険です。手元にタオルを 2 ~ 3 枚用意して、小まめに手 と刃物の柄の汚れを拭き取りながら作業を進めましよう。また、切れない刃物の方が切る ときに余分な力が入って危険ですので、よく研いでおくようにしましよう。 ① 鶏の体をまな板の上に置きます。 鶏の体をまな板の上に置きます。 これからの作業では、刃物を握る手が脂と 体液でベトベトになって、滑りやすくなり ます。 なので、手元にタオルを 2 ~ 3 枚用意して 、小まめに手と刃物の柄の汚れを拭き取り ながら作業を進めましよう。 ② 頭部を切り落とします。 頭部は食用にならないので切り落とします。 首の骨は太くて固いので、無理に切ろうと すると刃が欠けてしまいます。なので、指 の先で骨の継ぎ目を探り当て、そこに刃先 を差し込んで、軟骨の感触を確かめながら 深く刃を入れて切り落としましよう。 ⑧羽毛をむしり取ります。 ポリ袋の中で、羽毛をむしり取ります。 お湯で温まった鶏の体が冷えないうちに 手早く、よどみなく作業を進めましよう。 手羽の固くて太い羽根は、生えている方向 に向けてまっすぐに引き抜きます。 それ以外の全身の細かい羽毛は、首から足 の先に向かって斜めに生えているので、逆 方向 ( 足先から首の方向 ) へ向かって引き ちぎるように引っ張ると、早く、きれいに 抜けます。 皮を食べたとき、ロの中に毛が引っ掛かる と気持ちが悪いので、できるだけ丹念に 細かい毛まで全て取り除きましよう。 ③ 肛門の周囲を切り開きます。 肛門の周囲を広めに切り落とすようにする と、アーチ形に体内への入り口が開けます。 肛門の裏には大腸がつながっていて、中に は糞便が詰まっていますので、この段階で は大腸を切り離さないようすると、周囲や 他の内臓を汚さずに作業ができます。 ④ 肛門の周囲を広げます。 この後から、手を体内に差し込んで、内臓 を取り出します。 まずは肛門の周囲を広げて、体内の状態や 内臓の配置を確かめます。 写真の黄色いものは、内臓脂肪です。
ことわり ことわり 27. スス、メのいた日々 ~ 雛達が教えてくれた摂理 ~ 28. スズメのいた日々 ~ 雛達が教えてくれた摂理 ~ さて、本書の冒頭から凄惨な表現が続いたので、ここでは少し、心和む話題を提供したいと思う。 で生育日記を掲載でもしたら、一躍アクセスが集中したことだろう。あるいは「スズメのチュン」が本 しかし読み進めるにつれて、「狭い人間社会において、善とされているものも悪とされているものも になるくらいだから、ビデオカメラで克明な記録を残しておけば、後になって DVD 付の癒し系人気 、広い自然界においては等価である。」という事実が浮かび上がって来るであろう。 書籍を執筆することも可能だったかも知れない。 しかし、そんな野望を膨らませる、というより思い付く余地すら時間的にも精神的にも皆無だった。 以前、巣から落ちたスズメの雛 3 羽を拾って育てたことがあった。会社の施設のコンクリートの上 ともかくその日一日、雛達を死なせないことに全力を傾注する以外、何も考えられなかったのだ。 で、よたよたと這い回っているところを保護したのだ。どうにか目は開いているものの、まだうぶ毛 ( 夜泣きはするし。 ) だから、文中に掲載した写真を撮ったのは、ようやく二本足で水槽の中を動き すら生えそろっていない、鳥というよりトカゲに近い姿であった。なるほど、鳥類は爬虫類から進化 回るようになった、数日後のことであった。 したので、未熟な状態では前身の特徴が顕われているわけだと実感した。 「子育て」って大変なんですね・・・。思い知りました。 会社帰りに閉店間際のホームセンターに滑り込み、店内のペットショップでガラスの水槽とオガ 私は、拾った雛達をベットにしたくはなかった。スズメは自然に帰って、そこで生き、子孫を残して 屑と電熱ヒーターと練り餌を買った。そして家に帰って、練り餌の粉をぬるま湯に解き、楊枝の先に 天寿を全うしてほしいと考えていた。だから敢えて雛達には名前を付けず、体の大きさの順に番号 付け、それを雛の鼻先に突き出してみた。が、食べない。食べ物だと認識できていないのだ。 で呼んでいた。名前など付けようものなら、きっと情が移って、手放せなくなってしまうだろうからだ。 仕方がないので雛の体を手の中に包み、背後から頭越しに人差指で上のクチバシを吊り上げて ホームセンター内のペットショップで聞いたところでは、スズメは人に慣れにくいとのことだったが、 無理矢理に口を開かせた。そうして楊枝の先端を舌に触れさせると、細い小さな舌で練り餌を絡め 私には、それはかえって好都合だった。野生に放した後で家の周りをうろうろされたり、下手に人と 取って飲み込むようになった。しばらくすると、練り餌のにおいと満腹感を関連付けたのかも知れな 馴れ合って、人家にある危険なもの ( 機械類や幼児やペット動物 ) への警戒感が薄いような個体に い、鼻先に楊枝を突き出すと、自分から首を伸ばして楊枝に付いた練り餌をしゃぶるようになった。 育ってしまったのでは、その後の生存が覚束ないし、同類に馴染めなくなってしまうからだ。 次に、ペットショップで教え ところで、小雀は可愛い一方の存在ではない。思いがけない陰惨な側面も持っているのだ。 られたとおり、四角いガラスの 私は、 3 羽が平等に育つように配慮していた。特に、与えるエサの量が均等になるように、回数を 水槽の底にオガ屑を敷き詰め 数えながらローテーションをしていた。しかしやがて、積極的な性格の者と、そうでない性格の者が 、電熱ヒーターを置き、雛達を 分化し始め、その格差は育つにつれて、次第に大きくなってきた。私がエサをやりに水槽に近付く 中に入れた。が、充分に快適 と、体の大きな個体 1 号は前に出て来るが、体の小さな個体 3 号はあまり動こうとしないのだ。 なはずなのに、なぜか雛達の だから、水槽の中に練り餌を付けた楊枝を差し入れると、 1 号だけが全部を食べてしまう。これで 様子が落ち着かない。しきり はいつまで経っても、 3 号はエサにあり付けない。仕方がないので、私が一羽ずっ拾い上げて、手 にオガ屑を掘り返しては、頭 で包んでエサを口に運んでやることにした。そうしていると、エサを求めて手の中でもがく力が日毎 を突っ込む動作を繰り返すの に強くなっているのを感じたものだ。 だ。そのうち、ああ、と合点が いった私は、オガ屑をドーナ さてエサを与え終わった 3 号 ツ状に盛り上げて、その中央 を水槽の中に戻すと、体格の に雛達を据えてやった。する 大きな 1 号が戻ってきた小さな と雛達は、すぐに丸くなって 3 号をつつき回すのである。 眠ってしまった。 自分はもう充分にエサを食へ 無力な存在である雛達は、 ているにも関わらず、だ。 本来なら、丸い籠のような形 「何故か ? 」 の巣の中に身を隠すようにして住んでいる。そこでは、自分達の視界は巣の壁の内側に遮られて いる筈だ。なのに、広々と周囲を見渡せるということは、自分達の姿も外敵から見られてしまう危険 私が思うに、これは自分が な状態に置かれていることを意味する。それを雛達は本能的に察知して、周囲を見られない場所 満腹か空腹かに関らず、自分 以外の小さくておとなしい ( 気 / 、 に潜り込もうと必死になっていたのだ。それにしても、そうした生存に必要な情報が、あの生まれて 間もない小さな頭の中に既にインストールされ、命令を発しているとは、なかなか信じ難い。目には 弱な ) 個体をいじめることで、イ第 見えない神か精霊が、そうするようにと雛達に教えている、と考えた方が納得できるような気がした。 エサを食べなくなるように条件、・、 付けをしているのだ。 私はそれまで金魚しか飼った経験がなく、鳥に関しては全く無知だった。雛達を拾ったのは不意 これは、ショッキングなら なことだったので、気持ちとしても心構えができていない。しかも会社員で一人暮らしだったので、 日中は雛達を置いて会社に行かなければならない。家に帰るやエサやりと経過観察で手一杯で、 光景であった。 ネットや本で小鳥の雛の育て方について学習している余裕などは、まるでなかった。 いたいけな小雀、それも血を分けた兄弟間の段階で既に、強者が弱者を威圧して活動や生存を もしこのとき、プログ ( 当時ツィッターは未発達で、スマホは存在していなかった。 ) にリアルタイム 制限し、資源と覇権を独占しようとする、暴力による支配構造が発現しているのだ。 2 ・