03. 鶏の屠殺 ~ 屠殺の準備 ~ これから、鶏を屠殺する前の準備について説明します。 回るので、翌日の作業直前まで、段ボールに入れたまま暗い部屋で保管しました。 ①鶏を吊るす紐を用意します。 鶏を逆さに吊るすための紐を用意します。 ここでは物干し竿に紐を結び付けて、下に 垂らしています。 04. 鶏の屠殺 ~ 屠殺の準備 ~ 逆さ吊りにした鶏の頸動脈を切って放血したら、すぐに鶏の体をお湯に浸けて温めてから、羽毛 をむしり取ります。お湯の温度は 60 ~ 70 ℃に調節しておき、沸騰させてはいけません。また、温め た体が冷えないうちに、全身の羽毛を手早く、もれなく引き抜かなくてはなりません。 鶏の体は、尖った部分が多いので、手のケガの予防に軍手を用意しておきましよう。 ⑤ 鶏を温めるお湯を用意します。 屠殺した鶏を温めて、羽毛をむしりやすく するためのお湯を用意します。 鶏の体が入る大きめ ( 直径 30 センチ位 ) の 鍋にたつぶりとお湯を沸かし、ガスコンロ や石油ストープ等で 60 ~ 70 ℃の温度に保温 しておきます。 お湯の温度が高過ぎると、浸けた鶏の皮膚 が柔らかくなり過ぎて、羽毛を抜くときに 破れたり、脂分が抜けてパサバサに乾燥し、 美味しさが損なわれます。 なので熱湯では不適当ですし、 60 ~ 70 ℃の 微妙な温度を正確に保つには、料理用温度 計が必要です。 私は、なるべく美味しい調理法を追求し、 かっ、できた料理に不服を言わずに残さず 食べるのが犠牲への敬意だと考えています。 ⑥ 鶏を用意します。 今回、屠殺した鶏は、卵を産まなくなった ものを養鶏場からいただきました。 鶏を輸送し、屠殺まで半日 ~ 1 日ほど保管 するには、段ボール箱に入れておくとよい でしよう。底に新聞紙を敷き、蓋を閉じて 暗くしておくと、おとなしくなります。 また、適度に狭い方が暴れません。 もし鶏が興奮して暴れると、体内に残った 卵が割れ、破片による傷害で、鶏が死んで しまう場合もあります。 鶏を入れた段ボール箱は暗くて静かな場所 に置いておくようにしましよう。 ただし実際には食品衛生の問題から、今日 では、部外者が養鶏場から生きた鶏を直接 調達するのは、簡単ではないようです。 ②真下に新聞紙などを敷きます。 血液が飛び散ったときのために、鶏を吊る す紐の真下に新聞紙等を敷いておきます。 風で吹き飛ばされないように、敷物の四隅 はガムテープで留めます。 実際には、それほど大量の血液が飛び散る わけではありませんが、血の痕を嫌がる人 も多いと思われるので、一応の配慮として 書き留めておきました。 ③血液を回収するポリ袋を用意します。 鶏の全体を包めるほどの大きさのポリ袋を 用意します。ポリ袋の底には、血液を吸い 取るためのボロ布を入れておきます。 このポリ袋は鶏の体からむしり取った羽毛 を回収するのにも便利ですので、必ず用意 しましよう。 ④屠殺する場所の全景です。 上記① ~ ③まで説明した、鶏の屠殺を行う 場所の全景です。 今回の撮影によって、結果的に、③のポリ 袋を使えば、②の敷物は敷かなくてもよい ことが分かりました。 1
05. 鶏の屠殺 ~ 屠殺の準備 ~ 06. 鶏の屠殺 ~ 屠殺の準備 ~ いよいよ、鶏を屠殺します。鶏に無用な苦痛を与えたり、肉を食べられなくしてしまったり、美味し 鶏は、両足首と羽根の付け根を紐で縛れば、動けなくなります。そして、あらかじめ垂らしておい さを損なったりしないためにも、作業は手早く、よどみなく、正確に行うようにしましよう。 た紐と足首を結び合わせて、逆さ吊りにします更に、鶏の体全体を覆うようにポリ袋を被せます。 とはいえ実際には、いざとなると多くの人は、鶏くらいの大きさの生きた温血動物 ( つまり、人間と こうすると、頸動脈を切ったときに流れ出る血カ周囲に飛び散らないので、後始末が楽になります。 DNA が近縁な生物 ) を直接、刃物で殺して解体することに、ためらいを感じるようです。 実際の放血では、大量の血液が噴水のように吹き出るというわけではありません。 ⑦鶏を取り出します。 両の羽根の付け根を縛ります。 ⑩ 屠殺するため、鶏を段ボール箱から取り出 両の羽根の付け根を紐で縛ります。 します。 鶏のくちばしや爪、羽などは固くて鋭いの で、必ず軍手をはめて取り扱うようにしま しよう。 0 ヾ、 ⑩ 鶏を逆さに吊るします。 用意しておいた紐に、鶏の足を縛った紐を 結び合わせて、鶏を逆さに吊るします。 ⑧両方の脚を縛ります。 左右の足首を紐で結び合わせます。 ここでは特に、固くて鋭い爪でケガをする 可能性がありますので、必ず軍手をはめて 作業しましよう。 ⑩ 血液を回収するポリ袋を被せます。 垂直に垂らした紐に、ガムテープでポリ袋 の端を取り付けます。 こうすれば、鶏の頸動脈を切って放血して も血液が周囲に飛び散らず、速やかに回収 することができます。 ⑨両方の羽根を縛ります。 左右の羽根の付け根を握ってまとめます。 ここでも、固くて尖った羽根の先でケガを する可能性がありますので、必ず軍手をし ましよう。
08. 鶏の屠殺 ~ 屠殺の実行 ~ 私の経験では、未経験で最初から鶏を殺せる人は少ないようです。上手か下手かということでは なく、殺す作業自体から遠ざかろうする人が大多数で、作業の直前までは、いろいろとウンチクを 語っていた人ほど、いざ実行となると、その場からさり気なくフェードアウトして行きます。 ( なのに 作業が終わって「鶏」が「食肉」になってしまうと、近寄ってきて、美味しいと言って食べます。 ) ③ 鶏の頸動脈を切ります。 写真のように、鶏の血の量はそれほど多く ありません。とはいえポリ袋の中にタオル 一枚分くらいの量のボロ布を入れておくと、 血が吸収されて後始末が楽になります。 鶏の腸内には雑菌が大量に存在しています し、家畜の中でも鶏の肉は腐敗しやすいの で、以後の解体から冷蔵庫に収めるまでは、 ②鶏の頸動脈を切ります。 鶏の細長い首の内部には、首の骨と筋肉の 本体があり、柔らかくて弾力のある食道と 頸動脈が本体に沿って通っており、これら を柔らかい皮が緩やかに包んでいます。 ですから、首筋に刃物を当てただけでは、 表面の皮と頸動脈がグニャグニヤと動いて しまうので、血管を的確に切ることはでき ません。 ④ 紐をほどきます。 首の本体を傷付けてしまうと、脳と心臓を 両の足首と羽根の付け根を縛っていた紐を つなぐ中枢神経が切断されて心臓の拍動が ほどきます。 停止し、体内の血液が十分に放出されなく 血を吸わせるボロ布をポリ袋に入れ、手に なるので、肉の味が血生臭くなってしまい 軍手をはめておけば、手が血でベトベトに ます。 なって扱いづらくなることがありません。 そこで、鶏の喉元の皮をつまんで切り開き、 切れ目に指先を差し込んで左右の頸動脈を 手前に引き出してから切断しましよう。 ⑤ 鶏の体をお湯に浸けます。 今回の作業では小型ナイフを使いましたが、 料理用ハサミの方が、作業がしやすいかも 用意しておいた 60 ~ 70 ℃のお湯に、 30 秒 ~ 知れません。 60 秒間、鶏の体を浸けます。 両足の先をつかんで、全身が満遍なくお湯 鶏は体も心臓も小さいので、動脈を切って で温まるように、ゆっくりと動かします。 も大量の血液が噴水のように吹き出すわけ ではありません。 しかし血液が抜けきるまでの間、しばらく は暴れるので、やはり、ポリ袋で包むのが 最もよい方法でしよう。 07. 鶏の屠殺 ~ 屠殺の実行 ~ 鶏の喉元の頸動脈を切り、血液を抜いて屠殺します。鶏の首は自由に動かせるように、細長くて 柔らかい皮袋の中を筋骨と食道と頸動脈が通っているような構造になっています。なので、喉に刃 を当てて引いただけは、表面の柔らかい皮が刃と一緒に横へズレるので、頸動脈を掻き切ることが できません。そこで、いったん喉の皮に切れ目を入れて、頸動脈を引きずり出してから切断します。 ①お湯の温度を再確認します。 屠殺した鶏は、すぐにお湯に浸けて羽毛を むしり取らなければなりません。 なので、放血する直前に鍋をストープから 下ろし、料理用温度計でお湯の温度が 60 ~ 70 ℃であることを再確認します。 1
13. 鶏の解体 ~ ボンジリ ~ これから、鶏の体を各部分ごとに解体して行きます。 まず、鶏の尻尾であるボンジリを本体から切り取ります。次に、下半身の背筋 ( 人間の体で言え ば、お尻の割れ目 ) に切れ込みを入れます。後の工程で両脚を本体から切り離すとき、この切れ 込みを境にして、両脚が左右に分かれて骨盤から離れます。 ①鶏の体をうっ伏せに寝かせます 首と両脚をつかんで、鶏の体をうっ伏せに 寝かせます。 14. 鶏の解体 ~ 食道 ~ 鶏の体を仰向けに寝かせます。喉元の皮を切り開き、食用にならない食道を指で吊り出します。 そして、喉元で切断し、捨てます。 ( 撮影の都合上、① ~ ③と、④は別の鶏の写真を使いました。そのため、④にだけ、頭がついた ままになっています。 ) ① 鶏の体を仰向けに寝かせます。 鶏の体を仰向けに寝かせます。 ② 喉元の皮を切り開きます。 1 食用にならない食道を取り除くため、喉元 の皮を指でつまみ上げ、刃を当てます。 ②ボンジリを切り取ります。 鶏の尻尾であるボンジリを切り取ります。 これは脂肪の塊で、焼いて食べると柔らか くて美味しいです。 ③ 喉元の皮を切り開きます。 2 指でつまみ上げた喉元の皮を切り開きます。 すると、皮の下に筋肉や内臓が見えます。 ③背筋の下半分に切れ目を入れます。 骨盤の上端の皮に刃先を突き刺します。 そしてボンジリの切り口の中央に向かって、 背筋に沿って、まっすぐに切れ目を入れ ます。 これは、本体から両脚を切り離しやすく するための準備です。 ④ 食道を切り取ります。 赤くてやや太い、 ミズのような器官が 食道です。 これは食用にならないので、指先を下側に 差し込んで皮の切れ目から吊り出し、長い 首から引き抜きます。 そして喉元で切断して、捨てます。 ヾ、
09. 鶏の屠殺 ~ 屠殺の実行 ~ 死んだ鶏の消化管の中には、未消化のエサや糞が詰まっており、腸内細菌が存在しています。 そして、鶏の体温の残りや気温によって細菌は活動を続け、腐敗が始まります。ですからもし、この 後に続く解体がすぐにできないようでしたら、取り敢えず羽毛をすべて取り除いてしまい、鶏の体を 新しいポリ袋に入れて、丸ごと冷蔵庫に入れて冷やし、なるべく早いうちに解体を再開しましよう。 ⑥鶏の体をお湯に浸けます。 お湯の温度と同じく、お湯に浸ける時間も キッチンタイマーなどを使って、 30 秒 ~ 60 秒間を正確に守りましよう。これより短い と羽毛が抜けず、これより長いと鶏の皮膚 が柔らかくなり過ぎたり、脂分が抜けて、 食感がパサバサになってしまいます。 ⑦お湯から引き上げます。 鶏の体をお湯から引き上げて、羽毛を抜く 場所へ移動させます。ここでも、ポリ袋を 使うと、余分なお湯や血液の残りが周囲に 飛び散らず、ボロ布に吸い取られて作業が しやすくなります。 10. 鶏の解体 ~ 解体の準備 ~ これから、鶏の体を各部分ごとに解体して行きます。作業中は刃物を握る手が脂と体液でベト ベトになり、滑りやすくなって危険です。手元にタオルを 2 ~ 3 枚用意して、小まめに手 と刃物の柄の汚れを拭き取りながら作業を進めましよう。また、切れない刃物の方が切る ときに余分な力が入って危険ですので、よく研いでおくようにしましよう。 ① 鶏の体をまな板の上に置きます。 鶏の体をまな板の上に置きます。 これからの作業では、刃物を握る手が脂と 体液でベトベトになって、滑りやすくなり ます。 なので、手元にタオルを 2 ~ 3 枚用意して 、小まめに手と刃物の柄の汚れを拭き取り ながら作業を進めましよう。 ② 頭部を切り落とします。 頭部は食用にならないので切り落とします。 首の骨は太くて固いので、無理に切ろうと すると刃が欠けてしまいます。なので、指 の先で骨の継ぎ目を探り当て、そこに刃先 を差し込んで、軟骨の感触を確かめながら 深く刃を入れて切り落としましよう。 ⑧羽毛をむしり取ります。 ポリ袋の中で、羽毛をむしり取ります。 お湯で温まった鶏の体が冷えないうちに 手早く、よどみなく作業を進めましよう。 手羽の固くて太い羽根は、生えている方向 に向けてまっすぐに引き抜きます。 それ以外の全身の細かい羽毛は、首から足 の先に向かって斜めに生えているので、逆 方向 ( 足先から首の方向 ) へ向かって引き ちぎるように引っ張ると、早く、きれいに 抜けます。 皮を食べたとき、ロの中に毛が引っ掛かる と気持ちが悪いので、できるだけ丹念に 細かい毛まで全て取り除きましよう。 ③ 肛門の周囲を切り開きます。 肛門の周囲を広めに切り落とすようにする と、アーチ形に体内への入り口が開けます。 肛門の裏には大腸がつながっていて、中に は糞便が詰まっていますので、この段階で は大腸を切り離さないようすると、周囲や 他の内臓を汚さずに作業ができます。 ④ 肛門の周囲を広げます。 この後から、手を体内に差し込んで、内臓 を取り出します。 まずは肛門の周囲を広げて、体内の状態や 内臓の配置を確かめます。 写真の黄色いものは、内臓脂肪です。
12. 鶏の解体 ~ 内臓 ~ 一般に、料理を効率よく行うには、刃物の良否が重要です。私はステンレス製ではなく、鋼鉄製 の大小 2 本の包丁を使っています。大きい方は普通と同じくらいで、小さい方は「ペティナイフ」と 呼ばれるタイプです。鋼鉄製の包丁は、水滴がひと粒付いただけで、すぐに腐食が始まるので、 一回切る度に布巾で水気を拭き取らなければならない面倒さはありますが、切れ味は抜群です。 ②鶏の体内から内臓を引き出します。 0 0 内臓の構造が理解しやすいよう、取り出し た内臓をプロックごとに並べました。 左上角から、赤黒いのが心臓、オレンジ色 の玉が卵黄、その下が砂肝・肝臓・胆のう 、その右が輸卵管、右端が小腸・大腸です。 肝臓は美味しいのですが、柔らくてもろい ので、体内から取り出す時にグチャグチャ に崩れないように注意しましよう。 右の写真の、ホッキ貝のような臓器が砂肝 ( すなぎも ) です。食道と胃の中間にあり 、歯を持たない鶏は胃に負担がかからない よう、飲み込んだ固い食べ物をこれですり 潰すのです。そのため、砂肝は分厚い筋肉 の塊であり、消化管が中を通っています。 砂肝を切って、中の消化管と未消化のエサ を取り除き、焼いて食べると美味しいです。 一般に、よく活用されて発達した筋肉は、 美味しいものです。 右の写真の臓器は、鶏の心臓で、いわゆる ハツです。これも食べられます。 ただし放血が不十分だと、血生臭いゼリー 状の血の塊が中に残って、後味が悪くなる ので注意しましよう。 11. 鶏の解体 ~ 内臓 ~ 屠殺したばかりの鶏をすぐに解体すると、まだ鶏の肉や内臓に温かさと柔らかさが残っています。 それはちょうど、自分が愛する人や赤ちゃんやペット動物の温かさや柔らかさとそっくりだということ に気付きます。そうして、食肉用に殺される家畜と、自分が愛すべき対象との間には、何の区別も ないのだ、ということを体感するだけでも、人生に対して深く、大きな意味があると私は思います。 ①鶏の体内から内臓を引き出します。 肛門の周囲から鶏の体内に手を差し込んで、 体壁に沿って指を進めます。すると体内の 薄い筋膜が破れて、内臓が体壁からはがれ 始めます。 大腸をつかんで、ゆっくりと引きずり出す と、それに連れて他の内臓も一塊になって 外へ出て来ます。 指で指した緑色の臓器が胆のうです。これ を破ってしまうと、中に入った胆汁が肉や 他の臓器に着いて、苦くなってしまいます ので気を付けましよう。 これは食用にはなりません。 胆のうの周囲の茶色い臓器が肝臓です。 生で食べると、プリンのような食感とウニ のような旨味が味わえます。 黄色い玉は卵の黄身です。鶏の場合、輸卵 管の中にはいくつもの黄身が入っていて、 順次送り出されるに連れて周囲に固い殻が 着き、体外へと産み落とされるのです。 右の写真の中央に、一番大きな黄身が輸卵 管の中に入っているのが見えます。 卵の黄身も食べられますが、破れやすいの で、気を付けて扱いましよう。 あるいは、さっとお湯に通して表面を固め ると、美味しく食べられます。 日本国内の専門的な養鶏場では、感染症に よる危険や損失を防ぐため、衛生的に管理 された環境で鶏を育てていますので、内臓 を生食することも可能でしよう。 しかし、衛生的に不安のある環境で育った 動物は、寄生虫、細菌、ウイルス等に感染 していると考えるべきであり、健康に自信 のある人でも、生食は避けるべきでしよう。 内臓を取り出した後の体内の様子を展示し ました。 この鶏は、栄養を十分に与えて飼育された ようで、体壁に黄色い内臓脂肪が、分厚く 残っています。 この後、精肉店に並んでいるような分類で 鶏の体の各部分の肉を切り取っていきます。
26. 鶏の解体 ~ 胸肉・鶏ガラ ~ 鶏の本体から左右の胸肉を切り離します。 ( → ) 、犠牲になられた方々がより強く望むのは、同様の悲劇を繰り返さないことと、その教訓を私 達の今現在の生き方に直接、反映させ続けることではないでしようか ? 私は自衛隊での訓練中、 配給された食料を前にする度に、サイバンで戦死した祖母の弟さんの最後の食事を想うのです。 ⑨ 本体から胸肉を引き剥がします。 2 本体の骨格と胸肉の隙間に差し込んだ親指 の先を下腹の方へ進めて、骨盤から胸肉を 引き剥がします。 25. 鶏の解体 ~ 笹身・胸肉 ~ 鶏の本体から左右の笹身と胸肉を片方ずっ切り取ります。 私が食べ物のありがたさを感じる機会の一つは歴史書を読むときです。特に、それなりに食糧の 安定供給に成功していた明治以降の日本社会が飢餓地獄に突き落とされた ( というより、自ら落ち 込んでいった ) 大東亜戦争の記録は酷烈です。戦没者を慰霊する行事も大事ではありますが ( → ) ⑤笹身を胸骨から切り離します。 笹身は胸骨の稜線下の L 字形の溝に沿って 貼り付いています。 笹身を傷付けないように注意しながら刃先 と指先を使って、胸骨から笹身を剥がし、 取り出します。 ⑥笹身を取り出しました。 笹身は脂身の少ない、あっさりとした淡白 な味です。 ⑩ 本体から胸肉を引き剥がします。 3 本体の骨格と胸肉の隙間に差し込んだ親指 の先を首の方へ進めて、肩甲骨・肋骨から 胸肉を引き剥がします。 ⑩ 骨格から肉が取り去られました。 これまでの作業で、本体から四肢と主要な 肉を取り去った結果、骨格と、その表面に こびり付いた肉片しか残りません。 残った鶏ガラもスープの出汁を取るなどに 有効活用したいものです。 ⑩ 鶏ガラ・胸肉・笹身に分けました。 左から鶏ガラ、胸肉、笹身の順に並べまし どれも、それぞれに特徴があって美味しい 味がします。 以上で屠殺と解体の説明を終わります。 ⑦背筋に切れ目を入れます。 背筋に沿って、腰骨の上端から首の付け根 まで切れ目を入れます。 これは、本体から両脚を切り取る前の準備 と同じく、本体力ら胸肉を切り取りやすく するための準備す。 ⑧本体から胸肉を引き剥がします。 1 ⑦で入れた切れ目に親指の先を刺し込み、 肩甲骨や肋骨から胸肉を引き剥がします。
17. 鶏の解体 ~ 腿肉 ~ 鶏の本体から切り離した両脚から、太腿と脛の骨を取り除きます。 脚の中を通る骨や関節周辺の軟骨は、筋肉にびったりと貼り付いているので、刃物の先を当て て丹念に削ぎ落としましよう。生きた鶏の血を抜いて殺すところから作業を始めてこそ、ひとかけら の肉も無駄にするべきではない、という気持ちが実感できるようになると、私は思います。 球体をつかみます。 本体と太腿をつなげていた、股関節の白い ⑦股関節をつかみます。 股関節から太腿の骨のカープに沿って刃先 ⑧太腿の肉を切り開きます。 ⑩膝関節を露出させます。 骨を露出させます。 骨側に残った肉を削ぎ落としながら、太腿 ⑨太腿の骨を露出させます。 の肉を切り開きます。 を進め、太腿の骨が露出するように、太腿 膝関節を露出させます。 堅い腱や細かな骨を肉から削ぎ取りながら、 膝関節まで刃先が達したら、膝関節周辺の 18. 鶏の解体 ~ 腿肉 ~ 太腿の骨、膝関節に続いて、脛の骨を露出させます。膝関節の隙間に刃先を差し込んで切断し 、ある程度、大きく抉り取らなくてはなりません。この部分の構造の複雑さからして、膝は鶏にとって 、太腿の骨を取り除きます。膝の関節の周囲は、細かい軟骨や骨片、腱の筋で覆われているので ⑩脛の骨を露出させます。 2 を刺し込み、脛の骨を露出させます。 その下に続く脛の骨のカープに沿って、刃 白く見える球体が膝関節です。 ⑩脛の骨を露出させます。 1 重要な器官であると想像できます。 次に、その先の脛の骨を取り除きます。 脚から太腿の骨を取り除いたところです。 ⑩太腿の骨を取り除きました。 つなげている軟骨や腱を切り離します。 膝関節の隙間に刃先を刺し込み、関節を ⑩膝関節を切り離します。 開きます。 脛の骨に沿って刃を進め、太腿の肉を切り 太腿の骨と同様に、刃先と指先の感覚で、
19. 鶏の解体 ~ 腿肉 ~ 太腿の骨を取り除いたら、その先にある脛の骨を取り除きます。私が一番美味しいと思った中華 粥は、香港の九龍半島の奥側にある下町の食堂の 300 円のものでした。そこでは鶏の頭部や足の 先まで鍋に入れていて、溶け出したタンパク質でトロトロになっているのです。これは日本国内の 中華街の有名店でも及ばない美味しさでした。鶏に捨ててよい部分は、ほとんどないのでしよう。 の背を当てて、振り下ろして脛の骨を折り 脛の骨を露出させたら、踵の上の辺りに刃 ⑩脛の骨を折ります。 ⑩脛の骨を取り除きます。 1 折ります。 そして両手で折れ目の左右をつかんでヘし ます。 離します。 軟骨と共に、膝の関節を太腿の肉から切り 脛の骨が露出したら、周囲の堅い腱の筋や ⑩脛の骨を取り除きます。 2 させます。 に無駄なく削ぎ落しながら、脛の骨を露出 刃先と指先を使い、骨側に残った肉を丁寧 20. 鶏の解体 ~ 腿肉 ~ 脚の肉から、踵から先を切り離します。更に、脛の骨の脇にある、爪楊枝のような細い骨を 取り除けば、柔らかくて美味しい太腿の肉が採れます。 取り除いた骨や足の先は、冷凍保存しておき、時間のある時にじっくり煮込めば、有名 フーメン店並みのこだわりの出汁を取ることができますので、是非、試してみて下さい。 ⑩ ⑩ ⑩ 脚の肉から脛の骨を離します。 19 ページの①で、刃の背で叩き折った部分 から、脛を骨を取り除きます。 採れました。 こうして、柔らかくて美味しい太腿の肉が のような細い骨を取り除きます。 切り離し、更に脛の骨の脇にある、爪楊枝 太腿の骨と脛の骨を取り除き、踵から先を 太腿の肉が採れました。 脚の肉から切り離します。 叩き折った部分に刃を当てて、踵から先を 踵から先を脚の肉から切り離します。
23. 鶏の解体 ~ 手羽 ~ 本体から切り離した手羽の肘関節を切り離し、手羽を 2 つに分けます。 ところで、日本の適正人口は具体的には何人なのでしよう ? 私は人力で維持可能な最大限の 土地開発と生産収量で養える人数、つまり農業機械と化学肥料がなかった江戸時代末期の人口 が基準になると思います。輸出入を絶たれた最悪の状態でも日本国民は生存が可能だからです。 ⑨本体と手羽を切り離します。 2 本体と手羽を並べました。 24. 鶏の解体 ~ 笹身 ~ 鶏の本体を中央で切り分け、胸肉の内側に隠れている笹身を取り出します。笹身は、柔らかくて ちぎれやすいので、刃物の先で笹身の縁を囲むように切ったら、親指の爪を差し込んで、剥がす ようにすると、きれいに採れます。 ( 撮影の都合上、①④と②③は別の鶏の写真を使いました。その ため、①④は右側、②③は左側の胸肉を切り取っています。 ) ① 胸の中央を切り開きます。 1 胸肉の中央に刃先を突き刺し、縦に走って いる胸骨の稜線に沿って、胸肉を切り開き ます。 ⑩手羽の肘関節を切り離します。 1 本体から切り離した手羽の肘関節の隙間に、 刃先を刺し込みます。 ② 胸の中央を切り開きます。 2 ①で現れた胸骨の稜線の左右どちらかの側 に刃先を沿わせます。 深さ 1 センチほど刃先を刺し込み、深さを 保ったまま、胸肉を切り開きます。 胸肉の下に隠されている笹身を傷付けない ためです。 ③ 笹身を露出させます。 ②で入れた切れ目に指先を差し込んで胸骨 から胸肉を剥がすと、胸肉の内側に隠れて いた笹身が現れます。 笹の葉に形が似ているので、笹身と呼ばれ るようです。 ④ 笹身を露出しました。 胸肉の下に隠れていた笹身が現れました。 胸骨の稜線と胸肉の間に、笹身があること が分かります。 ⑩手羽の肘関節を切り離します。 2 手羽を肘関節から、手羽元と手羽先の 2 っ に切り離します。 0 ⑩手羽を 2 つに切り離します。 手羽が手羽元と手羽先の 2 つに切り離され ました。 左側の手羽元が、いわゆる「チューリップ」 です。