ギルクリスト - みる会図書館


検索対象: シャーロック・ホウムズ 帰る
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1. シャーロック・ホウムズ 帰る

くれたまえ。寝室のドアの近くに立っていてな。では、ソウムズさん。すみませんが、ギルク リスト君の部屋へ行って、ここへくるようにおっしやっていただけませんか。」 もど かる が ' 、かん せいねん 学監はすぐに、学生を連れて戻ってきました。すらりと背の高い青年で、軽く、しなやかな 力いかつひょうじよう 身のこなし、はずむような足どり、それに、かげりのない、快活な表情をしていました。そう さいご して、ちょっとこまったように、青い目で、私たちをひとりひとり見ていましたが、最後に、 部屋のすみにいるバニスターを見つけると、びつくりして、はかんとした顔をしました。ホウ ムズは、 「ドアをしめてくれたまえ。さあ、ギルクリスト君、ここにいるのはぼくたちだけで、何を こ、まったくかくしだてをしな 話しても、ほかのだれにもわかりはしない。だから、おたがい冫 いですむ。ギルクリスト君、きみのようなりつばな人が、どうしてきのうのようなことをしで かしたのか、それが知りたいんだがね。」と、言いました。 せいねん 青年はかわいそうに、よろよろとよろめいたかと思うと、にくしみと非難をこめたまなざし で、・ハニスターをにらみつけました。 いえ、ギルクリストさま。わたくしは何も申しませんーーーひとことも ! 」と、 スターはさけびました。しかし、ホウムズは、つづけて、 まくじよう 「いや、ぎみはいま状してしまったよ。さあ、ギルクリスト君、いまのバニスターの話で、 しんしつ わたし ひなん 166

2. シャーロック・ホウムズ 帰る

アフリカへでかけることにします。』」 りえきはか 「わるいことをしてまで、自分の利益を計ろうとは思わなかった、それを聞いて、じつにう れしい。しかし、どうして方針をかえたのかね。」と、ンウムズが言いますと、ギルクリスト は・ハニスターを指さして、 かれ 「ぼくをまともな人間にもどしてくれたのは彼なんです。」と、言いました。 ホウムズは、 せいねんに 「さあ、・ハニスター君。この青年を逃がしてやれたのはきみだけだと、さっき・ほくが言った のこ かぎ から、なっとくしてくれたろう。部屋に残っていたのはきみだし、出るときに鍵をかけたのだ からね。窓から逃げたとは、どうしても考えられない。きみがなぜこんなことをしたか話して、 じけん さいご なぞ この事件の、最後に残った謎の部分をはっきりさせてくれないか。」と、言いました。 「知っておしまいになれば、ごくかんたんなことなんです。しかし、あなたのような頭のい きよう い方でも、これはおわかりになりませんでしたね。わたくしはジ = イベズ・ギルクリスト卿、 しつじ はさん つまり、この方のおとうさまの執事をしていたことがございました。あの方が破産なさいまし がくりようげなん しゅじん むかし たとき、わたくしはこの学寮に、下男としてっとめることになりました。でも、昔のご主人が かたときわす むかし おん 落ちぶれておしまいになったとはいえ、片時も忘れたことはございませんし、昔のご恩がえし にもと、お子さまのお世話をさせていただいておりました。さて、きのうのこと、たいへんた まど のこ ほうしん 171

3. シャーロック・ホウムズ 帰る

というお知らせがあって、この部屋へはいりますと、まず、ギルクリスト様の茶色の手袋が目 にはいりました。わたくしはその手袋には見おばえがありましたし、なぜここにあるかもわか さと りました。もしソウムズ先生に悟られれば、万事おしまいでございます。わたくしはその椅子 に坐りこみまして、ソウムズ先生があなたさまを呼びにでていらっしやるまで、てこでも動き わか しゅじんしんしつ ませんでした。そのあと、この若いご主人が寝室からでていらっしゃいましたので、ひざの上 に抱いて、うちあけ話をのこらずうかがいました。ホウムズさま、あの方をお助けするのは、 おかしいことでしようか。また、なくなられたおとうさまがなさったように、お話し申しあげ とく て、こんなことをしても、なんの得にもならないことをわかっていただこうとしましたことも、 やはりおかしいことだったでしようか。これでも、わたくしをお責めになりますか。」 ホウムズはすっくと立ちあがると、まごころこめて、こう言いました。 じけん 「いやいや、責めるものか ! さて、ソウムズさん、ちょっとしたこの事件も、どうやら解決 ちょうしよく したようですな。ぼくたちも、うちで朝食が待っていますから。さあ、帰ろう、ウォトスンー きたい ああ、それから、ギルクリスト君、ローデシアでのかがやかしい未来を期待していますよ。 はいけん ちどは下へ落ちたけれども、将来、きみがどこまで高く昇っていくか、拝見していましよう。」 すわ しようらい てふくろ ばんじ のば みらい てふくろ かいけっ 172

4. シャーロック・ホウムズ 帰る

せんからね。」と、言いました。 「疑いがあるなら、聞かせてください。証拠のほうは・ほくがひきうけます。」 へや 「では、上の部屋に住んでいる三人の学生の性格について、ごく手短かにお話ししておきま しよう。二階の学生はギルクリストといって、なかなか勉強家でもあり、運動家でもあります。 はばと ードルと幅跳びでは大 ラグビー・チームにも、クリケット・チームにもはいっていますし、ハ がくたいこうせんしゅ しい男です。父親は竸馬で身代をつぶして有名に 学対抗選手にもえらばれている、男らしい びんぼう なった、ジ = イベズ・ギルクリスト卿です。だから、すっかり貧乏になってしまったわけです しようらい どりよくか が、努力家でもあり、よく勉強しますから、将来りつばな人物になるでしよう。 三階に住んでいるのは、インド人のダウラット・ラースです。おとなしくて、えたいの知れ ない男です。もっとも、インド人というのは、たいていそうですがね。ギリシャ語にはよわい せいせき 、つまんに成績はよく、性質はまじめで、きちょうめんです。 ようですが、し いちばん上の階にいるのは、マイルズ・マクラレンといって、やる気さえおこせば、よくで ゅびお しゅラさい きるーー大学でも指折りの秀才なのに、それが気まぐれで、どうしようもない道楽者なんです。 たいがく 一年生のときに、トラン。フのゲームでごたごたをおこし、あやうく退学というところまでいき しけん なま ました。今学期はずっと怠けてばかりいましたし、試験をひかえて、きっと心配していること でしよう。」 うたが きよう せいしつ しようこ せいか ~ 、 てみじ しんだい 153

5. シャーロック・ホウムズ 帰る

「ありがとう。もうよろしい。あ、もうひとつ、聞いておきたいんだが、きみが世話してい る、あの三人の学生に、かわったことがあったと、話をしなかったろうね。」 . し . し え、ひとことも。」 「三人のだれかに会ったかね。」 いいえ。」 まわ 「よろしい。さて、ソウムズさん。よろしかったら、中庭をひと廻りしてみましよう。」 ずじよう しだいに暮れていくタ闇のなかに、黄色い窓あかりが三つ、私たちの頭上に見えました。ホ ウムズは見あげながら、 「あなたの鳥は三とも、巣にはいっていますね。おや ! あれはどうしたんだろう。ひと り、落ち着かないのがいる」と、言いました。 かげ とっぜん、プラインドに黒い影をおとしたのは、インド人でした。 「ひと部屋ずつのそいてみたいのですが、いいでしようか。」 たてもの か′、り・よう 「かまいませんとも。この建物は、学寮のなかでもいちばん古いので、見学にくる人も少な あんない くありません。どうそ、こちらへ。わたしがご案内しましよう。」と、ソウムズは言いました。 「ぼくたちの名前は言わないでください。」ギルクリストの部屋のドアをたたくとき、ホウ あまいろかみせいねん ムズはこう言いました。ドアをあけたのは、すらりと背の高い、亜麻色の髪の青年で、部屋を ゅうやみ まど わたし 157

6. シャーロック・ホウムズ 帰る

へしのびこもうと思っていた男が、たまたまはいったその日に、試験用紙があったというのは、 あまり話がうますぎて、とても考えられないことです。・ほくはこの考えもすてました。部屋に しけんようし 押しいった男は、試験用紙のあることを、たしかに知っていました。どうして、それがわかっ たのでしよう。 まど はじめてここへうかがったとき、ぼくは窓のあたりをしらべました。まっ昼間、しかも、向 はんにんまど こうがわの部屋から見ているかもしれないのに、犯人が窓をのりこえてはいったのではないか と、・ほくが考えている、あなたはそう思ったのではありませんか。それが・ほくにはこつけいで しけんようし した。それはばかばかしい話です。まんなかのテー・フルに試験用紙がのせてあって、それを通 しんちょう ・ほ ~ 、はた りがかりに、外から窓ごしにのそくには、どのくらいの身長がなくてはならないか、 だそれを測ってみただけでした。・ほくの身長は百八十センチですが、背のびして、やっとのそ けたくらいです。それ以上なければ、とてもむりでしよう。もうおわかりと思いますが、あの 三人の学生のうち、とくに背の高い男がいれば、それこそいちばん注目すべき相手と考えるの と 5 ・ん が当然だというわけです。 なかへはいってから、サイド・テー・フルについてわかったことを、ばくはあなたに打ちあけ つくえ ましたが、まんなかの机のことは、はじめのうち何もわからず、あなたがギルクリストの話の さと かれはばと なかで、彼が幅跳びの選手だとおっしやったのを聞いて、すぐに何もかも悟ったのです。あと まど せんしゅ いじよ ) しんちょラ しけんようし びるま あいて 168

7. シャーロック・ホウムズ 帰る

くっ てぶくろお わす 逃げられない。靴をつかんで、寝室へとびこみましたが、手袋は置き忘れました。机の上のひ つかき傷が一方は浅く、寝室のドアの方向に深くなっていたのは、ごらんになったとおりです。 その方向へ靴をひつばったことも、犯人がそっちへ逃げたことも、それだけではっきりわかる つくえ わけです。スパイクについていた土が机の上に残り、もうひとっとれたのが寝室に落ちました。 くわ はばと すなば つけ加えて言いますが、けさ、ばくは運動場へ行ってみて、幅跳び用の砂場に、ねばりのある、 ねんど せんしゅ 黒い粘土がしいてあるのを見つけ、なおその上に、選手のすべりどめにまいてあった、こまか ねんど いタン皮のかすと、おがくずを、粘土といっしょに、見本としてもってきました。どうだ、ギ ルクリスト君、このとおりだったろうか。」 学生はまっすぐに姿勢をただして、 「はい、そのとおりです。」と、答えました。 「おどろいたな。きみは何か言うことはないのか。」と、ソウムズが大きな声で言いました。 「はい、あります。こんなはずかしい話をまともに言われて、もう胸がつぶれるほどびつく りしています。ソウムズ先生、ぼくは手紙をもってきました。ゅうべひと晩、まんじりともせ ずに、けさ早く、先生あてに書いたものです。だから、・ほくのしわざとわかったとは知らずに 書いたわけです。これです、先生。お読みになればわかりますが、こう書きました。『ばくは ( 8 ) けいさっ 試験を受けないことにきめました。ローデシアの警察からさそいがありましたので、すぐに南 しけん きす くっ あさ しんしつ しんしつ はんにん のこ ばん しんしつ つくえ 170