ジョーンズ - みる会図書館


検索対象: シャーロック・ホウムズの冒険
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1. シャーロック・ホウムズの冒険

あっすい ホウムズは、厚い水夫ジャケツのボタンをかけ、むち架から重い狩用のむちをおろしながら、 こう一一一口いました。 けいしちょう 「ウォトスン。君は警視庁のジョ 1 ンズさんを知っているね。では、メリ 1 ウ , ザーさんをご ぼうけん こんや しようかい 紹介しよう。今夜の冒険に一しょにいって下さるんだ。」 けいじ ジョーンズ刑事は、もったいぶった口調で、 「先生、われわれ四人はふたりずつ組になって、狩に出かけるんですよ。このホウムズさんと うでまえ いう人は、追いこみをかけるにはすばらしい腕前をもった人ですなあ。この人にはえものをつか やくろうけん まえる役の老大が一びきいればいいんですよ。」 メリーウザー氏はにがい顔をして、 「追いこんだあげくが、カモ一羽なんてことにならないようにお願いしますよ。」 ジョーンズ刑事はあいかわらずえらそうに、 どくとく しんらい 「ホウムズさんは大じようぶ信頼していいですよ。この人にはちょっとした独特のやり方があ きばっ しつれい りましてね。そういっちや失礼だが、すこし理窟つぼくて、奇抜すぎるようですが、まあ探偵と ごろ そしつ しちや大した素質をもっていますよ、この人は。一、二度ほど、たとえば、ショルト殺しの事件と ほうもつじけん ( 7 ) にんしよくけいさっ か、アグラの宝物事件とかでは、本職の警察よりもねらいが正しかった、といっても言いすぎで はないですからね。」 くちょう りくっ かり 、、かけ かりより たんてい じけん

2. シャーロック・ホウムズの冒険

メリーウザ 1 氏はもっともだという風に、 「ああ、ジョーンズさん。あなたが受けあって下さるなら、それでよろしいんです。しかし私 さんはんしようぶ は三番勝負をしないで来てしまったんですよ。土曜日の晩にトランプの勝負をしないのは、この 二十七年間にはじめてのことですからね。」 「これからやるのは、あなたが今までになさったことのないほどの大勝負ですよ。すぐにおわ あせ かりになります。それも手に汗にぎるということになりましような。メリ 1 ウザーさん、あな たにとってはかけ金が三万ポンドほどになりますよ。それからジョ 1 ンズさん、あなたにとって は、日ごろ、つかまえたいと思っていた人間ですからね、この相手は。」 けいじ と、シャ 1 ロック・ホウムズが一一一口いますと、ジョーンズ刑事も、 ひとごろ 「メリーウェザーさん、このジョン・クレイという男は人殺しで、どろぼうで、にせ金を作っ たり、使ったりするやつなんです。まだ年は若いですがね。この道にかけては、一ばん腕がたし あくにん かで、わたしもロンドン中の悪人どもの中で、だれよりもっかまえたいと思っている男なんです よ。年は若いが、ものすごいやつですよ、ジョン・クレイってやつは。祖父は王家の血すじをひ こうしやく いた公爵で、あいつだってイートン大学やオックスフォード大学にいたことがあるくらいです。 きよう あくじ 頭がわるがしこくて、手先が器用で、いたるところに彼が悪事をはたらいたあとがあるんですが、・ いどころ こんしゅう 居所がなかなかっかめませんでね。今週スコットランドでよその家へしのびこなかと思えば、来 . だいしょクタ おうけ うで

3. シャーロック・ホウムズの冒険

低く、青白い顔に、まっ赤な髪の毛をふりみだしています。 上の男は小声で、 「うまくいったそ。のみと袋を持って来たか。あっ、しまった ! おりろ、アーチイ、おりろ。 しばり首だそ ! 」 ーロック・ホウムズはそのとき、いきなり飛び出して、この男のえり首をつかまえていま あな した。もうひとりは穴に飛びおり、ジョーンズが服のはじをつかまえると、ビリビリと裂ける音 かりよう じゅうしんてら がきこえました。光がサッとビストルの銃身を照すと、ホウムズはたちまち狩用のむちで手首を ゆか 、ビシリとたたぎ、ビストルは音をたてて、石の床の上に落ちました。 くちょう ホウムズはおだやかな口調で、 「あがいても無駄だ、ジョン・クレイ。もう万事おしまいだ』 「わかったよ。」 クレイはひどく落ちつきはらって、答えました。 うわぎ 「だが、なかまはうまく逃げたようだな。上着のすそだけはつかまえたらしいが。」 「むこうの玄関にも、三人ばかり待ち受けているんだよ。」 「おや、そうかい。そいつは、ばかに手まわしよくやったものだな。お世辞にでも、ほめなく ちゃなるまいね。」 げんかん むだ に 氿み くろ ばんじ

4. シャーロック・ホウムズの冒険

ウォトスン、君はかまわないから、うちたおしてくれたまえ。」 あんぜんそうち 私はしやがんでいる目の前の木箱の上に、安全装置をはすしたピストルをおきました。ホウム けいけん 今まで経験したことも ズはランターンの前に被いをかぶせて、部屋をまっくらにしました。 きんぞく ないほどのまっくらやみです。金属のやけるにおいがしているので、いざというときさっと向け あか られるように、明りをつけつばなしにしていることがわかります。今か今かと待ちうけているた くら あなぐら しもけい めに、すっかり神経が高ぶっていますが、急に暗くなった上に、穴蔵のつめたい、じめじめした 空気にふれていると、何となく気がめいるように沈んで来るのでした。 ホウムズは小声で、 「サックス・コウバーグ・スクエアの家へもどる逃げ道がひとつあるんだが、お願いしておい たことをやっておいてくれたでしようね、ジョーンズさん。」 じゅんさげんかんは 「警部とふたりの巡査が玄関に張りこんでいますよ。」 くろ 「それでは袋のネズミですな。さあ、静かにして待っていましよう。」 待っ時間の、その長いことといったらありません。あとでいろいろと話しあって見ると、わず か一時間と十五分くらいしかたっていなかったそうですが、そとはもう夜があけて、明るくなっ ちょっと てしまったのではないかと思われるほどでした。一寸でも動いてはいけないと思ったので、両足 しんけい きよくどきんちょう はつかれて、棒のようになってしまいました。しかし、神経は極度に緊張していて、耳はするど おお しす

5. シャーロック・ホウムズの冒険

どうよう あかけれんめい 「こっちもご同様さ。赤毛連盟というおもいっきは、とても奇抜で、うまくいったものな。」 と、ホウムズが一一一口いますと、ジョ 1 ンズも、 あな 「今すぐ、仲間にあわせてやるからな。あいつは穴へとびこむのが、おれよりはしつこいぜ。・ てじよう さあ、手錠をかけるあいだ、手を出していろよ。」 手錠がカチリと手首にかかったとき、クレイは、 「そんなきたない手で、さわってもらいたくないね。おれのからだには王家の血が流れている かっか んだぜ。おれをよぶときには、『閣下』とか、『どうぞ』とか言ってもらいたいもんだな。」 ジョーンズは相手をじっと見て、クスクス笑いながら、 けいさっ でんか 「よろしい。では、どうぞ、閣下。上へお進み下さい。馬車をよんで警察まで殿下をごあんな い申しあげましよう。」 「そう言ってくれればいいんだ。」 ジョン・クレイは落ちつきはらって、こう言うと、われわれ三人にむかって、ていねいにおじ けいじ ぎして、刑事に守られながら、しすかに歩み去りました。 ちかしつ メリーウェザー氏はふたりの後から地下室をのぼっていきながら、 おん ぎんこう どんなご恩がえしを 「ホウムズさん。まったく、銀行はあなたにたいして、何とお礼を言い かんぜん けいかくてき したらいいかわかりません。今まできいたこともないような、計画的な銀行やぶりを完全にさぐ なかま はしゃ きはっ おうけ

6. シャーロック・ホウムズの冒険

は、今までに起ったことばかりでなく、これから起ることまで、たしかにはっきりと見とおして しまうらしいのに、私はといえば、何もかもめちゃくちやで、わけのわからないことだらけです。 ケンジントンにある自分の家まで鵈でかえる途中、私は、あの百科事典をうっした赤毛 の男のふしぎな物語から、サックス・コウバーグ・スクエアへいったこと、別れぎわにホウムズ たんけん の言 0 た、気にかかることばなどをいろいろと考えて見ました。夜の探検というのはい「たい何 だろう。なぜピストルをもってゆくのだろう。どこへいって、何をするというのだろう。あのひ あくじ てんいん しちゃ げのない質屋の店員はおそろしい人間で、悪事をたくらんでいるようなことを、ホウムズはちら りと言っていたけれども、その謎をとこうといろいろやって見て、私はとうとうあきらめてしま い、今夜どうせわかるのだから、そのままほうっておくことにしました。 こうえん 九時十五分すぎに、私は家を出て、公園を横切り、オ〉クスフォード徐をぬけて、べイカー街 ろうか にりんはしゃ げんかん へいきました。玄関のところに二輪馬車が二台おいてあり、廊下へはいると、二階から人声がき こえて来ました。部屋へ通って見ると、ホウムズはふたりの男とさかんに話をしていて、そのひ ・ジョーンズ刑事だとわかりましたが、もうひとりは、すらりと背の高い、カな とりはピーター どうどう ぼうし しそうな顔つきの男で、ひじようにつやのある帽子をもち、堂々とりつばなフロック・コートを 着ていました。 「やあ ! これで仲間がそろったそ。」 なかま なぞ

7. シャーロック・ホウムズの冒険

こじいん 週はコーンウォールで、孤児院をたてる金を集めるといったあんばいで、ずっと前から追いかけ ていながら、私もまだじっさいに顔を見たこともないしまつですよ。」 しようかい こんや 「今夜は君に紹介してあげられると思うよ。ぼくも一、二ど、ちょっとジョン・クレイとかか いけん さんせい り合いになったこともあるが、この道にかけては一ばんすごいという、君の意見には賛成だね。 たが、十時を過ぎたようだ。もう出かける時間だよ。あなたがたおふたりは前の貯鵈におのり下 ・さい。ウォトスンとぼくはうしろにのります。」 シャーロック・ホウムズは馬車に乗っている長い時間を、ろくろくおしゃべりもせず、椅子の 背によりかかって、昼間聞いた音楽のメロディーを口すさんでいました。馬車はどこまでも迷路 とう のようにつづく、ガス燈のともった街中を走って、やがてファリンドン街へはいりました。 じけん ちよくせつ ぎんこうじゅうやく 「もうじきだな。あのメリーウザーって人は銀行の重役でね、この事件には直接かかり合い なかま 、と思ったのさ。あいつは仕事にかけちや低 があるんだよ。ジョーンズも仲間に人れたほうがいし のう いところが一つだけあるんだよ。だれかにねらいをつけたら 能だけれど、悪い男じゃないし、 しゅうねん さいご 最後、プルドックのように勇敢で、ザリガ = のように執念ぶかいんだ。さあ、ここだ。前のふた りが待っているよ。」 私たちは朝一ど来た、あの往来のはげしい街に着きました。馬車がかえってしまうと、私たち あんない ばメリーウザー氏の案内で、せまい露地にはいり、あけてくれたわき戸をくぐりました。その ゅうかん おうらい まちなか ろじ まち

8. シャーロック・ホウムズの冒険

くなり、みんなの静かな息がきこえるだけでなく、からだの大きなジョーンズの深く吸いこむ、 重い息と、メリーウェザー氏の飆 い、ため息のような音を聞き分けることもできました。私のと ゆか ころからは、箱ごしに床のほうが見えていましたが、とっぜん、ビカッと光るものが私の目にう つりました。 しだい はじめは、しき石の間からもれる青白い小さな火にすぎなかったのが、次第に長い一本の黄色 い線となり、やがて何の前ぶれも、何の音もなく、すーっと広くなって、手が一本あらわれまし まんなか た。白い、女のような手で、小さな光の真中のあたりをしきりにさぐっています。一分か、ある いはもうすこし長い間、指を動かしていましたが、やがてその手はにゆーっと床から出て来まし た。そうして、出たかと思うといきなりひっこみ、石の間のわれ目からもれる青白い光を一つ残 くら したまま、もとの暗やみにかえってしまいました。 しかし、見えなくなったのもっかの間、メリメリ、 ハリハリという立日がしたかと思うと、幅の あな びろい、白い石がひとつ、一方へはねかえされ、四角な穴がぼっかりあいて、そこからランター かど こども ンの光がどっとあふれ出ました。その角のところから、りんかくのはっきりした、子供のような りようがわ 顔がのそいて、じろりとあたりを見まわすと、穴の両側に手をかけて肩をあらわし、腰をあらわ しゅんかん し、角にかたひざをのせ、次の瞬間には、ひらりと穴の外へ立ち上りました。そうして、今度は っ 連れの男を引き上げようとしています。その連れの男というのは、同じようにしなやかで、背が かど ゆか