225 吾輩は猫である とすはてた病て運かるよ 勹 1 と識の猫、人おば気当動らのっ吾 よのくのそ間らか・で分を腐をと輩こ り発ら星ののんり、霞しれ天申は ほ達い霜言短十、でやをみろか職し近 かかのを日年の、は食のかの聞 にら見同月にみ当りら つよけろ ない識じのかな年ペえ牛たうる運七 んうを割あけらとスの乳尻にが動 にと有合い合すっトとをを心、を も、しにだうそて、く飲離得そ始 知いて打にとの一肺ためさてうめ らやい算猫いみ歳病らのざいいた なはるす つぎた、ぬ冷るたう いやのる匹てりか神注水をで人猫 。鈍でののもはら経文をもは間の 世いもは発よ浮人衰を浴つなたく をもわは達ろ世よ間弱連び、ていっせ 憂のかなはしのがの発ろ旦をかてに いたるは十い風こ一すの那な。っ運 。たた分。中ん族る、の無い動 を泣ろしつ我になとよ海名事近な 憤くうきからふ病心うの誉こ年ん 。誤ままのわ気得に中とれまて る 吾と主謬弯つ寿つにてなへや貴きでき 輩と人でる命いかいっに人はい な、のあとはてかいたび下と邃た ど寝第るこ人おりくの込がか動ふ 。ろ間らたらはめっとのう 比便女第をよなしい 、のてな何た もりかたた西、暮えもと べをな るすど っ当。洋夏らての とるは一て店た時もかにし、た概 ー数歳推もにのつらなたふるに 相あと神つのとを冷ご かとえ何論 らと年かす倍違りも国たは 解罵ば た、で月るもなさ吾へら覚ろせし にと短いま輩伝山え手すム 、いがはは染のてをにる いつつ足 のばたら人に 、記去し中いし、手 ないそぬ間か猫憶年たへるて食合 いをう吾のかのに生拯 : えこは座さ・つい も飲た輩年わー存ま近ーもす布ふてに のむがが月ら年しれのった団え寝ち あおぎり から、失敬して庭へかまきりを捜しに出た。梧桐の縁をつづる間から西に傾く日がまだらにもれて、 幹にはつくつくぼうしが命にないている。晩はことによると一雨かかるかもしれない。
345 かほ ん信 がら いや 、ぬぼそてを家出 にく 長の 形 : 、る しき いあ なた 子で のた。ずんがば っぴら校 長は はな へお い返易や女あ 。しにち 坊生 つく 徒て て姉 にも いく つ禄れな き点えばで双か 手・の わせ よ禄をく やを 坊 べ間 てん ロカ 違な そて のんがは聞んすこ つう 校る んさ べ間 任よ て店た違 いでかでしな にぞじる いが物 L- 思も る右 たる をづ 義な い / 、 教を でが か独 え混 け ( ま らイ山 しし やに いり たか ては火言 かが ん我 茸第が を来こす をば こす 力いい 坊ん を御 使て も人の 1 来 のわ かたあた 滑豸は子た なも られ なか んた がなかな らか 吾輩は猫である 坊 や は や と な し し も 坊、 と う 兀 禄 が ぬ れ た の 見 て が ま じ に は聞る か る 、の分 し、 を はめ聞の 、笑 が 自 、たがて へ 出 犬 ロロ 時 な ど れ り を違わのた と う 力、 よ よ 聞 し 子み所ぎ 裏 2 と を店あ る同な し し、 る 味みし は た つおかでがなは と フ匸 で 、出し し た ら い し り つ坊るたぼた知き自 く た みた とかた や中れた 女 行 た り し も の り り ノ、 を ち ん 兀ぬら る . 元模坊 ま禄・様やカ ん も っ る だ り つかて女こ ん れ で でも容 う これ時たた姉やけて の り う の の . 引たし ら り容坊 の う さ うすく に は オど そ姉く の し、 と 、驚 、た比びか た寿すに / 、らも 元赦 と 坊ば、これを冫 と と並な り 時 ど はたわでち た し 謬間い茶オ なお や じり 主店でる 藁をんや 、し をナこ う 、を つ る ゃ飛を と て し、 た 、知 る お し と り姉し 。れ と にコ う く せ の 姉 う いだる 0 、だ しれ禄 たわな っ て た も の ら ーな聞 し、 元禄々な坊やぶ、と 、ら . 足のカ、 に 、つ ら る ら ん ま ん や ゃん や く 起 られ時なや に り り 用し る 、中ばた やちななぞっら ん 、き う よ ぶ し一 と う 、きみ よ と う き でいんる木 。を と に 力、 いんか - なこけ′ なん ⅱン当ひょ つ し ま う の て子あ 供 の と は お び し、 つあカ 0 と 教はな の と と そかたざ含 ん し 。て 元足引 る たが水 ひ の り 、が る し のに手んかそ L- ら冫 る る 衄 有 る しかかれそなと はも足 か て う い 。わて をる ちかか ん と と 、君 よ り し、 し し、
188 すす っ黒な煤がランプの光で輝いて、地獄を裏返しにつるしたごとくちょっと吾輩の手ぎわでは上るこ とも、下ることもできん。まさかあんな高い所から落ちてくることもなかろうからこの方面だけは けねん 警戒を解くことにする。それにしても三方から攻撃される懸念がある。一口なら片目でも退治して みせる。二ロならどうこ 冫か、こうにかやってのける自信がある。しかし三ロとなるといかに本能的 に鼠をとるべく予期せらるる吾輩も手のつけようがない。さればといって車屋の黒ごときものを助 勢に頼んでくるのも吾輩の威厳に関する。どうしたらよかろう。どうしたらよかろうと考えてよい 知恵が出ない時は、そんなことは起こる気づかいはないと決めるのがいちばん安心を得る近道であ る。また法のつかないものは起こらないと考えたくなるものである。ます世間を見渡してみたまえ。 むこどのたまつばぎちょ きのうもらった花嫁もきよう死なんとも限らんではないか、しかし聟殿は玉椿千代も八千代もなど、 おめでたいことを並べて心配らしい顔もせんではないか。心配せんのは、心配する価値がないから ではない。い くら心配したって法がっかんからである。吾輩の場合でも一二面攻撃は必す起こらぬと 断言すべき相当の論拠はないのであるが、起こらぬとするほうが安心を得るに便利である。安心は 万物に必要である。吾輩も安心を欲する。よって三面攻撃は起こらぬときめる。 それでもまだ心配が取れぬから、どういうものかとだんたん考えてみるとようやくわかった。三 個の計略のうちいすれを選んたのが最も得策であるかの間膕に対して、みすから明瞭なる答弁を得 はんもん るに苦しむからの煩悶である。戸棚から出る時には吾輩これに応する策がある、風呂場からわれ る時はこれに対する計がある、また流しからはい上がる時はこれを迎うる成算もあるが、そのう ちどれか一つにきめねばならぬとなると大いに当惑する。東郷大将はバルチック艦隊が対馬海趺を そうや 通るか、津軽海畉へ出るか、あるいは遠く宗谷海峡を回るかについて大いに心されたそうだが、
330 「本物たあなんだい」 「とうとプうなぎが天上して、豚が仙人になったのさ」 「なんのことたい、それは」 ふたせん 「八木が独仙なら、立町は豚仙さ、あのくらい食い意地のきたない男はなかったが、あの食い意 地と褝坊主の悪意地が併発したのだから助からない。初めはぼくらも気がっかなかったが今から考 えると妙なことばかり並べていたよ。ぼくのタちなどへ来て君あの松の木へカツレツが飛んできや しませんかの、ぼくの国では蒲鉾が板へ乗って泳いでいますのって、しきりに警句を吐いたもんさ 9 ただ吐いているうちはよかったが君表のどぶ・ヘきんとんを掘りにゆきましようと促すに至ってはぼ くも降参したね。それから二、三日するとついに豚仙になって巣鴨へ収容されてしまった。元来豚 なんぞが気違いになる資格はないんだが、全く独仙のおかげであすこまでこぎつけたんだね。独仙 の勢力もなかなかえらいよ」 「へえ、今でも巣鴨にいるのかいー じたいきよう 「いるだんじゃない。自大狂で大気炎を吐いている。近ごろは立町老梅なんて名はつまらないと てんど ? 一うへい ごんげ いうので、みすから天道公平と号して、天道の権化をもって任じている。すさまじいものたよ。ま あちょっと行ってみたまえ」 「天道公平 ? 一」、つへ 「天道公平だよ。気違いのくせにうまい名をつけたものたね。時々は孔平とも書くことがある。 それでなんでも世人が迷ってるからぜひ救ってやりたいというので、むやみに友人や何かへ手紙を 出すんたね。ぼくも四、五通もらったが、中にはなかなか長いやつがあって不足税を二度ばかりと かま・はこ
362 てんしんさま ひげ 。そうして天神様のような髯をはやしているもんだから、みんな感心して聞いていてよ」 「お話って、どんなお話なの」と細君が聞きかけていると縁側の方から、雪江さんの話し声を聞 たけがき きつけて、三人の子供がどたばた茶の聞へ乱人して来た。今までは竹垣の外のあき地へ出て遊んで いたものであろう。 「あら雪江さんが来た」と二人のねえさんはうれしそうに大きな声を出す。細君は「そんなに がないで、みんな静かにしておすわりなさい。雪江さんが今おもしろい話をなさるところたから , と仕事をすみへ片づける。 わたしお話が大好き」と言ったのはとん子で「やつばりかちかち山のお 「雪江さんなんのお話、 話 ? 」と聞いたのはすん子である。「坊ばもおはなち」と言い出した三女は姉と姉のあいたからひ ざを前の方に出す。たたしこれはお話を承るというのではない、坊ばもまたお話をつかまつるとい う意味である。「あら、坊ばちゃんの話だ」とねえさんが笑うと、細君は「坊ばはあとでなさい。 「いやーよ、は 雪江さんのお話がすんでから」とすかしてみる。坊ばはなかなか聞きそうにない。 ぶ」と大きな声を出す。「おお、よしよし坊ばちゃんからなさい。なんというの ? 」と雪江さんは けんをん 謙遜した。 「あのね。坊たん、坊たん、どこへ行くのってー 「おもしろいのね。それから ? 「わたちは田んぼへ稲刈しにー 「そうよく知ってること」 「お前がくうと邪になる」
十株持ってるよ」 「そりやばかにできないな。ぼくは八百八十八株半持っていたが、匿しいことにおおかた虫が食 ってしまって、今じゃ半株ばかりしかない。もう少し早く君が東京へ出てくれば、虫の食わないと ころを十株ばかりやるところだったが惜しいことをした」 「相変わらす口が悪い。しかし冗談は冗談として、ああいう株は持ってて損はないよ。年々高く なるばかりたから」 「そうだたとい半株たって千年も持ってなうちにや倉が三つぐらい建つからな。君もぼくもその へんにぬかりはない当世の才子たが、そこへいくと苦沙弥などは哀れなものた。株といえば大根の 兄弟分ぐらいに考えているんたから」とまた羊羮をつまんで主人の方を見ると、主人も迷亭の食い ざら けが伝染しておのすから町子皿の方へ手が出る。世の中では万事積極的の者が人からまねらるる権 利を有しておる。 そろさき 「株などはどうでもかまわんが、ぼくは曾呂崎に一度でいいから電車へ乗らしてやりたかった . と主人は食いかけた羊羮の歯あとを撫然としてながめる。 しながわ 「曾呂崎が電車へ乗ったら、乗るたんびに品川まで行ってしまうわ、それよりやつばり天然居士 でたくあん石へ彫りつけられてるほうが無事でいい」 しい頭の男だったが惜しいことをした」と鈴 「曾呂崎といえば死んたそうだな。気の毒たねえ、 木君が言うと、迷亭はたたちに引き受けて、 「頭はよかったが、飯をたく一、とはいちばん下手だった、せ。曾呂崎の当番の時には、ぼくあいっ でも外出をして蕎麦でしのいでいた」 かふ とかふ ぶぜん てんねんこじ
256 卑劣である。しかしじつのところ主人はこれほどけちな男ではないのである。たから主人の一、の命 ぼうふら こ、つかっ つまり知恵の足りないところからわいた孑孑のようなものと思 令は狡猾の極に出でたのではない。 惟する。飯を食えば腹が張るにきまっている。刧れば血が出るにきまっている。殺せば死ぬにきま っている。それだからぶてば鳴くにきまっていると速断をやったんたろう。しかしそれはお気の毒 だが少し論理に合わない。その格でゆくと川へ落ちれば必す死ぬことになる。天。ふらを食えば必す 下痢することになる。月給をもらえば必す出勤することになる。書物を読めば必ずえらくなること になる。必すそうなっては少し困る人ができてくる。ぶてば必す鳴かなければならんとなると吾輩 ます腹の中でこれた・ は迷惑である。目白の時の鐘と同一に見なされては猫と生まれたかいがない。 け主人をへこましておいて、しかるのちにやーと注文どおり鳴いてやった。 こやあという声は間投詞か、副詞かなんたか知ってる すると主人は細君に向かって「今鳴いた、冫 か」と聞、こ。 細君はあまり突然な間いなので、なんにも言わない。じつをいうと吾輩もこれは銭湯の逆上がま がっぺき たさめないためだろうと思ったくらいだ。元来一、の主人は近所合壁有名な変人で現に・ある人はたし かに神経病たとまで断言したくらいである。ところが主人の自信はえらいもので、おれが神経病じ ゃない、世の中のやつが神経病だとがんばっている。近辺の者が主人を犬々と呼ぶと、主人は公平 を維持するため必要だとか号して彼らを豚々と呼ぶ。じっさい主人はど一、までも公平を維持するつ もりらしい。困ったものた。こういう男たからこんな奇間を細君に向かって呈出するのも、主人に とっては朝めし前の小事件かもしれないが、聞くほうから言わせるとちょっと神経病に近い人の言 いそうなことた。たから細君は煙に巻かれた気味でなんとも言わない。吾輩はむろん何とも答えよ けむ
460 「名前は書いてない」 「どうせ振られた賢者に相違ないね」 「次にはダイオジ = スが出ている。ある人間う、妻のめとるいすれの時においてすべきか。ダイ オジ = ス答えていわく青年はいまたし、老年はすでにおそし。とある」 「先生樽の中で考えたね」 「。ヒサゴラスいわく天下に三の恐るべきものありいわく火、いわく 「ギリシアの哲学者などは存外迂闊なことを言うものたね。ぼくに言わせると天下に恐るべきも のなし。火に入って焼けす、水に入っておぼれす : : : 」たけで独仙君ちょっとゆき詰まる。 「女に会 0 てとろけずだろう、と迷亭先生が援兵に出る。主人はさ「さとあとを読む。 「ソクラチスは婦女子を御するは人間の最大難事と言えり。デモスセ = スいわく人もしその敵を ふうま 「「しめんとせば、わが女を敵に与うるより策の得たるはあらず。家庭の風皮に日となく夜となく彼 を曜憊起っあたわざるに至らしむるをうればなりと。セネ力は婦女と無学をもって世界における一」 フロー 大厄とし、マーカス・オーレリアスは女子は制御しがたき点において船舶に似たりと言い てんびん ろうさく タス . は女子が綺羅を飾るの性癖をもってその天稟の醜をおおうの陋策にもとづくものとせり。ヴァ レリアスかって書をその友某におくって告げていわく天下に何事も女子の忍んでなしえざるものあ こうてん らす。願わくは皇天あわれみをたれて、君をして彼らの術中に陥らしむるなかれと。彼またいわく 女子とはなんぞ。友愛の敵にあらすや、避くべからざる苦しみにあらすや、必然の害にあらすや、 自然の誘惑にあらずや、蜜に似たる毒にあらすや。もし女子をすつるが不徳ならば、彼らをすてざ かし・く るはいっそうの呵責と言わざるべからす。・ : : ・」
よほどの勇気がいるそうだ。吾輩などははじめて当家の令嬢から鏡を顔の前へ押しつけられた時に、 はっと仰天して屋敷のまわりを三度駆け回ったくらいである。いかに白昼といえども、主人のよう にかく一生懸命に見つめている以上は自分で自分の顔がこわくなるに相違ない。たた見てさえあま り気味のいい顔じゃない。ややあって主人は「なるほどきたない顏だ、とひとり言を言った。自己 の醜を自白するのはなかなか見上けたものた。様子からいうとたしかに気違いの所作たが言うこと は真理である。これがもう一歩進むと、おのれの醜悪なことがこわくなる。人間はわが身が恐ろし てつこってっすい い悪党であるという事実を徹骨徹髄に感じた者でないと苦労人とはいえない。苦労人でないととう てい解脱はできない。主人も一、こまで来たらついでに「おお一、わい」とでも言いそうなものである 「なるほどきたない顔だ」と言ったあとで、何を考え出したか、ぶうっとほ がなかなか言わない。 ひらて っぺたをふくらました。そうしてふくれたほっぺたを平手で二、三度たたいてみる。なんのまじな この時吾輩はなんたかこの顔に似たものがあるらしいという感じがした。よく いたかわからない。 よく考えてみるとそれはおさんの顏である。ついでだからおさんの顏をちょっと紹介するが、それ あなもりいなり はそれはふくれたものである。このあいださる人が穴守稲荷から河豚のちょう・ちんをみやげに持っ あて来てくれたが、ちょうどあの河豚ちょうちんのようにふくれている。あまりふくれ方が残酷なの 猫で目は両方とも紛失している。も 0 とも河豚のふくれるのはまんべんなくまん丸にふくれるのたが、 物おさんとくると、元来の骨格が多角性であ 0 て、その骨格どおりにふくれあがるのたから、まるで 水気になやんでいる六角時計のようなものだ。おさんが聞いたらさぞお一、るたろうから、おさんは このくらいにしてまた主人のほうに帰るが、かくのごとくあらん限りの空気をも 0 てほ 0 べたをふ くらませたる彼は前申すとおり手のひらでほ 0 べたをたたきながら「このくらい皮膚が緊張すると しゅう ぎ工うてん
しんそっ 「先生、子規さんとはおっき合いでしたか」と正直な東風君は真率な質間をかける。 かんたん 「なにつき合わなくっても始終無線電信で肝胆相照らしていたもんだ」とむちゃくちやを言うの - で、東風先生あきれて黙ってしまった。寒月君は笑いながらまた進行する。 「それで置き所だけはできたわけたが、今度は出すのに困った。たた出すだけなら人目をかすめ てながめるぐらいはやれんことはないが、ながめたばかりじゃなんにもならない。ひかなければ役 ちんでん むくげがきひとえ に立たない。ひけば音が出る。出ればすぐ露見する。ちょうど木槿垣を一重隔てて南隣りには沈澱・ 組の頭領が下宿しているんだからけんのんだあね」 「困るね」と東風君が気の毒そうに調子を合わせる。 こごうつ注ね 「なるほど、こりや困る。論より証拠音が出るんだから、小督の局も全くこれでしくじったんた おんぎよく さっ からね。これがぬすみ食いをするとか、にせ札を造るとかいうなら、また始末がいいが、音曲は人 に隠しちやできないものだからねー 「音さえ出なければどうでもできるんですが : : : 」 「ちょっと待った。音さえ出なけりやというが、音が出なくても隠しおおせないのがあるよ。昔 あ、ほくらが小石川のお寺で自炊をしている時分に鈴木の藤さんという人がいてね、この藤さんがたい みりん とっくり 潴へん味淋がすきで、ビールの徳利へ味淋を買って来ては一人で楽しみに飲んでいたのさ。ある日藤 さんが散歩に出たあとで、よせばいいのに苦少弥君がちょっと盗んで飲んたところが : : : 」 「おれが鈴木の味淋などを飲むものか、飲んたのは君たぜ」と主人は突然大きな声を出した。 「おや本を読んでるから大丈夫かと思ったら、やはり聞いてるね。ゆたんのできない男た。耳も 八丁、目も八丁とは君のことだ。なるほど言われてみるとぼくも飲んだ。ぼくも飲んだには相違な