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検索対象: 即興詩人 下巻
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1. 即興詩人 下巻

夢幻境 113 燃ゆる水の上を走り來るにそありける。 らうをう その漸く近づくを候へば、靜かに艫を搖すものは一人の老翁なり。の一たび水を打つごとに 1 さうび をなご 〔うづくま〕 波は薔薇花紅を染め出せり。舟の舳に一人の蹲れるあり。その形女子に似たり。舟は慚く近づ おぎな けども、二人はロに一語を發せず、その動かざること石人の如く、動くものは唯だ翁が手中の わが のみ。忽ち聲ありて、一の長大息の如く、我耳に入り來りぬ。その聲は曾て一たび聞けるものの 如くなりき。 〔わ〕【ゑが〕 〔ほとり〕こ 舟は岸に近づきて圈を劃き、我が起ちて望める邊に漕ぎ寄せられたり。翁が手はを放てり。女 〔あはれ〕 子はこの時もろ手高くさし上げて、哀に悲しげなる聲を揚げ、訷の母よ、我を見棄て給ふな、我 おはせかしこ は仰を畏みてここに來たりと云へり。われは此聲を聞きて一聲ララと叫べり。舟中の女子は彼ペ ほとり こちょ スッム古祠の畔なる腎女なりしなり。 しぼ くわうみやう ララは我に對ひて起ち、聲振り絞りて、我に光明を授け給へ、我に訷の造り給ひし世界の美しさ たと 〔こわね〕〔よのつね〕 を見ることを得させたまへと祈願したり。その聲音は尋常ならず、譬へば泉下の人の假に形を現 こんと》けう をとめ して物言ふが如くなりき。我印興詩は漫りに混沁の竅を穿ちて、少女に宇宙の美を敎へき。今や 少女は期せずして我前に來り、我に眼を開かんことを請へり。われは少女の聲の我心魂に徹する あた を覺えて、口一語を出すこと能はず、只だ手を少女のにさし伸べたるのみ。少女は再び身を起 たちま 〔むか〕 〔うかが〕 た ろ 〔へさき〕 〔た〕 う・こか た この ひと かっ せんか てつ

2. 即興詩人 下巻

116 給ひしより、人々は早や我等の生きて邏らざるべきを思ひ給ひぬ。搜索の爲めに聞し遣られし一「 さう もど 艘の舟は、一はこなたより漕ぎ往き、一はかなたより漕ぎ戻りて、末遂に一つところに落ち合 そうせき ゃうに掟てられしに、その舟皆歸り來て、舟も人もその踪跡を見ずといふ。フランチェスカの君 おと ふなびと は我がために涙を墮し給ひ、又ジェンナロと舟人との上をも惜み給ひぬと聞えぬ。 のたま なほ その時公子の宣給ふやう。かくて思ひ棄てんは、猶そのてだてを盡したりといふべからず。若し 、よま ある 舟中の人にして、或は浪に打ち揚げられ、或は自ら泅ぎ着きて、はざまなどにあらんには、 きかっ〔くげん〕 みづかゆ 人に知られで飢渇の苦艱を受けもやせん。いでわれ親ら往いて求めんとて、朝まだきに力強き 〔こぎて〕よたりやと どうくっ みなと〔ふなで〕 なごり 漕手四人を倩ひ、湊を舟出して、ここかしこの洞窟より巖のはざままで、名殘なく尋ね給ひぬ。 し お されど彼窟といふところには、舟人辭みて行かじといふを、公子強ひて設き勸め、草木生ひた たふふ おぼ りと見ゆる岸邊をさして漕ぎ近づかせしに、程近くなるに從ひて、人の僵れ臥したりと覺しきを くわんにく わがきぬ 認め、さてこそ我を救ひ取り給ひしなれ。われは綠なる灌木の間に横はり、我衣は濱風に火かれ ぐわいたう さ、さ一 て半ば乾きたりしなり。公子は舟人して我を舟にけ載せしめ、おのれの外套もて被ひ、手の尖 〔す〕あたた 胸のあたりなど擦り温めつつ、早く我呼吸の米だ絶え果てぬを見給ひぬといふ。われはかくてこ くすし こに件はれ、醫師の治療を受けつるなり。 さればジェンナロと二人の舟人とは魚腹に葬られて、われのみ一人再び天日を見ることとなりし かわ の おき ら およ よこた つひ てんじっ おは

3. 即興詩人 下巻

めに躓くを見る。小なる雙輪車あり。五六人これに乘りて、背後には襤褸着たる小兄をさへ載せ、 〔ラツツアロオネ〕 又この重荷の小づけには、網床めくものを結び付けたる中に半ば裸なる賤夫のいと心安げにう 〔かけあし〕 たきび まいしたるあり。挽くものは唯だ一馬なるが、その足は驅歩なり。一軒の角屋敷の前には、焚火 〔およぎばかま〕タン 〔チョキ〕 〔むか〕〔ゐ〕〔カルタ〕もてあそ ふうきん して、泅袴に扣鈕一つ掛けし中單着たる男二人、對ひ居て骨牌を弄べり。風琴、「オルガノ」 ひびぎかしま をなご トルコ の響喧しく、女子のこれに和して歌ふあり。兵士、希臘人、土耳格人、あらゆる外國人の打ち ねったうざったふさま これ きせうどば 雜りて、且叫び且走る、その熱鬧雜沓の状、げに南國中の南國は是なるべし。この嬉笑怒罵の天 戸オマなはいうこく ばでん ナポリ 地に比ぶれば、羅馬は病幽谷のみ、墓田のみ。夫人は手を拍ち鳴して、拿破里々々々と呼べり。 その 車はラルゴ・デル・カステルロに曲り入りぬ。 ( 原註。拿破里大街の一にして其末は海岸に達す。 ) ら てんいっ けんがう のきとうろうか 同じ聞溢、同じ喧囂は我等を迎へたり劇場あり。軒燈籠懸け列ねて、彩色せる繪看板を掲げた かるわざ さしき むれ り。輕技の家あり。その群の一家族高き棚の上に立ちて客を招けり。婦は叫び、夫は喇叭吹き、 あしもと とも やちゃう 子は背後より長き鞭を揮ひて爺孃を亂打し、その脚下には小き馬の後脚にて立ちて、前に開ける ぼさっ まね 簿册を讀む眞似したるあり。一人あり。水夫の環坐せる中央に立ちて、兩臂を振りて歌へり。是 おきな れ印興詩人なり。一翁あり。卷を開いて高く誦すれば、聽衆手を拍ちて賞讚す。是れ「オランド オフリオゾ」を讀めるなり。 ( 譯者「ム。わが太平記よみの類なるべし。讀む所はアリオストオ の詩なり。 ) つまづ なちふる さう た ギリシア たぐひ , しろ つら よめ つづれ ひち かど ラツ・ハ

4. 即興詩人 下巻

をなご 〔ふたりみたり〕 如き眼を卓上の黄金に注ぎたるなり。若く美しき女子も二人三人見えたるが、その周匝には少年 らうにヤく かつよ 紳士群り立ちて、何事をか語るさまなりき。老いづれはあれど、皆嘗て能く人の心を動しし人 〔キョォル〕 の、今は他の心文牌に目を注ぐゃうになりしなるべし。 もんやう 稍、、狹き室に紅綠に染め分けたる一卓あり。客は柱文銀 ( 「コロンナアトオ」といふ、その文様に 依りて名づく、我二圓十五錢許に當る ) 一塊若くは數塊を一色の上に置く。球ありて此卓上を走 としャ かたへ しろかね〔か〕〔え〕 すみやか り、その留まる處の色は「賭者をして倍價の銀を贏ち得しむ。房より覗ふに、その速なることは みやくはく たちまっくゑ 〔かくし〕さぐ 我脈搏と同じく、黄白の堆は忽ち卓に上り又忽ち卓を下る。われは覺えす兜兒を搜りて一塊の柱 . なげう とど 文銀を取り、漫然卓上に擲ちたるに、銀は紅色の上に駐まれり。監者は我面を注親して、共色の 意に適へりや否やを間ふものの如し。われは又覺えず頷きたり。球は走り、我銀は二塊となりぬ。、 われはこれを收むるを愧ちて、銀を共處に放置せり。球は走り又走りて、銀の數は漸く加りぬ。 くみ 〔かさ〕 運命は我に與するにゃあらん。銀の嵩は次第に大いになりて、金貨さへその間に輝けり。われは そそ いつばい 喉瓏の燃ゆるが如きを覺えたれば、葡萄酒一杯を買ひてこれに灌ぎつ。黄白の山はみるみる我前 家 そび そむ ひやや すく に聳えたり。忽ち球は我色に背きて、監者は冷かに我銀の山を撈ひ取りぬ。われは夢の醒めたる 如くなりき。我がまことに失ひしは柱文銀一つのみと、獨り自ら慰めて次の室に入りぬ。 をとめ た〔みのたけ〕 すがたかたちゑんせん ここには數人の少女あり。中なる一人の姿貌は宛然たるアヌンチャタなるが、只だ身幹高く稍 〔のど〕 ややせばへや よ むらが わが こがね 〔わか〕 おほ うなづ ひと へや めぐり このたく さ その

5. 即興詩人 下巻

族の貴婦人 ラウレオ〔なみき〕 〔セルキエプト〕ひち 山嶽は秀で、草木は茂れり。車は月桂の街を過ぎて客舍の門に抵りぬ。薦巾を肘にしたる くわき ( カメリエリ〕 ひろきざはし 房奴は客を迎へて、盆栽花卉もて飾れる濶き階の下に立てり。車を下る客の中に、稍、、肥えた さうしき る一夫人あるを見て進み近づき、扶けて下らしめ、ことさらに挨す。相識の客なればなるべし。 うるし ひとみ 夫人の顏色は太だ美し。その瞳子の漆の如きにて、拿破里うまれの人なるを知りぬ。 ら もろひと はしため かどぐち われ等の衆人と共に、門口に近き食堂に入る時、夫人は房奴に語りぬ。こたびの道づれは婢一人 〔ゆきき〕 のみ。例の男仲間は一人だになし。かく膽太く羅馬拿破里の間を往來する女はあらぬならん、 いかに 奈何などいへり。 人夫人は食堂の長椅子に、はたと身を倚せ掛け、いたく倦じたる體にて、圓く肥えたる手もて頬を 〔もくろく〕 貴支へ、目を食單に注げり。「・フロデットオ、チボレッタ、フアジヲロ」とか。わが汁を嫌ふをば、 旅 ここにても早く知れるならん。否々、わが「アムボンボアン」の「カステロ・デ・ロヲオ」の如 〔ちとばかり ) 0 ~ くならんは、堪へがたかるべし。「アニメルレ・ドオラテ」に「フィノッキイ」些許あらば足りな ささ はなは たす よ 〔うん〕

6. 即興詩人 下巻

S なる運命もまた定まりぬ。 夜襲 たく あした 天氣好き日の朝舟出して、海より望めばサレルノの美しさは又一しほなるを覺えぬ。筋骨逞まし う・こか かぢかたへうづくま むたりろ き男六人舫を搖せり。畫にしても見まほしき美少年一人柁の傍に蹲りたるが、名を問へばアルフ ガラス 〔す〕〔と〕 オンソオと答ふ。水は綠いろにして透き徹り、硝子もて張りたる如し。右手なる岸の全景は、空 ゑんいう 想のセミラミスや築き起しし「唯だ是れ一大苑囿の波上に浮べる如くなり。その水に接する處に さま あまたどうくっ 〔せりもち〕いただ は許多の洞窟あり。その状柱列の迫持を戴けるに似て、波はその門に走り入り、その内にありて なび しろ たはぶ 〔いははな〕 〔じゃうせん〕あたり 戲れ遊べり。突き出でたる巖端に城あり、城尖の邊には、一帶の雲ありて徐かに靡き過ぎんとす・ ら かの 我等は大島小島 ( マュウリイ、ミヌウリイ ) を望みて、程なく彼マサニエルロとフラヰオ・ジョオ との故鄕の綠いろ濃き葡萄丘の間に隱見するを認め得たり。 ( マサニエルロは十七世紀の一揆 くわいしゃ の首領なり。オペエルが樂曲の主人公たるを以て人口に膾炙す。フラヰオ・ジョオヤは羅針盤を 創作せし人なり。 ) 伊太利に名どころ多しと雖、このアマルフイイの右に出づるもの少かるべし。われは天下の人の ふるさと ぶだう 十ペラ 〔めて〕

7. 即興詩人 下巻

181 颶風 あた もたやすく近づくこと能はざるを奈礒せん。われは必ずしもかの人心より此の如しと設かず。そ ふるまむすめ は人にめづらしがられんとてかく振舞ふ女も少からねばなり。そが上に彼人の身上には明白なら ボデスタ をん・こく ざる處なきにしもあらず。わが聞くところに依れば、市長に二人の妹ありて、皆久しく遠國に住 とっ めりき。その最も少き方の妹は希臘人に嫁ぎたりしに、その夫婦の間に彼の奇しき少女はまうけ られぬといふ。今一人の妹は猶處子なり、しかも老いたる處子なり。四とせ前の頃彼の少女を伴 ひて歸り來りしは、此の老處子に他ならざりき。 あんこく 夜の如き闇黒は急に酒亭を襲ひて、ポッジョが話の腰を折りたり。あなやと驚く隙もあらせず、 かくぜん ら おほいふる かうべた 赫然たる電光は身邊を繞り、次いで雷聲大に震ひ、我等二人をして覺えず首を低れて、十字を空 に晝かしめつ。 あるじ いできたさふら リドすぐ 酒亭の女主人色を變じて馳せ來りて云ふやう。氣の毒なることこそ出來り候ひぬれ。岸區の優れ ふなびとむたり なかんづくあはれ いったり たる舟人六人未だ海より歸らずして、就中憐むべきアニエ工ゼは子供五人と共に岸に坐して待て た マドンナ にか〔すべ〕 たちまかしよう 。いかになり行くことならん。只だ聖母の御惠を祈らんより外術なしといひぬ。忽ち歌頌の聲 たうりつ ひとむらをなご はわれ等の耳に入れり。戸を出でて覗へば、彼の激浪倒立すること十丈なる岸頭に、一群の女子 むれ わか 小兒の立てるあり。小兒等は十字架を捧けて持てり。群のうちに一人の年少き女の、地に坐して ぎようし ひざまくら 海上を凝視せるあり。この女は赤子に乳房を銜ませたるに、別に年稍長ぜる一兄の膝に枕した 〔わか〕かた なは ギリシア ささ ちぶさふく よ かの ひま をとめ

8. 即興詩人 下巻

192 の如しともふべし。あはれ、此舞臺にいくばくの人か登り得べきとおもふに、例の小芝居の とて、中むかしの武弁の上をしくめる大樂劇の、行列の幕あり戦鬪の幕あるものをさへ興行する さ さじき 〔いぶせ〕 〔しばし〕 なるべし。觀棚は内壁の布張汚れ裂けて、天井は鬱悒きまで低し。少焉ありて、上衣を脱ぎ襯衣 こわだか 〔しばしソ の袖を攘げたる男現れて、舞臺の前なる燭を點しつ。客は皆無遠慮に聲高く語りあへり。又少時 かれ ただこ がくじんし ありて、樂人出でて奏樂席に就きぬ。これを視るに、只是れ四奏の一組なりき。彼と云ひ此と云 なほ せつみ ぜんてう おにつか ひ、今宵の受用の覺東なかるべき前兆ならぬものなけれど、われは角せめて第一折を觀んとおも びて、獨り觀棚に坐し居たり。 たちま 場内の女客に美しきはあらずやと左に顧み右に盻しかど、遂にさる者を認め得ざりき。忽ち隣席 あひ かっそれえん に就く人あり。こは嘗て某の筵にて相見しことある少年紳士なりき。紳士は笑みつつ我手を握り あたり て云ふやう。ここにて君に逢はんとは思ひ掛けざりき。君はその邊の消息を知り給ふか知らねど、・ したしなかだち ともしび かかる處にては、折々面白き女客と肩を並ぶることあり。かくて薄暗き燈火は、これと親む媒 ことま いまし 〔ウエルチュウル〕 となるものなりと云ひぬ。紳士の詞に未だらぬに、傍より叱々と警むる聲す。そは開場の曲一 の始まれるが爲めなりき。 音樂は心細きまで微弱なりき。幕は開きたり。只だ見る、男子三人女子二人より成れる一群の とうよう にはかけん一は 唱和するを。その骨相を看れば、座主は俄に畉畝の間より登庸し來りて、これに武士の服を衣せ そでから こよひ ひと た 〔ォルケストラ〕っ ぬのばり この オペラ しよくとも かたへ つひ しっしつ みたりをなごふたり わが 〔ホロス〕 これ ならひ

9. 即興詩人 下巻

二人ありて泅ぎて穴の内に入り、始てその景色の美を語りぬ、その畫工はフリイスとコオ。ヒッシ ュとの二人なりきと云ひぬ。 いはあな ら ふなびとろ 舟は石穴のロに到りぬ。舟人はを棄てて、手もて水をかき、われ等は身を舟中に横へしに、列 きび へいそく しば ぎゅうりゅう ラは屏息して緊しく我手を握りつ。暫しありて、舟は大穹窿の内に入りぬ。穴は海面を拔くこ 〔プラッチョオ〕 もんゐき または と一伊尺に過ぎねど、下は百伊尺の深さにて海底に達し、その門閾の幅も亦略ぼ百伊尺ありと どうくっ へき そいふなる。さればその日光は積水の底より入りて、洞窟の内を照し、窟内の萬象は皆一種の碧 しよくお さうびくわペん がっしゃ , 色を帶び、舫の水を打ちて飛沫を見るごとに、紅薔薇の花瓣を散らす如くなるなれ。ララは合掌 おもひこ して思を凝らせり。その思ふところは必ずや我と同じく、曾て二人のここに會せしことを憶ひ起 まけつおそ すに外ならざるべし。彼アンジェロの獲つる金は、むかし人の魔穴を怖れて、敢て近づくことな かく かりし時、海賊の匿しおきつるものなるべし。 いはあな くわうみやうたちまう くつない 巖穴の一點の光明は忽ち失せて、第二の舟は窟内に入り來りぬ。そのさま水底より浮び出づるが おほよ 如くなりき。第三、第四の舟は相繼いで至りぬ。凡そここに集へる人々は、その奉ずる所の敎 しんぶくどくたた の新舊を問はず、一人として此自然の奇觀に逢ひて、天にいます神父の功德を稱へざるものな し。 にはかしほ いはあなふさ 舟人は俄に潮滿ち來と叫びて、忙はしく艫を搖かし始めつ・そは滿潮の巖穴を塞ぐを恐れてなり 〔およ〕 わが かの ひまっ この あひっ かっ つど よこた

10. 即興詩人 下巻

ナポリのオペラで見たマリプランの姿が融け合ってできたという。 一 3 フィムストロエスーー・ウエルギリウスの「アエネーイス」において、アエネーイスがトロヤの陥落 を語る時のことばの一句 ( 第二巻三二五行 ) 。「我等トロ 1 ヤ人は曾て世にありき。ィーリウムとトロー ヤ人等の大なる名声は過去のものなり。」 ( 田中秀央・木村満三訳 ) 成句として過去の消え失せた栄光をな げく意味で用いられる。 き一 8 やどしつつーー・・やどしし ( 菊版本、縮刷本 ) 。 。、ドヴァ。ヴェネッィアの西方三十余キロ。ヨーロッパ最古の大学都市で、中世、ルネッ サンス期には人文学の一中心地であった。 〃〃トリエステーー・アドリア海をはさんでヴェネッィアの東にある港、工業都市。 一一 0 四加シル年オ・ペリコ ( 一七八九ー一八五四 ) イタリアの詩人。イタリアのオーストリアに対する独立 運動に加わって捕えられ、十五年の懲役刑を宣告され、その後釈放されて引退し神秘主義に帰依した。 「わが獄中記」 ( 一八三一 l) が有名である。 三七 5 プレンタ 川の名。ヴェネッィアのラグーナにそそぐ。 〃 6 聖アントニウス寺 パドヴァのアントニウス ( 一一九五ー一二三一 ) と呼ばれる聖者を埋葬した寺院。 七つの円屋根をいただき規模は大きいが芸術的価値は高くない。 一二三二年着工、一四二四年落成。 ″ヰチェンツアーー・・・ヴィチェンツア。パドヴァから西北に約三十キロ。べリチ山麓にある美しい古都。 ″〃パラヂオーー人一五一八ー八〇 ) イタリア・ルネッサンス期最大の建築家の一人、また古代史研究家。