お茶 - みる会図書館


検索対象: 住んでみたサウジアラビア アラビア人との愉快なふれ合い
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1. 住んでみたサウジアラビア アラビア人との愉快なふれ合い

ンはただニャニヤしているだけ。そのうち仕事の話をやめてしまった。 つぎの日、私はまた彼の事務所にいあわせていた。そこに昨日のオジサンがやってきて、八百 万リヤルから交渉を再開した。なんと九百万リヤル ( 六億三千万円 ) まで上がっていった。それ でもオジサンは了承しなかった。私はこの交渉の最後がどうなったか知らないが、交渉の態度だ けは感、いした。 すべてに焦ってはいけない社会である。どんなに急いでいても、焦りを見せてはかえって遅く なったりすることが多い。私自身も、商売ともなれば、私の交渉の成否にメーカーの工場の何百 人の仕事がかかっているという責任を感じることもあり、必死になる。しかしそれを見せてはい けよい。早急に結論を出そうと焦って顔に出してしまったら最後、徹底的にしごかれると思った ほ , つがよし もし、誰かが客先の前で強烈な発言をして、客先のムードがきつくなったとすれば、 「東京から、はるばるリヤドまで、寝ないで飛行機に乗って、この会議に出ている私たちにお茶 の一杯も出ないのは一体どういうわけか知りたい」 と言う。このあたり日本の感覚とはずいぶん違うが、 「ああ、そうか失礼、失礼」 と言ってお茶を出してくれる。 決裂寸前までいけば、お客にお茶を飲みたいと言って、場をやわらげることもアラビア的な知 恵である。甘いお茶やアラビアコーヒーは、交渉の最終の詰めに思わぬ役割を果たすことがある。 57 - ーー天性の商人たち

2. 住んでみたサウジアラビア アラビア人との愉快なふれ合い

か。出張給仕サービスである。できあがったカプサがお鍋ごと乗っている。これから、四つのお 皿に盛り分け、あつあつを食べさせてくれるのだ。 地面に四枚の大きなカーベットが敷かれた。これで広い居間のできあがり。 少し離れたところに細長く別のカーベットが敷かれ、ここが食堂。焚火も用意された。カプサ を温めなおすのかと思ったが、あとで、お茶のためだとわかった。巨大鍋のなかのカプサは、ま だ火傷しそ、つに熱かった。 いよいよ取りわける。鍋の蓋を取ると、レモンとレーズンが上にぎっしりつまったごはんだっ た。ごはんをすくうのは大型スコップである。パ . サバサとごはんを無造作に載せていく 。工事現 場の様相を呈してきた。黄色の色は上のほうのごはんにだけついていた。人工着色なら、あまり どギ、つノ、 . ないほ , つがしし 最初に上のほうの具の多い部分は別にとっておき、盛り付けの最後に 各皿に均等に載せた。それから、ごはんの上に、別に持ってきた羊肉をポンポンほうり投げて載 せる。どれもニワトリはどもある大きさの、骨つき塊り肉である。 ひとつのお皿を二人がかりでカーベットまで運ぶ。ひとつのお皿のまわりを六、七人で取り囲 んで食べた。私が座ったのは、たまたま背骨のついた肉の部分、つまりヒレのあるところで非常 味 にやわらかかった。ごはんも、レーズンや松の実がたつぶり入って、おいしくできている。いちの おう紙皿やフォークは用意してきたのだが、だれもそんなものを使わない。手づかみである。 ア 食べていると、目の前に動脈の血管らしきものが飛びだしてきた。食欲にさしつかえるといけ ないので、私はまわりからごはんをかけて埋め、とりあえず隠しておいた。

3. 住んでみたサウジアラビア アラビア人との愉快なふれ合い

りである。 まず、アラビアコーヒーが出る。これは、軽く煎 0 たコーヒー豆を挽いてカルダモンの香りを 加え、煮立てたものである。酒の盃のように小さなカップで少量ずつ飲む。砂糖を加えないので、 ちょうどお抹茶のように苦くて、すっきりした味である。私をふくめ、これを好む日本人は多い。 干し柿によく似た、だがも 0 と甘いなつめやしの実がい 0 しょにだされることもよくある。これ は苦いアラビアコーヒーに、じつによく合う。 つぎに小さなガラスのデミタスに入 0 た紅茶 ( シャイ ) がくる。これは、すでに砂糖が入 0 て いて、甘い。ときによると、ミントの香りのついたものが出されることもある。クッキーやケー キが出されることもあれば、果物のときもある。今でこそリヤドはさまざまの輸入果物であふれ ているが、昔はこうしたものの入手が困難であったことを考えると、果物をお客に出すのは、と っておきの贅沢といえるだろう。 果物をだすときは、ビニールのテープルクロスをカーベットの上に広げ、ひとり一人に果物ナ イフを配る。お盆にはオレンジ、りんご、バナナなどがたくさん載 0 ている。ほかにも季節によ り、桃やプラム、それにみかん ( ューソフィーと呼ばれる ) が出たりする。めいめい好きなだけ 果物を剥いて食べ、ティッシュで手を拭いて終わる。 お茶の時間にはいろいろな年齢の女性たちが集まるが、お客のなかでも 0 とも年配の婦人が上 席に座 0 て、尊敬を受けているようだ。女主人は自分でお茶の用意に立っこともあるが、も 0 ば ら中心にな 0 て給仕をするのは、家のなかで一番若い女性である。女主人はその娘なり、妹なり、

4. 住んでみたサウジアラビア アラビア人との愉快なふれ合い

っと上げて、素顔を見せてにつこり笑うと、黙ってお皿を私に渡した。そして、くるりと背を向 けると、走って隣の家に入ってしまった。 あとに残された私は、お皿をもったままばかんと立っていた。なぜなら、そのお皿のなかには 羊の生肉ーー切り取ったばかりの片方の腿・ーーが入っていたから。 、ツジ ( 巡礼月 ) のときだった。この月には多くのイ これは、ちょうどイスラム暦第一二月のノ スラム教徒はメッカに参集する。そうして、いけにえを捧げる。メッカでは、ハッジの一〇日目 し巡礼者たちがそれぞれ羊、山羊、らくだなどを犠牲にする。メッカに行けない人も、家でいけ にえを殺すのだ。そして、その肉は自分の家では食べないで、隣近所に配ったり、貧しい人に どこしをする。こういうことはあとでわかったのだが、 そういう説明を受けてはじめて、羊の生 肉の謎が解けた。 さて、お皿を預かっているので翌日、これに何かお返しの品を載せて隣家を訪問することにし た。シュークリームをいつばい作って持っていった。お隣の夫人はにこにこ笑って迎えてくれ、 お茶を飲んでいけと勧めた。サロンにはたくさんの女性たちと子供たちがいた。親戚や友だちが 集まる午後のお茶の時間だった。 壁ぎわにぐるりとしつらえたアラビア風の座席に、おもいおもいのかっこうで女性たちが座っ きようそく ていた。カーベットの上に直接おいたクッションと背もたれ、脇息がセットになった座席であ る。椅子もテープルもないので部屋が広く使える。 しになるきっ 言葉は何もわからない しかし、好意は伝わる。思うに、お隣の人も私と知り合、

5. 住んでみたサウジアラビア アラビア人との愉快なふれ合い

「気味悪がるといけないと思って、頭は入れるなと料理人に命じておいた」と言った。 ーもない。胃もない。ふつうのサウジ人のやるようにやってほしかったのに・ 「あっ、レバ と、うらめしそうに夫が叫ぶ。 「なんだ、そうか。ひとこと言っておいてくれたらよかった。実は、私もそれが好物なのだよ。 みんなのために取り除くようにしておいた」。モハメッドも残念そうに言った。 日が暮れていった。みんな思い思いのかっこうで、広いカー。ヘットの上でくつろぐ。星が少し 出てきたが、町からあまり離れていないので、地平線が明るすぎてたいした数は見えない。北の 空には北斗七星が見えるぐらい。南の空にゆがんだ四角形のからす座がかろうじて見えた。その ずっと下には、南十字星が出ているはずだが、こうこうとしたハイウェーのあかりでオレンジ色 にそまっているばかりで、星のかけらも見えない モハメッドの使用人たちは、紅茶 ( シャイ ) を作ってすすめてくれる。何度もおかわりを持っ これはやはりアラビア風の気の使いかたで 、お茶のサービスといし てくる。手洗いの水といし ある。 気候もよく、気分もよくて、カーベットの上の話もはずみ、帰りましようと腰を上げたのは、 九時をまわってからだった。 ラマダンはあと三日後に始まる。断食のひと月間は、こんなバーティはとてもできなくなる。 769 ー - ーーアラブの味とは

6. 住んでみたサウジアラビア アラビア人との愉快なふれ合い

すべてに焦るな ある日、私は自分あてに送られてきたビデオテープを受けとりに空港に出かけた。サウジアラ ビアは倫理規定が強く、書籍などの検閲が厳しい。日本で録画され託送されてきたビデオテープ は、空港の税関で検査のために二、三日預けおかれる。預り証を発行してくれるので、それを持 って引き取・りにい 預り証を出したところ、検査官が、 「。ハスホートま と言う。これも通常の手続きであるから、私はパスポートを渡した。すると係官が、 「帰れ、そして二日後に来るように」 と言う。私は驚いた。なぜ。ハスポートを預かられてしまうのか理解できなかった。 「バスポートは明日処分を決めるまで預かる」と一言う。 「私が何をしたのか」と食いさがったら、係官は私が禁止されているビデオテープを持ち込もう としたと一一一一口 , つ。 「冗談じゃない。全部日本のテレビで録画したもので、いかがわしいものは絶対にない」と主張 した。すると係官は「ああそうか」と言いながら、私のテープの一番上の「オーメン 2 」という 一杯のお茶を飲むことで、ゆっくりと交渉していく気であることを相手に理解してもらえるから

7. 住んでみたサウジアラビア アラビア人との愉快なふれ合い

の仲間に入れてもらったはうがすっと楽しい 夜中、突然にごちそうが : サウジのごちそうは出るまでが花。食べ終わったら皆すぐいとまごいをする。それまでお茶を 飲んだり、デーツ ( なつめやしの甘い実 ) をかじったりしながら、話に花を咲かせるわけである。 だから食事時間が真夜中になることも珍しくない はじめて私がサウジ人の女だけのバーティによばれたときには、まさか食事時間が真夜中の 一二時になるとは露知らす、苦いコーヒーと甘いお紅茶を何杯も飲み、とめどなくおしゃべりに 興じ、 ついには順番に踊りを披露しはじめた女の子たちを見るにおよんで、これはひょっとする と食事なしの集まりだったのかと、不安になってきたものだ。 夜が更けるにつれ、だんだん空腹になるが、手洗いに立ったついでにちらっとキッチンを見て も、食事の支度の気配はまったくなし。そろそろ夫が迎えにきてくれる時間だと思ったとき、突 然手品のように溢れんばかりの食べ物が食堂に出現した。アラビアン・ナイトのランプの精の魔 法である。大きな羊の肉、山盛りの果物の数々、いろとりどりのケーキが部屋一杯に華やかに並 べられていた。狐につままれたような気持ちでいると、周りの人たちは器用に片手で羊肉をむし っては、お食べなさいと、次々に私の目の前においてくれる。彼女たちは、羊の下に敷いてある ナツツやレーズンの入ったごはんを片手だけでくるくると小さくまとめては、ばっと口に放り込 んで食べる。 6

8. 住んでみたサウジアラビア アラビア人との愉快なふれ合い

展望車の最後尾の窓の内側の上には歴代のサウジアラビア国王の写真があり、国章が描かれて いる。展望車の窓を通しては走り去った線路は見えない。猛烈な埃を列車が立てて走るからで、 枕木も何も見えない 二重ガラスを通して日の沈む頃、展望車は忙しくなった。日の沈む方角、すなわちメッカに向 かって、展望車の最後尾を使って乗客たちが礼拝を始めた。列車は時速一二〇キロぐらいのスピ ードで走っている。 ふっと見ると、回りの乗客がいなくなっている。食堂車へ行ってみると、ほとんどの乗客が集 まってお茶を飲んでいる。外はもう暮れてきた。アラビア語のメニューを写真にとろうとストロ ポつきのカメラを出したら、全員「撮ってくれ」と言いだし、結局、食堂車を使って、全員で記 念写真をとることになった。乗客約二〇名に食堂のコック、車掌、公安官も加わった。 彼らはお茶を飲みながら夢中になって話していた。公安官が乗客と議論をしている。多分、 まこの列車では、運転している一名以外は全員、この食堂車に集まっているのだろう。右隣のサ ウジ人が私の分のお茶も払ったので、二杯目は私が払った。 旅 列車はまもなくリヤドに着く。思えば、サウジアラビアの国全体が、この過冷房特急列車のよ の うに走っているのではないか。この急速の変化を私たちが動的にとらえなければ、列車の走って いる姿は鮮明につかめない。 、ビ ダンマン・リヤド間の鉄道はいっかジェッダと結ばれ、さらにアラビアのロレンスの破壊した へジャズ鉄道が再建、延長され、ヨルダンやシリアに結ばれれば、リヤドと欧州が直結される可

9. 住んでみたサウジアラビア アラビア人との愉快なふれ合い

のか、それとも信心深いのか、べールをしたままお茶を顔のべールのなかに入れて飲んでいると の妻の説明である。 また別のとき、私たちの家族はリヤドからかなり離れた町のサウジ人の友人の結婚式に招待さ れた。結婚式を行なう家は、例によって多数の電球で飾られているので遠くからもよくわかる。 家の右側の広い空地では何十枚ものカーベットを敷き詰め、左側で羊を料理していた。 結婚式の。ハーティは披露宴とは言えないかもしれぬ。披露しないのだから。新郎新婦がバーテ 。この結婚式の場合も女性は イの席に揃って出てこないし、男性客は新婦の顔は絶対に拝めない 家のなかで集まり、男性は家の外の席で集まっている。 大きな結婚式には何十頭もの羊が料理される。主人は客が充分食べられるように絶えず気を配 り、客の前の皿に引きちぎった肉を絶えまなく、ポンポン投げていく 。脂の塊、胃やレバーも丸 ごと入っていて、私の目の前に出てくる。解剖学の授業のようであるが、おいしい。食べなけれ ば失礼とばかり、何でも食べる。羊の下顎を目の前におかれ、骨の回りについた肉をかじったら、 羊と人間の歯がガチガチ鳴った。 主人がおもしろがって、私の前にいろいろなものを並べる。他の皿からもわざわざ持ってくる。 親切でやってくれているのだが、 暗いので何かよくわからない。丸いものをガブッとやったら何 だかゴムマリみたいなもので、よく見ると羊の目玉がこっちを見ていた。目玉を飲みこんだ拍子 に、まっ毛が喉にひっかかた 食事が終わると、空き地の片すみに特別設置してある手洗い装置、水道の蛇ロで手を洗い、横 70 イ

10. 住んでみたサウジアラビア アラビア人との愉快なふれ合い

すからね」 私たちは空港の検査官の部屋に入っていった。私の友人は係官に挨拶をして、部屋に座り、ま ずお茶を飲みはじめた。それから延々一時間、お茶をお代わりしながら、ゆっくり値切ってくれ た。彼の物腰は低姿勢と礼儀正しさに加えて、相手がいくら言ってもしつこく食いさがっていく 態度であった。 一時間で私の罰金は三分の一になった。私はその場で罰金を支払い、公の罰金の領収書と私の ハスポートをもらって帰ってきた。やはり餅屋は餅屋であった。 粘り勝ち アラビア人は天性の商人であり、交渉のプロである。たとえばアラビア人と価格の交渉をする ときには、こちらが、 「もうこれ以上値引きできない」 と言って、相手の前で黙って座っているだけでは、絶対に注文は出ない。席を立っても駄目、本 気になって、もう駄目と思って、客の部屋を出かけたら注文が出たというケースは楽なほうだ。 サウジアラビアに赴任した当時、私は諸先輩から、 「涙を流すぐらいでは注文は出ないよ。大声で泣くことだ」 とまでアドバイスを受けたことがある。客の無茶苦茶な値引きの要請に頭にきて、こちらの最後 の線をぶつけ、席を立ち部屋を出て、車で門を出かけたら、客に呼び戻されて、「価格は受けた