誰か - みる会図書館


検索対象: ライ麦畑でつかまえて
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1. ライ麦畑でつかまえて

人間があれば、まずは気違いというもんだ。 「どうしてうち〈帰るのが水曜日でなくな 0 たの ? 」彼女はそう言 0 た。「まさか、学校を追い出さ れたりなんかしたんしゃないでしようね ? 」 「だから言ったろう。早く帰してくれたんだ。学校が全部の すね 「追い出されたんだわ ! そうよ、きっと ! 、フィービーはそう言うと、拳で僕の脛をぶつんだよ。 ぶちたいときには簡単にひとをぶっ子なんだ、彼女。「そうだわ ! まあ、ホールデンたら ! 」そう 言って彼女は、手を口にあてたりなんかするんだな。全く、興奮しやすいんだ。 「追い出されたなんて、誰が言った ? 誰も僕が なぐ 「そうだわ、そうにきまってるわ」そう言うと彼女はまた拳で僕をぶん撲った。それが痛くないな んて思う奴はどうかしてるね。「パパに殺されちゃうわよ ! 」彼女はそう言うと、べッドの上にガバ ッと俯伏せになって、頭の上から枕をかぶった。彼女はよくこれをやるんだ。ときどき、まるで気違 いになることがあるんだよ。 「さあ、もうよせよーと僕は言った。「誰も僕を殺しやしない。誰も僕をーーーさあ、フィービー、そ んなもの、頭からとれよ。誰も僕を殺しやしないよ , ところが、彼女は枕をとろうとしないんだな。いやだってことをやらせることのできない子なんだ。 そして「ノ 。、パに殺されるわよって、そればかりを言いつづけてるんだ。枕なんかひっかぶってるも んだから、言ってることもよくわかんないんだよ。 こぶし

2. ライ麦畑でつかまえて

ードセルの友達なんですよ。彼が僕にね、いっ かニューヨークへ行くことがあったら、ぜひあんたとカクテルを一、二杯やったらいいって、すすめ てくれたもんですからね」 「誰 ? 誰の友だちだって ? 」いやはや、まるで虎さ。雌の虎と電話してるみたい。てんでどなら れてるようなんだ。 ドセル。エディ・ ードセルですよ」僕はあいつの名前がエドマンドだったか、 「エドマンド・ 。オノーティで会っただけなんだもの。 エドワードだったか思い出せなかった。たった一度、間抜ナよ。、 「知らないよ、そんな名前の人なんて。こんな夜の夜中におこされて、あたしがうれしがってると でもーー」 ードセルですよ。プリンストンの」と、僕は言った。 「エディ・ 女は、頭の中やなんかで、その名前をしきりと捜してやがんだよ。それが気配でわかるんだ。 ノードセル : : : プリンストンの : : : プリンストン大学校ね ? 」 「そうですよ」と、僕は言った。 「あんたもプリンストン大学校 ? 」 「ええ、まあねー 「そうか : : どうしてて、エディ ? 」と、彼女は言った。「でも、こんな時間にひとに電話をかける 「いったい誰なのよ」彼女はそう言った。 「実はね、あんたのご存しない者でね、エディ・・ 102

3. ライ麦畑でつかまえて

えないで通りの向こう側まで行きついたとこで、アリーにお礼を言ったわけだ。ところが、次の街角 まで行くと、とたんに、また同しことが起こるんだな。しかし、僕は歩きつづけて行ったんだ。立ち 止まるのがこわいみたいだったんだと思うーーーでも、実を言うと、よく覚えてないんだよ。動物園や なんかを通り越して、六十何丁目というあたりへ行くまで立ち止まらなかったことは知っている。そ こまで行って、あるべンチに腰を下ろしたんだ。ろくに息がつけなくて、まだ馬鹿みたいに汗をかい てたな。そこには、おそらく、一時間ばかしも坐ってたろうと思う。しまいに、何をする決心をした かというと、どっか遠くへ行ってしまおうと決心したんだ。二度と家へは帰るまい、他の学校へも二 度と行くまい、そう決心したんだな。フィービーにだけ会って、さよならやなんかを言って、クリス マスのおこづかいを返して、それからヒッチハイクで西部へ出発しよう、そう決心したわけだ。どん なふうにしてやるかというと、まず、ホランド・トンネルまで行って、通りかかった車に乗っけても らって、次から次と乗りついで行けば、数日のうちに西部のどこかに着くだろう。そこはとてもきれ いで、日はうららかで、僕を知ってる者は誰もいないし、そこで僕は仕事を見つけるつもりだったん だ。どこかのガソリン・スタンドに雇ってもらって、ひとの車にガソリンを入れたり、オイルをつめ たりして働くことを考えた。でも、仕事の種類なんか、なんでもよかったんだ。誰も僕を知らず、僕 のほうでも誰をも知らない所でありさえしたら。そこへ行ってどうするかというと、僕は唖でつんば の人間のふりをしようと考えたんだ。そうすれば、誰とも無益なばからしい会話をしなくてすむから ね。誰かが何かを僕に知らせたいと思えば、それを紙に書いて僕のほうへおしてよこさなきゃなんな

4. ライ麦畑でつかまえて

ーテイへ連れてつ ンストンの男から聞いてたわけだ。一度彼は、その女をプリンストンのダンス・ たところが、そんな女を連れて来たというんであやうくみんなから放り出されそうになったというん だな。前 ( ( ノーかなんかをしてたんだそうだ。とにかく、僕は、電話のとこへ行って、そ の女のとこへ電話をかけたんだ。女は名前をフェイス・キャヴェンディシュといって、住所はプロ アームズ・ホテル。はきだめみたいなとこだろ、きっ ードウェイ・六十五丁目のスタンフォード・ しばらくは、留守かなんかなのかな、と僕は思った。いつまでたっても誰も電話に出ないんでね。 そのうちにとうとう誰かが受話器を取ったんだな。 「もしもし」と、僕は言った。女から年やなんかを疑われないように、わざと太い声を出しちゃっ てさ。だいたい僕の声はかなり太いほうなんだけどね。 「はい」と女の声が聞こえたよ。あんまり愛想のいい声しゃなかったね。 「フェイス・キャヴェンディシュさんですか ? 」 「だあれ、あんた ? 誰なのさ、こんなとほうもない時間に電話をかけてよこしたりして」 これには僕もいささかおそれをなした。「あのね、おそいことは承知なんですがね」僕はそう言っ おとな た、うんと大人っぱい声なんか出しちゃってさ。「あんたは許してくれるだろうと思って。とにかく あんたと連絡をとりたくてたまらなかったんですよ」すごくものやわらかな口調で僕はそう言った。 本当だよ。 101

5. ライ麦畑でつかまえて

「それは『ライ麦畑で会うならば』っていうのよ ! 」とフィービーは言った。「あれは詩なのよ。ロ ーンズの」 「それは知ってるさ、ロバ ーンズの詩だということは」 それにしても、彼女の言う通りなんだ。「ライ麦畑で会うならば」が本当なんだ。ところが僕は、 そのときはまだ知らなかったんだよ。 「僕はまた『つかまえて』だと思ってた」と僕は言った。「とにかくね、僕にはね、広いライ麦の畑 ゃなんかがあってさ、そこで小さな子供たちが、みんなでなんかのゲームをしてるとこが目に見える おとな んだよ。何千っていう子供たちがいるんだ。そしてあたりには誰もいない 誰もって大人はだよ 僕のほかにはね。で、僕はあぶない崖のふちに立ってるんだ。僕のやる仕事はね、誰でも崖から 転がり落ちそうになったら、その子をつかまえることなんだーーーっまり、子供たちは走ってるときに どこを通ってるかなんて見やしないだろう。そんなときに僕は、どっからか、さっととび出して行っ て、その子をつかまえてやらなきゃならないんだ。一日しゅう、それだけをやればいいんだな。ライ 麦畑のつかまえ役、そういったものに僕はなりたいんだよ。馬鹿げてることは知ってるよ。でも、ほ んとになりたいものといったら、それしかないね。馬鹿げてることは知ってるけどさ」 フィービーは長いことなんにも言わなかった。 ; 、 力やがて何か言ったと思ったら、それがまた「パ 。ハに殺されるわよ」と、それしか言わないんだな。 「殺されたって平気だよ」と、僕は言った。そしてべッドから腰を上げたんだ。何をしようと思っ 269

6. ライ麦畑でつかまえて

「そうよー・ーーそんなにわめかないで。酔っ払ってるの ? 」 「うん。あのねおし 、し力し ? クリスマス・イヴに行くからね。 しし力し ? クリスマス ツリーの飾りつけをしてやる 「なによ。酔ってんのね。もうおやすみなさい。 どこにいるの ? 誰といっしよなの ? 」 「サリー ? クリスマス・ツリーの飾りつけをしに行くからな。いし力し ? 「わかったわよ。もうおやすみなさし 、。どこにいるの、あんた ? 誰といっしよなのよ ? 」 「誰ともいっしよしゃないよ。おれと僕とわたしだけだ」チェッ、酔っ払ってたんだなあ ! その ときでもまだ僕は自分の腹を押えてたんだ。「おれあやられちゃったよ。ロッキーの一味にやられた うそ んだ。嘘しゃない。サリー ほんとなんだ」 あした 「聞こえないわ。もうおやすみなさい。あたし切るわよ。明日かけて」 「おい、サリー ! 僕にクリスマス・ツリーの飾りつけをやってもらいたいか ? やってもらいた いんだね ? え ? 」 「そうよ。さよなら。うちへ帰って寝るといいわ」 そう言うと彼女は電話を切っちまいやがった。 「おやすみ。おやすみよ、サリ ・べービー。わが恋人、カワイコちゃんのサリーよーと、僕は言 った。どんなに僕が酔っ払ってたか、想像つくだろうか ? それから僕も受話器をかけたんだが、サ 丿ーの奴はちょうどそのとき、デートから戻ったとこなんだろうと思った。彼女がラント夫婦やなん しね、おい、サリー ? 」 、しね ?

7. ライ麦畑でつかまえて

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8. ライ麦畑でつかまえて

のこった、入ってみたら、うまの合わねえ修道僧ばっかしだった、てなことになりかねないからな。 とんまな下司野郎ばっかしでさ。あるいはただの下司野郎か」 僕がそう言うと、アクリーの奴、べッ トの上にがばと起き上がったね。そして「おい」と言うんだ な。「おれやなんかのことなら、なんと言われようとかまやしないが、しかし、おれの宗教のことを ッペコペ言いやがったら 「気にしない、気にしない、誰もおまえの宗教なんかッペコペ言いやしないよ , 僕はそう言って、 丿ーのべッドから下りたんだ。そしてドアのほうへ歩きだしたんだ。それ以上そこの間抜けな空気 にひたっておれなくなったんだな。でも、途中で足をとめると、アクリーの手をとって、盛大にイン チキな握手をしてやった。奴は握られた手を抜きとって「どういうことだ、これは ? と、そう言い やがったね。 「べつにどってことないさ。おまえがすてきな王子様なんで、感謝の意を表したいと思っただけさ そう僕は言った。それを僕は実に誠意のある声で言ったんだ。「おまえはまさにエースだよ、アクリ ー坊や。おまえ、自分で知ってるか ? 」 「キイタふうなことを言うな。そのうち誰かにその 僕は耳をかさなかった。そのままドアをしめて廊下に出ちまったんだ。 誰も彼も、寝てるか外出してるか、あるいは週末を過ごしにうちへ帰ってるかしてたんで、廊下は しーんと静まり返って、気が滅入りこむような空気だった。リーイとホフマンの部屋のドアの外に、

9. ライ麦畑でつかまえて

「必ずしも中国とはかぎらんさ。おれは東洋と言ったはずだ。おい、こんな気違いしみた話を、あ 「いや、僕は真剣なんだ。ふざけて言ってんしゃないんだ。どうして東洋のほうがいいのかね ? 」 「そりや複雑過ぎて簡単には言えんな。東洋人はだね、セックスってものを、肉体的経験であると 同時に精神的経験でもあると考えてるんだ。もしもおまえが、おれのことをーーー」 「同感だな ! 実際、僕もセックスは、君のいわゆるーーーなんていったつけ , ーー肉体的にしてかっ 精神的な経験か、そんなものだと思ってるね。ほんとだよ。しかし、誰を相手にそいつをやるかって ことが問題なんだな。もしも僕が、好きでもない相手とそいつをやるとーー」 「そんな大きな声を出すなよ、コールフィールド。低い声で話すことができないんなら、この話は 打ち切りに 「わかったよ。しかし、聞いてくれないか」と、僕は言った。実際僕は興奮してきて、声が少し高 くなりすぎてたことは事実なんだ。僕は興奮すると少し大きな声でしゃべることがときどきあるんだ。 「とにかく、僕の言うのはこういうことなんだ」と僕は言った。「僕だってね、セックスってものが、 本来は、肉体的なものであると同時に精神的なものであり、また芸術的なものやなんかでもあるはず いちゃ だということは知ってんだよ。しかし、僕が言いたいのはだね、これは誰を相手にしても ついたりなんかしてる女の子の誰を相手にしてもーーーそんなふうになるとはかぎらないよね。そうだ ろう、君 ? 」 くまでも続けるつもりか ? 」

10. ライ麦畑でつかまえて

「笑わせないでよ。馬にも乗れないくせに」 「誰が乗れないっていうんだい ? 僕なら乗れるよ。間違いなく乗れる。二分間も教われば乗れる ようになるんだ」と僕は言った。「そいつをむしるのはおよしー彼女は腕にはった例のバンソウコウ をむしってやがんだよ。「その髪の格好は誰が切ったの ? 」僕はそう言った。誰がやったのやら、彼 女の髪がひどく間抜けな感じに切られてるのに、このときやっと気がついたんだ。いやに短いんだよ。 「余計なお世話よーと彼女は言った。ときどき彼女は、とても意地悪になることがあるんだ。全く 意地が悪くなることがあるねえ。「兄さんは、また、全部の課目にみんな失敗したんでしよう」そう 彼女は言った とても意地の悪い口調でね。しかしまた、その言い方は、ある意味で少々おかしく もあったな。ときどき、まるで学校の先生みたいな口のきき方をするんだからね。まだちっちゃな子 供なのにさ。 「いや、そんなことはない」と僕は言った。「英語はパスしたよーそう言ってから僕は、別になんの しり 意味もなしに、フィービーのお尻をつねってやった。横を向いて寝てるもんだから、お尻がこっちに 」こ僉くつねったわけしゃない 突き出してたんだ。まだお尻なんかないみたいな子供なんだけどさ。 ( 弖 んだけど、それでもフィービーは僕の手をひつばたこうとした。しかしうまく行かなかったんだ。 それから、いきなり、彼女はこう言った。「ああ、兄さんたら、どうしてそんなことをしたのよ ? 」 そんなことっていうのは、僕がまた退学になったことを言ってるんだ。その彼女の言い方を聞くと、 だろう 259