ーン内から出る汚染物資の源泉としては次 のものが挙げられる。 ー汚水国立公園当局は汚水が直接浜辺 や遊泳水域、あるいは水道用水として利 用する地下水に流れ込まないような手順 を考案すべきである。そのためには汚水 システムに大がかりの投資を行う必要が しばしばある ー農薬国立公園当局は、たとえば蚊を はじめ農業の病害虫の防除に使用する農 薬が近隣の河川、沼沢、湖沼、海洋に流 入したり、保護地域や漁業、遊泳水域に 悪影響を及ばしたりしないような手順を 考案するため、農業関係や保健関係の省 庁と協力すべきである 国立公園当局はゴミ、廃棄物な ートバイは規制するなどがあげられる に移転させる、ディスコは規制する、オ すべきである。一例として空港は遠隔地 静寂さを打ち破らないような手段を考案 りものにしている場合には、騒音がその 主として穏やかなたたずまいを最大の売 価値を破壊するものはない。その地域が に常時さらされることほど、この財産の 値を基盤としている。したがって、騷音 大抵の場合静寂さに裏打ちされた美的価 ー騒音国立公園内の観光客用ゾーンは る とする。海洋投棄処分は避けるものとす 廃棄物発生者に請求する戦略を含むもの 義、収集、取扱い、処分に関わる経費を 処分場およびその選定に関する基準の定 生源目録の作成、官民の処分慣行の調査、 含む固体廃棄物発生に関する予備的な発 考案すべきである。これには長期予測を どの系統的収集が行われるような手順を 6 2 . 航空機の騷音は本来広範囲にわ たるものなので、ゾーン全体に影響を及ば すことが考えられる。小さな国立公園では 大きな国立公園とは比べものにならないほ どその影響が大きくなるので、空港に代わ るものを見つけることに特に注意を払う必 要がある。空港から著しい悪影響を受けな いですむほど大きな国立公園はほとんどな 6 3 . ステップ 7 : 進行状況を監視す る 計画立案が科学的に行われないこともあ るので、国立公園内における観光開発には 主要パラメータの自動監視システムを内包 させるべきである。すなわち、自然環境へ の影響、資源に関する紛争の解決、マスタ ープランの実施、地域間の協力、給水とそ の水質、建設活動の影響と品質、公害防止 などの点について監視すべきである。監視 対象要因ごとに、国立公園当局は監視の手 順とスケジュールを考案すべきである。ま た、たとえば各要因に関する年次報告書な どが必要となろう。 Ⅳ . 2 ゾーニング いったん保護地域の境界線が設 定されると、陸水域の評価分類システムが 必要となる。管理ゾーンを設定するこの基 本ステップは国立公園の資源を適正に認知 し保護するために実施するものであり、観 光面を含め、適正な管理をスムーズに実施 させるものでもある。資源管理の手段とし てのゾーンは、物理的開発はどこで行うこ とができるか、そしてさらに重要なことに どこで行えないかを明示するものである。 各保護地域ごとに提案されるゾーンはその 保護地域の設定目的と一貫性のあるもので なければならないが、一般的に保護地域は 次のゾーンに分割することができる。すな
第 1 章 保護地域における観光の費用と便益 1 発展途上国における国立公園観光 ジャワ島のシポダス保護地や、タイのカ オヤイ国立公園、インドのバラトプール国 の役割 1 1 . 国立公園には、流域保全、土壌 立公園なども、国内観光やレクリエーショ 保全、地域的気候の緩和、重要動植物種の ンが国立公園利用の大半を占めている。 個体数の維持、学術調査、教育、周辺地域 の環境条件の改良、文化的価値の維持など 2 国立公園観光の経済学 1 2 . 多くの発展途上国にとって、自 数多くの機能がある。さらに、国立公園は 全ての発展途上国において、観光の推進上 然地域の観光は経済的に重要なものである。 重要な役割を果している。特に東アフリカ、 国立公園が観光向けに適正に開発されてい るか否かを問わず、事実上全ての熱帯地域 南アフリカ、コスタリカ、工クアドル、イ ンド、ネパール、インドネシアなどの多く にとって、自然の魅力が観光客誘致に利用 されている。特に際だってすぐれた自然の の地域が国際観光の中心地となっている。 アジアや南米のほとんどの国では、国立公 魅力をもつ国々においては、国立公園の設 園の観光が主として国民的な現象となって 置を正当化する第一の理由として観光を挙 きており、つい最近まで外国人による観光 げることが多い。たとえばケニアでは、観 は二次的な目的であるにすぎなかった。 光が外貨獲得のために最も有効な方法であ プラジルやアルゼンチンにまたがるイグ り、 1 9 8 8 年の外国為替勘定に 4 億ドル アス国立公園は、観光客が年間 2 0 0 万人 を計上している。 を越えるが、そのほとんどが近隣諸都市か ルワンダの火山国立公園では、ゴリラ見 学に訪れる観光客は毎年、人場料として約 らの訪問者である。 1 0 0 万ドルの外貨をもたらし、その他の 支出として 2 0 0 万ドルから 3 0 0 万ドル の外貨をもたらしている。 ネパールは 1 9 8 3 年に、ヒマラヤに魅 了された観光客からおよそ 4 5 0 0 万ドル の収入を得ている。 工クアドルのガラパゴス国立公園は、年 間少なくとも 7 0 万ドルの観光収入を直接 計上しているが、年間 2 5 0 0 万ドルを越 える金額を稼得するだけの潜在能力がある といわれている ( リンドバーグ、 1 9 9 1 年 ) 。 ケニアのアンポセリ国立公園における経 こに例示するイエローストーン国立公園など 済モデルでは、ライオン 1 頭あたりにつき の ) アメリカの国立公園制度は旅行者を引き付ける数 では世界最大の制度である。 年間 2 7 0 0 0 ドルの観光収人を上げてお 撮影 : 工クトール・セバリョス・ラスクライン
第 6 章 保護地域におけるスポーツハンティング 8 5 . 国立公園ではスポーツハンティ ングを許可しないのが普通である。それは、 保護されている動物を動揺と死亡という非 自然的なレベルにおける悲惨な状態にさら し、時にはこれらの動物を保護区から排除 してしまう。あるいは、せいぜい狩猟対象 種を人を恐れ、めったに姿を見せない動物 に仕立ててしまうだけである。このような ケースの狩猟は通常自然志向型の観光にと って有害である。 しかし、スポーツハンティング 自体も観光の一形態であるので、他の保護 地域形態の中には、狩猟用保護区のような 管理の主目的としてハンティングを含むと ころもある。国立公園内あるいはその隣接 する緩衝地帯においてハンティングを許可 すべきか否かという問題は、個々の状況に 大きく左右される。状況によっては、狩猟 用保護区は野生生物にとって保護されてい るハビタートの延長部分として役立っこと もあり、また、地域の雇用源、財源、食肉 源、その他有用な製品源として役立っこと もある。地元民あるいはハンターによる管 理型狩猟も、保護区から食糧を求めて近隣 の農地に入り、農作物を荒らす動物を排除 するという面で、あるいはそのような動物 の被害に対する補償という面で有用なこと もある。 8 7 . 外来種の頭数を減らす手段とし て狩猟を認めている国立公園もある。たと えば、ハワイの火山国立公園における野生 のプタとヤギ、 ニュージーランドの一部の 国立公園におけるシカとエルク ( ヘラジカ ) などがこの例である。いずれにしてもスポ ーツハンティングは、国立公園に関する管 理問題として、通常は取り組むこともない 例外的ケースなので、こでは簡単に触れ るだけとする。 8 8 . 狩猟用保護区の運営に成功し、 利益を上げることは極めて技術的な問題で あるとともに、本書の対象外の事柄である。 ( 有用な参考書としては、レオポルド、 1 9 3 3 年 ; コーフリー 1 9 7 7 年 ; フ ァンラビエレン、 1 9 8 3 年などがある。 ) 要点は、このような保護区では以下の事柄 を満足のいく形で行うための措置を講じな ければならないということである。 ー狩猟方法を決定すること ー狩猟を認める地域の境界を定めること ーその地域を利用するライセンスを受けた ハンターの人数をコントロールすること ー猟期を制限すること ーバランスのとれた割当量と捕獲制限数を 設定すること ー捕殺された動物をを最大に活用する ー捕殺対象動物の割当数量をコントロール する ー狩猟動物の年齢・性別などをコントロー ルする ( たとえば、メスの狩猟を禁止す ー捕殺した動物について数量、品質、ハン ターの業績をモニタリングする ー使用する銃砲、火薬類をコントロールす る ー傷ついた動物の処理方法についてスタッ フを訓練しておく
で事業を行うこと。 2 . 有能で技術的にすぐれた人材が確保 できるよう、国内及び国外での一般的及び 技術的訓練計画から便益を得ること。 3 . 観光業者及び観光旅行の活動を調整 し、そのサービスの質的向上を図るべく、 国内及び国外組織を通じて、業者間ならび に公的機関との間で協力を図ること。 第 1 0 条 観光規約 守しなければならない。 的モラルを尊重し、施行中の法や規則を順 されている政治的、社会的、道徳的、宗教 1 . 観光客は通過滞在地点において確立 第 1 1 条 すべきである。 解と友好関係を育て、恒久的な平和に貢献 際レベルの双方における人びとの間の理 観光客はその行動によって、国内及び国 このような通過滞在地点において観 されている薬物の取引、運搬、使用 (e) 麻薬および / もしくはその他の禁止 ( d) 売春目的で他人を利己的に利用しな 入れ社会の文化を受容すること ( c ) 人類共通の遺産の一部をなす、受け 会的、文化的差異を強調しないこと (b) 自国と地元住民との間の経済的、社 尊敬を示すこと の自然遺産や文化遺産に対して深い に最大限の理解を示すとともに、そ ( a ) 受け入れ社会の風習、信仰、マナー 光客は、下記の事柄を行わなければならな を行わないこと 第 1 2 条 ある国から他の国へ、あるいは受け人れ 国の中を旅行中は、観光客はしかるべき政 府の施策によって、下記の事柄から便益を 得ることができるものとする。 ( a ) 行政上および財政上の規制の緩和 (b) 観光サービスの提供業者により提供 できる交通や宿泊の最善の条件 第 1 3 条 1 . 観光客は自国あるいは外国において、 観光客の興味の対象となる地域や地点に自 由に到達でき、かっ現行の規則と制限に従 って、通過滞在地点における移動の自由を 与えられるものとする。 2 . 観光客の興味の対象となる場所への 到達及びその通過滞在の期間中、観光客は 下記の事柄から便益を得ることができるも のとする。 の既存施設の利用 (f) 宗教上の実践およびその目的のため びに司法手続きおよび保証 ( e ) 観光客の権利の保護に必要な行政並 的なアクセス ( d) 国内外の通信における迅速かつ効率 スへの容易な利用 果的予防に関する情報、保健サービ な公衆衛生、伝染病および事故の効 (c) 特に宿泊、飲食、輸送に関する完全 ての権利の保護 (b) 身柄及び所有物の安全、消費者とし 客観的で正確かっ完全な情報 中に提供される状態と設備に関する 提供業者から、その通過滞在の期間 ( a ) 公式の観光団体および観光サービス
最近は、「自然保護の手段 エコツーリズムセンターの建設計画 としての観光」というプロジェクトに 護 づくりに必要なもう一つの大切な面 保 着手した。それは、観光と自然保護と 然 は、建築学的デザインや建築技術に対 の関係にかなりの関心が払われている自 する新しいアプローチの必要性であ のに、それがよい関係かそうでないか る。このセンターは、自然地域の中に を証明するよいモデルがあまりないこ こういう地 作られなければならない。 とに気付いたからである。体系的な方 域は、比較的隔離された場所にあった 法論や現在の世界的技術水準の調査、 りする。もちろん、壊れ易い生態バラ 世界規模の戦略がとり急ぎ必要であ ンスがこの地域の特徴である。 る。この活動と成果の大半は、一九九 だから、建物設備すべては、環境へ 二年二月ベネズエラのカラカスで開か の影響が最小限であり、一定レベルの れる第四回国立公園保護地域世界会議 自給自足ができる方法で計画されなけ で発表される予定である。 ればならない 「エコテクニック」と 大まかに定義されるこの方法は、建設 結論として、自然資源は、賢明にま 計画作りや設備の構成において進めら た持続的な方法で、つまり資源の本当 れるべきである。具体的には太陽エネ の価値を知った上での方法で使われな ルギー、雨水の再利用、ゴミのリサイ いとしたら、結局、資源の悪化や損失 クル、エアコンに代わる自然循環換気 を引き起こすことになる。経済的な価 装置、食物生産の高度な自給自足、土 値も、生態学的資源の保護のために役 地で入手できる建築材料で土地のやり ため、はにガイドライ立てられなければならない。世界のど いたくや便利なものから逃れることな 方で作る、自然環境にとけ込んだ建築 ン作りを約束した。それには次のようの国でもエコツーリズムは環境保護的 外様にする、などである。言い換えれのだ。 な論点が盛り込まれている。観光からな開発の一つの方法であり、社会と経 ば、建築物が回りの土地や植物相と 競「たり、目だ「てしま「てはいけな伸び行くエコツーリズムに対するその地域の人々にもたらされる利益が済を発展させる実際的で効果的な方法 増加する方法と手段、国立公園に適しといえる。そして、地球上にある自然 。その土地の主役は、野生動物と植—20Z の役割 た観光レベル、個々の地域で価値ある及び文化遺産の保全を行っていくため 生なのである。 一九八五年、 ( 世界観光機構 ) 自然の管理方法を改善する、国立公園の一番強い手段である。しかし、時間 また、宿泊施設は、地味で落ち着い て快適で、きれいで、飾らないのがよによ「て「環境保護における観光事業内にふさわしい観光の基本施設の設はあまり残されていない。実際の行動 。これは、お定まりの観光に勝るエの役割に関する一般むけ報告書」が作計、旅行者〈のより教育的で解説的ながいますぐ必要なのである。 コツーリズムの利点とな「ている。工成され、とによ「て「観サービスの提供、国立公園や保護地域 ( 本稿は筆者の了解を得て、千種仁美、渡 コツーリストがしたいのは、自然や土光と環境のための共同宣言書」が署名の価値を旅行者により正しく認識して辺稔、菅野曉太氏の協力によ 0 て第四回国 z もらうこと、である。現在これは出版立公園保護地域世界大会資料から翻訳され 地文化とふれあうことであり、コンク調印された。この二つの文書に関連し、 たものです。 ) リートジャングルや現代都市生活のぜ国立公園での適切な観光開発を進める物にするため改訂中である。 7
な快適性や、水資源、エネルギーの多大な使用による過剰なサービスは必要な い。そのために起こる地域の環境破壊は、地域の自然や文化そのものを壊しか ねない。それを防ぐためには、快適性が少々犠牲になってもやむをえない。ェ コツーリズムの宿泊施設は、あくまでエコツーリズムを実現するためのもので あり、他の旅行形態のサービスとは一線を画すべきである。 次に宿泊施設の地域貢献について考えると、 6 . 地域の自然と文化を解説する。または地域の自然文化に関するガイド、展示、 施設、ガイドブックを紹介する。 工コツーリズムの宿泊施設の大きな特徴は、宿泊機能だけに終わらず地域のイ ンタープリテーションの中心になることである。そのためには、宿泊施設自ら その役割を自覚し、積極的にその地域の特徴を解説することである。もし、そ れが不可能なときは、適任者を紹介するとともに、展示施設やガイドブックで 内容を十分紹介できるようにしておくことが必要である。 7 . 地域の経済 - 文化のネットワークに入る。 いくら良い宿泊施設でも、地域の中で孤立し、特殊なものであっては困る。地 域のつながりを大切にし、地域経済や文化に貢献し、地域の理解の上で運営さ れるべきである。宿泊施設がその地域のインタープリテーションの中心になる ためには、その地域における経済・文化のネットワークに入り、常に地域から 新しい情報を得るとともに、エコツーリズムを通じて得た情報を地域にフィー ドバックするシステムも持っことが望ましい。 8 . 地域の研究、保護、教育施設との情報交流を行う。 宿泊施設がエコツーリズムを通して得た情報や、エコツーリストがもたらす情 報は、地域にとっても大切である。工コツーリストが必要とする情報は宿泊施 設でのみ集められるものではないから、常に窓口を広くし、地域と外部を結び 付けるように努力するとともに地域に存在する研究、保護、教育施設と常に情 報交流し、地域の自立のための研究、保護、教育施設をもりたてていかなけれ ばならない。 9 . 地域の産物を中心とした食事、販売物を提供する。 地域を知るには地域のものを食べる事が一番であり、地域の農業経済にも効果 的なので、宿泊施設の食事はなるべく地域の食料で賄うべきである。また、特 産品の販売にも十分に力を入れ、エコツーリズムのもたらす経済的効果が宿泊 施設だけに終わらないようにすべきである。工コツーリズムが地域に理解され、 継続していくには、なんらかの地域経済への貢献、特に農業経済の維持強化に 貢献することが必要である。また、特産品や土産品の販売や開発にあたっては、 消費者の立場も理解できる宿泊施設が、積極的に協力しなければならない。
第 3 章 利用に対する制約 : 観光収容能力 いったん国立公園の用地選定が 終了すれば、持続可能な利用ができるよう にその用地のビジター収容能力を予測する 必要がある。 WTO 、 UNEP 、その他関 係機関ではこの問題に深い関心を寄せてき 、、ここに収容レベル決定に関わる主な 要因を概説する ( 「観光と環境」を参照 WTO/UNE P 合同技術報告書シリーズ、 Ⅲ . 1 環境収容力の定義 1 9 9 2 年、「観光収容力」 ) 。 アー客は、いろいろな活動に参加するとい ( 自然ッ 慎重に定義しなければならない。 求められるものではない。個別になおかっ 的一容量変数に関わるものであり、簡単に 準値には 3 つの一物理的、心理的、生態学 求される基準で割る。しかし、この個人基 を ( 通常「 / 人」で表される ) 個人に要 式を作った。これは観光客が使用する面積 域における観光客の収容能力を予測する公 3 8 . プロン ( 1 9 8 5 年 ) はある地 的要因である。 めの主要な要因は ( a ) 環境的 ( b ) 社会的 ( c ) 管理 政の判断による。環境収容力を予測するた 終的には持続可能な利用レベルに関する行 さまざまな要因によって決定されるが、最 ということを意味している。環境収容力は の概念は、ビジターの利用には限界がある 供できるビジターの利用レベルをいう。こ ほとんど影響を及ばさない、ある地域が提 に高い満足感を味わせながら、観光資源に ・・環境収容力 " とは、ビジター うことを念頭に置いて ) 一旦この平均基準 値を特定できれば、次の公式を当てはめれ ばよいことになる。 観光客の使用する面積 平均個人基準値 一日に受け人れられるビジター総人数 は次のようにして求める。 一日のビジター受入総数 = 環境収容力 X ローテーション・係数 ただし、ローテーション係数 = 観光客に開放されている時間 / 日 平均滞在時間 3 9 . 環境収容力を求める際に考慮す べき環境要因は次の通りである。 一面積と利用可能スペース。たとえば、プ ラジルのイグアス国立公園の面積は 1 7 万ヘクタールであるが、到達可能な地域 はごく限られている 一環境の脆さ。地域によっては土壌がたい へん脆かったり、観光客の利用で影響を 受けやすい場合がある。 ( 例 : 砂丘の植 生、高山地帯など ) ー野生生物資源。環境収容力は野生生物の 数量、多様性、分布によって左右される。 乾季と雨季のパターンや極めて魅力的な 種が見られる可能性など、それらの集中 している地域を記録する 環境収容力 =
9 9 . 案内標識の完備したトレイル センター このトレイルは、距離はさまざまである これは、各保護地域に関する情報を詳し が、通常は短い距離のものが多い。グルー く展示できる特別の建物である。こでは プや個人ビジターがところどころで立ち止 壁やパネルに貼りつけた写真、保護地域の まり、興味のある風物を観察する。いろい 地形モデル、台紙に張った標本や動物の遺 ろな地点の情報を記載した解説書をビジタ 骸、食物連鎖図表などの展示品がある。ビ ーに提供するが、これらの地点には番号標 ジターセンターはビジターが悪天候で足止 識などで印を付けておくのが普通である めをくったとき、 ( ツアーガイドの到着を 解説書の代わりにトレイルにそって、解説 待つ、特別地域への入場許可を受けるなど 板に情報を記載しておく方法もあるが、 の ) 時間待ちをするとき、あるいは国立公 のような解説板は周囲の自然とマッチせず、 園の情報を得ようとするときなどにたいへ またステンレスのような耐久性素材で作ら ん有用な施設である。また、自然の役割、 ない限り管理に手間がかかる。もし解説書 生命の歴史、その他短期滞在では見ること であれば、ビジターが持ち帰り、他の人に のできない特徴、さらには夜間あるいは他 見せることも可能であるから、案内標識式 の季節における国立公園の姿などの展示を トレイルの教育効果は倍加する。 行う上でも役立つ。インフォメーションセ ンターは必要に応じて拡充することもでき 1 0 0 . 次に、ガイドがビジターグル れば、教育センターを併設することもでき ープを率いて徒歩、馬、ポート、バスなど る。その好例がネパールのロイヤルチトワ で観察、あるいはルート沿いに自然の特徴 ン国立公園、オーストラリアのシャノン国 を説明したり話し合ったりするツアーもあ 立公園、ガンビアのアプコ原生自然保護地 る。このようなツアーは、ガイドが特定の 域などに見られる。 ビジターグループに合わせた説明を行うこ とができるという利点はあるが、案内標識 1 0 3 . 教育センター 式トレイルの場合よりも人手が要ることは これは、より正式の教育用展示を行うこ 明らかである。この方法は、ガイドが保護 とのできる特別の建物である。通常ここに 地域の職員ではなく、学校の生徒に対して は自然教室や討論会などを開催する施設が は先生の、またツアーグループに対しては あり、スライドや映画の映写用オーディオ リーダーの役割を演ずるときに特に有用で ビジュアル機器を用意していることも多い。 ある。いずれの場合でも、ガイドはビジタ 教育センターやインフォメーションセンタ ーに通じる言語に堪能でなければならない。 ーでは継続的にオーディオビジュアル番組 を上映することもある。そのよい例がウガ 1 0 1 . 原生自然トレイル ンダのマーチソン滝国立公園やコスタリカ これは端的には、ビジター自身が " 自分 のポルカンボアス国立公園などに見られる。 で見て、自分で発見 " しながら探検するこ とを基本方針とした、標識の整備されたト 1 0 4 . 植物園、動物保護施設 レイルである。原始的なキャンピングサイ こは、ビジターが保護地域の中で見ら トや避難小屋などを用意することもある。 れる何種類かの動植物をじっくり観察でき、 野生状態で見たものをいっそうはっきりと ビジターインフォメーション 識別できるたいへん興味深い場所である。 0 一三 1 0 2 .
国立公園や保護地域への観光は、たとえば、海中透視船によるタイのコフィフイ島近海のサンゴ礁一周コースに参加して いる人々 ( 写真 a ) やオーストラリア西部のドライアンドラ森林保護区へバスで向かう地元の生徒たち ( 写真 b ) に見られ るように、国内旅行が原点であるかもしれない。一方、タンザニアのンゴロンゴロ自然保護区 ( 写真 c ) やアメリカのヨセ ミテ国立公園 ( 写真 d ) などでは、国際観光が重要な役割を果たしている。 撮影 : ジ = フリー・ A ・マクニーリ ( 写真 a ) 、工クトール・セバリョス・ラスクライン ( 写真 b 、 d ) 、ジ = ームズ・ W ・ トーセル ( 写真 c ) 。
3 . 宿泊施設として ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ Yes ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ 地域の自然と文化を伝えるのにふさわしい立地を選んでいる 地域の自然と文化に悪影響を与えない規模である 周辺環境に与える影響 ( 景観、エネルギー、排水等 ) に配慮している 宿泊者に必要以上の快適さを提供していない 地域の人が中心となって管理、運営、経営している 地域の自然と文化の解説を行っている 地域の研究・保護・教育施設 ( あるいは団体 ) との情報交流を行っている 地域の産物を中心とした食事・販売物を提供している 工コツーリズムを通じて得た情報を地域にフィードバックしている 地域の環境教育行事の企画や実施に協力している 4 . 保護地域 ( 国・地方自治体 ) として ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ Yes ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ 保護地域の収容力・最大入れ込み数を設定し、過剰利用にならないようコン トロールしている 自然へのインパクトが大きな利用を制限し、比較的インパクトが小さな利用 を奨めている 地域の自然や環境教育プログラムに関する情報提供を積極的に行っている 調査研究に基づいた、生態系管理、環境教育を実施している 環境教育施設 ( ビジターセンター、ネイチャートレール等 ) を整備し、指導 者を配置している 保護地域内の民間自然保護団体やボランティアによる環境教育活動を支援し ている 工コツーリズムの企画者やガイドに対する学習・研修の機会を提供している 保護地域内にエコツーリズムのモデル地域を設定している 工コツーリズムを保護地域の管理計画の中に位置づけている 工コツーリズムから、保護地域の管理に必要な資金を還元させるしくみをつ くっている 観光が自然や地域経済に与える影響をモニタリングし、将来的なエコツーリ ズム計画にフィードバックしている