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検索対象: (財)日本自然保護協会資料集第35 NACS-J エコツーリズム・ガイドライン
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1. (財)日本自然保護協会資料集第35 NACS-J エコツーリズム・ガイドライン

・保存するための物件。特定の地物の 阻止あるいは抑制するための地域。 保護を中心とした相対的に狭い地域で ある。 Ⅶ . 生物自然・人類学的保護区 現代のテクノロジーに左右されない状 Ⅳ . 自然管理区 / 野生生物サンクチュアリ 態で、環境と調和した生活を送る地域 自然において、重要な生物種・種のグ 社会の生活様式を認める地域。ここで ループ・生物群集・環境の物理的特徴 は原住民による資源の利用は伝統的な の永続的な保全のため、特定の人的操 形で行われる。 作を必要とする場合、これらを保護す るために必要な自然条件を確保してい Ⅷ . 多目的利用地区・資源管理地区 る地域。ある種の資源を限定的に収穫 自然保護は主として経済活動を支える することは認める。 という目的に限定し、水、木材、野生 生物、牧草、アウトドアレクリエーシ V. 景観保護区 ョンを持続して提供するために設置す 通常のライフスタイルと経済活動にお る ( ただし、この地域の中には特定の いて、一般の人々にレクリエーション 保全目的を達成するための特定地区を と観光による娯楽の機会を与えながら、 設けることもできる ) 。 人間と土地の調和のとれた相互作用を 特徴とする、国内的に重要な風景を維 ※保護地域は現在 6 つに区分されている。 持している地域。 1994 年 1 月にアルゼンチンで開催され た第 1 9 回 I U C N 総会では、第 4 回 C Ⅵ . 資源保護地域 N P P A ( 世界国立公園保護地域会議 ) 将来の使用のため、ある地域の自然資 の原案をもとに、ⅦとⅧを削除し、この 源を保護し、適切な知識と計画立案に 2 地域を I からⅥまでのバッファーゾー 基づいた目的が確定するまで、資源に ン的地域として位置づける決議が出され 影響を及ぼすおそれのある開発活動を た ( 19 ・ 57 ) 。 ェクアドルのガラパゴス国立公園は、発展途上国の保護地域が大きな経済的重要性を獲得してきた典型的な事例である。 撮影 : 工クトール・セバリョス・ラスクライン

2. (財)日本自然保護協会資料集第35 NACS-J エコツーリズム・ガイドライン

3 ー 4 ) 保護地域 ( 国・地方自治体 ) のガイドライン 3 . 1 . 工コツーリズムガイドライン く提言 > 保護地域の収容力を科学的に設定し、自ら遵守するとともに、関係者にそれ を守らせる 収容力 (Carrying capacity) とは、その保護地域が受け入れることのできる施 進されるべきである。 域の自然の理解に役立つような利用はインパクトが小さい状態に保ちながら促 ションや自然へのインパクトが大きい利用は排除されるべきであるし、保護地 トロールされる必要がある。保護地域の中で行われる必然性が低いレクリエー のものが自然への接触度とインパクトの大きさを評価した上で、きちんとコン 工コツーリズム的なものであるべきであり、アウトドア・レクリエーションそ クリエーション利用が混在している。しかし、保護地域での利用は、本来全て 利用のコントロールが十分ではない多くの保護地域では、いろいろな種類のレ 大きくてインバクトが小さい利用を促進する。 3 . 自然への接触が少なくてインバクトが大きい利用を排除し、自然への接触が 措置を講じるべきである ( 注 2 ) 。 管理当局は保護地域に入れ込みのできる定員を設けて、これが守られるような る。こうした状態を過剰利用 (over us e) という。過剰利用を防止するために 荒らしなどによって生態系への影響が出るとともに、利用の快適性も損なわれ 通手段の台数などでも示される。最大入れ込み数を超えた利用があると、踏み 徒歩以外の方法で入ることが許されている場合 ( 例えば自動車 ) には、その交 「最大入れ込み数」とはある地域に一度に入ることが許される利用者数をいう。 ルする 2 . 保護地域の最大入れ込み数を設定し、過剰な利用にならないようコントロー が望まれる ( 注 1 ) 。 管理当局以外のものが行う全ての行為を審査して、これを厳正に守らせること 基づいて、収容力を定め、自ら施設の整備などにあたってこれを守るとともに の設定とその遵守が必要である。管理当局は保護地域の自然環境調査データに するこうしたマイナスの影響を防止するためには科学的な調査に基づく収容力 をもたらす。また過剰な入れ込みは快適な利用の障害にもなる。保護地域に対 は、保護地域の生態系や景観に不可逆的 ( 一度壊れたら元に戻らない ) な変化 設や利用者などの上限と定義される。収容力を超えた施設や利用者の入れ込み

3. (財)日本自然保護協会資料集第35 NACS-J エコツーリズム・ガイドライン

「 N A C S ー J 工コツーリズムガイドライン」 発行にあたって 最後に、このガイドライン作成のため助成金をいただいた PRO NATURA に 参考になれば幸いです。 いたしました。この資料集が自然保護を目的としたエコツーリズムを企画・実施する際の が 1 9 9 2 年にまとめた「国立公園と保護地域における観光推進ガイドライン」等を掲載 らをまとめたものです。また、資料として、 IUCN 、 UNEP と WTO( 世界観光機構 ) 場からエコツーリズムのガイドライン作成のための検討委員会を設けました。本書はそれ NACS ー J はこのような経験から、エコツーリズムの本来の目的である自然保護の立 えりも町のゼニガタアザラシウォッチングッアーへの協力などを推進してきました。 しました。この他にも、自然に親しむ宿ネイチャーイン (Nature lnn) 登録制度、北海道 ' 9 1 年はスイス・アルプス、 ' 9 2 年にはスリランカへのツアーを実施し、報告書を刊行 制度を視察し、日本の自然保護にフィードバックするために実施された研修ツアーで、 た。過去に 2 回実施した、プロナトゥーラ・エコツアーは、自然環境保全のための組織・ NACS ー J はこれまで、エコツーリズムに関するさまざまな取り組みを行ってきまし リズムの定義が出され、生態系への配慮、環境教育の提供などが唱えられています。 中国で開催された、第 1 回東アジア国立公園保護地域会議のワークショップではエコツー 1 9 9 3 年に 地元住民や観光客に対して環境教育の場を提供する、としています。また、 の保全資金を生み出す、②自然保護と同時に、地域社会の新たな経済手段を創り出す、③ ン」によると、エコツーリズムが従来の観光と異なる点として、①途上国の自然保護地域 I U C N ( 国際自然保護連合 ) がまとめた「国立公園と観光保護地域の開発ガイドライ どを起こしかねないものまでが「エコツアー」を名のる心配が出てきました。 目的地となった保護地域には何の利点ももたらさず、ゴミの問題や地域文化への悪影響な れば既成の観光ルートに飽きた旅行者にものめずらしい場所への旅行を提供するだけで、 ー」に関する明確な規定やガイドラインは日本にはありませんでした。そのため、ともす が数多く企画・実施されています。しかし、これまで国内はもとより海外への「エコツア ですが、昨今の環境保護プームを反映してか、新しい旅のスタイルとしての「エコツアー」 研究・探勝する」ツアーとされています。もともと欧米の環境教育の中から生まれたもの 工コツーリズムは、「環境に与える影響を最小限に抑えながら自然に触れ、自然環境を より御礼申し上げます。 1 9 9 4 年 8 月 1 日 財団法人日本自然保護協会会長 国際自然保護連合日本委員会委員長 沼田 眞

4. (財)日本自然保護協会資料集第35 NACS-J エコツーリズム・ガイドライン

って何なんだ 2 観光、エコツーリズム、保護地域 ー国立公園保護地域委 員会 ェクトール・セバーリョスラスクライン 旅行者の楽しみと 自然保護のバランス 観光は、世界的現象として、この二 ー三〇年の間で飛躍的な伸びを示して いる。また、観光は独立した民間産業 としては世界最大であり、多くの研究 者が二一世紀の初頭には、最高の収益 を生み出す産業になると予測してい る。一九八九年中に世界中で旅行した 人は、四億一一千万人であり、約四〇〇 億ドルが消費されたと言われる ( 世界 観光機構 WTO 1990 ) 。 最高の伸びを示しているのが、いわ ゆる「冒険旅行」と呼ばれる分野であ り、保護地域への旅行や、エコロジカ ルな観光っまりエコツーリズムを含ん でいる。伝統的な団体旅行に比べたら まだ需要は少ないが、し ) くつかの国で は重要性を持ちつつある。 観光は、その国に社会経済上の大き な利益をもたらす。地方の雇用に貢献 し、地方経済を潤し社会を繁栄させ、 外貨を獲得し、地域の輸送道路の改善 にひと役かったり、娯楽施設やサービ スが完備されることになる。これらの 社会経済上の利益は、環境へプラス効 果をもたらすこともある。農業に適し コスタリカなどの熱帯林保有国では、生物の多様性を守るため、資源の切り売りに対す る代替案として、自然破壊につながらない旅行「エコツーリズム」が注目されています。 一方、「野生動物に出会うツアー」「大自然にひたるツアー」など、自然を求めてでかけ る企画をよく目にするようになり、そういったツアーによる悪影響を心配する声も耳にし ます。 そこで、 IUCN ( 国際自然保護連合 ) が中心になって進めているエコツーリズムのガイ ドライン作りについてご紹介したいと思います。 ( 保護部国際担当 ) 工コツーリズム ていない土地を保全目的に有効に活用 するようすすめ、自然植生のまま広域護 保 に残せることもある。また、観光から 収入を得るために、自然地域が大切で あることを一般の人々や政府役人に納 得させて保全活動を進めることにもな る。 しかし、不適切な観光開発、これは 主に伝統的な団体旅行の産物だが、こ の開発が保護地域の質を損ない、経済 的社会的環境面で周辺地域へ思いもよ らない効果を与えることも十分考えら れる。だから、旅行者の楽しみと自然 保護の間にはほど良いバランスが必要 である。このバランスを追求すること こそ、観光の概念と哲学を保護地域や エコツーリズムに特徴づけるものであ る。 ふつうの旅行者と エコツーリストのおおきな違い 人口増加や都市生活の重圧が人々を 静かな自然へと導き、国立公園や保護 地域を訪れる人の数は増している。も ともと国立公園への旅行は、国内から 始まったが、海外への旅行も重要な要 素となってきている。東、南アフリカ、 コスタリカ、インド、、不ノ ドネシアという所へである。先進工業 国に住む人が、自然やエキゾチックな z 文化・外国旅行に、さらに深い興味を 示す傾向は年々増加している。自国で鵬

5. (財)日本自然保護協会資料集第35 NACS-J エコツーリズム・ガイドライン

はじめに 1 . 世界の人口の増加や都会生活の慌 て、 1 3 0 カ国以上の国で保護地域が展開 ただしさによって、人びとの間に自然の中 されており、現在、地球の陸地面積全体の に浸りたいという気持ちが強まり、国立公 ほば 5 パーセントを占めている。 園や保護地域を訪れる人びとの数が増加し ている。国立公園を対象とした観光は、伝 3 . 国内のニーズや優先順位、あるい 統的には国内観光に限定されたものであっ は法律、制度、財政上の援助の程度に応じ た。しかし、東アフリカ、南アフリカ、コ て各国の保護地域制度は多種多様である。 スタリカ、インド、ネパール、インドネシ また、保護地域が提供するサービスや価値 の範囲も、ある管理目的には合致するが、 ア、オーストラリア、アメリカ合衆国など の地域にとっては、国際観光も重要な要因 別の管理目的には合致しないといった性格 をもっている。そのため、 I U C N ( 国際 である。 自然保護連合 ) では保護地域分類定義シス 2 . 保護地域は、特に世界の自然遺産 テムを確立するようになった。その中でも っとも有名なのが国立公園 ( カテゴリーⅡ ) ・文化遺産の保全を通じて、人間社会の持 続に重要な貢献を果している。その価値は、 であろう。国立公園はおよそ 1 4 0 0 箇所 自然の豊かさを表示している地域の維持や が設定されており、その面積は約 3 億ヘク 生物の多様性の保全をはじめ、周辺地域の タール ( ほばインドと同じ面積 ) に及んで 環境的な安定性の保全も含めて、幅の広い いる。 ものである。保護地域は、限界土地の農業 開発や合理的活用、調査やモニタリング、 自然の保全、自然教育、レクリエーション、 の観光 観光などの機会を提供している。したがっ (i) ダイナミックな世界的現象として ての成 ひで億 2 よも。おが輸 の間 4 9 ここ れ近構 」方」に ら最を 動際で 9 光国べ国の国 知的門 も較部 済に全、は、、年先観を 活国体 1 観調進光他 経年界 0 に展 1 なやどるて比一 しはの な 1 世年発 9 度行な 、 0 が 9 高旅品でとム体 額 1 なの製 ムズ全 、主 9 は - ( 、 の 1 数た 金、うで学稼ズリ業 界 。総っ 1 の O よ中化を 世るのあ、ルのの、貨一ッ光 日でたド国国物外ツ一観 コャ 光て人人ま億 ( 衆の産に 観った万 。 5 た合そ農上エチり よし 0 イあ 2 れ力、や以 に来 0 べ 6 さリも車る . ネで 5 る象 4 つき 9 調てらメて動す 現一 と行 4 年ったアい自出

6. (財)日本自然保護協会資料集第35 NACS-J エコツーリズム・ガイドライン

る。国立公園当局は資源開発の調和を保っ 回復ゾーンには最も有効なサンゴ礁を含 とともに、可能であれば、観光開発を地域 めるものとし、グラスポートやシュノー 文化や地域の生活方法にとけ込ませるメカ ケルによる観光客の魚介類観察とも組み ニズムを創設すべきである。沿岸部や島し 合わせるべきである ) ょ部のハビタートにおける観光開発におい て観光計画立案者は次のような種類の資源 ーマングローブマングロープの生態系 の問題点に直面する可能性がある。 は、商業的に重要な魚類やその他の海生 生物の採餌産卵場所として大切な役割を ー釣り特定地域における生活物資市場 果たしている。マングロープの生態系は や中小市場レベルにおける魚釣りは長年 潮間帯における淡水あるいは海水の移動 にわたり供給と需要との間のバランスを を調整するだけでなく、広範囲の生物種 作り出してきた。ところが大規模な観光 にハビタートを提供している。したがっ 開発に刺激されて需要が大幅に伸びてく て、これを保護することはサンゴ礁水域 ると、伝統的漁業によって従来保たれて における生産性の維持にとって必要不可 いたバランスが崩れてしまうことがある。 欠である。マングロープの環境の管理保 これによってたちまち過剰漁獲に陥り、 全については、適正な国家政策が確立さ 価格は高騰し、地元民へのタンパク質供 れつつあるので、観光開発計画ではこれ 給量が減少することになる。したがって、 を順守すべきである 観光開発計画の一環として漁業管理を改 善していかなければならない。そのため ー希少地域自然地域が観光客用の施設 に必要な措置としては、資源量判定のた やそれに伴う地元民の定住によって危険 めの漁獲量データの報告制度 ; ハビター にさらされている場合には、希少地域の トの破壊防止や、必要に応じた漁獲禁止 管理は緊急に行うべきである。民間資金 による生息水域の保護 ; 稚魚の保護を目 による開発は、ホテル建設予定地を大変 的とした漁網や手網のメッシュ規格の設 美しく希少性の高い海岸地帯や海浜にで 定と施行 ; 禁漁で守られる魚影回復ゾー きるだけ近接させて、選定しようとする ンの設置などが挙げられる。 ( この魚影 例が多い。したがって、海岸地帯におけ る利用目的の大半がレクリエーションで ある場合、あるいは優れた観光ポイント が観光施設密集地に近接して発見された 場合には、開発に先立って観光資源埋蔵 量の調査やゾーニング、管理計画などを 実施し、貴重な自然地域の保全や一般利 用が確実に行われるようにすべきである。 ー自然の価値がきわだって優れた地域 湿地、海中林、サンゴ礁、極相の雨林な どー自然状態で一次生産性の高い地域に ついては、保全や保護管理面において高 い優先順位を与えるべきである。破壊や を 資源の観光用利用と地域住民のための利用との間で 問題が生じないよう、入念な調査を実施しなければな らない。ネパールのチトワン国立公園では専門家が住 民と意見交換を行っている。 撮影ジェフリー・ A ・マクニ

7. (財)日本自然保護協会資料集第35 NACS-J エコツーリズム・ガイドライン

らの動物が死ぬより生きているほうが ずっと価値があることは明白である。保護地域での さらに、公園が集約農業に使われたとエコツーリズムの計画づくり すると同じく〇・八ドルにしかならな 世界中のどの国の政府も、自国の保 いが、公園が観光目的に使用されれば 年間一ヘクタールあたり四〇ドルの収護地域のために適切な管理計画をたて 入を得る計算になる。 なければならない。この管理計画には、 保護地域のあらゆる観光活動を調整す エコツーリズムが国の政策の中で高る明確なガイドラインと規制を盛り込 い優先権をもち、それが発展途上国なむべきである。また、保護地域での観 ら、観光事業を行う保護地域の付近及光やエコツーリズムという事象を包括 びそこに住む住民を含んでかなりの労した計画づくりの必要性もある。 力がつぎ込まれることになるだろう。 この計画づくりには、さまざまな部 普通こういう地域の住民は、能率の低門 ーーー政府、個人企業、地方住民と組 い経済手段しかもたず、非常に生活水織、自然保護 zoo 、国際機関など 準が低いのが特徴であるが、こういう を効果的、積極的に取り人れなけ 人々にとって、新しいしつかりとした ればいけない。国の観光会議の中で旅 経済手段となりうる。また、住民たち行・ホテル・レストランの業者、また、 が、その自然地域の最適な管理人となエコツーリズム活動にたずさわるその り保全者となり得る利点も含んでい 他のサービス投資家たちを奨励するの る。だから、彼らの暮らしは、そこのである。入場料、売店、寄付を奨励す 環境がどれくらい自然のままに保護さるなどエコツーリズムの財源確保のた れているかに大きく依存するといえめの適切な方法も取り人れなければな る。時に土地の住民は、生まれ育ったらない。エコツーリズムの計画づくり 土地 ( 景色、植物、動物 ) の自然に関の方法論には、道路、トレイル、輸送 して、祖先から受け継いだ重要で実用機関、ホテル、公園の維持と監視、マー 的な知識を持ち合わせている。だから、ケティングなどの要素も考慮されなけ これまでのリゾートホ 彼らはある程度のトレーニングを積んればならない。 で容易に正式な自然ガイドになりうるテルに対して、エコツーリズムセン のだ。多くの場合、地方の社会組織は、 ターの概念が推進されるべきである。 適切な管理トレーニングをうけた上このセンターには、旅行者に対してオ で、公園の観光サービスについての特リエンテーションをする自然解説セン 許事業者となり得るのである。 ターが含まれるべきである。 NACS-J の企画による 海外へのエコ・ツアー始まる ! NACS-J では、 1990 年度から PRO NATURA ( プロ ナトウーラ ) から受けた基金をもとに、全国の自然保護 ' ミミ、 = 豊、 活動および研究グループに助成する TPRO NATURA FUNDJ (). N. ファンド ) を設け、自然保護の科学的基 礎を明らかにし、国際的理解に沿った具体的な保全計画 : 、 を進めています。そしてこのたび、 PRONATURA と 共に世界の自然環境に関する研修の機会を専門家と関係 者に提供する「 PRO NATURA 工コ・ツアー」を企画 しました。工コ・ツアーは、 1991 年度から原則として毎 年 1 囘世界の自然環境保全のためのすくれた組織・制度一、 を視察し、日本の自然保護にフィードバックするための 研究・研修ツアーです。このツアーを行ってゆく中で、 工コツーリズム本来の姿を具体化し、公募や一般応募の 形式もとり人れた日本におけるエコツーリズムのスタン ダード作りもめざしたいと考えています。 第 1 回目の研修グループ作りにあたっては、ツアーの 主旨とテーマにあわせて、ふさわしいと思われる方々に 対してご案内状をお送りし、参加可能な方々によって研 修グループを構成する予定です。また、少人数のために コスト高になることから、今回は企画主催者より参加費 の半額を助成します。 今年度は、第 1 囘目としてヨーロッパアルプス高山帯 の自然保護区と国立公園体系・利用施設などの現状を視 察・研究し、スイスでは IUCN や WWF 本部への訪問も 予定しています。 期間 : 1991 年 9 月 11 日 ( 水 ) ~ 22 日 ( 日 ) 11 泊 12 日 参加人員 : 20 名 対象者 : 自然保護団体、動植物専門家・研究者、自然 公園施設管理者、山小屋経営者、報道関係者 自然保護 3 写真提供スイス政府観光局 1991.8. No. 351

8. (財)日本自然保護協会資料集第35 NACS-J エコツーリズム・ガイドライン

持続的成長を達成するには、地球の土地の一部を保護地域として確保すること が必要である。そのような保護地域は、人々のために自然と文化の遺産を保存す ることにより、また、人口増加に伴う生態系のバランスをとることにより人間社 会に貢献する。 しかし、保護地域を守らないことは、大きな損失であり、特に発展途上国でそ れがいえる。これらのコストを償うために多くの国が国立公園における観光事業 を推進している。そのような動きは、人々の自然と接したいという願望をかなえ るだけではなく、つぎの世代へ引き継ぐべき自然の遺産を認識する機会を与える。 国立公園や他の保護地域における観光事業は、資金調達メカニズムとしてひい ては自然保護の一手法となる。しかし、このメカニズムはツーリズムの形態や管 理、レベルがその地域に適切なものであり、地域の環境収容力が考慮されてはじ めて可能となるであろう。 各国が国立公園や関連保護区域を持続的に管理していくのを援助するため、 w T O と U N E P は協力してガイドラインを出版した。また、顧問として 1 U c N の多大な助力を受けた。 このガイドラインはつぎに上げるような国立公園や関連保護区域の管理に携わ るすべての人々に利用されることを目的とした実作業用文書である。 ー国立公園の管理者およびスタッフ ー州や郡、あるいは地方機関の設立した公園を含む関連保護区域の管理者 ーエコツーリズム事業の立案、展開、また場所決定に責任のある国立観光局の 人事担当者 ー公園や保護区域のある地方の委員会の委員 国立公園におけるツーリズム活動によって、自然保護への支持と、持続性の原 則に対する尊重を確かなものにしようと努める人々にとって、このガイドライン は現場で役立っ包括的な参考書となるであろう。

9. (財)日本自然保護協会資料集第35 NACS-J エコツーリズム・ガイドライン

いては第 1 表を参照のこと ) 。各種の保護 地域間の相違点は、管理目的の違いにある。 すなわち、地域住民に便宜を提供するよう 計画された範囲の違いにある。本書におい て、「国立公園」と「保護地域」という用 語は互換性のある形で使用しており、国際 的に認められたある種の保護状態にあると ともに、ある程度の見学や観光が認められ ている自然地域を意味する。 (iii) 本稿の目的 9 . 環境保護における観光の役割に関 する一般論文は ( 1 9 8 3 年に ) WTO が 作成し、観光と環境に関する共同宣言につ いては、 U N E P とともに署名している。 これら 2 種類の文書の中において、また国 立公園と保護地域におけるより適切な観光 開発を奨励する中で、 WTO と UNEP は 下記の諸点に取り組むガイドラインを作成 するため、 IUCN と契約を交わした。 ー保護地域内やその周辺に住む地域住民が より一層社会的・経済的便益を観光から 取得できるよう、これら住民を包含した 方法や手段 ーそれぞれの国立公園について、どの程度 の観光が適切であるかということに関す る決定 ーそれぞれの地域における自然資産の管理 方法の改善 ー国立公園における適正な観光基盤の設計 ー訪問者に対するよりよい教育・解説サー ビスの提供 ー国立公園の価値について来訪者が今まで 以上に評価できる体制の推進 ー国立公園における観光活動が国立公園に 対する自己資金調達機構としていかに役 立っか、また自然保護の手段としていか に役立つかという点の確認 (iv) 本稿の対象 1 0 . 以下に述べるガイドラインは第 一義的には、発展途上国の国立公園や保護 地域を対象としたものであり、これらの国 々における国立公園・保護地域管理計画の 作成改正の一助となることを願うものであ る。 第 1 表保護地域の分類と管理目標 すべての保護地域では、人間の占拠と資 源の利用をある程度管理している一方で、 管理の程度にかなりの許容差がある。保護 地域において許容されている人間による使 用の度合を上から順に並べると次のように 分類できる。※ を持つ国内的に重要な自然地物を保護 特に重要であったり、ユニークな特徴 Ⅲ . 天然記念物 / 自然ランドマーク 相対的に広い。 目的の搾取的利用が禁じられていて、 大きな変化が加えられておらず、商業 これらの自然地域は人間の活動による レクリエーション用に保護する地域。 自然地区や風致地区を、学術・教育・ 国内的あるいは国際的に重要で優れた Ⅱ . 国立公園 自然のプロセスを維持する地域。 間に荒されない状態で自然を保護し、 っ進化的状況において維持するなど人 例を保持する、また遺伝資源を動的か 育に活用する自然環境の生態学的典型 学術研究、環境モニタリング、環境教 I . 学術自然保護区 / 厳正自然保護区

10. (財)日本自然保護協会資料集第35 NACS-J エコツーリズム・ガイドライン

たような「自然系の保全は、数量化や貨 幣換算ができない社会的な目的に基づい て、ある程度は合理化されるであろう」 ということについて以下に例を掲げる ー特に、保護がいかに教育に直接的な便益 を提供したかを示すための測定をその保 護の前後に行うことができるとすれば、 学生数、学生のグループ数、年齢層、教 育機関数は、教育に対する保護地域の価 値を意味する ー研究に対する保護地域の価値は、研究者 の人数および研究プロジェクト、研究課 題、研究発表の件数で測定する ー利用の規模を測定するための保護地域へ のビジター数、バス台数、船舶数、グル ープ数などの計数測定。これら計数測定 では、総数あるいは州人口、国内人口に 対するパーセンテージとして表せば、 の保護地域の社会的価値を測定できる 5 国立公園に対する観光のマイナス 2 2 . 国立公園はたとえ保護されてい ても、適切さに欠ける管理・周囲の人口圧 カ・観光客の過剰利用などによる劣化に対 して免疫をもっているわけではない。今日 国立公園や保護地域の多くが直面している 最緊急課題のひとつは、自然環境の中でレ クリエーションを求めるビジター数の増加 にどう対処していくかということである。 ツーリストが訪れるような場所 は、荒らされてはひとたまりもない、脆弱な 生態系を支えているところが多い。たとえ ば、ガラパゴス国立公園に対する当初管理 計画では、最大ビジター数を 1 万 2 0 0 0 人としていた。ところが実際のビジター数 は、 1 9 7 5 年の 7 5 0 0 人から 1 9 8 7 年には 3 万 2 5 9 5 人に増加し ( リンドバ ーグ、 1 9 9 1 年 ) 、このようなコントロ ールされていない過剰な流れが、著しい環 境劣化を引き起こしているのではないかと 懸念する研究者は多い。 2 4 . 観光が保護地域の野生生物にマ イナスの影響を及ばす場合もある。たとえ ば、チーターやライオンは 6 台以上の車に 囲まれると獲物を捕獲しなくなると報告さ れている ( ウェスタンおよびヘンリー 1 9 7 9 年 ) 。アンナプルナとサガルマータ では、トレッキングを行う人びとが、持続 不可能な方法で天然資源を利用している。 燃料用に木材伐採するため深刻な環境劣化 を引き起こしている。 機関から適正な注目が払われないことが とんど魅力がないことが多いので、管理 をもっ地域は、逆に観光客にとってはほ ープ湿地の大部分など ) 重要な保全価値 ( たとえば、広大な熱帯雨林やマングロ いる ( 1 9 8 0 年 ) ウスパシフィック大学が文書にまとめて その他の社会文化的影響については、サ 域住民が見物に来てもよいはずである。 のために設置した保護地域についても地 一地域住民のためではなく、外国人の便益 果としては次のような項目が挙げられる。 2 5 . その他、注意すべきマイナス効 撮影 : ジェームズ・ W ・トーセル 真は、アンポセリ国立公園 ( ケニア ) の見物客たち。 光車両の台数を入念に監視することが必要である。写 ライオンの生活を妨害しないためにも、接近する観