人 - みる会図書館


検索対象: 楽しい昆虫採集
274件見つかりました。

1. 楽しい昆虫採集

少し用語にこだわってみよう。「人は : と一言一つけれど、ヒトはいっから ヒトなのであるか。八万年ほど前のクロマニョン人からか、それとも四十万年 前のネアンデルタール人からか。それよりすっと前、一七五万年前のアウスト ビテクス ラロピテクスなど、「猿 , とついているところを見ると、とてもわれわれと 話の通じる相手ではあるまい 一応、われわれの系図の始祖はネアンデルタール人程度ということにして、 彼等が何のために虫を捕ったか、といえば、それは食うためにきまっている。 彼等がマンモスや鹿や野馬を狩る絵はよく見るけれど、そういう景気のいいこ とを毎日やっているわけがない。第一、そんなことをしていたら、たちまち獲 物を狩り尽くしてしまう。 日常の食生活は木の実、草の根、それに虫、というところであろう。 原始人が石を起こし、朽木を掘り崩して虫を探し、毛むくじゃらの太い指で 掴まえて、ばっと口にほうり込む。彼等が虫の定義にこだわるわけはあるまい 人はなぜ虫を捕るか

2. 楽しい昆虫採集

を人れる広ロビンを、薬品は、固定液 ( 氷酢酸 アルコール液漬け標本 1 対エタノール 3 の混合液、または—燗パー ーセント チョウ、ガ、甲虫、トンボ、セミ、ハチなどセントエタノール ) と、保存液 ( 間パ エタノ 1 ル ) を用意する。生きている幼虫は固 の卵、幼虫、蛹等の標本を作る必要がある場合 は、アルコール液漬け標本がよい。生きていた定液に漬けて殺してから保存液の人った管ビン に入れ、卵や死んだ幼虫や蛹は、直接保存液の ときの色彩を保つことは困難であるから、あら かじめカラー写真を撮っておくか、彩色スケッ入った管ビンに人れ、中に消えないように鉛筆 チをしておく。エーテルで麻酔させると、撮影書きのラベルを人れて、脱脂綿で栓をする。こ れをさらに保存液の人った広ロビンに沈めて、 やスケッチがやりやすい 蒸発を防ぐように蓋をして、保存する。保存液 ◆標本の作り方 はどうしても蒸発するので、ときどき補給する 容器は、標本を人れる管ビンと、その管ビン必要がある。 210

3. 楽しい昆虫採集

昆虫採集のすばらしさを知ってもらいたいためである。 昆虫採集は、学問、芸術、スポーツ、娯楽等の要素をすべて兼ね備えたすば らしい趣味である。しかも幼年から老年まで誰でも楽しむことができる。 最近、休日がふえたり、定年になることをひどく恐れている人が多いという。 何をして時間を潰せばよいのか分からないのだそうである。生涯教育とか生涯 学習とかの必要性が盛んに言われているのも、人間の寿命が延びてこのような 人がたくさんいるからなのかもしれない。しかし、昆虫採集を趣味としている 人にとって、これはまことに不思議な、理解しがたいことである。愛好家にと っては、休日ほど待ち遠しいものはないし、やりたいことが山ほどあって、定 年を待ちきれないで勤めを辞めてしまう人も希ではない。また、昆虫採集に熱 中した人は、みんな熱列な自然愛好者である。世間が思っているような悪質な 自然破壊者や変質者などわれわれの知るかぎり一人もいない。 一口に昆虫採集といっても、採集、標本作製、コレクション、標本の同定 ( 種や属を決定すること ) ・研究、飼育・観察等いろいろの段階や過程がある。 この趣味はます、山野を駆け巡る健康的なスポーツであり、発見の驚きと喜 びを与えてくれ、魚釣りに勝るとも劣らす人間の狩猟本能を満足させてくれる。

4. 楽しい昆虫採集

出ている採集風景を見ると、その当時の捕虫網というのは両手で操作するもの であった。 右の図のように湾曲した二本の木製の棒の間に網をとりつけて、それではさ むように飛んでいる虫を採るのである。 現在では金属製の丸い枠にナイロンや絹製の柔らかい網をとりつけて蝶の翅 がいたまないようにしている。 と人に 里かいし いや目立たないように緑がいし その網の色も白がいい よって好みはさまざまであるけれど、最近は赤いネットを持つ人も増えている。 たとえばアゲハの仲間が赤いツッジの花に惹かれるように、赤いネットを振る と蝶が寄ってくるというのである。しかし、山に行って一人、赤い網を振りま わしていると目立つから、物見高い人が寄ってくることもたしかである。

5. 楽しい昆虫採集

虫のジャポニスム 東京上野の国立西洋美術館で開かれていた「ジャポニスム展」を見に行った。 「十九世紀西洋美術への日本の影響。という副題がついている。早く見に行か ないと終わってしまうと、あせりながら、なかなかその暇がなく、と、 ど実は忙しいわけではないけれど、何となく期限ぎりぎりになってやっと見て きた。 同じような経緯をたどった人がいつばいつめかけて、よほど背の高い人間で 。といって最前列の柵の前は人 なければ後ろのほうからは見ることができない でぎっしりである。イスム ( イズム ) という言葉にはいろいろな意味があるけれ ど、こうして舶来の有名な展覧会が、身動きできないほど混んだりするのも日 本的特性、つまりジャポニスムではないかと思えば腹も立たない。仕方がない から、比較的人の空いているところをちらほらと眺めて、あとは家でカタログ をよく見ようと思って帰ってきた。なるほどカタログがよく売れるはずである。 しかし、私にとっては幸運なことに、その、人の空いているところというの

6. 楽しい昆虫採集

が鉢合わせして不快な思いをするのも、車で行る行為と誤解されて、ただでさえやりにくくな けるポイントに多い。 っている時代であるから、「密猟者」とか「心 ある程度採集に慣れてき たら、人の行かないような所へ積極的に行ってないマニア」などと呼ばれないように、一人一 つも人がくれぐれも注意しなければならない。 新産地を見つけることをお勧めしたい。い 車で通り過ぎていた所の近くに豊産地があった、 ◆採集地案内 などとい一つことはよく聞く一請である。もつばら 電車とバスを利用してリュックを担いで採集に採集地案内には、大勢の人が何年もかかって 行く人が、よいポイントをたくさん知っている調査した結果を集積して書いてあることが多い ということもよくあることである。 ので、書かれている種類が採れなくても腹を立 また年によって発生時期もか 北海道や南西諸島へは少なくとも一週間くらててはいけない。 なり違うので、一度行って採れなくても、あき いの計画で行ってみたいものである。現地でレ ンタカーを利用すれば、行動範囲もずっと広が らめずに時期を変えて行ってみるほうがよい。 るであろう。 ベストシ 1 ズンには多くの採集家が鉢合わせす 採集という行為はどうしても自分本位になりることも希ではない。 がちである。これは一言うまでもないことだが、 現在手に入りやすい採集地案内書を紹介して 旅行先では、法律や条例に違反するような行為おく。定価は発行時のものである。 や、土地の人に迷惑をかけるような行為は厳に ◎『蝶の採集マップ関東中部編』西山保典 慎まねばならない。昆虫採集が自然保護に反す編著 ( 一九八四 ) 朝日出版社八八〇円 1 ラ 9

7. 楽しい昆虫採集

ツマジロウラジャノメ、ヒメヒカゲ、シロオ ラナミジャノメ、コジャノメ、ギンイチモン ビヒメヒカゲ、アカセセリ、コキマダラセセリ ジセセリ、ホソバセセリ、チャパネセセリ、 スジグロチャパネセセリ、ヘリグロチャパネ◎ササ類 ( アズマネザサ ) ヒカゲチョウ、クロヒカゲ、サトキマダラヒ セセリ、ホシチャパネセセリ、キマダラセセ カゲ、ヤマキマダラヒカゲ、ヒメキマダラヒ リ、ミャマチャパネセセリ カゲ、オオチャパネセセリ、コチャパネセセ ◎ジュズダマ リ、イチモンジセセリ クロコノマチョウ、ウスイロコノマチョウ ◎スゲ類 ( 鉢植えが便利 ) ◆人工採卵法 オオヒカゲ、キマダラモドキ、ウラジャノメ、 野外で早が採れたら、胸部を圧迫したりしな いように気を付けて、中型以上は通気がよいよ うに三角紙の両端を切って、革製三角紙 ( この 場合金属製の三角ケースは不適当 ) に人れるか、 ウ 箱に人れて持ち帰る。箱は蒸れないように紙箱 チ メ がよく、乾燥し過ぎないように中に草の葉など ノ 型のシジミチョウなどは三角 ヤを入れておく。小 紙に人れすに内側に布を貼った紙箱に直接人れ スる。布を貼るのはチョウが止まりやすくするた 1 5 2

8. 楽しい昆虫採集

られている。底に綿を敷いて、針を刺さすに標びたび補充しなければならないのが欠点である。 本を並べたり、ペフ板を敷いて微針に刺した小 また大量に使うと、ペフ板が盛り上がって来る 昆虫を並べたりすると非常に美しく、場所もと ことがあるので注意を要する。 らなくてよい。 ( 木曜社扱い ) 樟脳は長持ちするが、標本を褪色させること があるので、その心配のない甲虫など以外には ◆防虫剤 使わないほうがよい カツオプシムシ、コナダニ、ゴキプリなどか クレオソートも優れた防虫効果がある。クレ ら標本を護るために防虫剤は必需品である。標オソート液は写真のような海綿人りのガラスの 本箱の中に人れておくものとしては、ナフタレ容器 ( 志賀昆虫扱い ) に人れて使う。固形のも パラジクロロべンゼン ( ネオパラ、モスノの ( 正露丸など ) は標本箱の隅に人れて使う。 ーなど ) 、樟脳、クレオソートなどがある。 最低年に一一回は標本箱を点検して、防虫剤が ナフタレンが長持ちして、手軽でよい。粉末切れているものは補充しておくようにすれば安 と固形のものがあり、粉末は標本箱の底に敷く全である。 か、片隅に入れておく。固形のものは、針の頭 三角紙標本や四角紙 ( タトウ ) 標本の保存は、 を焼いて差し込み、それを標本箱の隅に刺してタッパーウェアなどの密閉容器に人れて、ナフ おく。 タレンの粉末か正露丸の粒をばらまいておくの パラジクロロべンゼンは防虫効果はあるが、 カよし 揮発度が高いためすぐになくなってしまい、た ゴキプリに食害されるのは展翅中が多い。た 247

9. 楽しい昆虫採集

ンプ台等が必要である。三角紙はチョウの大きに楽しい作業である。が、一頭につき五分から さにびったり合ったものがよく、前頁④図のよ十分くらいの時間がかかるので、忙しいときや うに三角形の底辺 ( 斜辺 ) に触角と前翅前縁を標本がたくさんあるときなどは、非常に忍耐の いるつらい作業になることもある。展翅を人に そろえて人れる。こうすると、中のチョウが動 、触角が折れにくいからである。整理頼んだり、展翅された標本を買えば、この過程 した三角紙標本は防虫剤とともに箱に人れて保は省略できるわけだが、それでは本当のコレク また、 存する。箱は紙箱でも木箱でもよい。デスクトションの楽しみを味わうことはできない。 レーという茶色の書類箱もよい。長期保存には展翅をたくさんやると、知らす知らずのうちに 防虫の点からもタッパーウェアやプリキ缶等のチョウに対する観察眼や認識が深まるものであ 密封容器がよいが、生乾きの標本を入れるとカる。自分でやることを強くおすすめしたい。 チョウの体が柔らかいうちに展翅するのを ビが生えたり、腐ったりするので完全に乾いて から人れること。 「生品展翅」、通称「なまてん」といし 乾燥した標本を柔らかくして展翅するのを ◆展翅 「軟化展翅ーという。展翅には人によっていろ いろのやり方があって、どの方法がよいと一概 チョウの標本作製の過程で最も重要なのが展 翅である。展翅板をはじめいろいろな道具をそに一一一口うことはできないが、次にその一例を紹介 する。 ろえて、採集したチョウや、飼育したチョウ、 あるいは買ってきたチョウを展翅するのは、実 181

10. 楽しい昆虫採集

しかし今では、そんなガラスの広ロ瓶など、誰も使ってはいないようである。 そのかわりに紙コップを重ねたものを持って行く。これなら百や二百持ち運ぶ のは何でもない。そうしてオサムシのいそうな場所を選んでそれを埋め、中に 虫の好む餌を人れるのである。餌の調合は魚釣りの場合と同じく各人の秘密に 属するが、単にカルピスかいし ) という人もいる。 中国大陸にはオサムシ類の王侯貴族ともいうべき、背中にコプコプの素晴ら あかかね しい " 彫刻のある、金や銅でこしらえたようなカプリモドキの仲間がいるけ れど、ある採集家は中国に行くとき、紙コップを千個も持って行って税関で怪 しまれたそうである。そうしてそのうちの一個か二個にカプリモドキが人れば しいというのだから、これもまた千に三つの話なのである。