◆展脚板 ( 展足板 ) ◆軟化剤・軟化液 コルクやポリフォームを張った板で、甲虫や 市販の軟化剤や軟化液もある。粉末の軟化剤 は、説明書の指示に従って水に溶いて軟化液を直翅類などの脚を整えるためのもの。整脚板と いうべきか。既製品もあるが、手製のものでよ つくる。これをチョウの胸部に注射すると、短 いし、ほかのもので代用もできる。 時間で軟化する。ただし触角と翅部は軟化でき コルク張り八〇〇円 ないのでお湯や湿潤軟化法と併用する ( ↓頁展脚板 358X 川 以下 ) 。 ◆白色ポリフォーム ( ペフ板 ) 展翅、整形 ( 展脚・展足 ) 、その他の標本作 製に便利である。 ◆タトウ ( 四角紙 ) 「タトウ」 ( 畳紙 ) とは和服などを入れて折り 畳む和紙のことだが、ここでは甲虫などの整形 に使うためのもので、半紙とカット綿を買って 板きて作る。「四角紙」とも言う。作り方の一例 展を示す。 軟化液の値段 軟化液大 100 cc 40 cc 白色ポリフォームの値段 厚さ 6mm (50cm><40cm) 500 円 300 円 小 500 円 200 円 239
市販の軟化剤を注射して軟化させ、生展翅とある。柔らかくならないものは、注射をしなお 同様に展翅する方法である。この方法は筋肉崩す。 しゃ接着剤の使用の必要がないので簡単である。④柔らかくなった標本は、生展翅と同し要領で その方法と注意点を簡単に述べておく。 展翅する。展翅期間も生展翅の場合と同様一か ①の場合と同様の軟化用湿潤器を用意し、展月以上必要である。 翅したいチョウを数時間入れておく。湿潤器の⑤触角や腹部の処理は、の場合と同様である。 水は少な目がよい。 なお、あまった軟化液は冷蔵庫で保管すればま ②市販の軟化剤 ( 粉末 ) を説明書の指示にしたた使える。 がって水に溶いて軟化液をつくり、注射器でこ の液をチョウの胸部全体にいきわたるように注 射する。注射の量は、液がわずかに滲み出す程 度がよい。軟化液が羽に付くと染みになるので、 滲み出した液や、誤って羽に付いた液はティシ ュで拭き取る。 ③注射したチョウを展翅しやすい状態になるま で再び軟化器に人れる。その時間は標本の大き さや古さによって違うが、小型で新鮮なものな裏面展翅 ら数時間、大型で古いものなら二—三日程度で 羽の裏側を見せた標本を作りたいときには、 シ マ サ 展 ア
は、表面にコルク板を張った台のようなものでで止めるのである。針はおしますたくさん使う ある。この上に写真のように甲虫を置いてピンのがコツで、そうすれば細かいところまできれ いに仕上がる。タトウでは扱いにくい外国産の セットで脚や触角等を整形し、要所要所を留針 大型甲虫などの整形に向いている。展脚板は、 たとえばべニヤ板にペフ板 ( 標本箱のそこに貼 ってあるポリフォーム ) を貼ったものとか、厚 めの発泡スチロールの板に紙を貼ったものとか、 手製のもので十分である。紙を貼るのは甲虫の 爪が引っ掛からないようにするためである。 乾燥標本の整形 ( 軟化展脚 ) 乾燥した標本 は軟化して整形する。軟化器 ( 湿潤器 ) はチョ ウの場合と同様、すのこ付きのプラスチック密 封容器がよい。水を少し入れてすのこを敷き、 そこに甲虫をじかに並べて蓋を閉じる。甲虫の 一ツを。」 . 場合注意しなければならないことは軟化し過ぎ ないことである。チョウと違って甲虫の軟化は 。ごく短時間でよ。 ゝ。小さいものなら五分、大き いものでも一、二時間も軟化すれば十分である。 ウ板 ト脚 タ展 201
することになるので注意が必要である。 に畳んだまま固まってしまうと、軟化展翅が困 大型のガには注射をするのもよい。注射液は難になるので、必すチョウの場合と同じように フェノール ( 石炭酸 ) の 0 2 パーセント溶液がよ左右の羽の表面を合わせた形に直して三角紙に 筋肉を硬化させないし、変色もしないから入れなければならない ( 上図参照 ) 。青酸カリ である。アンモニアもよいが、変色しやすい を使った場合は、死後硬直状態になって羽が動 フォルマリンやアルコールは虫体を硬化させ、 かなくなることがあるが、二時間ほど密閉でき 展翅が困難になるので不適である ( ↓頁 ) 。 る箱に人れておくと、その状態が解けてまた柔 ガが死んだらなるべく動かないように箱に入らかくなる。硬直状態の解けないうちに無理に れて持ち帰り、展翅をする。すぐに展翅をしな整形しようとすると標本を壊してしまう。 い場合は三角紙に入れて保存する。羽を屋根型 小型ガ類メイガやハマキガ等の小型ガ類を 展翅するには、特別な方法が必要である。用意 するものは、小型ガ用展翅板、底にペフ板を張 った小箱 ( ポール紙製小型標本箱でよい ) 、微 針、ピンセット、コルク板、アンモニア、広ロ ビン、プタ毛の羽おさえ、展翅テープ、脱脂綿 などである。 ①採集した小型ガ類は青酸カリの毒ビンに人れ、 屋根型のガは図のように三角紙に 入れる 196
方法は、ゝ しつでも好きなときに展翅ができる、 どんなに古い標本でも展翅することができる、 急いで標本を作る必要があるときはコタッなど に熟達すると、生品展翅はごく小さなシジミ程 度で、あとはもつばら軟化展翅をするという人 か多い 並べる。 準備するものは、軟化湿潤容器 ( プラスチッ②チョウを取り出して羽が開く程度に柔らかく クの密封容器。すのこ付きがよい ) 、注射器、 なったかどうか確かめる。まだ硬いようであれ 木工用ポンド、小皿など。そのほかは生品展翅ば、胸部に水かぬるま湯を注射する ( 写真⑩ ) 。 の場合と同じ。 注射は胸の後ろから中心部に針を刺して行う。 ①軟化容器に水を少し 川皿位 ) 注ぎ、カ いろいろな個所から水滴が出てくるが、かまわ ビよけにフノールかクレオソートを一滴たらず注人を続ける。チョウを再び = 一角紙に包んで し、すのこを敷いてその上に標本を三角紙のま軟化容器に人れる ( 写真① ) 。こうすれば一 ま並べて蓋を閉め、丸一日ほど放置する。すの時間で柔らかくなる。展翅を急ぐ場合は、先に こがない場合は脱脂綿かティシューベ ーに注射をしてから軟化容器に人れると軟化の時間 水を染みこませて、その上に直接三角紙標本をが短くてすむ。トリバネアゲ ( 類や、ムラサキ 186
裏面展翅 ( 通称「うらてん」 ) をする。裏展翅展翅後の管理展翅標本は生展翅の場合で一 には表面の平らな平型展翅板を使う。生展翅の —二か月、軟化展翅の場合で一か月以上自然乾 この間、ヒメマルカツオプシ 場合は針を逆に、腹部 ( 脚部 ) のほうから背面燥させるとよい 部へ刺して、裏面を上に向けて展翅する。 ムシやナガヒョウホンムシやゴキプリから標本 軟化展翅の場合は通常通りに表で展翅して、 を護るために、展翅板は防虫剤とともに戸棚や 展翅板からはすしてから針を抜き、反対側から箱の中に保管して、ときどき点検する必要があ 針を刺し直して、針がくるくる回らないようにる。油断すると、敵は容赦なくやってくる。そ ポンドで留めておくという方法もある。表のほしてゴキプリなどは一番高価なものを真っ先に うが展翅が簡単だし、軟化展翅は針が抜きやすねらってくる。 いからである。 展翅はずし標本が十分乾燥したら、よく晴 れた湿度の低い日を選んで展翅はずしをする。 特に軟化展翅をしたものは雨の日や湿度の高い 日にはずすと後に狂いが生ずる原因となるので 本 標 避けたほ一つかよい 展 れ わ ①留針を抜くときは、頭を回しながら抜く。真 っすぐに引き抜くとテープが一緒に持ち上がっ 190
質を利用して、展翅標本を軟化し、針を抜き、 のときなどに必要 ( ↓鵬頁、跚頁 ) 。 三角紙に包んで、発送することもできる。 プラスチック容器密封できるもので、すの ◎アミールのりこれも無色透明。速乾性が こ付きのものがよい。標本の軟化に使う ( ↓ あって、狂いが来ないので、軟化展翅や各種の頁以下 ) 。 修理に向いている。アミール戻し ( アミールの ◆注射器 りの溶解液、希釈液として使用する ) もある。 ◎アロンアルファ瞬間接着剤であるから、 チョウやガの乾燥標本軟化用に大小二本と、 これを展翅や修理に使用する場合は手早くやら薬品注射用に一本揃えておきたい。 ねばならない これを使ったものはもとに戻す のが困難である。 ◆有柄針、脱脂綿、薬用アルコール、プラスチッ ク容器 有柄針展翅に使う。市販のものでは、どん な針でもとり付けられるものが便利である。九 〇〇円 ( ↓頁 ) 。 脱脂綿腹部の整形や三角紙標本の発送など に必要 ( ↓頁、剳頁 ) 。 薬用アルコール修理のときや特種標本作製 注射器と注射針の種類と値段 注射器 5cc ガラス製 500 円 2 cc ガラス製 450 円 プラスチック製針っき 150 円 注射針 シジミチョウ用 12 本 700 円 2 本 200 円 シロチョウ用 12 本 600 円 2 本 150 円 アゲハチョウ用 12 本 500 円 2 本 150 円 ( 虫友社調べ ) 243
おく。毛の多い標本は、乾燥させるとき、逆毛に戻るものは、軟化して針を抜き、羽をたたん を立てるようにストローで軽く息を吹きかけるで三角紙に人れ、綿を詰めて送る。軟化しても か、乾いた小筆で軽く撫でるとよい。②の場合 + ゞ 金カ抜けなかったり、羽がたためないものは、 はものによ「て全体にやや色あせた感じになる箱 ( ガラス蓋の箱は避けたほうがよい ) の底に ことがある。あまり大切でない標本で実験してコルク板やペフ板を一一重に敷いて、標本を深く みるとよい 刺して送ればまず大丈夫だと思うが、保証の限 りではない。 ◆標本の送り方 三角紙や四角紙の標本は、丈夫なポール箱か プラスチックケースに人れて、それらが動かな いように多い目に綿を詰めて送る。綿は化繊の ものがよい 甲虫やバッタやセミなどは、箱の底に綿を敷 き、その上に標本を並べてその上にまた綿を敷 き、これを何段も重ねる。この箱を一回り大き な箱に入れ、隙間に発泡スチロールや丸めた新 聞紙等を詰めて送れば申し分ない。 展翅されたチョウやガの標本で、軟化して元 2 ラ 0
展翅板 : : ・・傾斜型展翅板 / 平型展翅物 / 展翅板ケース 展翅テープ : : : 透明展翅テープ / ワックスペーパ 1 / トレーシングペーパー 軟化剤・軟化液 展脚板 ( 展足板 ) 白色ポリフォーム ( ペフ板 ) タトウ ( 四角紙 ) 台紙 ラベル 平均台 接 有柄針、脱脂綿、薬用アルコール、プラスチック容器 注射器 ・標本保存法と用具 ドイツ型標本箱 標本タンスと標本棚 蝶額 いんろう箱 ガラス蓋付きポール箱
てばらばらになってしまう。 死んでから展翅したほうがよい ◎ムラサキシジミやトリバネアゲハのまを軟 ◎展翅したチョウの羽が展翅板からはみ出し てしまった場合は、側面に留針を斜めに刺して化するときは、羽にしみが付きやすいので、と おくと保護することができる。 きどき取り出して軟化状態を見ながら早めに展 ◎セセリは、セミやハチの場合と同様に前翅翅したほうがよい ◎フタオチョウ類は羽の筋肉が特別硬いので、 と後翅に引っ掛ける部分があって、前・後翅が 連動するので、展翅の際にもこれを利用すると前翅の少し前の部分を重点的にくずして、羽が 前後によく動くようにする必要がある。 簡単である。 ◎軟化するときには、あまり大量にしないで ◆標本の修理 確実に展翅できる数だけにすること。うつかり はすれたり折れたりした触角の修理について 展翅をし忘れると、カビだらけになるか、腐っ ④カッターで部品をカットする 192