す。しかし、オトナたちは今の学生の力に疑問を持っていることを覚えておいてください。 ■学生時代の充実度は就活にも人生にも大きく影響する ところで、大学に入ったばかりの皆さんも進路のこと、特に就活のことは気になるのではない でしよ、つか。 2008 年の秋以降、 丿ーマン・ショックによる世界経済の混乱から、就活をめぐ る環境は劇的に悪化していきました。 2010 年卒の学生の就職率は 2009 年肥月現在で・ 1 % 。就職できない学生が増えており、問題となっています。日本では、新卒一括採用が行われ ています。そのため、短期的には就活する年の景気により求人状況は変わります ( なお、新卒一 括採用の是非や、若年層の雇用については、ここでは長くなるので割愛しますが、新卒一括採用 は制度として一定の合理性があるというのが私の見解です ) 。 これは、単に景気が悪化し、求人数が減っただけの問題ではありません。「名ばかり大学生ー が増えており、企業の求める水準に達していない学生が増えています。内定がたくさん出る「内 定長者ーと、まったく出ない「無い内定」の学生で二極化する「就活格差ーが顕著なのです。 ところで、企業が学生に期待することは何なのでしようか ? まずは「社会人基礎力」と呼ば れるもの、これは、経済産業省によって定義されたものです。 「前に踏み出す力」アクション二歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組むカ 「考え抜くカーシンキング【疑問を持ち、考え抜くカ 4
はじめに 「大学生活が充実していた人は就活 ( 就職活動 ) が上手く これは人事担当者、大学の教職員、就職情報会社からよく聞く声です。大学生活で何か に 120 % 熱中した、夢中になった経験がある人は、自信が持てます。やりきる力、考え 抜く力、楽しむ力が身についています。成長意欲があります。経験値が貯まっています。 社会に出て活躍できる基礎力が養われています。大学生活に一片の悔いもないので、就活 する、そして働く覚悟ができているのです。「自己 p--æのネタに困らないように変わった 経験、自慢できる経験をしろ」という嫌らしい意図ではありません。納得して学生生活を 熱く、強く、楽しみきったかどうかが大切なのです。 学生達の就活をめぐる環境は厳しいものになっています。なぜ、内定が取れないのでし よう ? 単に求人数減少の影響だけではありません。一つの答えは、企業が学生に求める 基準が上がっている上、それに見合った学生がいないことです。大学自体、以前よりもだ いぶ入りやすくなりました。実力を伴わない「名ばかり大学生ーの出現も話題になってい ます。大学生なら誰でも楽勝で就職できる時代ではないのです。 また、同じ大学内でも「就活格差」が顕著になっています。内定を 55 川取る「内定長 者ーと、内定がまったくない「無い内定ーに見事に二極化しています。その大きな原因 の一つに、「学生生活格差ーがあります。 この本を書くために、約 3 カ月で約 500 人の学生を模擬面接し、学生時代に力を入れ
楽しみつくす」 ■「早稲田は面白い奴がいつばいいるぞ」実際、その通りたった 「親戚に早稲田がいたんです。早稲田は面白い奴がいつばいいる、そんな話に胸を熱くして いました」 こう話すのは東証一部上場の金融 e コンサルティング会社・シンプレクス・テクノロジーに 入社予定の島村遊さん。三重県出身の彼は、早稲田大学に進み、杉並区で一人暮らしを始めます。 「実際、早稲田は面白い人だらけでした」 彼が飛び込んだのは広告研究会 ( 以下、広研 ) 。 「広告をつくることに興味があったわけではないです。みんなで何かをつくり上げることに熱中 したいと思って入りました」 広研には 250 人もの部員が所属。ちょっとした中小企業よりも大きな規模です。特に学園祭 でのイベントでは、芸能事務所とタレントの出演交渉をしたり、協賛企業を探したりと、対会社 とのやりとりも多数。その中で島村さんは渉外担当として、フリーベー 1 の広告やイベントの 協賛企業獲得の営業を担当します。就職情報会社や資格専門学校など、学生向けに情報を伝えた 「面白い人との出会いをとことん広げ、 早稲田大学商学部 島村遊さん シンプレクス・テクノロジー内定
第七章・素敵な社会人になるために ~ 就活を始める前に身につけたいこと ~ 職や営業職で内定が出ました。その中で選んだ企業は日立製作所。学校推薦で 2 つの事業部から 内定が出て、官庁にシステムを納入する公共システム事業部に行くことに。「総合力があること、 人を考えたシステム開発をしていること、女性が働きやすい職場であることが決め手でした」 4 年間の学生生活を振り返って、「大事にしたことは人の考えに触れること。それがなければ 成長できません。サークルやゼミで人との接点をたくさんつくって本当によかったと思います」。 179
■会社員ってものをやってみよう 浅草の店などに活動の拠点を移し、演奏を続けた彼ですが、意外にも就活への気持ちの切り替 えはすぐにできたとのこと。「ジャズクラブで演奏できたことに感謝しています。自分よりずつ と年上のお客さんに可愛がられて育ったので、社会人の視点を早くから体感できました。中小企 業のトップの方ともよく話しました。世の中にはいろんな幸せがあるということに気づきました。 今の自分の気持ち、覚ではミュージシャンの仕事はできないということにも気づきました。み んなが苦労して、でも真剣に続けている会社員っていうものをしてみようって決断できたのです」 就活には音楽で培ったエネルギーをぶつけました。業界を超えた社にプレエントリーし、 社で面接まで進みました。面接では、当初は「モテる」ために音楽を始めて夢中になったこと、 ジャズに没頭していたこと、銀座の店をクビになってその挫折から這い上がったことなどを包み 隠さず . に伝、んました。 結構な確率で最終面接まで進むのですが、なぜか内定は出ません。ある 1 点だけ正直になれて いなかったのです。「どの会社でも、 " 第一志望〃だと言っていたことなんです。嘘だろってばれ ていたんでしようね。どうせ、ジャズのために辞めるんだろうと思われていたのかもしれません」 内定先の東日本だけは最終面接で唯一正直になれた会社でした。「御社が第一志望かど うか、正直私にも分かりません。まだ働いたわけではないですし、ジャズの世界にも戻るかもし れません。でも、働きたいという気持ちはあるんです」。こう伝えて、初めて内定が出ました。 150
こんな大失敗をキッカケに、計画を立てること、やりきること、人を巻き込むことを学びまし た。反省を活かして臨んだその後の説明会は順調に集客を伸ばします。説明会に合計 400 人を 動員し、 200 人をインターンシップに送り込みました。参加した学生から「紹介してもらって、 インターンシップに参加して本当によかった」という感謝の声をかけられ、人の役に立つ手応え を感じたのでした。「大学には真面目に通わなかったのですが、自分には zæo という活躍の場 がありました。そこに自分にとっての大学生活の始まりがありました。間違いなく、自分が成長 するキッカケになりました」 ■揺るぎない自信就活には何の不安もなかった を大学 3 年まで続けた後、就活のことが気になり始めます。ある大手人材紹介会社のイ ンターンシップに参加。「就活って楽しそうだな、と思いました。社会に出ることが楽しみにな りました」。このインターンシップをキッカケに彼は人材ビジネス系企業、教育関連の企業、金 融機関、メーカーなど幅広い企業を受け、結果として 3 社から内定が出ました。 さらに、 ここで彼は新たな学生団体を立ち上げます。内定者支援の学生団体という、ありそう でなかった団体です。その名も内定者意識変革プロジェクト「」。「 2009 年入社を最 強集団にしよう ! 」「 2009 年入社で高い成果を出そう ! 」。そう考えてこの団体を結成し、活 動を開始し、盛り上がりを見せました。 4
第四章・働くこと・お金を稼ぐこと ~ 大学時代のアルバイト もう一つ、大切にしたことは会社の理念です。会社の理念と自分の方向が同じ向きにあるか、 考えが似ているかどうか、さらにその理念が社員に浸透しているかどうかなどにこだわりました。 そして日本を代表する大手化粧品メーカ 1 に内定。 現在彼は大学で、後輩たちの就活支援を行っています。マニュアル化した就活に違和感、危機 感を抱いています。みんなが同じことを言う就活、「みんなの就職活動日記」に書かれたことを コピー & ペ 1 ストする就活、内定がゴールになっている就活 : : : 。「このやり方だと 3 次面接く らいまではいけるかもしれませんが、その先にはいけない。 自分の生きる意味、働く先にあるも のを考える就活をしてほしいです」 その言葉に、常に物事に体当たりで臨んだ人間、妥協しなかった人間ならではの説得力を感じ ~ たのでした。 103
2 アルバイトで夢を叶えよう ■アルバイトを通じてキャビンアテンダントに内定した女子学生 アルバイト選びの軸は人それぞれでかまいません。「やっぱりお金 ! ーという理由で時給で選 ぶ人もいることでしよう。勉強やサークルとの両立、自宅から通いやすいかどうか、自分に合っ ているかどうかも大事な視点です。 ただ、次の点は意識しておきたいです。それは、「そのアルバイトはあなたの夢を叶えます か ? ーということです。どんな能力が身につくのか、自分がやりたいことに近づけるかどうかも 考えておくとよいでしよう。また、「海外旅行に行きたい」「〇〇がほしい」など短期的な夢を実 現できるかどうかも考えるべきです。 キャビンアテンダント (0<) に内定した都内の女子大に通う学生を取材しました。航空会社 の経営破綻などがありましたが、 0< は女子学生にとって今も昔も憧れワークです。彼女はこの 仕事に就くためには「ホスピタリティ」と「語学力」が必要だと考えました。そして、この力が 身につきそうかどうかという基準でアルバイトを選びました。ホスピタリティを身につけるため に、ホテルの求人を探して応募。違う時期には、語学力をつけるために外国人のお客さんが多い 六本木のカフェで働きました。「どうせやるなら、自分の夢につながる仕事をしたいと思いまし
ことは何か ? とい、つことを真剣に考、んるよ、つになりました」 いくつかの就活支援団体にも所属。当初は参加者として関わっていたのですが、いつの間にか 運営側に回っていました。「世の中にはすごい学生がいる。上には上がいる」ということにも気 ・いたのでした。 結局、有名な大手メーカーの理系採用で内定します。 & < を盛んに行っている企業で、経営 者はカリスマ。べンチャー的な風土を残している企業で、ガッガッした社風でした。 そんなときに、ふと考えました。「このまま、この企業に進んでいいのか ? 」。さらに、強烈な ことに気づきます。それは、「自分はロポットの研究をしていない とい、つことでした。「も、つ少 し、進路について考える時間がほしい」とも考えるようになりました。 すぐに内定を辞退し、大学院進学を決断します。ただ、単位の取得状況は大学院進学どころか、 学部の卒業すら危うい状態でした。 1 日肥時間、死に物狂いで勉強し、なんとか大学院に合格。 ・塾講師、父親の死、そして 2 回目の就活 こうして始まった大学院生活では、研究と新たに始めた塾講師のアルバイトに明け暮れます。 塾講師は昔から取り組みたいと思っていたアルバイトでした。そして、これは人に影響を与える ことの訓練の場でもありました。上手いと言われているべテランの先生の授業を見学し、講師と しての力をプラッシュアップしていきました。 182
ではないのかとずっと言われていました。教職課程も取り、地元富山の学校で教育実習をしてい ました。一時期、塾講師のアルバイトをしていたこともあり、当初は商社やマスコミが第一志望 だったのですが、徐々に教育関係の仕事が自分に合っているのではと思うようになりました」 面接をしながら、自分とは何か、何をするべきか、何が向いているのかを考え続けたそうです。 そして、やりたいことと、向いていることは違うこと。さらには根の部分では、自分は教育が好 きなのではないかということにも気づいたそうです。 就職は、母校明治大学の職員に内定。まだ配属は決まっていませんが、「留学生万人計画も あるくらいですから、今後、日本の大学には留学生が増えていくことは間違いありません。明治 大学でも留学生の受け入れを強化する動きがあるので、彼らや彼女たちをサポートする仕事をし たいなと思っています。留学していた経験があるので、逆に日本に来る留学生の気持ちも分かる のではないかと思っています」 実は高校 1 年の半年間、不登校を経験。辛い時期を乗り越え、やがて楽しい高校生活となった そうですが、内定先はそんな自分のことをすべて話せて、認めてくれました。 大学生活を終えようとしている今、留学生活を中心とした学生生活によって、さらにたくまし く、しなやかな自分に変身できたことが感じられました。何かを成し遂げたかのような達成感す ら漂っていました。 大学生活は人生で一度だけの体験です。留学をするには資金も時間も勇気もいりますが、大学 130