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検索対象: 日本現代文學全集・講談社版1 明治初期文學集
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1. 日本現代文學全集・講談社版1 明治初期文學集

かたな のち 邊を見廻して居 は志丈ばかり、この儘に生け置かば後の恐れと、件藏は差たる一刀 る所へ、依田豐 拔くより早く飛か乂って、出し拔けに力に任して志丈に切り付けま さかて 前守の組下にて いしこばんさく すれば、アッと倒れる所を乘し掛り、一刀逆手に持直し、肋〈突込 石子件作、金谷 こぢり廻せば、山本志丈は其儘にウンと云て身を戦はせて、忽ち息 藤太郎といふ兩 は絶〈ましたが、此志丈も件藏に組し、惡事をした天罪のがれ難く 人の御用聞が驅 斯る非業を遂ました。死骸を見て件藏は跡〈さがり、逃出さんとす かけ て來て、孝助に いんぎん る所、御用と聲掛、八方より取卷かれたに、件藏も慌てふためき必 ゃうや 向ひ慇懃に、捕 死となり、取ガ〈手向ひなし、死物狂ひに切廻り、漸く一方を切拔 方「ヘイ申シ殿 けて薄だみ〈飛込で、徃來の廣い所〈飛出す出合かしら、件藏は ふいに 様、誠に難有う 眼も眩み、是れも同じ取方と思ひましたゆゑ、突然孝助に斬掛まし 存じます。此者 おたづねもの たが、大概の者なれば眞二ツにもなるべき所なれども、流石は飯島 しこみ は御尋者にて、 平左衛門の仕込で眞影流に逹した腕前、ことに用意をした事ゅゑ、 かたな ひとあし 舊惡のある重罪 夫れと見るより孝助は一歩退きしが、拔合す間もなき事ゅゑ、大刀 一な奴でござりま あすこ の鍔元にてパチリと受流し、身を引く途端に件藏がズルリと前〈の ねじた 当」す。私共は彼所 める所を、腕を取て逆に捻倒し、孝「ヤイ / 、曲者何と致す。曲者 に待受て居まし ミイ眞平御免下さ〈まし。相川「ソ一フ出たか ( 。孝助怪我は無か。 て、遂ひ取逃が 孝ミイ怪我は御座ません。コリヤ狼藉者め、何等の意恨で我に切 さうとした所 付けたか。次第を申せ。曲「 ( イ / 、全く人違ひでごぜ〈やす。 ともたち を、旦那様の御 よふや ト小聲にて、「今此先で朋友と間違ひをした所が、皆なが徒黨をし 蔭で容易くお取 て、大勢で私を打殺すと云ってけたものだから、一所懸命に爰 迄は逃ては來たが、眼が眩んで居ますから、殿様とも心付きません押〈なされ、難有ござ」ます。どうかお引渡しを願ひたう存じま で、とんだ麁相を致しました。どうか御見逃しを願ひます。其奴等す。相川「そふか〈、彼は賊かい。捕方「大盜賊でござります。孝 に見付られると殺されますから、早くお逃しなす 0 てくだされま「親爺様、呆れた奴でございます。此不埒者め。相川「なんだ。人 違ひだなぞと嘘を吐て、嘘をつく者は泥棒の始まり、ナ = とうに泥 すぐ せ。孝「全く夫れに違ひないか。曲「 ( イ、全く違〈ごぜ〈やせ ん。相川「ア、驚た。 0 」人違ひにも事によるぞ。切て仕廻 0 てか棒に、ウ成って居るのだから仕方がない。直に繩を掛けて御引きな ら人違ひで濟むか。・〈らぼふめ。實に驚」た。良石和尚の御告げはさい。捕方「殿様の御蔭で容易く取押〈、誠に有難う存じます。ど 不思議だなア。オヤ今のぎで重箱をど 0 か〈落して仕舞た。と四うか御名前を承りたう存じます。〔相川「不淨人を取押〈たとて名前 ふる てんばっ ない 第応大 ゼして 、をり / / ツーツ夛・二 - イ 5 0 0

2. 日本現代文學全集・講談社版1 明治初期文學集

いく はなく先一一十五の曉迄に天の罰を・蒙て長く生て居られね〈のはみらだそんな氣の弱い事を云はずに今夜一緒に行て呉んね〈 ( 島 ) 幾ら んな惡事をした報ひ 0 」 0 ア心を改めにやア成らね〈事と氣が付て徃ッて呉と云ても己はふ 0 、り止めたから此賴みは聞れね〈一人で す 0 ばりと止めて仕舞其時調度四百圓金が殘 0 て有た故五百圓に是行ずは幸ひだ手前も今夜止にしろト千太む 0 とせし思入有て ( 千 ) 今 かみ・こしよけれ じしゅ 更云ても仕方がね ~ が佃に居た時野売のこはれで互ひに腕を切血汐 をまとめ輻島屋〈返した上自首して上の御處刑受誠の人に成る積り で再び歸ッて禪樂坂〈小賣酒屋の見世を出し今はな明石屋島藏を飲で兄弟の義を結んだ其時に是から先は生き死にを一所に仕樣 此譯故に折角の手前の賴みが聞れね〈、「惡の報ひを云論せど千太と云たのをよもや夫を忘れやアしめ ( 夫に賴みを聞ね〈のはあんま り因身がね ( ぢやアね ( か ( 島 ) イヤ因身が有から留るのだ ( 千 ) 何だ くは いこん なり は馬の耳に風 ( 千 ) 夫ちやアお前は輻島屋の亭主の足を切た日と同じ とト合方きつばりと成 ( 島 ) どんな遺恨がある事か委しひ事は知らね さら 廿日の其晩に息子が輕我をした所から臆病風に誘れて弱い心に成た 〈が今夜手前が切り込で向ふの二人を殺した上金を浚ッて迯た所が すぐかみめぐし のか ( 島 ) 如何にも手前の云通悪事の報ひをしったから弱い心に成た のだ只氣の毒なは輻島屋千圓盜んだ其金から遂に地面を賣て仕舞内昨日ゆすりに行たからは直に上の目串が付夫からそれ〈電信で知ら を疊んで逼塞なし今は行衞もしれぬ故所 / \ 方 , " 、を尋ねる内今日せが廻れば遁れられね〈三日と立ず捕ら〈られ送りに成たら賊と違 きてくれ しゃうゆ ッて人を殺せば斬罪の處刑は云ずと知れた事假令今夜千圓の金を盜 計らずも見世〈來た人抦の能小娘が醤油を一一合持て來呉ろと云ので 名を聞ば輻島屋と云事を聞 = 若やと醤油を持尋ね = 行 = 見た所案にん行た所が一一一日 0 内 = 捕られたら遯た金は五十か一本だ金 違はず其人にて宮比町の裏家に住親子一一人がな暮し目も當られね命を捨るはあんまり馬鹿氣た事ぢやアね〈か手前も己が異見に付て 〈有様に調度幸ひ百圓の金に困て居る所ゅゑ夫と云ずに金を惠み十爰らが足の洗」所驢氣に成なら何所が何所迄兄弟分の因身を思ひ己 分一の報ひをなし殘の金の四百圓を返して直に自首したさも折の悪が世話をして遣らう惡ひ事は云ね〈から二ツに分た五百圓丸で出來 さは明石から堅氣に成たを悅んで遙 , ~ \ 親父が來た故に無據期をずば幾らでも金を拵〈て輻島屋〈返した上で己と一縉に立派に罪を 伸した所 ( 今夜思ひ掛なく手前が來ての餘義ない賴み内で兎やかう名乘て出ろ ( 千 ) お前も四十に成らね〈が強氣に燒が廻ッたなおらア 云時は親父や妺の手前もあり殊に隣は壁一重事が洩れば互ひの身の八方取卷れても迯られる丈迯る氣だ是から自首をした所が一等減じ 上夫で爰〈出て來たが賴み甲のね ( 者と思ふで有うが此譯故一緒て十年の苦役を佃て仕にやア成らね〈己が事を馬鹿だと云がお前も に行のは許して呉 ( 千 ) 隨分お前も是迄は情をしらね〈人だったが何隨分馬鹿氣て居らア「 ( 島 ) 十年苦役をすると云は夫りやア手前が小サ でそんな氣に成たか凡夫盛りにりなしと惡事をなした其報ひでな了簡盜んだ金を先〈返し改心なして自首すれば上にも格別御慈悲 おれ が有て一等減じて十年の物ならないし七年か五年に成たら懲役中身 お前に夫丈罰が當りやア己にも當らにやア成らね〈譯だ誰にも報ひ が有る事なら金を取られた輻島屋も商賣抦にいか物でも拵て賣た報を愼んで大事に勤め初犯か二犯の若イ者が滿期で出たら強盜を仕樣 ひだらう内が潰れて裏店で貧乏ぐらしを仕て居るも其身を懲す天のなどゝ跡先見すの窃盜に惡事をすれば天の罰で必ず報ひのある證據 罰其所〈盜んだ金を返すはこんな馬鹿氣た事はね〈先あの時から半は己の忰が斯う / \ と論して心を和らげさせ萬に一人改心なす者が 年餘り斯うして樂に暮して居るは天が罰を當る程の體に罪がね〈か有たらお上〈忠節役人方の目に止らば五年も減じて三年と成るは其

3. 日本現代文學全集・講談社版1 明治初期文學集

虐んとうびつくり 御二男さま、誠に暫く。源「マア安心した。眞實に喫驚した。國亡父五兵衞の位牌へ對しお國を討たしては濟ないと云ふ所で、路銀 びつくり 迄貰ひ、斯うやって立たせてはくれたものゝ、其所は血肉を分けた 「私も喫驚して腰が拔けた様だったが、相助どんかへ。相「誠にヘ かよふ イ面目ありません。源「手前は末だ斯様な惡い事をして居るか。相親子の間、事に寄ると跡から追掛けさせ、て來まいものでもない おいとま てめへ 「實は御屋敷を御暇に成て、藤田の時藏と田中の龜藏と私と三人揃が、どふしてか手前らが加勢して孝助を殺してくれ又ば、多分の禮 いく よろ って出やしたが、何所へも行所はなし、どふしたらよからうかと考は出來ないが、二十金やらうじゃないか。龜「宜しうございやす。 やすうけあい あいっ へながら、ぶらど、と宇都宮へ參りやして、雲介になり、どうやら隨分やッつけやせう。相「龜藏安受合するなよ。那奴と大曲で喧嘩 しゃうかんわづら こうやらやって居るうち、時藏は傷寒を煩って死んでしまひ、金はした時、大渠の中へ投り込まれ、水を喰って漸逃歸ったくらゐ、 やみ うつかりた、 なくなって來た處から、ツィふらイ、と出來心で泥棒をやったが疾那奴ア途方もなく劒術が旨いから、迂濶打き合ふと叶やアしない。 つき かぬまかたかけをち かんどう 付となり、此間道は能く宇都宮の女郎を連れて、鹿沼の方へ欠落す龜「それは又工夫がある。鐵砲じやア仕様があるめへ。十郎ケ峯あ おらをち る者が時よあるので、こ乂に待伏せして、サア出ぜと一ト言いへ たりへ待受け、源さまは淸水流れの石橋の下へ隱れて居て、己等達 ぢき いるところ ば、私しは劒術をしらねへでも、怖がって直に置て行くやうな弱いやア林の間に身を隱して居所へ、孝助が遣て來りやア、橋を渡り切 第ノつかり おれ 奴ばっかりですから、今日も迂濶源さまと知らず掛りましたが、貴た所で、我が鉞砲を鼻ッ先へ突付けるのだ。孝助が驚いて跡へさが 郎に拔かれりやアおッ切られてしまふ處、誠になんともはや。源れば、源さまが飛出して切付りやア挾み打ち、わきアねへ、遁るも 引くも出來アしねへ。源「ジャアどうか工夫をしてくれろ。何分賴 「コレ龜藏、手前も泥棒をするのか。龜「ヘイ雲介を仕ていやした が、碌な酒も呑めねへから、太く短くやッつけろと、今では斯様なむ。と是れから龜藏は何所からか三挺の鐵砲を持て參り、皆連立 をり 事をしておりやす。と云はれ、源次郞は暫し小首を傾げて居ましたち十郞ケ峯に孝助の來るを待受けました。 が、源「好所で手前逹に逢た。手前逹も飯島の孝助には遺恨があら 怪談牡丹燈籠第十一一編繆 うな。龜「ヱー、ある所じやアありやせん。川の中へ投り込まれ、 あたまぶっさ 石で天窓を打裂き、相助と二人ながら大曲りでは酷い目に逢ひ、這 れとま こっち 々の體で逃げ歸った處が、此方は御暇、孝助はぬく / \ と奉公して たま あいっ 居るといふのだ。今でも口惜くって堪りませんが、那奴はどうしま した。源「誰も外に聞て居る者はなからうな。相「ヘイ誰が居るも のですか。源「此國の兄の宅は杉原町の越後屋五郞三郞だから、暫 こふさい くあすこに匿まはれて居た處、母といふのは義理ある後妻だが、不 思議な事で夫が孝助の實母であるとよ。此間母が江戸見物に行た時、 くわ 孝助に廻り逢ひ、悉しい様子を孝助から殘らず母が聞取り、手引を して我を打たせんと宇都宮へ連れては來たが、義理堅い女だから、 かた はふ お、どぶ

4. 日本現代文學全集・講談社版1 明治初期文學集

324 ぶつ ころ 「アツ。と云っ弓の折れで打たな。それのみならず、主人を殺害し、兩人乘込んで て倒れたから、 飯島の家を自儘にしゃうと云ふ人非人。今こそ思ひ知たるか。と云 ふたりつらす 相助は驚いて逃ひながら栗の根株へ兩人の面を擦り付けますから、兩人とも泣きな 出す所を、後ろ 3 気第公一 がら、免せ工、勘忍しておくんなさいよう。といふのを耳にも掛け おっかさま から切掛るのをず、孝「コレお國、手前は母上様が義理を以て逃がして下すったの 見て、お國はは、樋のロ屋の位牌へ對して濟まんと道まで敎へて下すったなれど たった 「アレ人殺し。 も、自害をなすったも手前ゅゑだ。唯一人の母親を能くも殺しを かたき と云ひながら銃ったな。主人の敵親の敵。なぶり殺しにするから左様心得ろ。とこ さしぞへ 砲を投り出してれから小刀を拔きまして、孝「手前のやうな惡人に旦那様が欺され たてよこ 雜木山へ逃げ込てお出なすったかと思ふか。と云ひながら顔を縱横ズタ / \ に切り んだが、木の中まして、又源次郞に向ひ、孝「ヤイ源次郎、此ロで惡口を云たか。 だから帶が木の と之れも同じくズタ / \ に切りまして、又母の懷劒で留めを刺し から たぶさ 枝へ纒まってよて、兩人の首級を斬り髻を持たが、首級といふものは重いもので、 ひとたち ゆる ろける所を一刀孝助は敵を討て、もうこれでよいと思ふと心に緩みが出て尻もちを ありがた はちまんつくどみやうじん かげ をあびせると、 ついて、孝「ア、難有。日頃信心する八幡築土明溿のお庇をもちま 「アツ。と云てして、首尾能く敵を討ちおうせました。と拜みをして、ドレ往ふと ひとごろし キ地勇を 一倒れる。源次郞立上ると、「人殺 / \ 。と云ふ聲がするから振り向くと、龜藏と相 ふズ思 7 は此有様を見助の兩人が眼が眩んでるから、知らずに孝助の方〈逃げて來るか 人の伐を こいっかたきかたわ ふたり て、己れお國を ら、此奴も敵の片別れと兩人とも斬り殺して二ツの首を下げて、 ゆきき 斬た憎くい奴と ヒョロ , , \ と宇都宮へ歸って來ますと、徃來の者は驚きました。生 孝助を斬らうとしたが、雜木山で木が邪魔に成て斬れない所を、孝首級を二ッ持て通るのだから驚きます。中には殿様〈訴〈る者もあ いきなり 助は後ろから來る奴があると思って、突然振返りながら、源次郞のりました。孝助は直ぐに五郞三郞の所〈往て敵を討た次第を述べ、 ・もとどり 肋〈掛けて斬りましたが、殺しませんでお國と源次郞の髻を取て殊に、「母がまだ目が見〈ますか。と云われ、五郞三郎は妹の首級 ふさ おっかさま 栗の根株へ突き付けまして、孝「ヤイ惡人、わりやア恩義を忘却し を見て胸塞がり、物も云へない。母上様は先程息が切れましたと云 かをきうち て、昨年七月廿一日に主人飯島平左衛門の留守を窺ひ、奧庭へ忍び ふから、此の儘では置けないと云ふので、御領主様へ屆けると復讎 みつつう 込んで、お國と姦通して居る所〈、此の孝助が參て手前と爭た所の事だからと云ふので、孝助は人を付けて江戸表〈送り屆ける。孝 が、手前は主人の手紙を出し、それを證據だと云て、よくも孝助を助は相川の所〈歸り、首尾能く敵を討た顛末を述べ、夫れよりお頭 おの につ てつ ふたり いで ゆる ふたり なま

5. 日本現代文學全集・講談社版1 明治初期文學集

たう やりなすっ ので仕方なく不釣合の大工の所〈到ノ、お滑被成たのさ ( 欲 ) 夫ぢやッた様な物だ是に付ても淺草の山で別れた明石の島藏こっちに居る ア立派な内を捨叩き大工の女房に今ぢやア成て居なさるとか ( 八 ) イ内二人で泊た安泊やけいづ屋〈立廻て來ね〈からはまだ東京〈出て なまなかどきゃう くむ ャ蓼喰ふ蟲も好 , ~ 、だね ( 常 ) ほんに馬鹿氣た咄さね ( 八 ) ドレ一廻り こやう 來ねへか何をするにも相手がなく生中度胸の惡ひ奴と浮つかり組と しもて つり 廻て來様かト八兵衞荷を擔ぎ下手〈這入男湯の内にて ( 千太 ) 何釣に破れの元早く兄貴に逢て〈物だ〇ト懷〈手を入思入有て ( ヲ、一一 やア及ばね、〇ト前の合方にて男のロより千太着流し三尺帶駒下駄階の戸棚〈守を忘れたドレ上ッて取ッて來ゃうかト端唄に成り千太 にて出て來り手拭をりながら ( モシ今女湯から出た御新造はめつ男湯のロ〈這入と向ふより島蔵着流し羽織駒下駄商人の拵跡より藤 かしどにり ぼう能女だがありやア何所の御新造だね ( 常 ) あれは此河岸涌で官員助羽織着流し低き駒下駄風呂敷包の短刀を持出て來り花道にて ( 藤 だか士族だか望月輝と云お方の御新造様さ ( 千 ) 元は藝者ぢやアなか助 ) モシ其所〈お出被成升は明石屋さんではムりませぬか ( 島蔵 ) プ、 べっぴん たまら ったか ( 欲 ) 旅藝者だと云事だが何にしろ別品だから何所〈行ても賣お前は田町の刀屋さん何所〈お出被成升 ( 藤 ) 今お宅〈上りましたら くれおっしやっ しやべっ るね ( 常 ) 御新造様と云ば今直に來て呉と仰有たをツィ多辨て居て遲たった今樂坂〈お出被成たと仰有るからお跡を追掛て參りました やかま ござ く成たドレ早く行ませう ( 欲 ) 又歸りにお寄よ ( 常 ) ( イお喧しふムり ( 島 ) 急な事でムり升か ( 藤 ) 一寸お咄がムり升 ( 島 ) 何の御用か知らな いっか ましたト右の合方にてお常早足に向ふ、行掛千太を見て何時來たいが向ふ〈行て聞ませうト兩人舞臺〈來り藤助床儿を前、出し ( 藤 ) 賊に似てゐると云思入 ( 欲 ) お常さん何ぞお忘れか ( 常 ) イヱ何も忘まア是〈お掛被成ませ ( 島 ) 爰〈掛ても能うムり升か ( 藤 ) 是は私が心 はる どこ やすうけやど れは致しませんよト合方にて早足に向ふ〈這入 ( 千 ) 今の女は何所で易い請宿の床儿だから掛ても宜しふムり升 ( 島 ) 夫では御免下さりま おもいれ もとあさくさひがしなかまちふくしま か己が見た事の有る女だがト思人 ( 欲 ) あれは元淺草の東仲町の扁島せ〇ト兩人床儿〈掛合方にて ( シテ私〈御用とは ( 藤 ) イ = 外の事で 屋と云質屋の内に居た女さト千太思入有て ( 千 ) ム、輻島屋の内に居もムりませぬがお前さんから拵をお賴み被成た此脇差〇ト風呂敷を こしらへつき た女か〇何だかじろノ \ 見て行たがこいつア浮ツかり出來ね〈わ〈明中より拵付の脇差を出し ( 是は勝れた業物でムり升が御存でムり こ・もりやど トお欲思入有て ( 欲 ) さっき濵した子守の宿を帳面〈付なんだドレ忘升か ( 島 ) 實は夫は此四〇イヤ親類の士族から買て呉と賴まれて無 なく れぬ内に付て置ふトお欲下手の腰障子を明て這入千太邊りを見廻し據買た脇差能いか惡いか存ませぬ ( 藤 ) 銘はムりませぬけれど餘り勝 かないろ 思入有て ( 千 ) 大も歩行ば棒に當ると何ぞ仕事を仕様と思って爰の湯れし金色故何でも是は名作と鑒定を仕ましたから去る目利に見せま 〈這入たばっかり思ひ掛ね〈白川で百圓出して馬鹿を見たお照の居したら無銘ながら正眞の五郞入道正宗だと申升ので私も恟りなして たんさくがムりとりまかがけ かしど椴り 所が漸くしれたあの折德が知らしたので探索掛に取卷れ崕から谷〈歸り掛此河岸通にお出被成る望月輝様といふ古物好の御得意〈一寸 につくわう 白飛込だが運能何所も怪我をせず到 / 、夜通し迯あふせ歸り道に日光お見せ申升と假令無銘でも正宗なら求めたいから先方〈咄して見て から筑波を廻ッて潮來〈行遊びて〈程遊んだが何所〈行ても東京位呉とお賴み故に失禮ながらお咄を致し升が昔と違って平民では今は やすどまり 金に成る所がね〈から先月此地〈歸て來て安宿とけいづ屋を下宿に差れぬ此脇差何と直を能く先方〈お賣被成ては如何でムり升 ( 島 ) 仰 あす 仕馴た裃を初め今日は千住明日は中と所を替て毎晩遊ぶがお照位の有る涌平民が今差事はない脇差元よりそんな銘作共知らずに買た物 すいぶん 女がね〈からあれが行衞を搜して居たに思ひ掛なく出合たは金を拾なれば隨分賣ても能けれど銘はなくとも正宗と聞ては何だか賣惜ひ こ、

6. 日本現代文學全集・講談社版1 明治初期文學集

にげのび ごぎます と思ふ其晩知れすんでにくれい込む所首尾能其場を迯延て歸り ( 藤 ) イヤ御尤でムり升が銘があれば正宗なれど何ぼ出來が勝れても かしまかとりいたこあつらこっちあすあるき 無銘の物は證據に成らず向ふが惚て居り升から賣た方が能うムり升掛に日光から筑波〈廻り鹿島香取潮來迄何地此地を遊び歩行約束を こないた した九月故此間こっちへ歸って來たが兄貴お前は何うしなすった ぜ ( 藤 ) シテ先方では何の位にあれをお買被成る氣だ ( 藤 ) 百圓ならば しきゐ あかし みなり おれ 買たいと申されましてムり升が極ほしい様子故モウ二三十圓は出し ( 島 ) 己もあれから身形を拵直に古鄕の明石〈行舖居の高い親父の内 わび あと いづとく へ不孝の詫に三百圓金を持て行た所親父が夫を調ねへのに大きな聲 ましても引取升でムりませうト島藏思入有て ( 島 ) 何れ篤と考て跡か そにん ら御返事を致しませうから内〈持て行て下されまし ( 藤 ) 能考て御覽ちやア言ね〈が己が惡事を知った奴が訴人をすると聞たから仕方な いづ 妹や忰に別れて漁場から舟で溿戸〈乘切る途中明石浦で早手 さめ じませだが大概ならば思切てお証が能うムりませう ( 島 ) 何れお返事 せんだうろ を致まぜう ( 藤 ) 是が出來れば私も御禮にあり付升るから何分お賴みに逢ひ賴みに思ふ舟頭が艪を持た儘落て流され一人殘った此己も鮫 ゑじき 申升ト右の合方にて藤助上手〈這入島藏邊り〈思入有て ( 島 ) あれはの餌食になる所運が有てか三ッ菱の蒸氣船に助られ危ひ所を恙なく いっか廣小路の天道干に有たのを一一圓半で買た脇差世にも稀なる正此東京〈歸ったから爰らが人の氣の付所と生れ替った心になり今は こあきんど 宗とはほんに夢にも知らなんだがあれが百圓に賣るならこんなに苦堅氣の小商人若い者と子僧を潰ひ小賣酒屋の見世を出した ( 千 ) 夫ち かせき 勞をしね〈ものを漸との事で五百圓漸金が出來たれば假千圓やアあれぎり裃はしね〈か ( 島 ) さつばりと止めて仕舞た ( 千 ) 小商内 揃はず共早く返して仕舞たい物だ〇イヤ其晩更て淺草の山で別れたをするからは定めて女房を持たらうな ( 島 ) まだ女房は持ね〈が堅氣 さかみせ 松島千太再び出會約束の九月も最早末に成たがまだ東京〈出て來ねに成て酒見世を出した事を郵便で親父〈知らしてやった所調度幸ひ 〈か己と違った酒と女で身を持事が出來ね〈から所詮彼奴は止めや妹が内に居られぬ事が有て忰連て明石から態 / \ 此地〈出て來た アしめ〈旅を裃で道中で若御用にでも成りやアしね〈かト思入男湯から女房替りに飯を焚して水人らすでやっているのだ ( 千 ) 夫りやア にて ( 千 ) 姉さん又明日來るよ〇ト合方にて男湯のロより以前の千太何にしろ仕合だが能商法に當るかね ( 島 ) 大した儲はないけれど倦す 出て來り ( あんまり娘の世辭の能ので又一一十錢損をしたと行かけるにするのが商内だから辛抱してやって居升 ( 千 ) 人に勝れたい又腕を を島蔵見て ( 島 ) ャ千太ちやアね〈か ( 千 ) ヲ、兄貴か ( 島 ) 夫ぢやア手持て居ながら小賣位な商法するのは馬鹿氣て居るぜ ( 島 ) 其り一生 前も東京〈 ( 千 ) 約束通出かけて來た ( 島 ) 能間違ずに出て來たな ( 千 ) 涯土を擺ぐに及ばね〈 ( 千 ) シテ何所〈見世を出したのだ ( 島 ) 祁樂坂 あかしゃ 何にしろお前も逹者で ( 島 ) 手前も無事で目出たかった ( 千 ) まア兄貴下の左側で明石屋と云紺暖簾の掛ってゐるが目印だ ( 千 ) 何れ改めて 爰〈掛ね〈ト合方きつばりと成り兩人床儿〈掛思入有て ( 島 ) さうし尋ねて行ふ ( 島 ) 内〈來るなら妹が己と違って堅氣だから抃の咄しは てあれから松島の親の所〈出掛たか ( 千 ) 久し振で行所だからすっか仕て呉るな ( 千 ) そりやア己も承知してゐる ( 島 ) 夫ちやア千太 ( 千 ) 近 り身形を拵〈て先銀行の手代と化け白川迄行た所少し風邪氣で十日い内に尋ねて行ふト端唄に成り千太思人有て向ふ〈這入島蔵跡を見 計り逗留して居る其内に伯父御と村の者に逢ひ様子を聞と去年の秋送り思入有て ( 島 ) 懲役中に懇意に成り血汐を呑で兄弟の縁を結んだ 親父も老母も死で仕舞跡に身寄も何にもね〈から内を疊んで其金をあの千太逢たらとっくり意見を云て止めさせ様と思ったが所詮止る 事ちやアあるめへ身成も惡い風躰で度々内〈來る日には遂には世間 寺〈納て仕舞たと聞て見りやア行のも無駄故明日は直に引か〈さう なさ りゃう がは おれ

7. 日本現代文學全集・講談社版1 明治初期文學集

そさう ナト合方唐人笛に成り向ふより岩松着流し草履下駄樫の木の杖を突早速に是から尋ねて行ふもの ( 岩 ) 麁相な事を致しました ( 島 ) ( テ殘 肪稚一一一太付て出て來り ( 三太 ) 岩松さんあぶないから靜にお出被成ま念な事だなアト島藏殘念な思入 ( 濱 ) 「岩松臺所が不用心故奥〈行 ころ て見て居て呉れ ( 岩 ) ハイ張番をして居りませうト合方にて岩松びつ せ ( 岩松 ) 大きに遲く成たから少しも早く歸りたい ( 三 ) 轉んで怪我で もなす 0 ては私が濟ません ( 岩 ) 何杖が有れば大丈夫だ〇ト杖を突趁こを引奥〈這入島藏思入有て ( 島 ) てそちにも云通少しも早く返し 跛の思人にて舞臺〈來り ( 伯母さん大きに遲く成ました ( 濱 ) フ、岩度此間も町〈行て様子を聞たれど借金故に行先がロ留がして有る 松歸ッたか平生より遲ひから = 一太を迎ひに遣たわいの ( 岩 ) 有難ふム事やら何所で聞ても曖昧にて浦和在〈逼塞せしと差配人さ〈誠を云 り升 ( = I) 調度吹水の所でお目に掛り直にお連れ申ましたト岩松前〈ねば詮方なさに諸 / \ 方 , 「草を分て尋ねる折抦忰が逢たは正しく 出て ( 岩 ) お爺ッさんお歸り被成ましたか ( 島 ) 招魂瓧〈行ならば一人共人所を聞て呉たならかゝる苦勞はせまい物 ( 濱 ) 夫程世話に成た さやう らば所を聞ばよかったに利ロな樣でもまだ子供何故聞ては來なんだ で行ずに三太をば一所に連て行がよい ( 岩 ) 今度から左様致しまぜう か ( 島 ) 今更云ても返らぬ事だト合方きつばりと成向ふよりお仲島田 今日も一人で參ッた故いじめられましてムり升 ( 島 ) 何いじめられた とはト誂の合方に成 ( 岩 ) 何時も私しをいじめ升惡童子が大勢で酒落ぶれし世話娘の拵にて出て來り ( お仲 ) 此五月迄淺草で何不自由 ふしあはせゅゑぜひ 屋の趁跛 / 、と囃子立ていじめた上杖を持て行ましたを調度其所〈なく居たものが不仕合故是非なく , v¯生れし所を立退て今は幽な裏 やつばり 家住居常が御ぜんは焚て呉れど髮を結に出た留守は馴ぬ買物せねば 來合せて叱て呉たお人が有たが是も私しと同じ事矢張びつこでムり いでなされ おまはさま いたづらっこ 成らぬ思〈ばつらひ事ぢやわいなト本舞臺〈來り門口を行たり來た 升故惡童子が馬鹿にして云事を聞ぬ所へ御廻り様がお出被成お叱り ふと 被成ましたので杖を置て一もくさんに皆んな逃て行ました ( 島 ) 夫はりする此内島藏思案の思入不斗お仲を見て ( 島 ) 「」お濱あの娘御は 浮雲い事で有た今も己が云通此後一人で行ぬがよい ( 濱 ) さうしておさっきから行たり來たりして居るが何を尋ねるのだか聞て見やれ ( 濱 ) ハイ聞て見ませうわいな〇ト門ロ〈出て ( モシお妨ヱさん何ぞ 前と同じ様な片足惡ひ其お人は ( 岩 ) 誠に見るから深切な能イお人で ムり升が不思義な事は私と同じ左の足の怪我咄を聞ば月日も替らずお尋ね被成升のかトお仲間の惡さうな思人にて ( 仲 ) こちらは酒屋で きら はつか ムり升な ( 濱 ) ハイ左様でムり升 ( 仲 ) 何うぞお醤油を一一合持て來て下 みやびちゃう 同じ四月廿日の晩切れた時刻は十二時前 ( 島 ) ヱ〇ト思入有て ( スリ どちらさま あに さいまし ( 濱 ) 畏ましてムり升る何所等様でムり升 ( 仲 ) 宮比町の米 ふく ャ四月廿日の晩十一一時前に切られしとか ( 濱 ) 若ゃいっぞや兄さんが お咄被成し其人なるか ( 島 ) シテ其人の年恰好は ( 岩 ) 年は五十位にて屋の裏でムり升 ( 濱 ) 只今持て上り升がお名前は何と仰有り升 ( 仲 ) 輻 鼻は高く目は大きく能格服でムり升 ( 三 ) 私しも傍で見て居ましたが島屋と申升 ( 濱 ) 醤油は能いのに致し升か並のに致し升か ( 仲 ) 能のが たかしまや 宜しふムり升 ( 濱 ) 畏ましてムり升るト合方にてお仲恥かしさうに向 むすめご 役者で言〈ば高島屋に能似てゐるかと思ひましたト島藏思人有て ひとがらい ( 島 ) 扨は彌其人なるか ( 演 ) そんならお前が ( 島 ) 「」〇ト押〈てふ〈這入跡を見送 ( 島 ) お濱人抦の能イ娘御だな ( 濱 ) 醤油を小買にす ( 三太手前は裏〈行て炭を積手俾をしろ (lll) 畏りましたト = 一太下る様な御身分ではムり升まい ( 島 ) 何でも以前は立派な内のお孃様に 手〈這人島藏思入有て ( 島 ) 正しく夫と思はる、がシテ其人の内は何違ひない家名は何とか言ッたな ( 濱 ) 輻島屋と仰有いましたト島藏思 所だ ( 岩 ) 一一一太が急ぎ升るので遂聞ずに仕舞ました ( 島 ) 内が知れたらひ出せし 0 なしにて ( 島 ) 、、輻島屋と云からは若や淺草町の ( 濱 ) こがび しまだ

8. 日本現代文學全集・講談社版1 明治初期文學集

等 : ーー第、こ新」まなしロ →圓朝省像「粹興奇人傳」所載 」談社丹燈籠」第壹編表紙明治十七年 東京稗史出版社刊 →三遊亭圓朝六十歳頃 ←圓朝自筆の達磨 ( 所 藏藤浦富大郎實物 大正十二年儿月一日關東 大震災カ時燒失 ) 所藏藤浦富太郎 ) →圓朝生前愛用のロ ←東京谷中全生施にある圓朝の墓 井馨明 馨暦一 ー、祝十 、 - ・招年 時山 朝に

9. 日本現代文學全集・講談社版1 明治初期文學集

のぞ あすこ 積りで。新「さうサ。柳島の横川で大層釣れるといふから彼處 ~ 徃所 ( 參り密と家裡の樣子を覘き込ますと、家裡では壤様は新三郞の んとう ばかり かうか。件「橫川と云ふのは彼の中川〈出る所ですかへ。さうして事計思ひ續けて、誰を見ましても新一二郞の様に見える處 ( 、眞個の あなた かつを 彼様な處で何が釣れます ( 。新「大きな鰹魚が釣れるとヨ。件「馬新三郞が來た事故、ハッと思ひ「貴所は新三郞さまか。と云 ( ば、 鹿な事を仰しゃい。川で鰹魚が釣れますものかネ。たかえ、撥尾魚新「靜かに / 、、其後は大層に御無沙汰を致しました。鳥渡御禮に いらッしゃ か海鰤位のもので御座いませう。兎も角も人來るならばお供をいた上るんで御座いましたが、山本志丈があれぎり參りませんものです しませう。と辨當の用意を致し、酒を吸筒 ( 詰め込みまして、田から、私一人では何分間が惡くッて上りませんだった。露「能くま いらッしゃ れうし ア入來いマした。ト最う耻しいのも何も忘れてしまい、無理に新三 の昌平橋の船宿から漁夫を雇ひ乘出しましたれど、新三郎は釣はし たくはないが、唯飯島の別莊のお孃の樣子を垣の外からなりとも見郎の手を取てお上り遊ばせと蚊屋の中〈引摺り込みました。お露は 只もう嬉しいのが込み揚げて物が謂はれず、新三郞の膝に兩手を突 ませうとの心組で御座い升から、新三郞は持て來た吸筒の酒にグッ スリと醉て、船の中で寐込んで仕舞ましたが、件藏は一人で日の暮たなりで、嬉し涙を新三郎の膝にホロリと翻しました。これが眞 こぼそらなみだ の嬉し涙です。他人の所へ悔みに行て翻す空涙とは違ひます。新三 れるまで釣を致して居ましたが、新三郎が寐たやうだから、件「旦 うら 那〈 / \ 、お感冒をひき升ョ。五月頃は兎角冷えますから、旦那〈郞も最う是までだ、知れても搆はんと心得、蚊帳の中で互に嬉しき わたくしか、 、是は餘りお酒を侑め過ぎたかナ。新三郎は不圖見ると横川の枕をかはしました。露「新三郞さま。是は妾の母さまから讓られ かたみおしめ ゃうだから、新「件藏はどこだ。新「 ( イ鉉は橫川です。と云はました大事な香箱で御座い升。どうか妾の紀念と思召しお預り下さ ざうがんいり けんにんじ れて傍〈の岸邊を見ますと、二重の建仁寺の垣に潜り門がありましい。と差出すを手に取て見ますと、秋野に虫の象眼入の結構な品で、 このふた たが、是は慥に飯島の別莊と思ひ、新「件藏や一寸此處 ~ 着けて呉お露は此蓋を新三郞に渡し、自分は其身の方を取て互に語り合ふ所 こんな どちらいらッしゃ へ隔ての懊をサ一フリと引明けて出て來ましたは、おっゅの親御飯島 れ。一寸徃て來る所があるから。件「此様所へ着けて何處へ入來る びッくり このてい 平左衞門様で御座い升。兩人は此體を見てハッと計りに驚愕致しま のですヱ。私も御一緖に參りませう。新「お前は其處に待てゐなョ。 したが、逃げる事もならず、唯うろ / \ して居る所へ、平左衞門は 件「だッて其爲めの件藏では御座いませんか。お供を致しませう。 んぼり 新「野暮だノウ。色にはなまじ連れは邪魔ョ。件「イヨお洒落でげ雪洞をズッと差付け、聲を怒らし、平「コレ露これ〈出ろ。又貴樣 そこっ すネ。宜がすネー。といふ途端に岸邊に船を着けましたから、新三郞は何者だ。新「 ( イ、手前は萩原新三郞と申す粗忽の浪士で御座い てまへ そっうち とこ ふるヘ 升。誠に相濟ません事を致しました。平「露、汝はヤレ國がどうの 籠は飯島の門の處へ參りプル / 戰慄ながら密と裡の様子を覘き、 あい 丹が少し明いてるやうだから押して見ると明たから、ズッと中〈這入かうの云ふノ、親父がやかましいノ、どふか閑靜な所〈徃きたいノ かやう べり 談り、兼て勝手を知て居る事ゅゑ、だん / \ と庭傳ひに參り、泉水縁と、様々の事を云ふから、此別莊に置けば、斯様なる男を引摺込 かす に赤松の生〈てある處から生垣に就て廻れば、鉉は四疊半にて孃さみ、親の眼を偸めて不義を働きたい爲に閑地〈引込んだのであら かりそ へや う。コレめにも天下御直參の娘が、男を引人れるといふ事が。ハッ まのお室で御座いました。お露も同じ思ひで、新三郞に別れてから ふとりしまり わづらっ と世間に流布致せば、飯島は家事不取締だと云はれ家名を汚し、第 其事ばかり思ひ詰め、三月から煩て居ります所へ、新三郎は折戸の かつを すゐづゝ のそ んとう

10. 日本現代文學全集・講談社版1 明治初期文學集

「粹興奇人傳」表紙文久三年寶善堂刊 ←假名魯支 対いを ( 冂すを一 な 4 ス松【ー ~ 第を ( ま はヴをみをる、といまー 」イ、た ~ る ~ を才 →魯文省像「粹 リ可ケ可彌】皀て 魯文よ の手紙 ( 所藏本間久雄 ) 、る′いをー 「を々 ろい云第当、ノ 設下繪」所藏本間久雄 ) を 0 ん第 、ド 4 ( っしーを々′・イ ←魯文自筆小 「西洋道中膝栗 毛」表紙明治 三年萬笈閣刊 黻も第廴 ←「安愚樂鍋」初編扉明 治四年誠之堂刊 ・萬 ' 度