) くー . 0 く X 0 つ 研 0 社夊第町応を物第第を 「浮雲』第一篇初版本の表紙と本文 編新 界のや主人 二葉亭四逑 第一回ア、ラ怪しの人の擧動 をみ 0 イ第 千早振る神無月も最早跡二日の餘波当なツた廿入日 の午後三時に神田見用の内より塗渡る蟻・妝る蜘株 の子とう・よ / 、ぞよ / 、沸出で、來るのはれも を気ュしふ方 ( ゑかし熟く見て篤ざ點檢するざ是 れにも種 , 、種類の , あるもので、まづ髭から書立てれば ロ髭類髯類の煢、暴に興起したのにのロめい 篇一卵
71 浮雲 「オヤそれはありがたくも何ともないこと」 トまたロを揃えて高笑い。 じようだん あさって 「それは戯談だがネ。芝居はマア芝居として、どうです、明後日団子坂へ菊見という奴は」 「菊見、左様さネ、菊見にもよりけりサ。犬川じやア、マア願い下げだネ」 「其処にはまた異な寸法も有ろうサ」 ささ 「笹の雪じやアないかネ」 「まさか」 「ほんとに往きましようか」 「お出でなさいお出でなさい」 「お勢、お前もお出ででないか」 「菊見に」 「アア」 である お勢は生得の出遊き好き、下地は好きなり御意はよし、菊見の催し頗る妙だが、オイソレとい うも不見識と思ッたか、手弱く辞退して直ちに同意してしまう。十分ばかりを経て昇が立ち帰ッ たあとで、お政は独言のように、 「ほんとに本田さんは感心なもんだナ。まだ年齢も若いのに三十五円月給取るようになんなす った。それから思うと内の文三なんざアぼんくらの意久地なしだッちやアない、二十三にもなツ いどたちど て親を養す所か自分の居所立所にさえまごっいてるんだ、なんぼ何だッて愛想が尽きらア」 どこ もよおすこふ
194 編物の稽古は、英語よりも、面白いとみえて、隔晩の稽古を楽しみにして通う。お勢は、全体、 本化粧が嫌いで、これまで、外出するにも、薄化粧ばかりしていたが、編物の稽古をはじめてか らは、「皆が大層作ッて来るから、私一人なにしない : ・ : 」と咎める者も無いに、我から分疏をい えら なりたけよ こッてりと、人品を落とすほどに粧ッて、衣服も成丈美いのを撰んで着て行く。夜だか ら、此方のでいいじゃないかと、美くない衣服を出されれば、それを厭とはみはしないが、何 となく機嫌がわるい お政はそわそわして出て行く娘の後ろ姿を何時も請け難くそうにみおくる・ : 昇は何時からともなく足を遠くしてしまッた。 第十九回 いったん はずか お勢は一日一は文三をはしたなく辱しめはしたものの、心にはさほどにも思わんか、その後はた だ冷淡なばかりで、さして辛くも当たらん。が、それに引き替えて、お政はますます文三を憎ん で、始終出て行けがしにもてなす。何か用事が有りて下座敷へ降りれば、家内中寄り集りて、ロ を解いて面白そうに雑談などしている時でも、皆云い合わしたように、ふと口をつぐんで顔を曇 ふきげん らせる、といううちにも取り分けてお政は不機嫌な体で、少し文三の出ようが遅ければ、何をぐ すぐすしていると云わぬばかりに、此方を睨めつけ、時には気を焦 ' て、聞こえよがしに比な ふうてん ど鳴らして聞かせる事も有る。文三とても、白痴でもなく、瘋癲でもなければ、それほどにされ こちら っ こぞ
100 とりもち あさって 「新聞の翻訳物が有るから周旋しよう。明後日午後に来給え、取り寄せて置こう」 トいうから文三は喜びを述べた。 : 日本の新聞は英国の新聞から見りやまるで小児の新聞だ、見られたものじゃ 「フン新聞か : ・ ためいき わかれ 文三はあわてて告別の挨拶をしなおしてそこそこに戸外へ立ち出で、ホッと一息溜息をついた。 早くお勢に逢いこ、、 早くつまらぬ心配をした事を咄してしまいたい、早く心の清い所を見せ なペ てやりたい、 ト一心に思い詰めながら文三がいそいそ帰宅して見るとお勢はいない。お鍋に聞け いったん ば、一旦帰ってまた入湯に往ったという、文三すこし拍子抜けがした。 居間へ戻ッて灯火を点じ、臥て見たり起きて見たり、立って見たり坐ッて見たりして、今か今 かと文三が一刻千秋の思いをして頸を延ばして待ち構えていると、やがて格子戸の開く音がして、 あしおと はしごだん 縁側に優しい声がして、梯子段を上る遭音がして、お勢が目前に現われた。と見れば常さえあで びろうと すとおはだえ やかな緑の黒髪は、水気を含んで天鵞絨をも欺くばかり。玉と透き徹る肌は塩引きの色を帯びて、 あんばい いたすら ソコリとした口元のし 眼元にはホンノリと紅を潮した塩梅、何処やらが悪戯らしく見えるが、ニ、 おらしい所を見ては是非を論する選がない。文三は何もかも忘れてしまッて、だらしも無く = タ ニタと笑いながら、 「おかえんなさい。どうでした団子坂は」 ざっとう 「非常に雑沓しましたよ、お天気がいいのに日曜だッたもんだから」 ひざ ト言いながら膝から先へべッタリ坐ッて、お勢は両手で嬌面を掩い
ひやくまんだら それは : : : ますお政が今朝言ッた厭味に輪を懸け枝を添えて百万陀羅並べ立てたあげく、お勢の 親をそまつにするの迄を文三の罪にして難題を言い懸ける。されども文三が死んだ気になって諸 事お容るされてで持ち切ッているに、お政もスコだれの拍子抜けという光景で厭味の音締め . をす るようになツたから、まず好しと思う間もなく、ふと又文三の言葉尻から燃え出して以前にも立 くろけぶりえんえん ち優る火勢、黒煙焔々と顔に漲る所を見てはとても鎮火しそうも無かッたのも、文三が済みませ ぬの水を斟み尽くして澆ぎかけたので次第次第に下火になって、。フスプス燻りになって、遂に不 あい 精不精に鎮火る。文三はほっと一息、寸善尺魔の世の習い、またもや御意の変わらぬ内にと、挨 ひとり′」と さっ 拶もそこそこに起ッて坐敷を立ち出で二、三歩すると、後ろの方でお政がさも聞えよがしの独一一一口、 「アアアア今度こそは厄介払いかと思ッたらまた背負込みか」 第六回どちらっかすのちくらが沖 秋の日影も稍傾いて庭の梧桐の影法師が背丈を伸ばす三時頃、お政は独りつくねんと長手の火 やまともじ つのもじ いたずらが まちもた 鋓に凭れ懸かッて、斜めに坐りながら、火箸を執って灰へ書く、楽書きも倭文字、牛の角文字い おうおう ろいろに、心に物を思えばか、怏々たる顔の色、ややともすれば太息を吐いている折しも、表の あなた 浮格子戸をガラリト開けて、案内もせすはいッて来て、隔ての障子の彼方からヌット頑を差し出し て、 「今日は」 こうしど こんち しめ そそ ひばし ひと っ ひ
トロに言って、「お勢の帰って来ない内に」ト内心で言足しをして、ぶんぶんしながら晩餐を喫し て宿所を立ち出で、はやあしに番町へ参って知己を尋ねた。 知己と云うは石田某と云って某学校の英語の教師で、文三とは師弟の間がら、曾て某省へ奉職 とりもち したのも実はこの男の周旋で。 この男は曾て英国に留学した事が有るとかで英語は一通りできる。当人の噺によれば彼地では 経済学を修めて随分上出来の方で有ったと云う事で、帰朝後も経済学で立派に押し廻される所で は有るが、少々仔細有ッて当分の内 ( 七、八年来の当分の内で ) 、ただの英語の教師をしていると 云う事で。 英国の学者社会に多人数知己が有る中に、かの有名の「 ( ルベルト・スペンセル」とも曾て半 おも 面の識が有るが、シカシもう七、八年も以前の事ゆえ、今面会したら恐らくは互いに面忘れをし ているだろうと云う、これも当人の噺で。 こうそうろんどん は・ルじ、まら・ すなわ ともかくも流石は留学しただけ有りて、英国の事情、即ち上下議院の宏壮、市動府市街の繁昌、 すべりよこうわいさ * こんだて 車馬の華美、料理の献立、衣服杖履、日用諸雑品の名称等、凡て閭巻猥瑣の事には能く通暁して しがれッと あ いて、骨牌をもてあそぶ事もでき、紅茶の好し悪しを飲み別ける事もでき、指頭で紙巻煙草を製 する事もでき、片手で汁を拭く事もできるが、その代わり日本の事情は皆無解らない。 、。こど苦にしないのみならす儿そ一切の事 日本の事情は皆無解らないが当人は一向苦にしなしナオ すなわ 一切の物を、「日本の」トさえ冠詞が附けば則ち鼻息でフンと吹き飛ばしてしまってそして平気で 済ましている。 じようり
そ れ カ : 取 り も 直 さ す 人 お よ び 文 子 者 し 、て の 213 っ全 、な ェ反返味 たな は国 際は の師 的す ナ人 、な ほ見 類そ交あ ジで の然 グ結 、た つ会 た主 能実 の家 て性現族 論撞 ; 成を 學理着れ 長も 図位 にそ の部 った も過 ルす 者校 同亭 二剪亭四迷 人と作品 と し、 る で あ ろ う シ ョ リ ズ ム カ ; 段 ド皆 を つ し . つ る ナ広確 く は 識 冫こ 、結 び つ く 追可己 っ あ健す 的 と : れ渉 に わ せ て 自 を う ど れ る で る つ ま り 冂 、年春 の ろ置内成見 に 常 に 国 の に お し、 の 自 律 の の 中 と ん ど 貫 し 冂 の が 、た 手呈 に は ザ の 屈 折 自 え る ツ サ ら の 的 とくばなそ構 叩 甲 の 関 冫こ つ し、 て と す る ン発 、や ラ懐 ッ疑当 ル・識 を 生 い社出対 し が て カ : ゲ り し が 日 本 の み絶大 主 、義 義や権あ者 カ の 対 ニド・ お 、そ ら く わ め て し、 で ろ ぅ の 照 子ロ 文 子 レ ) と の ほ 力、 好 で あ つ た と レ ) 神田一ツ橋にあった東京外国語学校 教 で つ た 米 国 の シ ア 人 コ フ イ グ レ が 帝 ン ア ・ [ ごロ 叩 あ り 時 カ ト コ フ ド フ ' ロ リ ボ フ ら の・ 同 と り の 子 レ ) の コヾ リ レ ノレ モ ト フ ツ ノレ ゲ ネ コ。 チ ド ス ス リ ス キ
向いて礼を返して、サット顔を赧らめた。 はなしあわい あたり わか 暫くたたすんでの談話、間がかけ離れているに四辺が騒がしいのでその言う事は能く解らない くちもと ちょうちょう が、なにしても昇は絶えすロ角に徴笑を含んで、折節に手真似をしながら、何事をか喋々としゃ がぜん べり立てていた。その内に、何かおかしな事でも言ッたと見えて、紳士は俄然大口を開いて肩を くちもとしわ 打すて、ツハッと笑い出し、丸髷の夫人も口頭に皺を寄せて笑い出し、東髪の令嬢もまたにつ かお こり笑いかけて、急に袖でロを掩い、額越しに昇貌を眺めて眼元で笑った。身に余る面目に昇 や は得々として満面に笑いを含ませ、紳士の笑い罷むを待ッてまた何かしゃべり出した。お勢母子 の待ッている事は全く忘れているらしい わき お勢は紳士にも貴婦人にも眼を注めぬ代わり、東髪の令嬢を穴の開く程みつめて一心不乱、傍 き 目をふらなかった、呼吸をもっかなかッた、母親が物を言い懸けても返答をもしなかった。 ぼうぜん その内に紳士の一行がドロドロと此方を指して来る容子を見て、お政は、茫然としていたお勢 の袖を匆がわしくひきうごかしてあしばやに外面へ立ち出で、路傍にたたずんで待ち合わせてい しりえしたが ると、暫くして昇も紳士の後に随って出て参り、木戸口の所でまた更に小腰を屈めて皆それそれ わかれ ていねい いんんちょうちょう こちら に分袂の挨拶、叮嚀に慇懃に喋々しく陳べ立てて、さて別れて独り此方へ両三歩来て、フト何か かおっき あたり 憶い出したような面相をしてキョロキョロと四辺をみまわした。 「本田さん、此処だよ」 ト云うお政の声を聞き付けて、昇はあしばやに傍へ歩み寄り、 「ヤ大きにお待ち遠う」 め しばら おお あか と こちら おもて てまね
190 ん。そのうちに母親が人の身の上を羨むにつけて、我身の薄命を歎ち、「何処かの人」が親をない がしろにしてさらにいうことを用いす、何時身を極めるという考えも無いとて、苦情をならべ出 すと、娘の親は失礼な、なにこの娘の姿色なら、ゆくゆくは「立派な官員さん」でも夫に持ッて あざ みまね 親に安楽をさせることで有ろうと云ッて、嘲けるように高く笑う。見よう見真似に娘までが、お 勢の方を顧みて、これもまた嘲けるようにほほと笑う。お勢はおそろしく赤面してさも面Ⅱなげ に俯向いたが、十分も経たぬうちに座舗を出てしまッた。我部屋へ戻りてから、始めて、おくれ ばせにやッきとなツて「一生お嫁になんそ行くもんか」と奮激した。 客は一日打ちくつろいで話して夜に入ッてから帰ッた。帰ッた後に、お政はまた人の幸福をい いだして羨むので、お勢は最早勘弁がならす、胸に積もる昼間からの鬱憤を一時にはらそうとい う意気込みで、言葉鋭く云いまくッてみると、母の方にも存外な道理が有ッて、ついにはお勢も うけだち 成程と思ッたか、少し受太刀になツた。が、負けじ魂から、減多には屈服せず、なおかれこれと にわ しいあらそッている、そのうちにお政は、何か妙案を思い浮かべたように、俄かに顔色を和らげ、 今にも笑い出しそうな眼付をして、「そんな事をお云いだけれども、本田さんなら、どうだえ ? 本田さんでも、お嫁に行くのは厭かえ ? 」という。「厭なこった」、と云ッてお勢は今まで顔へ出 こと」と していた思慮を尽く内へ引っ込ましてしまう。「おや、何故だろう。本田さんなら、 、じゃな いか。ちょいと気が利いていて、小金もちっとは持ッていなさりそうだし、それに第一男が好く ッて」「厭なこッた」「でも、もし本田さんが呉れろと云ッたら、何と云おう ? 」と云われて、お たゆた 勢は少し躊躇ッたが、うろたえて、「い : いやなこッた」お政はじろりとその様子をみて、何を トがみ しあわせ
230 忍月居士 忠義に禄の高下なしとの一言は真田幸村のロより出で & 初めて価値あり。シルレル氏の戯曲は ひかり クレッフ、。フレックの名優を待ッて初めて光彩を増す。凡そ天下の事、其器に当るの人其能を有 するの人、之を言ひ之を行ふて一段の佳味あるもの也。利欲に迷ふの劣士真田を学ぶも焉んぞ家 ばきやくとったり やくしゃ みるもの 康の感歎を受けんや。馬脚、捕手を扮するの俳優シルレルの作を演ずるも焉んそ観客の評判を招 エ一ドばらひ つ、しみあっき まるちん かんや。江戸払云々の広告をして、謹厚の尾崎さんのロに出しめずして団珍をして言しめば、 とんち はめこと アカケイトシャーツしんこま 頓智協会の賞言を得るや覚東なし。紅毛糸胴着を新駒に贈るの所為をして、深窓貴嬢の手に出し うらだな ほめおとし めすして裏店の娘ならしめば、新聞紙上の珍話とならざるや明也。小説の褒貶亦た此の如きの ほめおとし み。其一褒一貶は小説の眼あり、小説の能ある人の筆に出て初て効力あるもの也。今や此の眼な おほほまれ く此の能なきの予、妄りに一言を大評判あり大栄誉ある浮雲に加へんと欲す。縦令力を極めて之 を賞するも、浮雲の価値を揚ぐる能はざるは勿論なり。又縦令筆を奮って之を貶するも、浮雲の 瑕瑾を発くに足らざるは覚悟する所なり。然れども余は客年の夏浮雲の第一篇を批評せり。所謂 だんまり 乗り掛ッた船、今更第二篇を黙々に附するは、吾心の許ざる所、否な女学雑誌の許さゞる所なり。 故に終に一言を加ふることとなせり。 ほめおとし 浮雲第一一篇の褒貶