冬 うことだ。このため、「セント・ エルモの火」は「レダの火。ともいわれている。 日本では、やはりカストル、ポルックスの二星を一対とみて、イヌノメ、ネコノメ、カニノ メ、モンポシ、メガネボシなどという和名をあたえている地方があるが、キンポシ、ギンポシと 色を区別していう地方もある。これはカストルが白色星、ポルックスが黄色星であるという色の ちがいを大へんこまかく観察してみわけているものだ。 光度としては、カストルが一・六等で、ポルックスが一・二等、肉眼でみると〇・四等級の差 はほとんど感じられず、心もちカストルの方が暗いかなと思われるのに、星図には四捨五人のた めポルックスは切り捨てて一等星、カストルは切り上げられて二等星として表記されているの で、ちょっと気の毒である。距離としてはカストルが四五光年、ポルックスが三五光年で、二つ を等しい距離においてみると、実はまったく同じくらいの明るさになってしまうというのだから いよいよ仲の良い兄弟星である。 カストルについての話題でもう一つ有名なのは、小望遠鏡でもみわけられる連星であること だ。古い天文書などでみると五センチの望遠鏡のテスト星と記されている。一九二五年ごろには 連星の間隔は角度にして四秒、たしかに五センチで分離できる限界であったのだが、どうも両星 の間はだんだん接近して狭くなっているらしく、今では十センチでもむずかしいということにな っている。この連星は周期が三百四十一年というおそろしく気の長いものだが、それでもしだい に動いていることはたしからしい なお、一一個の連星の一方の星はさらに二つにわかれており、分光器観測によると、もっと多く 235

軍勢の先頭にはかならずカストルとポルックスがあらわれて勝利をみちびいてくれると固く信じ ていた。したがって、ローマ人はカストルとポルックスをまつる神殿を各地につくっており、現 在でもその遺跡がローマやその近郊シチリア島などに発見されている。また、兄弟はヘルレスポ ンド海峽にはびこった海賊の討伐にも大手がらをたてたために、航海の守護神としてあがめら れ、ふたご座は「航海の星」としても有名である。海が荒れてどうしようもないときにはこの双子 の星に祈れば、嵐はしずまるともいわれている。 船は、つつがなく港に入る。 大波を越え、強風をしのいで 偉大なる双子の兄弟が、 一たび船路のかなたに輝けば : ・ ( マコーレイ ) などと詩にもしばしば枕一一一一口葉のようにうたわれることが多い エルモの火 , という放電現象がカストルとポルックスに結び もう一つ面白いのは、「セント・ エルモの火」は、雷をともなった暴風雨の日など、航行中の つけられていることだ。「セント・ 船のヘさきや帆柱などが帯電して発光する現象で、船乗り仲間では七ふしぎの一つに数えられて いるが、アルゴ号の遠征のときにもこれがあらわれたとったえられている。航海の途中、アルゴ 号はおそろしい嵐に出会って一歩も動きがとれなくなってしまったとき、カストルとポルックス の頭のまわりに青白い火の玉がボウッとあらわれ、やがてまもなく嵐はしずまり海はないだとい 234

VII : = 三 - Cancer ミ 1. eT い l•e 強い 洋 0 ←赭し dr に、 ー . 山 J—icorne を ルックスはボクシングのチャンビオン で、しかも不死身であった。いつもかな らず二人そろって数々の戦争に手がらを たて、有名なャーソーンのアルゴ遠征隊 にもはりきって進んで参加している。最 後にカストルは宿敵のイダスと戦って命 を落としポルックスはイダスをたおして 仇を討ったのだが、いつもいっしょに死 のうと約東していたことが果せなかった よことを嘆いていた。しかし、ポルックス 図は不死身でいくら死のうと思っても死ぬ 天ことができないのである。ついに父ゼウ スにねがって不死身をといてもらい、よ スうやく兄弟そろって、天に昇り仲良く星 ラとなり、本望をとげることができた、と いわれている。 武勇を好んだローマの人びとは、この 兄弟を戦争の守り神とあがめ、かれらの 233

いわけである。ここでは宇宙計画で名をあげたふたご座という星座についてスポットライトをあ ててみることにしよう。 冬の空高くみえるふたご座のすがたはたしかに二人の人物をおほろげに浮かびあがらせる。頂 点にカストルとポルックスという、二つの明るい一等星と一一等星が光っていて、人物の頭にあたっ ており、七、八個の二等星、三等星が長方形にならんでいる。近ごろ流行の双子のコーラスグル 1 プにもよく似ている。いっぞやアメリカの雑誌に星座の姿を今日風にデザインしたものがのつ ていたが、ふたご座は上の方からみたスポーッカーにみたてられ、カストルとポルックスはヘッ ドライトの部分にあたっていた。もっともなみかたであるが、ちょうどふたご座のかたわらを冬 の天の川がうすポンヤリと流れており、双子の足の部分がそこにひたっている形である。ふとみ あげた目には悪路 ( 天の川のうすほけた道 ) からはずれて転落した事故自動車みたいにみえてくる とは、交通戦争はなやかなこのごろなさけない気がする。 しかし、どんなに新しい目でみても、やはり双子、兄弟、夫婦、そんな形にみえるのがいちば ん妥当なのだということにおちついてしまう。遠くバビロニアの時代から、この二つの星は「大 きな双子」マシュ・タブ・ ' ハ・ガル・ガル・ラというたのしい名前で呼ばれていた。そこでギリ シャの人びとは、、、 力にも仲の良さそうな二つの星に、双子の英雄兄弟の名をつけたのである。 カストルとポルックスは、大神ゼウスがスパルタ王テュンダラスの妃レダと、白鳥に化けて密 通して生ませた半神半人の兄弟で、ホメェロスの敍事詩「イリアス」に名高い傾国の美姫トロイ のヘレンは妹にあたっている。ニ人とも武勇のほまれは高く、兄のカストルは乗馬の名人、弟ポ

ティントレット「鳥籠のあるレダ」じこめてしまおうというわけで、とりこになっ 、』にたゼウスはさぞ目を白黒させたことだろう。 この結果レダは二個の卵をうみ、一個からは を男のふたご、カストルとポルックス ( ふたご 座 ) がうまれ、もう一つからは、傾国の美姫トロ イのヘレンとクリュテムネストラがうまれる。 ヘレンの方は有名だが、もう一人のクリュテム ネストラはご存知ない人が多い。この方はギリ シャの勇将アガメムノンの妻で、のちに情夫と 共にアガメムノンを謀殺するという悪女の見本 のような女性である。 さて、十字架をつくる星々のうち白鳥の尾に あたる星はデネプ ( 尾 ) という。青白色の一 三等星で、天の川のもっともごく美しい部分を 背景としているため、あまりパッとしない一等 星だが、距離は一千光年以上の遠方にあるの で、実体は太陽の数万倍も明るいすばらしい高 温の星である。しかし、白鳥座ではデネプより ↓ 07

冬 衛星と三回にわたってランデブーをした。乗員のサーナンは二時間五分にわたって宇宙歩行をお こなった。十号は高度を変更して七六六キロという最高記録をつくった。十一号はこれをやぶる 一三七〇キロという高度記録をつくり、さらにアジェナ衛星とドッキングし、綱で結びつけて人 工重力の実験をした。 こうして、アメリカはジェミニ計画を完成して、人間が月に往復するための基礎的な技術をほ とんどマスターしたのである。こまかい技術では、アメリカはソビエトと問題にならないくらい 大きく差をつけてひきはなしたと 目まんしたものである。 ところでこのジェミニという名 前が、星座のふたご座 ( ラテン語で / エミニ ) からきていることはご 仔知の方が多いと思う。ふたご座 、ギリシャ神話で名高い双子の 英雄兄弟カストルとポルックスの 姿をかたどったものであることも 衛星座にくわしい人ならよく知って 、、おられるだろう。一一人乗りの衛星 工 ジ船の名前としては大へんふさわし 231

まを追いかける動作を連想させるのかもしれない。 南西に目を転ずると、冬のころはなやかに空をいろどっていたぎよしや、おうし、オリオン、 いっせいに西にかたむいて総退却の姿勢にある。その中で 、小いぬなどの一群の星座は、 大いぬ ふたご座だけが、西の空にまだかなり高く、カストル、ポルックスの二星を頂点に直立した形で みえている。いかにもふたごが二本の支柱をガッチリとっくって、ほかの星々がそれにすがって いるようにもみえる。私はこれからサンフランシスコの金門湾にかかる大吊橋を連想したことが ある。 南の空にはそれぞれ春めいた特長を持っ星座がみえる。 まず目につくのは、四個の小星にかこまれて中心がポンヤリと鬼火のような燐光につつまれて いるかに座である。かに座自体は、ごく小さな目立たない星座であるが、それでも黄道十二星座 の一つとして重要であるし、もう一つは、そのポンヤリした光の塊りーー・・正しくはプレセべ、ま ハイプ ( 蜂の巣 ) と呼ばれる肉眼にもみえる散開星団の存在で名高い。プレセべは、 小望遠鏡でみると、約五〇〇個の徴光星の大集団である。イタリアのガリレオがはじめて自製の 望遠鏡でこの星団をみて、 「プレセべといわれる星雲は、一つの星ではなくて、何十個もの小さな星の集まりだ″【」と叫 んだのでも有名である。 そのかに座にほえかかっているような姿にみえるのがしし座である。しし座の頭部は、疑問符 のクエッション・マークをうらがえしにした形にみえるが、西洋では「しし座の大がま」と呼んで

冬 の星を構成している物質は水の密度の十万倍というおかしな事実が知られている。大いぬ座の南 方、地平線すれすれにりゅうこっ座のカノープスがあるのだが、これを関東以北でみることがで きた人はよほど幸運な方である。 大いぬ座のななめ上に小いぬ座があるが、目につくのは一等星のプロキオンだけである。面白 いことに、プロキオンにもシリウスと同じような白色矮星の伴星がく 0 ついている。大犬、小大 の主星がなかよくこの奇妙な重い星をかかえているのは、どうう 天の配剤なのであろうか。 オリオン座の北西に五角形にみえているのがぎよしゃ座である。二輪車を発明した足の悪い王 さまエリクトニウスの姿で、五角の一隅に光る一等星は、カペラ ( 仔山羊 ) と呼ばれている。な お、この星座のという星の伴星は、太陽の直径の二千倍もある異常な巨星で、主星の方は、こ の星にかくされても密度がうすいので、すけてみえるというへンな星である。 冬の空には、さらにもう一つ一等星がかがやいている。ふたご座のポルックスで、少し光度の 劣るカストルと共に、仲の良い英雄兄弟の星座として知られている。カストルは一・六等星で、 二等星の部類にいれられているが、ポル , クスとくらべてそうみおとりするわけでもない。しか も六重星系というやャこしい連星システムをつく 0 ていることも有名である。 冬の空はこうした六個の一等星にいろどられて、豪華な星座の一大絵巻がくりひろけられてい るのである。 193

というのは、もともと南半球のひじように広い範囲の空にひろがる巨大な星座、アルゴ座がその 原型である。 ギリシャ神話によると、現在の黒海沿岸あたりにあったといわれるコルキスの国にある黄金の 毛を持 0 た羊の毛皮をとりにゆくために、ギリシャの勇士ャーソーンが組織した大探検隊をはこ んだ船がアルゴ号であるという。このときの探検に参加したメンバーがまたすばらしい。一騎当 千のつわものばかり、たとえば、ギリシャ全土に豪勇の名をほしいままにしていた〈ルクレス、 双子の英雄兄弟カストルとポルックス ( これはふたご座という星座にな 0 ている ) 、クレタ島の 半人半牛の怪物ミノタウルスを退治して〈ルクレスと並び称せられた豪傑テーセウス、トロイ戦 争の英雄ネストール、音楽の名人ォルフ = ウスなどがい 0 しょの船にのりこんだ。 アルゴ遠征隊は、首尾よく金毛羊皮を手にいれてギリシャに凱旋し、ヤーソーンはアルゴ号を 。こ、、こし、このアルゴ座にはヘさきがなく、星座にえ 海神にささげ、のちに星座になったというナオ 両岸から動く岸壁にはさみ がかれる絵は半分しかないのは、シンプレーガーデスの瀬戸という、 つけられ、ヘさきを折りとられてしま 0 たのだそうだ。とい 0 たわけで、アルゴ座は、トレミー のころからちゃんと大星座としてがんば 0 ていたのだが、半かけのか 0 この悪い船のくせに、あ まり星空の中で大きくのさばりすぎると考えた人がいる。十八世紀半ばのフランスの天文学者ラ カイユが、とにかくでかすぎるからというので、アルゴ座を四つの部分にわけてしま 0 た。と も、帆、羅針盤、龍骨。いささか味もそ「けもないが、今ではこれが採用されていて、アルゴ座 というのはなくなってしまっている。 218

公式名称固有名意味 中国名公式名称固有名意味 大いぬ座伐 シリウス ( 光り輝くもの ) 天狼星ふたご座 ポルックス ( 双子の英雄兄弟の名 ) りゅうこっ座カノープス ( 人名 ) 老人星おとめ座 スビカ ( 麦の穂 ) 角 こと座伐 ヴェが ( おちてゆくわし ) 織女さそり座 アンタレス ( 火星に対抗するもの ) 大火 エリダヌス座伐アケルナル ( 川のはて ) しし座 レグルス ( 小さな王 ) オリオン座 リゲル ( 巨人の右足 ) 白鳥座“ デネプ ( めんどりの尾 ) 牛かい座“ アルクトウルス ( くまの番人 ) 大角南魚座佖 フォマルハウト ( 魚のロ ) わし座伐 アルタイル ( とぶわし ) 牽牛ふたご座伐 カストル ( 双子の英雄兄弟の名 ) ぎよしゃ座佖カペラ ( 小さな牝山羊 ) 五車 小ぐま座 ボラリス ( 北極星 ) いぬ座伐 プロキオン ( 犬のさきがけ ) くじら座 0 ミラ ( ふしぎ ) オリオン座伐 べテルギウス ( 巨人のわきの下 ) ベルセウス座アルゴル ( 悪 ) おうし座 アルデバラン ( したがうもの ) 固有名以外のいわゆる正式名称は一六〇三年、ドイツのバイエルが考案したギリシャ文字を明 るい星から順につけてゆく方法で、星座をながめるにはこれをのみこんでおく必要がある。そう むずかしくはないからおほえておくとよろしい。 アルファベータガンマデルタ - フシロンゼータエータセータイオタカツ・ハラムダ 6 ん ス 4 ソ、 シグマ タウウ・フシロン ファイカイ・フシ十メガ 6 ・ % 9 の 手これで一一十四個までの星はオーケーとなるが、もっとたくさん星のある星座もあるから困って 〈しまう。これ以上は、 <aao= : : : までアルファベットをつけ、これでも足りなければ、、 星字の o : ・・と : をつける。それでも不足してきたら赤経赤緯の若い方から順に 1234 : クシオミクロン 0 北落師門 中国名