識などまるでなくとも、あんがい、正解を推理することができるかもしれない。では、その手が 6 かりとはなにか。私は、もう夢中になって考えはじめた。 その結果、私は、つぎのような結論に到達したのである。 「私がもし問題作成者にな「たとすればどうだろう。おそらく私は、出題者心理のつねとして、 正解がなかなか相手に見いだせぬよう苦心するだろう。そのためには、いろいろと落とし穴を作 るにちがいない それには、まず、正解の周囲に、なるべく正解とよく似た、まぎらわしい答えを並べて、正解 を包みかくすようにするのが、いちはんだ。こうすれば、少なくとも私自身、正解をかんたんに 見破られはすまいかという不安から、解放されるにちがいない。」 そこで、こんな推理の上に立って、問題の解答欄を、もう一度ふり返ってみることにしよう。 塩化第一一 ⑥硫酸銅④塩化第二銅 ③塩化第一一鉄⑤硝酸ニッケル 水銀 さて、この解答欄の中には、「塩化第二 xx 」という形式のものが、③@◎と三つある。「正 解は、まぎらわしいものによって護衛されている」という、さきほどの原理を応用してみると、 まず、正解は、この三つのなかにありそうだという推論が成りたつ。 つぎには、さらに、塩化第二鉄か、銅か、水銀かを、決定しなければならない。これを決定す

かぎ る鍵も、同様にして捜していく。すると、銅のつく答えが、⑥にも一つ、すなわち、硫酸銅とい うのがある。しかし、鉄や水銀のつく答えは、ほかには見当たらない。 そこで、ここにも、「まぎらわしきなかに正解あり」の原則を当てはめてると、けつきよく 正解は、どうやら、④の塩化第一一銅ではないかという推定が成りたつ。 そして、このばあい、正解は、まさしく@だったのである。 むろん、いつでもこんなふうに、柳の下にどじようがいるとはかぎらない。しかし、少なくと も、でたらめに〇をつけるよりは、頭の働かせようひとつで、はるかに高い確率で正解を言い当 てられることは事実なのだ。 みやぎおよや 私が東京工業大学の研究室にいたころ、心理学の宮城音弥教授の試験のときに、採点の便宜上、 解答をアルファベットで、書きこませたことがある。そのころ、大学の研究室には、 URUNO と うそ へ物人ー かいう名の人と私とがいて、嘘発見器 (Lie Detector) の研究をしていた。そこで、その試験の正解 は、これをもじって、 URN TAGO LIE ( ウルン・タゴ・ライ ) とした。 、こ こうしておけば、のちに採点するさいに、正解が覚えやすく、便利であると考えたからである。 考 思ところが、このとき、じつに驚くべきことが起こった。というのは、学生の一人が、私たちの 慥意図をみごとに推理して、正解の鍵を見破「てしま「たのである。私は、その試験を受けた三百 一一十人の学生のなかで、ただ一人満点をとったその学生を、さ「そく研究室に呼んで話を聞いて

た。彼の満点合格の秘密は、およそ、つぎのようなものだった。 「日ごろ、抜けめのない心理学の先生のことだから、あとで採点しやすいような条件を正解の中 に組み入れているにちがいない。正解を書いた採点盤を当てて採点すれば、能率は上がるだろう が、これもかなりやっかいだ。 とすれば、ロで発音しやすい言葉、つまりなんらかの意味のある言葉が、正解の鍵になってい るにちがいない。だが待てよ。ロで発音しやすい言葉ということになると、これは、きっと母音 が適当に含まれているはずだ。そうだ。母音は全部で五つ。答えは十あるから、その半分は母音 から選べばよいはずだ。」 ざっとまあ、こんなぐあいであった。こちらも、うつかりしていたが、指摘されてみれば、な るほど正解のなかには << — O の母音が、全部登場しているではないか。 このときばかりは、まったくお株をうばわれた感じだった。しかし、けつきよくのところ、そ れだけの推理ができるような人物なら満点をやってもおしくない、ということであきらめること にしたのである。 この二つの例は、「考える」ことの効用、つまり、考えることによって、意外な発見や、思わ め方向への問題の展開があるものだということを、如実に物語っているといえよう。 によじっ

6 観察力をつける体操 ノ > 〈例題〉 つばいにはいった水を、瓶からもっとも早く出すには、つ ぎのどの方法がよいか。 ①瓶をさかさに立てて、じっとしている。 ②瓶をさかさに立てて、上下に激しく揺り動かす。 ③瓶をさかさにして、まるくまわす。 頭の働きを活発に、柔軟にする本格的トレーニングの第六ステップは、周囲のものごとを注意 る深く観察し、そのものごとの意味や本質を見抜く力を養うことから始められる。 っ この〈例題〉は、あるテレビ番組に取りあげられたものだが、その観察力のたいせっさを、ま ざまざと教えてくれる問題である。さて、あなたは、どのようにお答えになるだろうか。やって カ 察みれば、すぐわかることだが、正解は③なのである。 これが、なぜ観察力と関係があるのか この正解をびたりと言い当てた、ある女子中学生 の言葉を聞けば、だれしも、うーんとうならざるをえないのである。彼女は次のように言った。 139

左図のとおり。中央部に星形を作ることを覚えておけば 〈教訓〉 このような図形の問題においても、何回か試 一みて正解が得られないようなとき、分析的思考が効力を 発揮する。つまり、三本の直線が、それ自体で作ること 、。題は、こ のできる三角形は、たった一つしかなし尸 ( の、各辺が無限に延びた一つの三角形を、の三つの山 ~ ~ のどれに、どのような形で重ね合わせれば、三角形がい ~ ちばん増えるかということだ。こうすれば、一つの山で 二一回三角形の向きを変え、しかも、両はしの山は左右逆 一になるだけで、条件はまったく同じだから、多くても四 回の試で、正解を得ることができる。その際、むろん なるべく多くの図形を作るための必須の条件、つまり、 各直線が、なるべく多くの点で交わるように、というこ】 一とを忘れてはならない。 ひっす 0 0 0 0 0 172

ては、「量より質」でもなければ、「質より量」でもない。量を出すこと によって、しぜんと質のよい独創的なアイデアが生まれてくるものなの である。創造性開発トレーニングのひとつのステップとして、可能なか ぎりたくさんのアイデアを出す訓練をしていただきたい。 さて〈例題〉にもど「て、正解は、図のように弱い放射線を周囲から 当てればよい。そうすれば、患部では、放射線が重なり合って、強いも のになる。じ「さいの治療で、患部を中心に、放射線を回転させるの は、この応用である。正解とは別な、独創的アイデアの例を、つぎにいくつか示してみよう。あ なたが考えた解決法と比較してみると、おもしろいだろう。 ①放射性物質をのみくだす。②健全な組織を切開手術して光線が当たらないようにする。 ③注射をして、途中の健全な組織を不感応にするか、患部だけを、光線に感ずるようにする。 ④手術して患部を外へ引き出し、これに強い放射線をあてる。⑤光線を用いない治療に切り かえる。⑥健全な組織が、静かに破壊されるのにまかせる。 ( 死を待つの ! ) つぎの練習問題も、この要領で、やっていただきたい。 揵全な組識 血ロ 186

しては、鼻歌を歌うわけにもいかず、自分の専門外の科目では、試験問題を解いたりする楽しみ もない そこで、写真照合でもひととおりすむと、あとは、たいくっしのぎに遊びが始まる。 その日の私も、ご多分にもれず時間をもてあまして、化学の問題を、見るともなしに眺めてい た。日ごろ化学知識の乏しい私にと「ては、およそちんぶんかんぶんな記号やら亀の子やらが、 例によって、ずらりと並んでいる。 私が目を走らせていた問題というのも、かなり長い問題文があって、その下の解答欄に、つぎ のような、いくつかの化合物の名があげられているという式のものであった。 ③塩化第一一鉄 2 硝酸ニッケル ⑥硫酸銅④塩化第一一銅 塩化第一一 水銀 つまり、このなかから正解を一つだけ選び出せ、という問題なのである。 何 ところで、この問題を眺めているうちに、私の心の中に、ふと、とほうもないいたずら心が芽 ばえてきた。化学の知識とは無関係に、心理学の立場から、この問題の正解を言い当てることは 考 思できないものだろうか、というアイデアなのである。 造試験官とて、人間である点に変わりはない。だとすれば、問題を作成するときに、かならず、 どこかに、人間くさい手がかりを、残しているはずだ。この手がかりさえっかめれば、化学の知 なが

2 厚板にあいた三つの穴に、いずれもび「たり通り抜ける 「 7 ような、一つの立体を設計したい。 ちょっと考えると、できそうもない気がするが、むろん正解はあ すきま る。ただし、この穴にびったりというのは、隙間なく、しつくり通 り抜けるという意味であ る。同系統のもの二題を ゆっくり楽しんでいただ ( 制限時間・時間 ) きたい。 の 頭 彡ん 彡彡彡ク 203

」胛 、こ 田む さて、あなたは、かんたんにこのド いに答えることが、できただろうか。 造むろん、かんたんに、正解に到達した人も少なくないと思うが、なかには、、 龕た人もいるのではあるまいか。 ーー創造的思考とは何か , ー 「常識」を捨てること はじめにまず、つぎの問題をや「ていただこう。ただし、最低五分間は考えること。 せん ぶどうしゅびん 葡萄酒瓶がある。コルク栓がしてあるのだが、あいにく、栓抜きがない。瓶 を割らず、コルクにも穴をあけないで、中の葡萄酒を飲むには、どうしたらよ はじめに 、ゝ 0 力なり苦しめられ

幻左図でのコース。 ( ではない ! ) 最短通路を求める問題なら、に対しての対称点をとり、 が正解。こうすれば、 XB=XB 、となり、直線距離と同 じ長さのが最短通路となる。しかし、もしこの道を選べば、 子は、の距離を重いバケツをもって走らなければならなくな る。子はそれを考えて、川からへ いちばん近い距離にある地点に向か って走ったのである。 「 k 教訓 ) あ、最短通路の問だい ! ・ど高 = つねに、ほかの ~ 一んでしまってはいけない。 一条件をも十分に考慮して、あわてずに解決 一を求めていく態度が必要なのだ。