し ) 「うさぎさん、あたし、ともちゃんっていうの」 女の子は、い きをとめて、じっとうさぎを見つめます。耳をすまし おと て、うさぎのひくピアノの音をきこうとします : おと するとああ、いっかほんとうに、ピアノの音がきこえてくるのでした。 おと 日のひかりがこばれるようなたかい音。 おと うみのなみがうねるようなひくい音。 おと おと そして、そのたかい音とひくい音が、まじりあって生まれる、すはら しメロディー。 「うさぎさん、ピアノうまいのねえ」 おもわず女の子は、さけびました。 するとこのとき、、つしろでたきなこえがしました。 「あんまり、ガラスにさわらないで」 おんな みみ
おと 「あれはなんの音 ? 」 と、ともちゃんはききました。 おと 「あれはかせの音」 と、、つさぎはこたえました。それからしばらくして、、つさぎは耳を びくびくさせながら、 おと 「あれは、くものうごく音」 しいました。それからまたしはらくして、 おと 「あれは、月のひかりがゆれる音」 しいました。ともちゃんは目をつぶって、じっと耳をすましました が、もうなんにもきこえません。 「うさぎさんは、耳かいいのねえ」 目をまるくして、ともちゃんがそういったとき、ふいにエレベーター の中が、ほおっとあかるくなりました。まるで、きゅ、つによあけがき たレよ、つに・ 。おどろいて、あたりを見まわしますと、なんとエレベー つき みみ みみ みみ
「ほ、つら、とべるよ」 ともちゃんも、まねをしました。 そら オカした力い空の上にふわりとうかんでいました。 ふたりは、こ、 ) むねのところで、ぎんのリポンが、きらきらひかります。 いつばいにあびて、ふたりは空をとびました。この 月のひかりを つき おと とき、ともちゃんの耳には、くものうごく音も、月のひかりのこばれる 音も、ちゃんときこえたのです。ああ、わたしの耳うさぎさんの耳と おなじになったわ、と、ともちゃんはおもいました。 とおくで、たくさんのほしが、きらめいています。 すみれいろのちぎれぐもが、とんでいきます。 くち 、つさぎは、ロぶえをふきました。 ともちゃんは、うたをうたいました。 月のひかリのマントをきれは そら 空とぶうさきになれるのよ : つき つき みみ みみ
ふたりは、エレベーターにとびのりました。そのとたんエレベーター は、どきっとふるえて、ドアがしまりました。そして、うごきだしたの です。上へ上へ、どこまでも上へ : エレベーターの中は、まっくらでした。とびらのよこに、ぎっしりと あお ついた小さなボタンのひかりだけが、ばおっと青く、それが上へ さんじっ 上へとうつっていきます。十かい、「一十かい、三十かい、五十かい・ それでもまだまだ上がります。 「す . ごい、丁ごい」 と、ともちゃんは、手をたたきました。 「そ、つともそうとも、天まで いくんだ」 うさぎは、エレベーターの中で足ぶみしました。ともちゃんは、じっと エレベーターのボタンを見つめます。エレベーターは、もうとっくに 百かいをこしました。耳をすますと、とびらのそとでゴーゴーとふし おと ぎな音がきこえます。 ひやっ みみ てん あし
それからしはらくのあいだ、あの女の子はきませんでした。 まち 町をふくかせか、すこしつめたくなりました。うさぎのきている にんき セーターは、ますます人気が出ました。 にち うさぎは、まい日ピアノをひきつつけ、 たっていました。 まん月のばんに またあいましよう こっそリとこっそリと 出ていらっしゃい おんな 小さな小さなこえでう 1
そうしてふたりは、どれほど空にうかんでいたでしようか。いっか しろ かたむき、ひがしの空が、ほおっと白くなりました。 つき 「たいへんだ , 月がしすむ」 と、、つさかさけびました。 みせ 「月がしすんだら、このマントはきえてしまうよ。それからお店の ショーウインドーのガラスもふさがってしまうんだ」 「エレベーーターにどりましよ、つ」 ともちゃんはふりむいて、エレベーターをさがしました。が、エレベ ーターは、もうどこにも見えません。かぜにとはされてしまったの つき でしようか。月のひかりにとけてしまったのでしようか。かげもかたち もないのです。 「しかたがない。 いでよ」 つき つき このままゆっくりおりていこう。ちゃんとついてお
のまえに、 それからまた三十ぶんはどたったころ、ショーウインドー おんな あか あの女の子が、やってきました。女の子は、赤いかさをさして、こっそ りとやってきたのです。女の子は、ショーウインドーをひと目見るな り、ぎようてんしました。 ( 、フさぎは ? ピアノは ? おちばは : ったの : おんな 女の子は、ショーウインドーをすみからすみまでながめまわし、のび あがって、そりの中までのぞきこみました。それから、ガラスをたたい て、たきなこえでよんだのです。 「、つさぎさん、、つさ、さん」と。 そのこえは、どんどんたきくなり、ガラスをたたく手には、カが入 りました。 「うさぎさん、あたし、ともちゃんよ おんな なか さんじっ おんな みんなどこへ ってしま