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検索対象: 北限のアオサギを守る ウトナイ湖サンクチュアリに舞う
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1. 北限のアオサギを守る ウトナイ湖サンクチュアリに舞う

大日 , います。 きゅう ゆうふつげんやいったい ウトナイ湖をふくめた勇払原野一帯は海だったとい かいたい かいりゅう それが , 海退や海流によって運ばれてくる砂に って , 砂 ゆうふつげんや じんこうかせん だいしっげん ま だいしつげん っくったのだそうです。この大湿原に人工河川をつくり , 水を , ぬきーみ あるいはうめ立てをし , つぎつぎと工場用地がつくられ、ます。 けっか その結果 , ウトナイの水位か 40 センチ以上も低下し , はうは、ナで一 しっげんか第をう しぜんへんか ぬま 沼が干上がっています。自然の変化では 1000 年もかかる湿原の 化が , 人間のカでわすか 20 年にして , 強力に進められてき ひあ か だいしっげん かっての大湿原はまさに砂漠と化しつつあるといっ さばく う。そんな中にあってウトナイ湖は , 文字通り砂漠 なのです。 すべての生きもののために さばく でしょ のオアシス しせんかい 食べるものと , 食べられるものでなり立っている自然界のバラン スについては , すでにお話ししましたが , もういちどここでアオサキ、 を例に考えてみたいと思います。アオサキ、を保護するためには , ピ ラミッドの底辺にあたるありふれた動植物を保護することが必要に しぜんかんきよう せいそく なります。ということは , ありふれた動植物が生息できる自然環境 すがたかたら を守るということです。たしかにアオサギは , ドジョウより姿形は よく , 目立った生きものにはちがいありません。けれども , アオサ てんねんきねんぶつ ギにせよ , あるいは天然記念物のもっとめすらしい動物にせよ , そ 30

2. 北限のアオサギを守る ウトナイ湖サンクチュアリに舞う

れらをささえているのは , ドジョウのようにふだんあまりかえりみ ことのオ ういち あけの 明野 じ、い出す必ーがあります。 アオサギ。ロニ ことの 現在 , ふれた生きものたちであるということを , も 立たせているのは , たんに巣をつ かせん 湖沼と , そこに生 小さ、よ生きものたちだったのです。 せい 司はもうれつないきおいで , こうした動植物 しぜんかい の住みかをうよ、いとっています。わたしたち人間は自然界のピラミ ちょうてん ほろ ッドの頂点に立っていますが , しだいに土台の動植物が滅び , やが てはピラミッド自体がこわれ , 最後にはわたしたち人間の生活も重 大な危機にさらされることになるかもしれません。わたしたち人間 しせん みどり は自然なしでは生きられません。地球上から緑が消えてしまったら , さんけっ 酸欠になり , 人間ばかりかすべての生きものも息たえてしまいます。 しせん しぜんかい ですが , 自然は人間がいなくても存続します。自然界の仕組みを守 ることは , わたしたち人間自身を守ることにもつながるのです。わ きらよう せつめっ たしたち人間は数かすの貴重な生きものを絶滅においやってきまし はかい たんさいは・う た。ですが , 破壊することはできても , 1 個の単細胞 , ひとつの生 いき そんぞく せい めいたい 命体さえもつくり出せないということを , ありそうです。ただわたしたち人間には , しぜん す。それは自然を , 弱い生きものたちを , もういちど考える必要が のうりよく すばらしい能力がありま ぎのう 守っていく知恵と技能で 3 1

3. 北限のアオサギを守る ウトナイ湖サンクチュアリに舞う

とまとうかいはっ しっげん 苫東開発によって , 湿原だけでもすでに 600 ヘクタール以上がうめ あけの 立てられてしまいました。しつは明野のアオサキ、コロニーのまわり あけのちく こうしたうめ立て地だったのです。かって明野地区は , 入りく も , げんしかせんでいたんしっげん んだ原始河川と泥炭湿原で , 人の背たけほどもあるヨシが群生して しっげん いたといいます。そうした湿原に生えていたヤチハンノキの林が , かんきよう アオサギの営巣にまたとない環境をつくりだしていたことはいうま みなと みなと でもありません。ところが港のなかった苫小牧に 人工の港をつく ないりくほり みなとぞうせい るための内陸掘込みによる港の造成がはしまりました。それは陸地 ほり しっげん どしや の掘込みによって出る土砂で , 湿原をうめ立てようというものでし あけのちく た。昭和 37 年から明野地区へのうめ立てが開始されました。それま でコロニーは 3 カ所あったのですが , うめ立てにより , 2 カ所がつ ぶされて , 今は 1 カ所になってしまいました かせん うめ立てと平行して , コロニーの近くを流れる河川も人の手が加 かんそうか さい えられ , 水路のきりかえにより , コロニーの乾燥化がはしまり , 採 えいそうすう 餌場 ( エサ場 ) もうしなわれてしまったのです。昭和 40 年の営巣数 げきげん えいそうすう 70 個 240 羽にたいして , 昭和 47 年には , 営巣数 26 個 30 羽にまで激減し せいそくかんきよう てしまいました。このかん , いかにアオサギの生息環境が悪くなっ かせん たか , 上の数字がよく物語っています。河川に人の手が加えられ , しっげん 湿原の水ぬきがおこなわれたことによって , 地下水のバランスもく すれ , ャチハンノキの林が目に見えておとろえていきました しぜん はかい しぜん こうした自然の破壊を , 地元の自然を愛する人たちが けれども , ぐんせい そ え とま 32

4. 北限のアオサギを守る ウトナイ湖サンクチュアリに舞う

きようどぶんか まいし 手をこまねいて見ていたわけではありません。苫小牧市の郷土文化 けんきゅうかい 研究会の人たちが , うめ立て地の所有者に , なん度もうめ立て中止 とま とま うった ー内を流れていたもとの勇払川にふたたび水を引き , 湿原を復活 ゆうふつがわ ーの本格的な保護にのりだすことになりました。ます , かってコロ 昭和 47 年には , 苫小牧自然保護協会が結成され , アオサギコロニ きよう力、し、 まいしぜんほ ての難をのがれることができたのでした。 なん を訴え , ただ 1 カ所残されていたコロニーだけは , なんとかうめ立 ほうりゅう しっげんふつかっ けっせい 33 とま の生きものたちの財産でもあるのです。 ざいさん ません。きれいな空気や水はわたしたち人間だけではなく , すべて つぎと破壊され , あるいはされようとしていることもわすれてはなり はかい オサギのエサとなる魚やカエルや昆虫が生息する広大な自然がつぎ こんらゆうせいそく しぜん できたのでした。けれども一方では , すでにお話ししたように , ア の勇気ある人びとの努力が , 市民ぐるみの運動にまで高めることが て , 市民ぐるみの保護を進めようとしています。野鳥を愛する数人 やらよう ほ 現在 , 苫小牧市では明野のアオサギコロニーを , 「楼蘭の森」とし まいし あけの てきています。 てすくわれたのでした。 ーこ数年 , アオサギの数も少しすっ回復し こうして野鳥と自然を大切にする人たちの努力によって , かろうし やちょう しせん になりました。一時は , 絶滅の危機にさらされていたアオサギは , ぜっめっ 万びきをこえました。アオサギの保護地ももっとひろげられること ち ほ させることにしました。そして川にドジョウを放流し , その数は 10

5. 北限のアオサギを守る ウトナイ湖サンクチュアリに舞う

むざん たお しまいました。巣のあったヤチハンノキの木々が , 無残にも倒れて おそ いたのです。 8 月末に北海道を襲った暴風雨のせいにちがいありま せん。コロニーのまわりはすっかりうめ立てられ , まばらな木しか ないこの林では , 強い風を受けてはひとたまりもなかったのでしょ しっげん りくか う。それに一度 , 水をぬかれた湿原はしだいに陸化し , ャチハンノ キのおとろえも目だっていました。おおぜいの人びとの努力によっ 35 ばうふうう