鳥 - みる会図書館


検索対象: 北限のアオサギを守る ウトナイ湖サンクチュアリに舞う
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1. 北限のアオサギを守る ウトナイ湖サンクチュアリに舞う

アオサギ なかま つばさ サギを注意して見ると , 頭に長いひものよう もっとも美しい鳥だといわれています。アオ 飛ぶと , この上面と下面の色の対照があざやかで , サキ、の仲間でも たいしよう なかま です。いつばう , からだの下面は白く , 黒いたてのすしがあります。 合で青みがかって見えることから , アオサギという名がついたよう たっします。オスもメスも , からだの上面は灰色ですが , 光線の具 も大きなサギで , 全長約 93 センチ , 翼をひろげると 160 センチにも サギ , ダイサギ , アオサギなどです。その中で , アオサギはもっと 日本にいるサギの仲間は , ゴイサギ , コサギ , アマサギ , チュウ なかま すがたは新鮮な驚きをもたらしてくれたのでした。 しんせんおどろ っているものと思っていたわたしに , 雪の上を舞うあのアオサギの という鳥でした。サギといえば , この季節にはあたたかい地方に渡 わた て飛んでいったあの鳥は , ツルではなく , サギの仲間で , アオサギ なものがついていることに気づきます。それ が ( 撮影・斎藤ただし ) 雅で気品のあるものにしているようです。 きひん は青黒色の飾り羽で , かざばね この鳥をいちだんと優 ゆう

2. 北限のアオサギを守る ウトナイ湖サンクチュアリに舞う

でいたアオサキ、の子孫であることを知って , 新たな感動がこみあげ なかま てきました。じつは , アオサギの仲間は現在いる鳥の中では , ガン なかま やカモの仲間についで古い鳥なのです。約 9000 万年もの昔に , すで に地球に住んでいたと考えられているのです。人間の祖先が地球に あらわれたのが約 100 万年前といわれていますから , アオサギはわ たしたち人間よりもすっと先に , この地球に住んでいたことになり ます。 4 年前の冬に見た数羽のアオサギのすがたが , いつまでも妙に頭 にやきついてはなれません。あのアオサギたちのすがたに , なにか かなし気なものを見てしまったような気がしてならなかったのです。 だいせんばい わたしの思いすごしでしようか。ですが , わたしたち人間の大先輩 で , 9000 万年もの昔からこの地球に住んでいた鳥というふうにはと ても思えませんでした。 えんとつ ウトナイのむこう岸には , もくもくと煙をはき出す工場の煙突 が立ちならんでいます。 , 、クチョウもアオサギも , 工場からはき出 そせん けむり ウトナイ湖のほ とりの工場群

3. 北限のアオサギを守る ウトナイ湖サンクチュアリに舞う

はかい ーはかろうして守られてきましたが , 一度破壊した て , このコロニ しぜん 自然をもとにもどすことがいかにむすかしいことなのかということ を , わたしたちに訴えているような気がしてなりません。 たお 3 分の 1 もの大量の木が根こそぎ倒れてしまいました。はたして 来年の春 , このコロニーから巣立っていった若いアオサギたちがふ さいたま たたびここにもどってきてくれるでしようか。わたしはふと , 埼玉 のだ 県の野田のサギ山の話を思い出しました。それは多い年には 4 万羽 とっぜん もいたシラサギの森に , ある年 , 突然 , 一羽ももどってこなくなっ たという悲しい話です。野田は 250 年以上もつづいてきた有名なサギ むごんうった 山だったのです。これ以上の , わたしたち人間にたいする無言の訴 えが , ほかにあるでしようか。言葉のしゃべれない鳥たちの , 人間 こうぎ への抗議だといってもいいでしよう。 かき こんな言葉があります。「柿の実はぜ 昔からの山国のいい伝えに んぶもぎとるな。旅人と鳥のためにも残しておけ。」山のブドウや実 しぜん てんちしぜん めぐ にしても , 天地自然の恵みによって育ったものです。自然は人間 ひと だけのものではありません。同し地球の住民である鳥たちにも , 等 しくその恵みをわけてあげよう , というのです。人間の心は本来や さしいものだと思います。小さな生きものたちのためにも , きれい な空気と水と緑をいつまでも残しておいてあげたいものです。 うった ほんらい めぐ 36

4. 北限のアオサギを守る ウトナイ湖サンクチュアリに舞う

こんちゅう 鳥やカエルが昆虫を食べ , その小鳥やカエルがヘビやもっと大きな ぐあい 鳥に食べられるという具合に , しぜんかい 自然界では生きものたちはおたがい に食べる , 食べられるの関係の中で子孫を残してきているのです。 もう少しこのことについてお話ししましよう。わたしたちが野山に 入って , ます最初に目につくのはいろいろな植物です。つぎにその そうしよくどうぶつ そうしよくどうぶつ 植物を食べる草食動物です。つぎにこのような草食動物を食べる肉 しよくどうぶつ 食動物です。カエル , ヘビ , クモ , あるいはアオサギも , なかま この仲間 です。つぎに , キツネ , オコジョ , ワシ , タカ , あるいはクマなど にくしよくどうぶつ にくしよくどうぶっそうしよくどうぶつ の肉食動物や草食動物を食べる肉食動物とつづきます。このような 食べるものと食べられるものの関係を図であらわすと , ちょうどピ ラミッド型になります。ピラミッドの上の動物ほど見つけにくくな 肉食動物や草食動物を食べる肉食動物 肉食動物 草食動物 植物

5. 北限のアオサギを守る ウトナイ湖サンクチュアリに舞う

す きくなってくると , 飲みこんできた魚などを巣の上にはき出して , けいかいしん らよくせっ す あたえます。警戒心の強いアオサキ、は , 直接ひな鳥の待つ巣にはお りません。かならす巣の近くの木におり , あたりのようすをうかが います。じっと空を見つめ親鳥の帰りを待っていたひなたちは , い っせいに「グワァ グワァー」と鳴いて , エサをせがみます。そ れでも親鳥は 30 分も , ときには 1 時間も近くの木にとまって , あた りのようすをうかがいます。 かんさつ よく観察していると , 親鳥の長い首がピク , ピク動くことがあり ます。きっと飲みこんできた魚がまだ生きていて , のどの中であば す れているにちがいありません。やっと巣に帰ってきた親鳥のロばし を , エサをはき出すのを待ちきれないひながくわえてしまうことも あります。こうしてやんちやで元気のいいひな鳥は , みるみる大き くなっていきます。 す コロ しげ ーの木々もようやくこんもりと生い繁り , 夏がきました。 す えだ ひな鳥たちは巣にしっとしていられなくて , 羽ばたきながら枝から えだわた えだ す 枝へ渡り歩くようになりました。親鳥も巣の近くの枝にとまり , ェ ひこうくんれん サでひな鳥をつり , 飛行訓練をさせます。こうして毎日 , 少しすっ くんれん 訓練をつんだひな鳥たちは , からだの大きさもおとなの鳥と見まち すだ がうほどに成長し , つぎつぎと巣立っていきます。ふ化からもう 2 げじルん らルうじゅん カ月もたった , 7 月中旬から下旬にかけてのことです。 りつばな若鳥に成長したアオサギの子どもたちは , おとなにまし 23

6. 北限のアオサギを守る ウトナイ湖サンクチュアリに舞う

ひなたちは , 親鳥のかえりを , 首をのばして待っている につちゅう 湖面で魚をとらえて飛びたっ親鳥 す。ひな鳥がまだ小さいうちはロうっしでエサをあたえますが , 大 って , 川や沼で , 工ビ , ドジョウ , フナ , カエルなどをとってきま ぬま アオサギは昼間性の鳥ですから , 日中はオス親もメス親も出はら らうかんせい もありません。 ーこまで成長すると , もうカラスにおそわれる心配 をはじめます。 食べ , ふ化後 1 カ月もたっと , 巣のヘリに立って , 羽ばたきの練習 成長していきます。親鳥がせっせと運ぶエサを , うばうようにして

7. 北限のアオサギを守る ウトナイ湖サンクチュアリに舞う

カラスはあっというまに , ひなをくわえて飛びたった す。カラスにたちむかいひな鳥を守るものと , 冷や汗のでる思いで 見守っていたわたしは , 「あっ」と声をあげてしまいました。親鳥 を巣から追いはらったカラスの群れがつぎつぎと巣におり , あっと いうまに巣の中から , 15 センチはどの小さなひな鳥を口は、しにくわ えて , 飛びさっていくのです。カラスの数はふえ , 15 羽はどになり ました。鳥の王様 , オオワシやオジロワシにもちょっかいをだす力 ラスのことです。からだこそ大きいですが , おとなしいアオサギで はな は , たちむかいができないのでしよう。それでもなかには , 巣を離れ すに身をもってひなや卵を守っている親鳥もいます。エサをとりに 出かけていて , 守ってくれる親鳥のいない巣などは , ひとたまりもあ りません。カラスはカラスで , とったひなの奪いあいをしているも のもいます。時間にして , ほんの 5 ~ 6 分の出来事だったのですが , あせ うば

8. 北限のアオサギを守る ウトナイ湖サンクチュアリに舞う

い首をまっ白なふところにおりまげ , 片足でしっと立っていました。 わたゆき みずうみ 一夜にして湖には氷が張りつめ , 綿雪がガラスの破片のようにキラ キラ輝いています。そのとき , わたしは思わす「あっ」と声をたて あさひ ました 、クチョウたちが旭日のスポットライトの真下にいること ました。 に気づいたからです。ハクチョウたちは , ようやく地上にとどいて だん きた弱よわしい朝の光を暖として , 寒さをしのいでいたのでした。 みずうみ やがて , しだいに青空がひろがりました。そのとき , 湖の西の方 はヘん 羽ばたくすがたは優雅で , ほんとうにツルのように美しく , 印象的 ゆうが いんしようてき 湖の南の方へと消えていきました。大きな翼でゆっくりと つばさ みずうみ ツルによく似た大きな鳥が数羽 , ハクチョウたちの上を舞い でした。 ながら , から , わたしはさっそく , やちょうずかん 野鳥図鑑で調べてみました。首を S 字にまげ 大きな翼で優雅に舞うアオサギ

9. 北限のアオサギを守る ウトナイ湖サンクチュアリに舞う

ぬま キロから 40 キロも離れた川や沼 , 水田にまで飛んでいかなければな らないこともあります。 野鳥の中にはシギやチドリのように , 卵からかえるとすぐに自分 でエサをさがすことができるものも少なくありません。ですが , ア オサギのひなの場合は , 飛べるようになるまでに 2 カ月近くもかか すだ ります。アオサギのひなは , 親鳥のように大きくなるまで巣立ちが できないのです。砂地の巣で生まれるシギやチドリは , いつまでも きけん 巣にいては危険です。それにくらべ , 高い木の上に巣があるアオサ ギは , それだけ安全だからゆっくりしていられるのでしよう。 5 月のなかばになると , あちこちの巣の中から、「ピイ , ピイ , ピ そうがんきよう イ」とひな鳥の鳴き声が聞こえてきました。遠くから双眼鏡でのぞ いてみると , ときどきひな鳥が巣から頭をのぞかせています。首を のばし , 親鳥によく似たするどい目で空をしっと見ているひな鳥の ん。それでも 3 月から , わたしの町から すがたも見えます。 おどろ 週に 1 ~ 2 度の割合で観察に通っているの かんさつかよ こまでは遠いので , 毎日通うわけにはいきませ かよ ですが , 来るたびにひな鳥の成長の早さに驚かされます。きっと , とま 苫小牧は北海道にあっても , 1 年しゅうほとんど雪のないところ んて , ちょっと信しられません。 るのでしよう。それにしても , あんなに大きくなっても飛べないな お父さん鳥が運んで来てくれる大きなフナを , 腹いつばい食べてい

10. 北限のアオサギを守る ウトナイ湖サンクチュアリに舞う

じっさい 実際には無理なことでしようが , 地上におりて , ひな鳥をくわえて 巣に運びあげようともしないのです。アオサギのように , 親鳥が産 すだ らん 卵からふ化 , 巣立ちまで 3 カ月近くも子どものめんどうを見る鳥は , そう多くはありません。ですが , 愛情をそそいで育ててきたひな鳥 が巣から落ちてしまったとき , 目もくれようとしないことの理由を , しぜんかい どう考えたらよいのでしよう。きびしい自然界を生きぬいていく しれん せいめいりよく とのできる , 生命力のあるたくましいアオサギを育てるための試練 なのだ , と考えたらよいのでしようか。ですが , 長い目でみれば , しゅぞくほぞん 種族保存のためにはこのほうがアオサギにとってかえっていいとい しぜんかい えるのかもしれません。子を産むと同時に , 親と子の , 自然界で生 とうた きぬいていくための淘汰のたたかいがはしまっているといえるのか もしれません。かりに 1 組のアオサキ、が産んだ卵が 4 個ともすべて 成鳥に育ったら , ものすごいいきおいでアオサギの数がふえること ぶそく になります。そうなったら , たちまちエサ不足をまねき , さきはど しせんかい お話しした自然界のピラミッド 親鳥のそばで羽ばたきの練習をするひな鳥 の土台がこわれてしまうことに もなり , かえって自分たちを破 めつ 滅においやることにつながるか もしれないのです。 こううん 幸運にも風でふり落とされな かったひな鳥たちは , 日一日と さん あいじよう せいらよう