近づい - みる会図書館


検索対象: 月の輪グマ
47件見つかりました。

1. 月の輪グマ

そのままかれは気絶しました。 ずいぶん長い時間がすぎました。かれは、ほおに、なまぬるいものを感じて、そ 0 しようたろう と目をあけました。すると、一びきの大ギッネが、しきりに正太郎のほおやくちび毟 るをなめまわし、ほかの一びきは、かれのむねの上にうずくまって、しきりにかれ をあたためているのでした。 正太郎が、気づいて身うごきすると、二ひきは、ばっととびのきました。が、ま た、こわごわかれに近づいてきました。そして、こんどは、二ひきでかれのからだ の上にのって、正太郎がこごえぬようにと、あたためるようすでした。 正太郎は、じじっとまぶたのおくがあっくなるのをお・ほえました。キツネたちは、 おん このあいだ、あぶないところを助けられたり、えさをめぐんでもらった、恩がえし をするつもりなのでしよう。 やがて夜があけました。 げんき しんばい 正太郎は元気をかいふくして、心配している両親のもとに帰ってきました。両親 きぜっ ちか たす りようしん

2. 月の輪グマ

太陽が高くのぼりました。 こうせん 金の光線は、イハメたちを気持ちよくあたため、ぬれたはねをかわかしてくれま した。 頭にまじり毛を持ったツ・ハメが、晴れた大空に、ばっとまいたちました。ほかの ッパメどもも、そのあとにつづいて、ばっと飛びたちました。 たいそうつかれてはいましたが、ツ。ハメどもは、ぐんぐんぐんと、北へ北へと飛 びつづけました。 とうだい 小さな島に、燈台がありました。 とうだい 燈台の近くには、二羽の ( ャブサがゆうゆうと飛んでいました。 ハヤブサは、たちまちつかれたイハメの一群を見つけました。そしてよろこびの はばたきをして、さっと、おそいかかりました。 わ いちぐん あらし 嵐をこえて

3. 月の輪グマ

ために、そのクルミの木に、ふたりでの・ほりはじめました。 「だんなさあ。これは、うまくいきましたなあ。」 あらき しいました。 荒木は、はずんた声で、 「こんどは、あの子グマが、犬ころみたいになついたら、もうしめたものだ・せ。」 わたしはもう、すっかり子グマを手にいれたつもりで、こんなことをいいました。 かん 子グマは、じぶんの最後を感づいたものか、こずえのてつべんで、しきりに、ク はな ) 」え ンクンと、かなしげな鼻声を、だしているのでした。と、そのとき、わたしたちは、 「あっ。」とさけんでころげおちるように、クルミの木からとびおり、崖ぶちのモ、、 の大木に、よじの・ほりました。 たき それは、 ドウドウとおちるの音を圧して、びりびりと、岩もはりさけるような 声が、すぐわたしたちの身近くで、おこったように思われたからでした。わたした ちはまた、。 - へつなクマがあらわれたのではないか、と思ったのでした。 しんとう はっ しかし、それは、 いかり心頭に発した、母グマのおそろしいほえ声でした。母グ みちか あっ がけ つきわ 月の輪グマ 165

4. 月の輪グマ

カワウソの親子はあちらの野にとまり、こちらの山すそにとまりして、長いあい ごかせがわ ださまよったすえ、ふたたび五箇瀬川ふかくいりこみました。 こおり りよ、つがん いく日かふりつづいた雪におおわれて、両岸はまっ白く光って、まるで氷のかべ のようになっていました。 き そのあいだを、手の切れるほどっめたい、青い青い流れが、一すじ美しく流れて いるのでした。 もっと上へ、もっと上へ、と、カワウソの親子は岸をつたって進みました。 よあ 夜明けがたでした。 まんまんと水をたたえた淵の近くにきました。と、ジャポオン、ジャポオンとい う、ふしぎな音が聞一、えてきました。 お いわまえあし すると、老いたカワウソは小さい岩に前足をついて、崖のほうを見あげ、キチキ かみ おやこ ふち の おやこ すす 、つつく こんじきかわ 金色の川 199

5. 月の輪グマ

「それ ! 」 わたしたちはとびだしました。太郎もねまきのままでとびだしてきました。 つきょ 外は月夜でした。 かかっている。かかっている。 キツネわなにはさまれて、。ハタ。ハタしています。しめた。 まめでつばう が、近づいてみておどろきました。なあんだ。ハトが豆鉄砲を食ったように、目 玉をむきだしている大フクロウなんです。 「おどろきましたね。」 野田さんとわたしは、顔を見あわせてにがわらいしました。 「おとうさん。」 そのとき太郎は小さい声でいって、わたしのうでをぎゅっとっかみました。 ゅび 太郎の指さすほうを見て、わたしはどきっとしました。 ちゃ 四ー五メートルはなれた茶の木の根もとにしやがんで、じっとこちらをうかが のだ ちか かお たろう っ 110

6. 月の輪グマ

し人 の大を信じていました。 たから、狩人たちは、べつにあせりもしませんでした。カヤの上にどっかりとこ みそ しをおろすと、味噌をぬった大きなにぎり飯を、もっくもっくと、おちつきはらっ て、ほおばるのでした。 山々が、しだいにむらさきばんで、夕方が近づきました。 けれど、犬どもはすがたを見せぬのでした。 こんなことは、いちどもないことでした。 秋の日は、ようしゃなくくれていきます。 かりゅうど 狩人たちは、あわてだしました。 ゅび 指を口にくわえて、。ヒウ。ヒウとするどい口笛をふきならしました。 くちぶえ いたすらに、暗い森のかなたに消えていくたけで、いくら待っても、五 ロ笛は、 ひきの犬はすがたをあらわしませんでした。 ゅうがた くちぶえ 226

7. 月の輪グマ

てきい がのみこめなかったのかもしれません。その敵意にみちた群れのまん中に、平気で すわりこんで、おちつきはらって、おなかのノミをとりだしました。 しめた、と思ったのか、五ひきのサルは、じゅうぶんに近づくと、声もたてすに とびかかりました。 かれは不意をうたれて、こすえから大地にたたきおとされました。 、っせいにさけび声をあげて、どっと、おそいかか それを見て、サルの群れは、し てきました。 ふつうのサルなら、そこでいちもくさんににげだしたのかもしれませんが、かれ はにげませんでした。 そのままとび起きると、白い歯をむきたして、まわりのものをすごい目でにらみ つけました。 そして、首につけていたくさりを、プウンとふりまわしました。 すると、サルの群れに、たちまち大混乱が起こりました。 だいこんらん ちか っ 178

8. 月の輪グマ

あのわなのことがあってから、ぶちネコはさつばりすがたを見せなくなりました。 ころ きっと殺されたのだろう、などとわたしの家では、うわさしていました。 にちょうび それから一月ばかりたったある日曜日のことでした。 わたしは太郎をつれて、五ー六百メートルさきの川へフナつりに出かけました。 すいしやば べりには大きな水車場があって、一日、ギイコットン、ギイコットンとまわって しもて いました。その水車場の下手が淵になっていて、よく、フナがつれました。 水車場につくと、ワアワアと大さわぎしています。 そう なにごとだろうと近づいてみると、家内じゅう総がかりで、一びきのネコを板べ いのところにおいつめておりました。 それは例のぶちネコでした。 わ わか ネコは一羽の若どりをくわえています。とりはくわえられたまま、まだ、ひくひ ひとっき たろう ふち かない 112

9. 月の輪グマ

だいぞう 大造じいさんはかけつけました。 ちじよ、つ たたか 二ひきの鳥はなおも地上ではげしく戦っていました。 : 、 カハヤブサは人間のすが と たをみとめると、きゅうに戦いをやめてよろめきながら飛びさっていきました。 ざんせつ くれない 残雪はむねのあたりを紅にそめて、ぐったりとしていました。しかし、第二のお そろしい敵が近づいたのを感じると、のこりの力をふりし・ほって、ぐっと長い首を しようめん もちあげました。そしてじいさんを正面からにらみつけました。 と、つりよ、つ それは、鳥とはいえ、いかにも頭領らしいどうどうたる態度のようでありまし だいぞう 大造じいさんが手をのばしても、残雪はもうじたばたさわぎませんでした。それ と、つりよ、つ どりよく は、最期のときを感じて、せめて頭領としての威厳をきずつけまいと努力している ようでもありました。 大造じいさんは強く心をうたれて、ただの鳥にたいしているような気がしません でした。 てき くび 134

10. 月の輪グマ

せんとうりようけん 先頭の猟犬が二ひき、たまりかねて、巣のそばまでつき進んだときでした。 くりのだけぬし だんがん 。こっ、と黒い弾丸のように、栗野岳の主はおどりでました。 はや そして、目にもとまらぬ早わざで、二ひきの犬を、そのきばにひっかけて、投げ とばしてしまいました。 くんれん そのいきおいに、ほかの犬どもは、ちょっとたじろぎましたが、しかし、訓練さ れた犬どもです。 三びきそろって、イノシシにとびかかっていきました。 四ひきのけものは、ひとかたまりになってころげまわりました。黒い土けむりが もうもうとたちました。 力やがてその すごいうなり声が、あらい鼻息が、山中にひびきわたりました。。、、 しす ぜん げんしりん 声がびったりやむと、原始林は、以前にもまして死んだような静けさにかえりまし はないきす その静けさの中を、フッフッというあらい鼻息が巣のほうに近づいてきました。 し 230