と、おくさんたちはきゅうにタごはんのしたくやらに気がついて、やっと こうえん おもたいこしをあげ、公園にきみらをあけわたす。 こうえん それからさきの公園はいうまでもない、きみらがいちばんよく知ってるだ ろう。 だんち この話はどこにでもあるような団地の中の、そんなどこにでもあるような こうえん 公園の、午後三時からはじまる。 じかん こうえん なぜ午後三時か、っていえばそれは、きみらが公園へなだれこんでくる時間 こうえん こうえん じかん だからね。それともうひとつ、その時間、この公園はこの公園にしかあらわ れないお客さんをむかえるからた。 こにはきまって「あの人」がやってくる。あ つまり午後三時になるど、一、 ひと いうのは、あの人について、 の人でわからなければ「その人」でもいい。 それいがいのことはだれも知らないんだ。 ひと はなし きやく ゅう なか ひと ひと 158
「なんと、うちの犬ったら、・せんそくにかかりましてねえ : こうえん じかん けれど、それから一時間もすると、公園はひっそりかんとする。そう、ちょ うどきみたちがランドセルにノートをつめ一、んだり、朝ごはんをかきこんだ あいだ こうえんひる りしているころさ。公園は昼のうちで、この間だけお休みしてるってわけだ。 そしてまもなく、きみらやきみらの。 ( 。 ( たちが小走りにバスのていりゅう こうえん こうえんまえ 所めざして、公園の前をすりぬけてゆくと、公園はこんどはお母さんたちの おうこく 王国になる。 でんきせい ばなししんはつばい 子どものじんましんのや、よそのおくさんのうわさ話、新発売の電気製 ひんつか 品の使いかた。そんなやりとりが木かげのべンチやすな場やジャングルジム にせっせととびかう。 じかん それはお昼ごはんの時間をはさんで、かなり長い間、そう、ちょうどきみ お つづ らのじゅぎようが終わる一、ろまで続くんだ。 ひる ながあいだ あさ やす かあ 157
その人のあらわれかたはいつもこんなふうだ。 こうえん 公園をとりかこむようにして建っている、コンクリー トのいかつい団地群。 その人はいつも、群のはずれにある十三号とうのかげからあらわれると、風 こうえん のように、風にまう落ち葉のように、公園の植えこみづたいに石だんをの。ほっ てくる。 あつい日も、さむい日もポケットにりよう手をつつ一、んで、ドタぐっのさ きを見おろしながら。どんなにたくさんの子どもたちがあそんでいようと、 こえ 手をあげたり声をかけたりはしない。 こうえん そして石だんをあがると、こんどは公園のフェンスそいに、レンギョウや ェニシダの植え一、みにかたをふれながら、ブランコのうらをぬけ、遊動円木 のわきを通り、いちばんおくの、日かげのべンチにこしをおろす。 おお いつもきちんとりようひざをそろえ、からだににあわぬ大きなくつがき ひと ひと とお かぜ ぐん ゅうどうえんばく だんちぐん かぜ
あるときには海が見える。ざざあっとよせてはかえす波と、ちからこぶの にゆうどうぐも ようにもりあがる入道雲。 みみ こえ と、子どもたちの耳にはどこからか、鳴きかわす力モメたちの声が聞こえ、 じぶん つぎには自分たちのからだがゆらりゆらりとゆれはじめているのに気づく おおうなばら ハッとして見まわすとどうだろう。あたりは見わたすかぎりの大海原だ。 こうえんみ だんち にゆうどうぐも 公園を見おろしているきょだいな団地は、入道雲にかわり、さっきまであ ゅうどうえんばく あおなみ そんでいたすべり台や遊動円木はいつのまにか青い波になって、子どもたち をやさしくだきつつんでいるのたった。そんなとき、およげる子もおよげな い子もいっしょになって、波にのってあそぶことができた。 また、あるときは玉の中に一りんの花がさいていた。 こうえん かぜ それは公園をふきわたる風にゆれると、歌うように花びらをとばしはじめ こうえん る。あとからあとから、つきることもなく、花びらはまいだすと、公園のペ こ うみ たまなか なみ なみ 163
「ほんとうにおっそろしいこと。」 「でもねえおくさま、なんとかしなくっちゃ。」 「そうざますわ。このままにしといたら、団地の平和がめちやめちゃにされ ちまいますわよ。」 おとこ 「でも、そんな男になにかとがめるようなことをいったら、どんなしかえし をされるものやら、わかったものじゃありませんわ。」 こうえん 「だからもう、この公園に子どもたちをいれなけりやいいんですのよ。団地 うえ うんどう ひろ の上だって運動できるくらいの広さはありますもの。」 「そうそう。きようはもうげんじゅうに子どもたちにいって聞かせなけりや。 ねえみなさん。」 こうえん 「いやだよ。ぼく公園へいきたいったら。あの人だって、ぼくたちがきよう だんち だんち 167
こうえん かお 知ってるかい。公園ていうのはいろんな顔を持っているのさ。 はやお たとえば、きみらがまだねむっている夜あけ、そこは早起きのおじいちゃ んやおばあちゃんたちの世界だ。 あの人たちはシーソーやブランコにおそるおそるすわって、「うちのヨメ」 や「近ごろのわかいモノ」について、ひとしきりおしゃべりしてゆく。 が、お日さまがの・ほり出すころになると、こんどはマラソンやラジオたい こうえん そうのおじさん、かみつきぐせのある犬なんかをつれたおばさんたちが公園 に集まってくる。 「まったく近ごろは空気がわるくなりましたなあ。マラソンもらくじゃあり ません。」 「ほんとうに、ほんとうに。どうもこのごろ息ぐるしいのは、年のせいばか りでもないようで。」 あっ ちか ひと ちか せかい とし 156
カくハトたちが、うろこ雲のようにうつった。そして、 「さあ、これがさいごの一羽だ /. 」 こえ あの人はひと声さけぶと、さいごのハンカチをひるがえした。 ハサバサ。ハサ /. そのとたん、ひときわ大きな白い ( トがむれめざして、べンチの上からと び立ったんだ。それはいうまでもない、あの人のすがただった。 ちよくせん さいごのハトは一直線にむれのところまでとんでゆくと、みんなひきつれ とお るようにして、やがて遠くにうかぶきぬ雲の中に、にじんできえてしまった。 こうえん かぜ ひとっ子ひとりいなくなった公園には、一枚のハンカチが、いつまでも風 にめくれていたよ こうえん かお 知ってるかい。公園ていうのは、いろんな顔をもっているのさ。 ひと おお しろ ひと うえ 172
ンキのはげたべンチをかざりたて、ジャングルジムを花かごにし、ほこりつ こうえん 。ほい公園の地べたを花びらのじゅうたんでうめつくし、子どもたちのふくに まといついて、きらびやかなドレスにかえた。 そしてまた、あるときは一台のたいほうだった。子どもたちはひとりずつ くうちゅう その中にはいってゆくと、ズドン、ズドンと空中にうちあげられた。 そら ちじようふうけいだんち こうえん けれど、空から見る地上の風景は団地でも公園でもない。 そうげん ある子どには、もうじゅうのかけ走ってゆくアフリカの草原だったし、 べつの子どもにはペンギンのむれつどう、南きよく大陸が見えた。中にはそ のしゅんかん、 まえ 「あ、ぼくが生まれる前に見たけしき /. 」 とさけんだ子どももいた。 けれどゅめはあっというまに終わってしまう。気がつくと、あの人は前の なん 164
こうえん いつものなりで公園にやっ その日も午後三時。あの人はいつものように、 てきたよ。 だがそこには子どものすがたはひとつもない。あの人はそれでも、いつも まえとお の植えこみの前を通り、ブランコのうしろをぬけ、遊動円木の間を通って、 やはりいつもすわる木かげのべンチにこしをおろした。 かお だんち 団地のまどまどからは、カーテンのかげごしに子どもたちの顔がのそいて 。ほうしのつ。はかげになって、 だがあの人はそれを知っていたのかどうか、 ひと ひと ゅうどうえんばくあいだとお ひと 169
の中でいちばん手ごわいやっ、おまえをな。」 にんげん 「な、なんだって : : : じゃ、あんたは人間じゃないのか /. 」 おも ・ほくは思わずさけんた。 「そうとも。」 ロワさんは、。、 , イ。フのけむりをフウ , ー 「ど、どこのどいつなんだ。」 ぼくがたたみかけると、 「よその星のものた。」 , ロワさんはこたえた。 ちきゅう しぜんどうぶつこうえん 「われわれは長いあいだ、地球を自然動物公園として使ってきたが、ちょっ ちきゅう にんげん とほったらかしているあいだに、人間がふえすぎた。そこで地球がほろび どうぶつ まえ る前に、ほかの星へ動物園をうっすことになったのさ。めすらしい動物を なか なが ほしどうぶつえん て ッと出したよ。 だ つか 131