あんしんしてたべてくれたまえ。」 でも、こねずみは目をばちくりさせているだけでした。きつねはじれった くなって、 「たべろといったら、たべんかつ。」 とどなりつけました。こねずみは、わあっとなきだすと、どこかへにげていっ てしまいました。きつねは、かんかんにはらをたてて、 「ひとがしんせつにすすめてやったのに、なぜたべようとしないのだ。しつ けというものが、まるでできておらんではなしカ 、 : ばかねすみのとんまね ずみめ。」 とぶつぶついいました。 そのとき、うさぎが一びき、こちらへやってくるのがみえました。よろ一、 んだきつねは、 123
A 」 いいながら、 「ちょっ。」 としたうちをしました。 そのとき、ねこが一びきやってきました。 それは、きつねとなかよしのねこでした。 きつねはよろこんで、 しいところへきた。きみにみかんをあげようとおもって、まってい 「ねこ、 たのだ。さあ、たべてくれたまえ。」 といいながら、みかんをさしだしました。 ねこもよろこんで、 「やあ、これはありがたい。では、えんりよなくいただくよ。」 といって、みかんをうけとるとすぐにかわをむいて、 126
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といって、とびあがりました。そのみかんは、あまいどころか、せすじがそ うっとなるほどすつばかったのです。 「ねこ、ね一、。」 と、きつねは、したをぶるぶるさせながらさけびました。 「きみは、このみかんがあまいといったじゃないか」 「だって、ほんとうにあまかったんだもの。」 と、ねこが目をばちくりさせながら一、たえました。 「うそだ、うそだ。」 きつねがさけびました。 「一つの木に、あまいみと、すつばいみがいっしょになったりするものか。 きみは、すつばいみかんをわざとおいしそうにたべてみせたのだ。そうやっ て、。ほくをだまそうとしたのだ。ああ、きみはなんというひどいねこだろ ひと 129
そしてきつねは、 「きみとぼくとはなかよしのはすだったではないか。それなのに、どうして こういうひどいことをするのだ。ぼくは、もうねこというものがしんじら れなくなってしまったよ。」 しいながら、 「おいおいおいおい。」 となきだしました。 こえ そこへ一びきのたぬきがやってきて、きつねに声をかけました。 「きつねさん、きつねさん、おとりこみのところをもうしわけありませんが、 このあたりにみかんがおちていなかったでしようか。さきほど、このへん で石につまずいてころんだのですけど、そのひょうしに町からかってきた まち 130
( ようし、ぼくもびようきのまねをしてみるとしよう。そうすれ、は、みんな もまえよりずっと。ほくのことをそんけいしてくれるかもしれないそ。 ) ねこは、家へとんでかえると、へやじゅうをひっかきまわして、白いずき んをさがしました。 でも、ね一、の家には、すきんなどは、一つもありませんでした。 そのときねこよ、。こ : 。オしところのすみに、一まいのきれのふくろがおちてい ることに気がっきました。 それは、ビスケットをいれておくのにつかっていたふくろでした。 ( まあいいや。これでがまんしておくとするか。 ) ねこは、ビスケット のふくろをあたまにかぶってべッドにもぐりこみ、も うふをはなの上までひつばりあげると、目を、 「とろうん。」 ひと しろ 135
とかんがえながら、べ ッドの上でいっしようけんめい目を、 「とろうん。」 とさせていました。でも、いつまでたってもねこの家には、だれもやってき ませんでした。 ねこは、まちくたびれて、じぶんでもしらないうちに、ぐうぐうとねむり こんでしまいました 9 それから、しばらくして目をさましたとき、ねこはじぶんがびようきのま ねをしていたことをすっかりわすれてしまっていました。 ですから、じぶんがビスケットのふくろをかぶっていることに気がつくと、 ねこはたいへんびつくりしました。 ( な。せだろう。な。せ、ふくろなんかかぶっているんだろう。 ) と、ねこはかんがえました。でも、いくらかんがえても、なぜだかわかりま 137
A 」 「わかった。ぼくはしらないあいだに、ふくろをかぶってねてしまうふしぎ なびようきにかかってしまったんだ。」 「どうしよう、どうしよう。」 いいながら、 「わあっ。」 となきたしました。たぬきはあわてて、 「なくな、なくな。」 となぐさめながら、いそいで病院へでんわをかけました。 すぐにきゅうきゅう車がやってきて、ね一、を病院へはこんでいきました。 「べつにわるいところは、なさそうですけれどねえ。」 と、ねこのむねにちょうしんきをあてたり、レントゲンしやしんをとってし しゃ びよういん 140
らべたりしたあとで、ねすみのおいしやさんが首をひねりながらいいました。 ねこは、よろこんでたずねました。 「わるいところがないのなら、もう、家へかえってもいいですか ? 」 「いやいや、またそういうわけには、いきません。ちょっとこちらへきてく たさい。」 ねすみのおいしやは、ねこをべつのへやヘつれていきました。みると、ゆ かの上に、いろいろな大きさをしたきれのふくろがちらばっています。 ひと 「ねこさん、こんや一ばん、このへやにとまっていってください。家にかえっ しいかどうかは、あしたになってからきめるとしましよう。」 「それにしても、どうしてこんなにふくろがちらばっているのですか ? 」 ねこが、ふしぎそうにたずねました。 「これはじつけんです。あしたの朝、目をさましたとき、ねこさんがまたふ おお あさ 141
「そうですね。でも、ねんのために、もう一日たけいてもらいましようか。」 と、ねすみのおいしやがいいました。 びよ、ついん しかたなしにねこは、ふくろのちらばった病院のへやで、ねたりおきたり しながらたいくつな一日をすごしました。 あさ つぎの朝、目をさましたときも、ね一、のあたまにはなんにものってはいま せんでした。 「これでどうやら、びようきではない一、とがはっきりしたようですな。もう 家へかえってもかまいませんよ。」 と、ねずみのおいしやがいいました。 「ありがとう、ありがとう。」 ねこは、ねすみのおいしやになんどもおれいをいうと、 ( びようきでなくて、ほんとによかったな。 ) いちにち 143