・解説 大川さんの作品世界について 石上正夫 大川さんは民話の研究者であり、すぐれた民話作家です。「とんとむか しあったそうな。あるところに、じいさとばっさとふたりでくらし ておった。 : 」絵本『いっすん。ほうし』の語りはじめです。しっと聞い みんわどくとく ている子どもたちは、民話独特の語り口をいかした大川さんの文体に、耳 と心をくすぐられるようなやすらかな思いで、民話の世界にひきいられて い多ごます。 くすけ けんりよく とのさま 『あほう村の九助』は、知恵ある農民が権力をかさにきる横暴な殿様をば りくっ かにし、こらしめるだけでなく、むすかしい理屈をこえて民話のおもしろ きよ、つみ さを子どもたちに味あわせてくれます。読書にあまり興味をしめさない子 どもたちの読書への目をひらかせてくれる作品はまだあります。『へつこき あねさがよめにきて』も、読書のにがてな子どもの心をうごかす作品だと お、つばう いしがみまさお 186
いえます 0 大川さんは民話の採話のために全国各地をあるき、民衆が民話に語りこ めた心に憧れ、現代に生きる子どもたちに日本の民衆の心をつたえようと、 さいわさいそうぞう ことばを選び、ことばを磨き、民話の再話、再創造に力を入れてこられま そして『おかあさんの木』ではじめて現代民話にとりくまれた大川さん に、借しみない拍手をおくってもう十年ちかくなります。『おかあさんの木』 きおく は本になる前に、大川さんの依頼で子どもたちに読んで聞かせた記憶があ ります。目をうるませて聞き入っていた子どもは、「五郎が『いま、生きて 帰ってきましたよ』といって家にはいった時、おかあさんはまだ生きてい おば いったのを今も覚えています。あれほど子どもを思うお たんだよね」と、 かあさんに、何とかして会わせてあげたいという、読み手の願いがそうい わせたのでしよう。 せんそうたいけん 戦争体験のない世代が人口の半分以上になり、″太平洋戦争って何 ? ~ と さいわ みが ぜんこくかくち 187
ポプラ社文庫 A39 おカさんの木 大川悦生
おかあさんの木 ・作 ポプラ社文庫 A39 箕田源ニ郎 大川悦生
ISBN4 ー 591 ー 00907 ー 6 N. D ℃ . 913 おかあさんの木 おおかわえっせい 著者大川悦生 ポフ。ラ社文庫 A39 0 1979 年 2 月 1985 年 11 月 第 1 刷◎ 第 14 刷 治夫 発行者 発行所 製本所 田中 東京都新宿区須賀町 5 〒 160 辰替東京 4 ヨ 49271 株式 , 、社ポプラ社 大和製本株式会社 印刷所新興印刷製本株式会社 落丁本・乱丁本はお取りかえいたします。
たちの思いを語りつがねばならないと思います。 これが現代民話なのではないでしようか。封建時代に生きた民衆が、す しよみん ぐれた民話を沢山今日にのこしてくれたように、現代を生きる庶民が、次 の世代に語りつぐ民話を創造しなければ、現代の民衆の姿や思いや悲しみ でんしよう や憤りは、後世に伝承されないばかりでなく、今日と地続きのつぎの世代 にもったわらないことになってしまいます。 現代を考える時、あの十五年戦争をさけてとおることはできません。こ とうきようく、つしゅうひろしまげんばく よくりゅう の文庫のなかには、東京空襲、広島の原爆、シベリアの抑留、玉砕の島 など、戦争が人びとの心をどのようにひきまわしてきたかが語られていま す。そして、激動の時代を現代の人びとがどのように生きようとしてきた か、力をもたない庶民のほんとうの思いはどこにあったのかが語られてい ます。 わたしたちは、現代民話を読む人であると同時に、大川さんとともに現 代民話を語る人でもありたいと思います。 ・け・きど、つ ほうけんじだい 190
作家・画家紹介 大川悦生 ( おおかわえっせい ) 一九三〇年長野県に生まれる。早稲田大学文学部卒業。 民話を語る会、東京むかしを聞く会主催。日本児童文 学者協会会員。 作品に「ひこいちばなし」「三ねんねたろう」「へつこ きあねさがよめにきて」 ( ポ。フラ社 ) 他がある。 現住所世田谷区給田三ー九ー二ー六〇四 箕田源ニ郎 ( みたげんじろう ) 一九一八年東京に生まれる。十二年間小学校教師とし てすごす。その後美術の仕事に専念。日本美術会、日 本美術家平和会議などの会員。 作品に「ごんぎつね」「白鳥になった人形」 ( 。ホプラ社 ) 「美術の心をたすねて」 ( 新日本出版社 ) 「火」 ( 岩崎書 店 ) 他がある。 現住所町田市金井町二〇二九
大川悦生 あとか いま私の手もとに、札幌市の中学生の版画″おかあさんの木を読んで〃がある。 これを送ってもらったとき、ひと目みて息をのむ思いがした。たたカのあふれた 作品というだけではない。戦争を知らない少年たちが、どううけとめてくれたか。 言葉でつづられた以上に強くせまってくるものを感じたからだった。 私の最初の作品集としてこの本が出て、ことしで十年になる。初版いらい、、 学一年生から中学生まで、さらに母親や教師のもふくめ、じつに多くの感想文が よせられてきた。日本の各地に「おかあさんの木」とにた話が、事実あった話と てんどうし 、つ して埋もれていることも知った。とりわけ、天童市の小学三年生が書いてくれた 感想文のなかの「おんちゃんの杉の木」は、印象にのこった一つだった。 ひがいしやおんねん ひひょうか 、被害者の怨念と 他方、批評家たちからは、戦争体験を民話にしなくてもい みと してでなく加害者の側からこそとらえるべきた、語り口の文学は俄に認めがたい こういてきひょうか など、必ずしも好意的な評価をうけてこなかった。 え・だじまかいぐんよかへいがっこう はいせん しかし、あの敗戦の日をむかえたとき、私は中学三年で江田島海軍予科兵学校 おおかわえっせい 184
〉おかあさんの木 ポプラ社文庫 めす 神沢利子 くまの子ゥーフ あ庫車のいろは空のいろあまんきみこ を文 宮川ひろ 学な齠るすばん先生 文イ 椋鳩十 月の輪グマ 作デ 寺村輝夫 創ンおにのあかべえ 神沢利子 話てうさぎのモコ 舟崎克彦 森からのてがみ 作す 大川悦生 創やおかあさんの木 るみ 間所ひさこ リコはおかあさん あ読 のんびりこぶたと 小沢正 せ - かせか、つさき 定た 日悦生・作箕田源ニ郎・絵 ホプラネ土 A 3 9 / 価を ) ノ S BN4 ー 5 91 - 0 0 0 7 ー 6 A186 A138 A137 A129 A124 A103 A93 A92 A85 A84 ちいさなちいさな いぬいとみこ 駅長さんの話 砂田弘 ニ死満塁 小さなわらいばなし ( 上 ) さとつわきこ 小さなわらいばなし ( 下 ) さとつわきこ ワンワンものかたり もしもしウサギです舟崎克彦 小沢正 こぶたのかくれんぽ レモンエイジのふたり藤本義一 日本民話の会編 こわいおばけ 続・くまの子ゥーフ神沢利子