かけのぼりました。 はやしのはら 山のてつべんからは、林も野原もひと目でみえました。 のはらなか いえさんかくやね かれ草いろの野原の中の、モコの家の三角屋根も、ちらちらゆれるせんた くものも、かぶのはたけもみえました。はたけにいるのはおとうさんかしら。 いえやね はやし むこうには、竹ゃぶにかくれたコンの家の屋根もみえます。か。はの林も、 はやし も、そうです。川は、林のあいだをぎんいろにひかりながら流れています。 はやし とおとお 林をぬけて、野を流れ、また林にかくれて、おれまがりながら、遠く遠く 続いています。 とおはやし モコはのびあがって、川のゆくえをながめました。遠い林のこすえが、ひ あおせん ろいひろい空とかさなるさかいめに、クレョンで書いたような青い線が、一本 まっすぐ横にひかれてみえました。 あれが海かしら。 はやし やま ぐさ うみ たけ は ルが かわ かわ ばん かわ
すきまから、こまかいゆきをふきつけました。 「おおさむ。」 おかあさんは、ストープにまきをくべました。モ「はストーブのそばで、 絵本をみたり、こまをまわしたりしてあそびました。 かぜ 風がやっとやみました。 そら はやし あんなにゆれていた林も、きようはしずかに枝をのばしています。空はす 0 あおぞら きりはれて、みがいたような青空になりました。 モコは外へ出てみました。 ある あし のはら まぶしいゆきの野原に、。ほこ。ほこ足あとをつけて歩いていきました。もぐ ちかしつ らのグラの家も、ゆきの下にな 0 てみえません。くらい地下室で、グラはね かんが む 0 ているのかしら。それとも、またなにか考えごとをしているのかしら。 えだ モ「は林へ来ました。林の木の枝は、こおりついてガラスざいくのように えはん そと はやしき した えだ 106
「いいものー ちゃんにあげるもの。」 と、モコがこたえました。 「グラさんにとはいわないのかなあ、モコちゃん、もう一つたずねるが、 。しか、どっちだね。」 そこにはいっとるものは、あまいか、すつ。よ、 「あまかったの。そいで、これからまた、あまくなるものだよ。」 と、モコがこたえました。 「あまかった ? そして、これから、あまくなる ? 」 グラは、ごくんとつばをのみこみました。 「あめかな、いや、ジャムかな。いや、それともなんじやろう。」 かんが 「グラさん、ゆっくり考えていてよ。」 かわら Ⅱ原のほ モコは。ハスケットをふりふり、かばの林へくると、林のむこう、 こえ うで、びいびい、こちどりのさわぐ声がきこえました。モコがのそいてみると、 はやし はやし
「よかったなあ。」 おも モコは、。ほーん。ほーんととびあがって、かけながら思いました。 かわ 「よかったなあ。川のやっ、やつばり海にいってたんだ。じっとしてかなし そうにみえたけど、ちがうんだ。やつばり海にかけていったんだ ! 」 はやし そら ゅう もみの林をぬけて、野をぬけてモ「は走りました。空のむ一、うがタやけ そら で、ばらいろにかがやいています。タやけの空をめがけて、モコは走りまし 「モコちゃーん。」 はやし あ、林でだれかがよんでいます。 です。モコをみつけてかけてきました。 おも 「モコちゃん、どこへいってたの。おみかんあげようと思ってさがしてたの は ゅう うみ うみ 113
ビコがさけんだとたん、おじさんは、。ヒコの手をしつかりつかんだまま、 とんー じめん と、地面をひとけりすると、 びゅーんー そら と、空におどりあがりました。 とんだ、とんだ、とんだー おじさんにひつばられて、。ヒコも、かばの木よりもたかくたかくとびあが はやしかわのはら りました。林も川も野原も、みんなあんなに下になりました。 「それつ、まわるんだ ! 」 おじさんのかけごえに、。ヒコは、おじさんとりよう手をとりあったまま、 くるくるくるくる、つづけざまにかいてんしました。 そらはやしかわ 空も林も川も野も、ビ「のまわりで、にじいろにひか 0 てまわり、やが は した 177
「なんだい、。 とこにもとんでないや。」 。ヒコが、ロをとがらせるとコンはにやりとわらいました。 「おい、もうとんぼがえりやったぜ。すまーとにおともなくな。」 「ぼくがひこうきさがしてるうちに、とんだの ? ほんと ? 」 ピコは、目をまるくし、それから大きなこえでさけびました。 「うそだい。ほんとはコンくん、できないんだろ。ほーら、みてごらんよ。 ぼくのとんぼがえり ! 」 。ヒコはかけだし、とびあがってはくるくるまわりました。 はやし かわ 「とんだら、林がみえる。川がみえる。林も川も、くるくるまわるよ。おー コンくん。つかまえてごらん。ひこうきにばけて、追っかけといで ! 」 「へい、ちびのあかん。ほは、はねてあそんでるがいいや。ぼくは、おあいて はごめんだよ。むずかしいべんきようや、しごとがあるからな。」 くち おお はやしかわ 166
のはら こもこさせながら、野原をかけて、林にきました。 林のかばの木は、もう白い花をつけて、風にふかれていました。 「あれ、だれだろう。」 むこうの川のふちをみた。ヒコは、目をまるくしました。 「あんなとこにだれかいるよ。大きなむぎわらぼうしをかぶって、くろいめ がねなんかかけている。だれだろう。コンくんのおとうさんでもないし、 もぐらのグラさんでもない。 りすのコリさんでもないし、いったいだれか、 みて一、なくちゃ。」 。ヒコは、川のほうへまっすぐかけていきました。 むぎわらぼうしのおじさんは、草の上にこしをおろして、うまそうにたば こをすっていました。あしもとには、あたらしいしゃべるが二ほん。それに、 くさ 草の葉っぱをかぶせたかごが一つ。 はやし かわ かわ しろはな おお くさうえ はやし かぜ 168
のはら 野原もくるりと、 あたら 「新しい世界がねえ。」 グラはうたぐりぶかいちょうしでいいました。それから、よっ一、らしよと、 あなからはい出て、立ちあがりました。 そらあお ちかしつ 「地下室の中は、どこをみても土ばかり。外へ出りや、空の青てんじようと、草 。ほうぼう。そのほかにや、なにもみえんさ。べつにかわった一、ともなしさ。」 「グラさん、草ばかりって、きん。ほうげの花やしろつめくさの花がみえるで はやし しよう。ねえ、林やかばの木のダンスもみえないの ? 」 モコはびつくりしてたずねました。 とお 「グラさん、はねてごらんよ。。ほーんってとんでごらんよ。遠くがみえるよ。 さんかくやね おがわ はやし かばの林も、さらさら小川も、。ほくのうちの三角屋根もみえる。そのむこ せかい なか くさ いっかいてん、世界がかわるよ。新しい世界がみえるん っち せかい そと あたら せかい くさ
もう、うたえ モコはむねがつまったようになりました。もう動けない川 かわ しんだようにしずかな川が、たまらなくかわいそうになりました。 子 / . しーノ みち はやし いつばんみち 丿レいま、ゆきのつもった一本の道のようにみえました。道は、林のあ とお うみ いだをどこまでもどこまでもつづいていました。そうです。ずっと遠くの海 までも : 「川は海へいきたかったのにねえ。」 おも モコは思いました。 かわみち 「そうだ、この川の道をかけていったら海へいける。。ほく、川のかわりに海 うみはなし へいってきてあげよう。そして、海の話をしてあげるよ、ね。」 かわなが モコは、いきをつくと、川の流れていたほうへ、海のほうへかけだしまし どんどん、どんどんかけていきました。 はやし やがて川のりよう岸につづく林がきれて、空がひろくなりました。野の かわ かわうみ かわ かわ うみ う′」 うみ かわ かわ は うみ 108
ゆきが来る 山の木の葉は、もうおちました。 ばかぜ あか 赤やきいろのおち葉が風にくるくるおどりながらとんでいきます。 ちいちいちい たか 高い一、すえで、木の実をついばみながら、小鳥たちがいいました。 「さむいねえ。」 「つめたいねえ。もうじきゅきが来るね。」 「ゆきが来るね。」 林をかけてきたこうさぎのモコが、びくんと耳をたてて立ちどまりました。 モコは上をみあげました。 はやし やま うえ 」とり みみ 0 116