せんせい - みる会図書館


検索対象: かわいそうなぞう
17件見つかりました。

1. かわいそうなぞう

るだけ大きくひらいた目を、小さなかぎあなにおしあてました。 まっしようめんに、先生のうしろすがたがのぞかれました。 あか 先生は、ます、赤いマントをぬがれました。つづいて、服をぬぎすてました。 シャツもぬがれました。バ ンツ一まいになられました。 きんいろ テレザさんが、先生のつくえの上にかがやいている、金色の五つのつばのふ たをあけました。そして、その一つのつばから、どろりつとしたうるしのよう な、くろい油をひとっかみとりだしました。 「それつ、すばやくからだじゅうにぬりまくれつ。」 こえ と、先生の声が、りんりんと、へやいつばいにひびきわたりました。 テレザさんが、先生のからだにとびかかるようないきおいで、あたまからか はや お、かおからむね、むねからはら、はらから足へと、きかいのような早わざで、 せんせい せんせい おお せんせい せんせい せんせい 、つえ

2. かわいそうなぞう

「すばらしいつばめにすがたをかえて、とんでいかれるのです。」 「、つわあーーー。」 ばくは、しばらくはあいたロがふさがりませんでした。おどろき、あきれて いるばくをのこして、テレザさんは、いそぎ足でそのしたくに、先生のおへや へはいっていきました。 しん ばくは、人が鳥にすがたをかえるとい、つことは、とても信じることができま せかい せん。けれども先生は、世界じゅうに、その名のひびきわたったまほうつかい の名人です。先生が鳥になるところを、ばくはなんとしても、見たくてたまり ません。おさえても、おさえても、がまんができなくなりました。それで、つ いに先生のおへやを、かぎのあなからのぞき見することにきめました。 ちか ばくは、ふるえる足をふみしめて、おそるおそるドアに近づきました。でき せんせい ひと せんせい とり・ せんせい あし とり・ くち あし せんせい

3. かわいそうなぞう

からだじゅ、つに油をぬりまくりました。と、どうじに、ひと足とびさがってさ けびました。 「したく、おわりつ。」 「よしつ。それつ。」 と、すかさす先生は、りよううでをさっとのばして、ぶるぶるっと、からだを ひとふりゆすりました。 せんせい みるみるうちに、先生のりよううでは、つばさになり、足は尾になり、ロは、 三かくがたのくちばしとかわって、先生のすがたは、またたくうちに一わのつ ばめとなって、へやの中をとびめぐりました。 いきをころし、なまつばをのみこんでこれを見つめていたばくは、「あっ」 と、あぶなくさけびそうになったロを、しつかりとりよう手でおさえつけて、 せんせい くち せんせい あし くち

4. かわいそうなぞう

た、りつばなにんげんになることもできません。」 ばくは、ボース先生の、このたっといおことばを、しつかりとむねにきざみ こんで、さびしく、先生のホテルをでたのでした。 せんせい せんせい

5. かわいそうなぞう

っ教えてくださらない先生に、うらめしさがつのってきました。 「よし。やってみよう。つばめになろう。一りんのバラの花さえたべれば、も とのにんげんのすがたにもどれるのだ。」 こうかくごをきめたばくは、あとさきの考えもなく、先生のおへやヘしのび こみました。 つばのあぶらをひつつかんで、むちゅうになって、からだじゅうにぬりまく さゆう りました。うでを左右へびんとはりひろげて、足をぐんとふんばり、先生とお なじように、するどい気あいをかけました。 ばくのからだは、みるみるうちにむくむくと、あやしく動きだしたかとみる てあし まに、手足に、によきりとひすめがはえ、かおは、ぐいぐいと長くのび、あた せんせい せんせい せんせい

6. かわいそうなぞう

ばくはホテルのげんかんで、きんびか服のボーイさんにたのみました。 するとまもなく、三がいのりつばなおうせつ室にとおされました。カーテン きんぎん いろうつく も、いすも、テープルも、色美しい金銀の糸でかざられて、へやのすみにおか れたメノウのこうろから立ちのばるむらさき色のけむりが、へやいつばいに、 いいかおりをただよわせています。 なかむらまさおくん 「中村正夫君は、あなたですか。」 と、やがて先生が、ドアをひらいてあらわれました。 くろ ンという白 ひふの色は、うすすみをぬったように黒く、あたまには、ター しろ いきれをまきつけて、まっ白いあごひげをむねまでたらした大男のインド人で す。ばくはあいさつをすませてから、テープルにりよう手をついてたのみました。 てじな せんせい 「先生、わたくしを、どうぞ先生のおでしにしてください。手品が大すきで、 せんせい せんせい おおおとこ しろ

7. かわいそうなぞう

てじな おも 手品つかいになりたいと思って、勉強をしてきました。けれども、まほうのほ せんせい うが、すっとすっとすはらしいとおもいます。おねがいです。どうぞ、先生の おでしにして、りつばなまほうつかい。 こさせてください。」 ほそ 先生は、目を細くなさって、うなすかれました。 「よろしい。わたしが、きみをでしにすることは、わけなくできることです。 こころ けれども、きみが、うまくわたしのでしになれるかどうかは、きみの心のもちか た一つできまることです。」 「はい どういう心のもちかたをしたら、よろしいのでしようか。」 「ます、だい せんせい 一に、やくそくをまもることができるかね。」 こころ べんきよう

8. かわいそうなぞう

てじな 手品よりもまほうのほうが、どれほどすばらしいかわかりません。まほうの っえで、トンとあたまをたたけば、どんなわるものでも、たちまち石にしてし まうことができます。まっ赤なじゅうたんに、ひらりととびのれば、じゅうた そらたか んは雲をわけ、風をきって、ひこうきのように空高くとんでいくこともできま てじな す。手品では、とても、こんなすてきなまねはできません。 せんせい ばくは、どうしてもボース先生におあいしたくなりました。まほうつかいの おでしになって、日本一のまほうつかいになりたい心がおどりました。ばくは と、つきよう 大いそぎで、東京から横浜のセンチュリー・ホテルへでかけました。 おお 「ボース先生に、おあいしたいのですが。」 せんせい かぜ 2 につばん よこはま こころ

9. かわいそうなぞう

じんしようじよ すると、この時、ドアがしすかにひらいて、ひとりのインド人の少女が、か こうちゃ せんせい おりの高い紅茶をささけ持ってきました。先生は、 しようじよ 「この少女は、インドからつれてきたわたしのただひとりのでしです。きみは この人から、いろいろおそわるがいい しよう」しょ と、その少女をばくに、しようかいしました。 こうして、まほうつかいのおでしになったばくは、朝早くから夜おそくまで、 かげひなたなくはたらきました。 そのころ日本は、アメリカとのせんそうがおわってまもないころで、乗りも しよう のにもふじゅうしていました。先生は、けいば場からかりた馬にまたがって、 力いカん ゆき まい朝、海岸どおりをさんばなさることを、たのしみとしていました。雪より しろ、つま もまっ白い馬の上で、むねをはって、もえあがるようなまっ赤なマントを、し あさ ひと にっぽん とき せんせい あさはや よる

10. かわいそうなぞう

レザさんが、ばくにそっと耳うちをしました。 よ、」、つ 「先生は、いまからご旅行なさいますのよ。」 「えつ。どこへ。」 と、とっぜんのことで、ばくはびつくりしてたすねました。 「インドへいかれるのです。」 とお 。なんで、そんな遠くへ 「へえー かいぎ さんやま 「インドのヒマラヤ山の山おくで、世界じゅうの、まほうつかいの会議がある のです。」 かえ 「すごいなあ。それで、いつお帰りになるの。」 「きようの夕方です。」 はや 「へえつ。そんなに早く、 せんせい ゅうがた みみ いったりきたりできるの。」 せかい