へやからへやをかけまわって、金かの山をけりちらしました。ほうせきの山 から山をひっかきまわして、くびをつつこんでたべものをさがしました。 けれども、 ハンのかけらひとつ見つかりません。 にわのふんすいの水ばかりのんで、一しゅうかんほどすごしました。 ほねと、かわにやせほそりました。 いまは大ひろまのまん中にぶったおれたまま、なっかしい夜店のなかまたち なまえ こえ の名前を、ひとりすっ、ほそい声をだしてよびつづけるばかりです。 よみせ とうとう、目がまわりだしました。夜店でしたしくなった子どもたちのわら いがおが、目だまの中を、ぐるぐるとならんでとおります。 ああ。だんだん気がとおくなる。とおくなる。とおくなる。 やま おお なか みす なか やま よみせ やま 168
しろ 目のまえには、まっ白いべランダがっきでていて、そのむこうに、朝日をの あおおおうなばら しろ ばらせた青い大海原がかがやいています。なみのひかりが、まっ白いてんじよ あお うに青くはんしやして、きらきらと大きくゆれています。 おと いわにくだけるなみの音が、ドドドン、ドドドンとひびいています。 なだか 「まるで、外国の名高いおしろのようだな。」 わたくしはひとりごとをいいながら、むねをはってべランダにでました。 うみ あか 見わたすと、海はどこまでもとおくしすかにひろがっていて、赤いサンゴや、 白いサンゴが、おしろの島をとりまいています。空にかかった七色のにじを、 うみなか いくつも海の中へもちこんだようなうつくしさです。いつまで見ていてもあき ません。 「ランプはあるかな。」 力いラ」 / 、 しろ おお あさひ 159
もちになったら、どろばうがねらうかもしれない ないところへにげださなければならない ) こまったことになりました。うれしい考えはすっかりきえて、おそろしいこ とはかりが、あたまの中にごちやごちゃうきあがってきました。 ふとんの中で、ひとりよろこんだり、かなしんだりしているうちに、夜があけ ました。 あさひ 戸のふしあなから、金のばうをつきさしたように、朝日がさしこんでいます。 わたくしははねおきて、かおをあらうひまもなく、まものをよびだしました。 たいへいよう 「太平洋のまん中に、うつくしい島をつくれるか。」 「はい。つくれます。」 「にんげんが、だれひとりこられない島だぞ。」 さあたいへんだ。だれもこ 156
せんきち 三日目の午後になりました。けれども仙吉は、集会所へは、もういきません だいどころ でした。台所でひとり、ざるにふせたこおろぎを、いたわるようにながめてい さけ′」め ました。むりに人間から酒米をたべさせられて、いのちをかけて、たたかいを しいられる小さな生きものを、とてもかわいそうにおもっていました。 こんや かわ 「そうだ、今夜、月がでたら川べりに、 にがしてやろう。」 ぐち もの と、考えているところへ、村のわか者がひとり、うら口からとびこんできまし 「おじさん、もういやだ、いやだ せんきち かめ と、仙吉がついになきだしたので、第二日目は、そこでおわりました。 かんカ かめ つき むら 118
じんしようじよ すると、この時、ドアがしすかにひらいて、ひとりのインド人の少女が、か こうちゃ せんせい おりの高い紅茶をささけ持ってきました。先生は、 しようじよ 「この少女は、インドからつれてきたわたしのただひとりのでしです。きみは この人から、いろいろおそわるがいい しよう」しょ と、その少女をばくに、しようかいしました。 こうして、まほうつかいのおでしになったばくは、朝早くから夜おそくまで、 かげひなたなくはたらきました。 そのころ日本は、アメリカとのせんそうがおわってまもないころで、乗りも しよう のにもふじゅうしていました。先生は、けいば場からかりた馬にまたがって、 力いカん ゆき まい朝、海岸どおりをさんばなさることを、たのしみとしていました。雪より しろ、つま もまっ白い馬の上で、むねをはって、もえあがるようなまっ赤なマントを、し あさ ひと にっぽん とき せんせい あさはや よる
ふうせんをうる、おじいさんがいました。 おじいさんは、田んばの中の小さな一けんやに、たったひとりで、すんでい ました。 おがわ まどの下には、一日じゅうトー / 月かゴボゴボとながれて、ときどき、ホウセン あか 力の赤い花や、ユウガオのまるいみなどが、ういたりしすんだりして、ながれ ていきました。 おじいさんは、けさは、いつになく早おきをして、 めだかのおまつり した にち なかちい はや / 、お 川で、ジャプジャプ、
よこをとおりすぎました。 みち おばあさんは、せまい道を、まがりました。 みちはい おじいさんも、せまい道へ入りました。 そこには、 小さな家がぎっしりつまっていて、おばあさんは、かどから十け んめぐらいの、こうし戸をガタガタとあけて、 「いま、もどったよ。」 しいました。 「おばあちゃん、おかえりなさい。」 こえ と、声がして、中から、ふたりの子どもが、そとへ走りでてきました。 ひとりは、」、 / さいぐらいの男の子です。はんズボンをはいて、えりのおれた、 あたらしいふくをきていました。 ど おとこ 101
で、ていねいに、かみにつつみました。 つつんだかみの上に、『めだかのおみこし』と、すみでりつばな字をかいて たんすのひきだしへ、しつかりしまいました。 「やれ、やれ。おまつりもこれでおわったわい。どっこいせ。」 おじいさんは、ふとんの中に入りました。そして、目をつむりました。 たのしそうなめだかのおまつりのけしきが、あら すると、まぶたのうらに、 われてきました。おじいさんは、おもわすわらって、ひとりごとをいいました。 あお あか っしょにかしてやりまし 「らい年は、赤いふうせんと、青いふうせんも、 よ、つ。」 めだかも、ねました。 おじいさんも、ねむりました。 ねん うえ
こた 答えをだしました。 「これは、がくしやろばだ。」 「がくしやだ。」 「がくしやだ。」 と、ばくは、かわいがられました。 げんき 男の子も元気よく、いぬや、さるのせわなどをまい日つづけました。そのあい いえはし おも 三に、ばくは、家へ走りかえろうかといくたびも思いました。けれども、ろばが、 ひとりであるいていては、きっと、だれかにつかまるにちがいない。それより も、しんせつなサーカスだんにいたほうがいし ゝと、あきらめていました。 と、つきよう 旅から旅がつづいて、なっかしいおとうさんと、おかあさんのすむ東京の町 とお は、だんだん遠くなるばかりでした。 おとこ たび たび にち まち
プルルンと、かおをあらっていました。 すると、テテンカ、テテテン、ドンドコドンと、 ながれにひびいてきました。 「おやおや、もうおまつりが、 はじまったか。」 川かみをながめました。する と、おじいさんは、あわててかおをふきながら、 あか と、とおい田んばの中にあるおやしろに、赤いはたや、きいろいのばりが、あ さぎりの中に、ひらひらとゆれているのが見えました。 おじいさんは、 ( さあ、いそいであさごはんをたべて、でかけましよ。 ) と、ひとりごとをいってから、まがったこしを、ポンポンと二つ三つたたきま げんき した。そして、年をとったじぶんのからだに、元気をつけました。 かわ おと 川かみから、たいこの音が、