ってきてやったぞ」 と、『はなさかじいさん』をとりだして男の子にわたしました。 男の子は、おどりあがってよろこびました。 けれども、女の子は、なきそうなかおをして、たすねました。 「おばあちゃん、わたしには。」 かっこ、つ 「うむ、おまえにはな、おまえが学校へあがるときに、きっとかってやるから、 きようはがまんしてくれ、な、な。」 と、なだめて、家に入っていきました。 あとをつけてきたおじいさんは、これを見ると、女の子や、おばあさんが、 たまらなく気のどくにおもわれてきました。ふところから、そっと『のりもの』 いえなか のえほんをとりだして、家の中をのぞきました。けれども、あなのあいたしょ おとこ おんな 、えはい おとこ おんな 103
くろ せなかには、びかびかにひかった、かいたての黒いランドセルを、うれしそう にしよっています。 もうひとりは、四さいぐらいの女の子です。いろのはげた、とても長いスカ あか ートに、赤いふくをきていました。 おばあさんは、男の子を見ると、 にゆうカく 「あれえ。そのふくは、あした、入学しきのときにきるふくだぞ。よごすとた いへんだ。早くぬげ、ぬげ。」 と、ロをとがらせました。 みち 男の子はあわてて、道のまん中で、ふくをぬごうとしました。 おばあさんは、手をふってとめました。 にゆうカノ、 「うちの中でぬぐんだ。そのかわり、入学のおいわいに、すてきなえほんをか おとこ くち はや おとこ おんな 102
うじが、しまっているばかりで、三人のすがたは見えません。 おじいさんは、どうやってこのえほんを、あの女の子にわたそうかなと、し かんカ ばらく考えていましたが、やがてにつこりしました。 おじいさんは、いきなり、ゆうびんやさんのような、かおっきをしました。 こえ そして、とても大きな声で、 「ゆうびん。」 と、どなると、『のりもの』のえほんを、家の中に、ポトンとほうりこみまし みち た。すたこらせっせと、もときた道へ、走りかえりました。 まがりかどまでにけてくると、おじいさんは、まだゅうびんやさんのような かおっきをしたまま、そっと、ふりかえりました。 みち すると、おばあさんと、男の子と、女の子が、家のまえの道にとびだして、 おお おとこ おんな 104
みち おがわ 川とならんだ道を、ガラガラと、うば車をおしていきました。 おじいさんは、 あお きんいろ うば車の上には、金色のゴムふうせんや、青いゴムふうせんが、まるくふく てんき しいお天気の風にゆれていました。 らんだまま、 「わっしよい、わっしよい。」 と子どもの、たるみこしと、かねみこしが、おじいさんと、ふうせんの車をお いこして、おみやのほうへ、もまれていきました。 ほれきた、わっしよい 「それきた、わっしよい と、おじいさんもそれを見ながら、うしろからいせいをつけてやりました。 こ、え げんき どの男の子も、みんな元気な声をはりあげていきました。女の子も、チャリ トさな子は、お ン、チャリンと、かなばうをならしながらついていきました。 / ねえさんにおぶさったまま、せなかの上で、かわいいまんどうをふりまわして ぐるま かぜ ぐるま くるま
おとこ ンとたたいて、しかりました。ですから、おかあさんのさるは、かなしそうな かおっきをして、子どもと、しばいをつづけていました。 するとまた、子どものさるが、かつらをすてて、にげだしました。 さるしばいのおじさんは、もうがまんができません。子ざるをおいかけると、 子ざるは、ぶたいのまわりを、にげまわっているうちに、 小さな男の子がもっ ていた、まんどうを、いきなりうばいとって、あっちこっちへ、にげ走りました。 子どもは、なきだすし、おおぜいのおきやくさまは、わらったり、さわいだ りして、とうとうしはいは、めちやめちゃにこわされてしまいました。 さるしばいのおじさんは、子ざるをにらみつけてつかまえると、まんどうを 男の子にかえして、子ざるのおしりを、ペタベタとたたきました。ひきするよ うにして子ざるを、がくやヘつれていきました。 129
よこをとおりすぎました。 みち おばあさんは、せまい道を、まがりました。 みちはい おじいさんも、せまい道へ入りました。 そこには、 小さな家がぎっしりつまっていて、おばあさんは、かどから十け んめぐらいの、こうし戸をガタガタとあけて、 「いま、もどったよ。」 しいました。 「おばあちゃん、おかえりなさい。」 こえ と、声がして、中から、ふたりの子どもが、そとへ走りでてきました。 ひとりは、」、 / さいぐらいの男の子です。はんズボンをはいて、えりのおれた、 あたらしいふくをきていました。 ど おとこ 101
「おじさん、ありがとう。ありがとうございます。」 やまみちたか ごえ 子どものなき声が、しすかな山道に高まりました。 たび こうして、男の子と、ろばのばくは、サーカスにつれられて、旅をつづける ことになりました。 サーカスの人たちは、ばくが、にんけんのことばや、さんすうがわかるので、 たいへんにおどろきました。 みぎ 「右へまがれ。左へ走れ。 と、いわれれば、ばくは、さっさとそのとおりにしました。 「 5 + 3 」 「 8 ー 4 」 じめん と、いわれれば、ばくは、ひすめで、地面を八どけったり、四どけったりして おとこ ひと ひたリ
こた 答えをだしました。 「これは、がくしやろばだ。」 「がくしやだ。」 「がくしやだ。」 と、ばくは、かわいがられました。 げんき 男の子も元気よく、いぬや、さるのせわなどをまい日つづけました。そのあい いえはし おも 三に、ばくは、家へ走りかえろうかといくたびも思いました。けれども、ろばが、 ひとりであるいていては、きっと、だれかにつかまるにちがいない。それより も、しんせつなサーカスだんにいたほうがいし ゝと、あきらめていました。 と、つきよう 旅から旅がつづいて、なっかしいおとうさんと、おかあさんのすむ東京の町 とお は、だんだん遠くなるばかりでした。 おとこ たび たび にち まち
あかあお あたまには、ぞうげのわをかぶっていて、わにかざられた赤、青、きいろの ほうせきが、ごこうのようなひかりをだしていて、雨でうすぐらくなったへや をあかるくてらしています。 ( いったいこの大男は、どこからあらわれたのだろう。 ) と、わたくしは大男と、せまいへやの中でむかいあったまま、じっと考えこみ ました。 すると、子どものころよんだ、『アラビアン・ナイト』という本をおもいだし ました。その中に、『アラジンのランプ』というふしぎな話がのっていました。 らゆう′」く その話は、むかし、中国に、アラジンという男の子がいて、まほうのランプ を手に入れました。そして、ランプをこすると、ランプからまものがとびだし て、なんでもいいつけたことをかなえてくれるのでした おおおとこ おおおとこ おとこ あめ かんカ 146
おか でかくされているのでした。だれが見ても、丘とおなじように見えます。ドア は、うちがわから、また、びたりとしめられました。 ぬす人たちは、ばくを、ぐいぐいとひつばりこんだまま、かいちゅうでんと うをちらちらとさせて、ほらあなのおくへ、おくへとすすみました。すすみな こえ たか がら、せい高のつばが声をかけました。 「おい。子ども、いるか。」 こえ すると、あなのおくから「はい」という、すみきった声がかえされてきまし た。それといっしょに、あなのつきあたりに、ばっとランプがともされて、そ の下に、ひとりの男の子がてらしだされました。 よれよれの半ズボンに、つぎだらけのうわぎをきた、みすばらしい子どもで びと す。ああ、この子も、ぬす人のなかまなのかと、ばくのむねは、しめつけられ した びと こ はん おとこ