ほりせんせいはあかいかおになって、ばっとっくえからとびおりた。 「あんたたちったら、もう、しらないから」ってろうかへでていった たんちゃんはちょっとびつくりした。だって「バンツウまるみえ」 っていうんだってことしらなかったもん。でも、おもしろいよ。 ハンツウまるみえ たんちゃんはいすのうえにあがってやる。 「ね、どうやるの。おしえて」 りかちゃんがいうから、たんちゃんは、 「みていろよ」 ってもういちどやってみせてあけた。そしたらゆうちゃんが、 「ちがうよ バンだろ。ツウだろ。まるだろ。みえは、こうだよ。めがねじゃ
だって。 「やりたくないよ。もうかくのやだよ」 「それではしかたない。 一まるよ」 「なんだよ。けち。けちせんせい。ひきようだぞ。じぶんだけおとなだと おもって」 たんちゃんは、ほんとにつまんない。 「ね、はなまる ! ほら」 たんちゃんはほりせんせいのてつかんで、まるのとこにもってい ってあげたのに、 「じゃあね、ていねいに かきなおしていらっしゃい。そしたらあげ
「まえにして」 ってだあれもへんじしないうちに、いちばんまえに そして、 「ほらはなまるだよね。ほら」 ってしゆくだいのかみ、せんせいのかおにおしつけたの。 「いやよ。ちゃんとみせて」 「あらたんちゃん、こんなにらんばうにかいてきては、はなまるにはな れないわ。これじや一まるだ」 せんせいはちいさい一まるをつけたの。 「やだやだ。一まるなんかやだ。はなまるつけてよ。きようは、はなま るもらえるひなんだから」 いっちゃったのよ。
こうちゃんは、『まんがしようねん』を十さつ、つつんだ。かなちゃんは、 くさきは、まるえ 「おおやすうり、一さっ五えん」とかいたかみをもった。い っストアのわきのあきち。あそこは、こどものあそびばだし、かいもののおば さんもとおる。 あきちには、二ねんせいぐらいのおとこのこがふたり、じてんしやにのつ ている。ようちえんのこが、四にん。こうちゃんが、はこのうえにほんをな らべると、 「なにするんだ」と、よってきた。 こうちゃんは、ばうしをさかさにかぶりなおすと、 「やすいよ、やすいよ。どれでも、たったの五えんだよ」 いった。かなちゃんは、かみをひろげてもっている。 と、
そうよね。たんちゃんさっき、はなまるもらえるでがっこうについ たんだものね。 でも、せんせいはしらないから、 「だめよ。たのじだってこがおやねのしたにはいっちゃってるし、せの よこばうだってシュウッとはしっていっちゃってるし。だめよ」 「いやだ。はなまるがしし」 「だってじようすじゃないんですもの」 っしようけんめいかいたんだからあ。はなまる 「じようすだよ。きのう しいよ。はやく」 たんちゃんは一ねんになってからはなまる二かいしかないもの。きみ ほしいねえ。 もらった ? はなまるきれいだもの、いつばい はなんかい で
たんちゃんはどなった。でも、だれもきがっかない。もう、にわには、 だれも いなくなった。べんきようが はじまるんだ。 こうなったら、のばってでるよりしようがない。たんちゃんは、てつの もんのよこばうにあしをかける。でも、つぎのよこばうはたかくて とってもとどかない。だめだ。すうっとでられなかったらどうしよう。 たんちゃんのめになみだがい つ。まいになっこ。 そのとき、 「たんちゃん、たんちゃん、どこにいるんだい。おはいりだよう」 おのくん、おのくんのこえだ。 「おのくん、おのくん、ここだよう。プールだよう。かきかけられちゃった 115
「ばくたち、おかあさんにしかられないの」 「しかられないよ。ばくのだし、おばさん、かうの ? 」 「いいのかしらね。うちのおにいちゃん、ねててあきてるから、かってって あげようかしら。ほんとに、いい それでも、おばさんは四さつかった。あと三さつは、 「お、ちび、やるじゃねえか」っていって、がっこうがえりのちゅうがくせ し、カー刀キ / うりあげ五十えん。しつかりポケットにしまった。 こ、つ」 こうちゃんとかなちゃんは、ナンプストアのところのとけいやヘ。とけい 。しカピカピカしている。 やのおみせは、ガラスのケースやとナゝゞ
いったとおもったら、ろうかへとびだした。せんせいは、こまったようなか おで、ためいきをついた。 「ね、みんな。かすちゃんのこと、 「わるいこー 一ねん四くみみんなが、い 「そうよね、そうよね」 「だってさ、がっこうって、べんきようするところだもん」 って、えんどうくん。 「そうよね。みんなはおりこうだ。じゃ、べんきようしようね」 きようしつのみんなが、「ね」のじをならっていたら、わたりろうかのほう から、どなりごえがきこえてきた。 っしょにいっこ。 しいこだとおも、つ ? 」
と 「たんちゃん、ズボンはいてて。まゆみちゃん、きようしつのとだなに バンツのはいってるふくろがあるからとってきてよ」 そして、 「おのくん、さきにはかろうね」 いった。おのくんがはかりにのろうとしたとき、 「あ、おのくんのバンツにたんちゃんのなまえがかいてある」 みゆきちゃんがどなった。ほんとに、ゴムのところにくろく「ふかだ たびと」 「しつ。みゆきちゃんだまって」 ほりせんせいがこわいかおして、くちのまえに 一ばんゅびをたてた。 ヾノッはいてな ほりせんせいにはわかったのね。どうしてたんちゃんが / 、 124
ところとなった行動には、何とも人間らしい、健康で価値ある感情が、みなぎっている ではありませんか。それは作者じしんの、成長する子どもたちへの期待感・願望の表現 なのかもしれません。そしてまた、子どもの生活の中には、このように人間としての美 しい心の成長にかなう行動が、あるいは側面があるもので、わたしたち大人は、それを 見いだし育くむ目を持たねはならないことの大切さを、暗示しているとはいえないでし よ、つか。 わたしは本書をテキストにした母親読書会に参加して、「笑いがとまらないで読むう ちに、思わす涙がにじんできた」という発言に出あったことがあります。子どもがとら えられなくなったといわれる時代にあって、子どもとは何か、子どもが人間らしく発達 するとはどういうことなのかに、あらためて貴重な示唆を投げかけている一冊です。幼 い子どもを育てている若い母親や教師のかたに、ぜひ一読をおすすめします。 なみた かんはう 138