おお かあさんネズミはそっちに走っていくと、大いそぎで でんちゅう ごえ 電柱をのばりつめ、キイキイ声をはりあげました。 ばしょ 「だめ、だめ。ここは、わたしがみつけた場所なんだか ら。」 あいて 相手はびくっとし、とたんに、あぶなく、おっこちそ うになりました。つなわたりのとちゅうですから、どう でんわせんりようて することもできません。ゆれる電話線に両手でしがみつ くと、ぶらさがったかっこうのまま、やっと、くびだけ まわして、ふりむきました。
知りたがりやにくつついて、チビもいっしょに、ちょ こちょこ走っていきました。どういうわけか、チビは、 はじめて見る人間を、あまりこわいとおもいませんでし あいておお じぶん た。自分たちにくらべて、あまりにも、相手が大きすぎ るせいでしよう。ほかのきようだいも、だいたい、チビ にんげん おお かんが とおなじ考えでした。人間は、やたらと大きいだけで、 目もわるそうだし、どうやら、はなもそんなにきかない あいて A 」い一つ、わ らしい 。たいした相手じゃなさそうだ けです。 にんげんこ 人間の子どもたちは、トランプあそびをしていました。
「わたしらには、ちょっと大きすぎるようだけど ちょっとどころか ひろ 小さいものたちにとって、あまり広すぎるうろも、お ちつかないものなのです。 ( ともかく、なかのようすを、のぞいてみなくちゃ。 ) そうおもったときでした。 でんちゅう すぐそばの電柱を、一びきのヒメネズミが、するする のばっていくのが見えました。やつばり、このうろの下 しらべにやってきていたのです。 ある あいて でんわせん 相手は、電話線をつたって、そろそろ歩きはじめまし おお した
をとめました。 すぐ近くに、イタチがいたのです。 イタチは、むこうをむいていました。 しん かあさんネズミは、あわてて目をつむりました。心ぞ うがコトコトなって、くるしいくらいです。 ( 消えろ、消えろ。あわんぶくになって消えろ。 ) いつものおまじないを、むちゅうでとなえました。 しん おと じぶん 心ぞうの音がきこえなくなり、自分がすきとおって消 きぶん えてしまう気分になるまで、なんどもくりかえします。 あいて このおまじないで消えるのは、いつもきまって、相手の ちか
み それを見ると、かあさんネズミは、ゝ りあげました。 「もどっておいで ! 」 あいて 相手は、なんとか、からだをたてなおそうとしました。 でんわせん でも、電話線のゆれは、ますますひどくなる一方です。 とうとう、ささえきれなくなって、手をはなしました。 ヒメネズミの小さなからだは、つもった枯れ葉のなかに、 すとんとおちてはずみました。そのまま、こそこそ、ど こかへにげていってしまいました。 「やつばり、 しいところは、みんなが目をつけるんだわ。」 ちい め こえ しっそう、声をは いっぽう
かしら。ごまつぶとか、お花のたねとか : 「たね ! 」 子ネズミたちは、かおを見あわせました。 「それなら、あるよ。」 「もってくるね。」 たちまち、二ひきが、どこかへすがたを消しました。 とおもうと、すぐにまた、もどってきました。子ネ ズミたちは、歯のすきますきまに、ヒマワリのたねを、 りようて いくつもさしこんでいます。それを、ひとつずつ、両手 おんな でぬきとって、女の子にわたしました。 こ こ こ
なが ばしょ とてもよさそうなんだけどねえ。 ) あの場所 : かんが かあさんネズミは、 ) しつもの、考えるときのくせで、 りよって 長いひげを、いそがしく両手でしごきました。 。でも、こ ( あぶないっていえば、あぶないけれど : ふゅゆきおお 。おもいきって、あそこにき の冬は雪も多そうだし めてしまおうかしら。 ) かあさんネズミが、まえから目をつけていた、その場 しょ さんそう ばやし 所というのは、ぞうき林のなかにたてられた山荘のこと やま でした。この夏のおわりころ、山すそに、はじめてたっ なっ め
せました。 つうろ ななめになったせまい通路を、かあさんネズミはちょ こちょこのばっていきました。おわりのほうは、まっす みち りよ、ってりよ、つあし ぐの道になっていました。そこで、こんどは、両手両足 をびんとのばし、からだをまんなかにささえながら、す きよくげい すみました。まるで、サ 1 カスの曲芸です。 とっぜん、ひやりと、手ざわりがして、管のつなぎめ にきたことがわかりました。かあさんネズミは、すぐさ ま、管のかべに歯をあてると、ガリガリかじりました。 かじったところに、たちまち小さなあながあきました。 て
しんけいすいじゃく いよいよ、ゲ 1 ムがはじまりました。神経衰弱は、カ 1 ドのうらを見ながら、おなじ数のカードをひっくりかえ み すあそびです。つぎつぎめくるのを、よく見ていて、あ そこにはなんのカ 1 ド、ここには と、おばえておか なくてはなりません。うらは、みんなおなじなので、し まいには、どこになにがあったのか、わからなくなって きます。 「ああ、また、さっきのふだ、あけちゃった。」 りようて 子ネズミたちは、ひげをしごいたり、両手をこすりあ いっしようけんめいです。 わせたり、それはもう、 こ み かず