きようだい かぜ 「そうだ。風のない日でも、自由にグライダーをとばす方法はないものだろうか。」 「あるよ。」 「えつ、あるって。」 「モーターポートはなんで走るか。自動車はなんで走るか。」 「エンジンだよ。あたりまえじゃよいゝ。 「そのエンジンをグライダーにとりつけて、プロペラでとぶようにしたら、どうだろ 「それはむりだ。あんなおもいものをつけたら、とびあがることさえできないよ。」 おお ばり強」 」さくて、かるくて、そのくせ、大きな馬力をだすエンジン 「それを見つけるんだ。ハ こころ せいぞうじよ 兄弟はさっそく、心あたりの製造所へ手紙をだしました。 つう ところが、どこからも、一通もへんじがありません。たぶん、 じゅう じど・つしゃ てがみ ほ・つほ・つ 181
) 05 れんらくせん ひとびと ふう 見ていた、風がわりな人々がいました。ソ連の ツイオルコフスキー、アメリカのゴダード、ド けんきゅう ィッのオーベルトらがそれで、かれらの研究は じだい ある ひこうき 飛行機がまだよちょち歩きのひょこ時代に、す きそりろん うちゅうひこうかん こんにち でに今日の宇宙飛行に関する基礎理論のかなり うちゅうりよこう ぶぶんつく トな部分を作りあげていたのです。宇宙旅行にな によりもまず必要なのは、ロケットエンジンで ひこうきよう くうきちゅう 一す。空気中の酸素を使う飛行機用のエンジンで うちゅうくうかん しんくう スは、真空の宇宙空間に飛び出すことはできませ うちあげはなびおな 絡ん。ロケットエンジンでは、打上花火と同じく、 ひつよう さんかざい の燃料と、それを燃やすのに必要な酸化剤をいっ “宙しょにもっていくしくみになっているのです。 う宇 ひみつへいき じせかいたいせんちゅう 第二次世界大戦中、ドイツの秘密兵器として ひつよう さんそ つか れん 226
さわぎはいちおう、おさまりましたが、エンジンの調子がととのうまでには、それか じかん らも長い時間かカかりました。 ひんしやく いまからみると、ずいぶん貧弱なものですが、とにかく、できあがったのです。 「さあ、こんどはプロペラだ。」 兄弟はいさみたちました。 もんだい プロペラは、ただのぼうきれみたいなものですから、問題はなさそうです。しかし、 これも、いざとりかかってみると、かんがえていたよりも、ずっとたいへんでした。 しゆっりよく なにしろエンジンの出力が十二馬力しかなく、それで三百五十キログラムぐらいのお もさのものをとばそうというのですから、プロペラのはたらきも、よほどよくないとい けません。 ぎろん ずめん ああだ、こうだと、いくども図面をかきなおしながら、議論をつづけていると、妺の よう カザリンがせつかく用意したタごはんも、すっかりさめてしまいます。さすがのカザリ きようだい ゅう ばりき ちょうし いもうと
ライト兄弟の作ったエンジン
ねんかん 「ぼくたちには、そんな大金はない。 せいぜい一年間に五百ドルもだせるかだせないか だ。万となれば、十年かかっても、むりだよ。」 せいふ けんきゅうひ 「じゃ、政府から研究費をだしてもらうようにたのもうか。」 じてんしやや 「けれど、名も知れないただの自転車屋に、おいそれとだしてくれやしないよ。」 「それもそうだな。」 けんきゅう •YJ 力し 「ばくは、マキシムの機械をよく研究してみたんだ。それによると、マキシムの翼は、 エンジンとのり手のおもさをささえるのにじゅうぶんだった。また、エンジンは機を空 ちゅう 中にまいあがらせるだけの力もあった。ただ、どうしたら機の安定をたもち、どうした ら、かじをうごかせるかを知らなかったのだとおもう。」 まん 「それにしても、二十万ドルじゃねえ。」 「うん。ぼくたちにできるのは、やはりリリエンタールか、シャヌートのやり方しかな いな。あれなら、木のぼうと、ぬのだけだから、せいぜい三百ドルか四百ドルあればい まん ねん たいきん あんてい かた よく 153
一年がたちました。 けんこ・つ オービルの健康がたちなおるにつれて、ライト兄弟のグライダー研究は、ますます熱 がくわわってきました。 しかし、そのあいだにも、さまざまなことがありました。 フランスのクレマンアデーと、イギリスの ( イラムマキシムが大きなエンジンを き力し つけた機械をとばしましたが、アデーのはすぐこわれてしまい、「キシムはわずかにと んだだけで、あきらめてしまいました。 しかも、これを作るのに、アデーが十一一万ドルっかい、マキシムが一一十万ドルっか「 たというのです。 ねん もんだい 問題は二つある まん きようだい 152
エンジンとプロペラ : とんだ、とんだ : ・ よりはやく、より高く ちち ひこうき 飛行機の父よ : ・ ライト兄弟の年表 かいせつ 解説 : 歴史人物事典 ツイオルコフスキー レ . ピカー れきしじんぶつじてん ひょうしえ えすぎおてるとし しばたしん 表紙絵・さし絵 / 杉尾輝利カット / 柴田慎 きようだい ねんびよう ワ ~ : 中ロ博 0 ・ 8 8 ・ 8 8 8 ワ ~ 232 230 ガリ ド なかぐちひろし 236 234
しれないほど大きくかがやいています。 うちゅう そら キティホークの空は、世界の空につうじ、さらに宇宙へとつづいているのです。 はくぶつかん そら いま、ワシントンのスミソニアン博物館をおとずれる人は、ライト兄弟がはじめて空 ひこう・き力い をとんだ飛行機械がかざられてあるのを見るでしよう。そして、 くしん きたい 「この機体も、エンジンも、いまから八十年ほどまえ、兄弟が苦心のすえに作ったの とおもったとき、こ , つかんじはしないでしょ , つか きようだい 「ライト兄弟は生きている。人類のむねの中に、永遠に生きている。」と。 おお せかい じんるい ねん えいえん ひと きようだい きようだい ( おわり ) 217
ケートさん一家とも、かもめとも、すっかりおなじみになりました。 1 」うき グライダーも、二号機、三号機となるにつれて、新しいくふうをかさね、そのころの せかいきろく 世界記録もたてました。 ふたり しかし、二人はまんぞくしませんでした。 エンジンとプロペラ ある日、ウイレヾ ノノーカオービレこ、いました。 「なるほど、ぼくらのグライダーは、安定している。また、あげかじ・さげかじ・右か そうしゅう じゅう たか じかん じ・左かじの操縦も自由だ。しかし、うんと高くはとべないし、長い時間もとべない。 かぜ なによりも、グライダーは風のないときは、とべないということだ。」 オービルもうなずいて、 ひだり ひ 1 」・つき あんてい あたら みぎ 180
市 , - イレヾ ノノーかいって、下の翼の上に、はらばいになりました。。 コーゴーとエンジンが なりひびき、機がプルプルふるえだしました。 「つなぎどめをはずせ。」 ウ -. イ【レヾ ノノーかどなりました。 うよく 機はするするとすべりだしました。オービルは右翼をささえたまま、 っしょについ て ていきましたが、 十二メートルほどで、もうついていけず、手をはなすとどうじに、ス ップウォッチをおしました。 みんな息をのんで見まもりました。成功か、しつよ、 ( しか。あといっしゅんできまるの です。 機は十八メートルのレールの上をすべりこえ、三メートルほどいったところで、ふ くうちゅう わっと空中にうきあがりました。 「あっ、とんだ、とんだ。」 み したよく うえ うえ せいこう 191