みち わり、あくしゅをもとめてきました。道をあるいていると、 「ライト、ライト。」 とさけびながら、子どもたちがおいかけてきます。 しゆくしゃ しやこ・つ いこうしてしまいました。 ( 佰企〕にもどる もともと社交ぎらいな兄弟は、これには、ヘ と、おもわずため息をついて、いうのでした。 「や「ばりぼくたちは、格納庫の中で油にまみれて、こっこっ機械をいじ「ているとき が、いちばんしあわせだな。」 でも、もうライト兄弟は、世界の空の花形です。じぶんたちだけしずかにしていたい とおも「ても、世の中がそうはさせません。 ひと 、いいばかりとはかぎりません。兄弟の成功をねたむもの、 あつまってくる人も しんけい それらの人々にかこまれて、神経がっかれてきました。 金もうけをたくらむもの ーには、人いちばいそれがいやでなりませんでした。 とくに、かんか一んぶ力いウイルヾ かね きようだい 0 きようだい き力、 せいこう 210
がくしゃ いくらかまじめにとる宀子亠名でも、 こうく・つがくたいカ 「かんがえてみるがよい。あの航空学の大家、ラングリー博士だって、しつばいしたん だぜ。」 はやみみ しんぶんきしゃ 早耳で、めずらしいものなら、なんにでもくいつく新聞記者でさえも、ライト兄弟の ところへやってきて、いろいろ話をきいても、 「えつ、五十九秒ですって ? 五十九分のまちがいじゃありませんか : そうでな へえ、たったの五十九秒。それっぽっちじゃ、ニュースとしてとりあげるねうち はありませんなあ。」 と、さっさとかえってしまうのです。 こうしたわけで、ライト兄弟の偉業も、さつばりみとめられませんでした。それどこ ねん ねん そら ろか、一年たち、二年たちするうちに、ライト兄弟が空をとんだということさえ、わす れられそうになりました。 びよう きようだい びよう はなし ぎよう ん きようだい はくし 0 きようだい 200
しれないほど大きくかがやいています。 うちゅう そら キティホークの空は、世界の空につうじ、さらに宇宙へとつづいているのです。 はくぶつかん そら いま、ワシントンのスミソニアン博物館をおとずれる人は、ライト兄弟がはじめて空 ひこう・き力い をとんだ飛行機械がかざられてあるのを見るでしよう。そして、 くしん きたい 「この機体も、エンジンも、いまから八十年ほどまえ、兄弟が苦心のすえに作ったの とおもったとき、こ , つかんじはしないでしょ , つか きようだい 「ライト兄弟は生きている。人類のむねの中に、永遠に生きている。」と。 おお せかい じんるい ねん えいえん ひと きようだい きようだい ( おわり ) 217
おかあさんのスーサンカザリン日ライトがきつばりいいました。 この夫婦は、たがいにふかく愛しあってはいましたが、せいかくはだいぶちがってい さいのう きようだい ました。どうちがっていたかライト兄弟は、その才能を、どちらのほうからおおくう けついたのでしようか それを知るために、ライト家のなりたちをお話しましよう。 ちち この父、この そせん ライト家の祖先は、もとイギリスのエセックスというところの人で、一六一二六年にア しよくぎよう 、ぎしき メリカにわたってきました。職業はキリスト教の司祭 ( 儀式をつかさどる人 ) です。 ひと ひと ノノーたちのおじいさ この人からかぞえて六代めの、ダン日ライトという人が、ウイレヾ んにあたります。 ふうふ は きよう ひと ひと ねん
このことは、カザリンがじぶんのカで作ったり、なおしてやれる頭のはたらきと、う でとをもっていたからで、それがライト家のやり方になっていったのでしよう。 だいがく すうがく 「おかあさんはね、大学では数学がいちばんとくいだったのよ。」 ほ・つていしき もんだい おかあさんのカザリンはよくこういって、むずかしい方程式や、幾何などの問題を、 すらすらとといてみせました。 ライト兄弟は、このおかあさんの血すじを、よりこくうけて、そだったのです。 それともう一つ。 ・つ きようだい ライト兄弟が生まれ、そだったころは、イギリスにはじまった産業革命が、アメリカ 」カ、 にもおしよせ、人々の生活の中に、機械がはいってきた時代です。 しようききかんはつめい 力いりよう ジェームス日ワットの蒸気機関の発明と改良。 しようききかんしやはつめい ジョージ日スチープンソンの蒸気機関車の発明。 しようきせんはつめい フルトンの蒸気船の発明。 きようだい ひとびとせいかっ ちから ち かた じだい さんぎようかくめい あたま
ライト兄弟 富塚清
ライト兄弟の作ったエンジン
じかん あがるたこ、おちるたこ、まわるたこ、ながれるたこ、からみあうたこ。一時間もす あおそら ると、あらかたのたこはおちてしまって、青い空には十いくつかがうかんでいるだけで ずれもひっし した。見ると、さすがに「たこクラブ」のれんじゅうのものがおおく、い に糸をあやつっています。 そのとき、まん中ごろにいた一つのたこが、きゅうにぐんぐんと、のばりはじめまし 「おつ、すごいぞ。だれのたこだ 「ライト兄弟のだ、ライト兄弟のだ。」 こえでんば 声は電波のようにったわりました。 め みんなの目がいっせいに、すいつけられました。 かぜ たこはまるで、はやぶさのように風をきっていきます。いったい、どこまでのぼって くうちゅう いくのか。みるみるほかのたこをひきはなして、空中にびったり、はりついたようにな み きようだい きようだい
きようだい いが′、 ミルトン " ライトとスーサン日カサリンは、、 ートビルという町の小さな大学で、 べんきよう っしょに勉強しているうちに、したしくなって、けっこんしました。 子どもがつぎつぎに生まれたことは、まえに書いたとおりですが、ここには、ライト 兄弟だけをしるしておきましよう。 ゥ一イルヾ Ⅱライト一八 , ハ七年生まれ オービル日ライト 一八七一年生まれ 子どもたちは、おかあさんにつれられて、キヨルナーおじいさんのところをおとずれ ることが、たびたびありました。 もっこうせんばん おじいさんの家には、木工旋盤があります。ふといのや、ほそいのや、さまざまな木 をくるくるまわし、それに刃ものをあてがうと、シュルシュルと木くずがテープのよう におどりだし、みるみるうちに、まるくけずられていきます。 ( まるで、まほうのようだな。 ) こ ねんう ねんう まちちい
ひこ・つ じかん がついっか ふんだいきろく 十月五日には、飛行きより三八・五キロ、時間三十九分の大記録をうちたてました。 ひと こうなると、いままでそっぱをむいていた人たちも、ようやく、 あたら じだい 「ライト兄弟は、たしかに新しい時代をひらいたのだ。そして、わたしたちは、その新 じだい しい時代に生きているのだ。」 とわかるようになってきました。 そら しかし、そうおもったのは、ライト兄弟が空をとぶところを、じっさいに見た人たち し ひと でした。ほかの人たちは、まだまだ知らん顔です。 はつめい じかん 「オープ、一つの発明がみとめられるまでには、ずいぶん時間がかかるものだなあ。」 ウ - イレヾ ノノーか、しみじみといいました。すると、オービルも、 はつめい けんり まいにち 「まったくだね。それに、『新しい発明を見せろ。』だの、『権利をゆずれ。』だの、毎日、 ひと おおぜいの人がおしかけてくるので、いやんなっちゃうよ。」 「しばらくやすもうか。」 きようだい あたら きようだい み かお みひと あたら 203