さすが演説ぎらいのエジソンも、これにはひどくかんげきしたらしく、なにかもう一 ことのべて、それにこたえようとしたとき、あまりのこうふんにつかれたのでしようか、 ひとびと きゅうにぐったりと、たおれるようにこしをおろしてしまいました。人々は、びつくり しました。すぐ医師が、かけつけてきました。 けんこ・つ エジソンの健康は、きゅうにおとろえはじめました。そして、その このときい , りい かいふく 、しゅうたい ふゅ 冬は、肺炎にかかり、重体におちいりましたが、さいわいにもこれは回復しました。 けんきゅう びようき 病気がなおると、すぐ研究です。 じつけん 「まだ実験しなければならないことがのこっているから。」 けんきゅうしょ さいばいしけん といって、ゴムの栽培試験をしているフロリダの研究所へでかけていきました。 じたく 一九三一年の七月のことです。フロリダから、グレモントの自宅へかえってきたエジ きとく がつついたち ソンは、ひどくよわっていて、八月一日には、危篤さえったえられたほどでしたが、さ きせきてきかいふく いわい奇跡的に回復してドライプができるくらいになりました。 はいえん えんぜっ ねん がっ ひと 229
はつめい ニッケル・金・銅などの製錬法だとか、あらゆる方面にわたってのかずかずの発明がか けんきゅう ぎりなくあるのですが、さいごにエジソンのゴムの研究だけをお話しておきましよう。 じたいせん けんきゅうしょ 第一次大戦がおわって、ふたたび研究所にもどってきたエジソンが、まずさいしょに けんきゅう 手をつけたのが、このゴムの研究だったのです。 じどうしやおう エジソンは、自動車王のヘンリー フォードとなかよしでした。ある日エジソンが、 こうしよう フォードの工場を見にいったとき、フォードは、こんなことをはなしました。 じどうしゃ ざいりよう 「自動車がこれからどんどんふえても、ほかの材料はみんなアメリカですぐまにあうの だか、ただ、ゴムだけがこまる。タイヤにつかうゴムか、いちばんしんばいでね。」 き き くさ エジソンはその話をきいて、ゴムの木いがいの木や草からも、ゴムがとれないものか とかんがえました。 ばしょ そこでエジソンは、北アメリカはもちろんのこと、中米、南米のいろいろな場所から、 ゴムがとれそうだとおもわれる植物をあつめ、それを、かたつばしから、しらべていっ て き ど つ み きた せいれんほう しよくぶつ ほうめん ちゅうべい なんべい はなし ひ 216
たのです。 けんきゅう げんき エジソンは、もう八十にちかい老人ともおもわれない元気さで、この研究を毎日毎日、 けんきゅうしよしよいん もくもくとしてくりかえしていくのです。研究所の所員たちは、はたしてゴムがとれる こころ ろうはつめいおう かとれないかよりも、この老発明王のしんけんな態度に、心をうたれてしまいました。 き くさ こうしてエジソンは、一万四千種もの木や草について実験をおこないました。ゴムカ とれそうなのは六百種で、じっさいにゴムエ業にやくだちそうなのは、ゴールデンロッ しよくぶっしゆるい ドという植物一種類だけでした。 くしんけんきゅうみ それでもエジソンはよろこびました。苦心の研究が実をむすんだわけです。そこで、 さいしゅう けんきゅうせいこう 「ゴムの採集の研究は成功にちかづいたゴールデンロッドから、しようらいゴムかと しげんもんだい られるようになるだろう。これをもとにして、ゴム資源の問題は解決できるとおもわれ はっぴょう と発表しました。 0 しゅ まん ろうじん しゅ こうぎよう じつけん かいけっ まいにちまいにち 217
1 」うせい カカくせ、ほ・つ はつめい ・もんだい もっとも、世界のゴム問題は、その後、合成ゴムという化学製法が発明されて解决し しようねつどりよく ましたが、それとはべつに、老エジソンの情熱と努力を、わすれることはできないので す。 発明王の晩年 エジソンには、いつごろから晩年ということばをつかってよいのか、こまってしまい ひと ます。ふつうの人ならば、六十さいぐらいから晩年といえるでしようが、このころのエ はつめい ちょうじんてきどりよく せいねんげんき ジソンはまだ、青年の元気さで、発明のために超人的努力をかたむけていたのです。だ じたいせん ばんねん しいご、つまり第一次大戦のおわったころ から、エジソンの晩年とは、おそらく七十さ、 からのちとかんがえたほうがよさそうです ひと よ 八十四さいまで生きる人は、世の中にたくさんいます。だか、エジソンのように、八 はつめいおう せ力い ばんねん ろう ばんねん 0 ばんねん かいけっ 218
4 世界の偉人 四十五メートル の大がま せいぞう 「へえ、エジソンが、セメントの製造をはじめるんだって ? て 「いくらエジソンだって、あんまり手をひろげないほうがよくはないのかな。」 「やつばり、もちはもち屋だからな。」 ゅうじん せいぞう 友人たちは、しんばいして、こうかたりあいました。エジソンが、セメントの製造を はじめるときいたからです。 でんとう それは、みんながしんばいするのもむりはありません。電灯にしろなんにしろ、エジ じぎよう はつめい せいぞう ソンの事業は、エジソンの発明にもとづいた事業だったのですが、セメント製造はふる期 せかい じん や おお じぎよう
ち、 はは はつめい かいく晩もねずに発明にうちこめた超 人的な体力は、このおじいさんからうけ のついだものにちがいありません ちち エジソンが生まれたとき、父のサムエ ルは四十三さい、のナンシーは三十七 さいでした。 カナダの拠師のむすめとしてそだった ナンシーは、たいへん教養のある、りつ きよういく ふじん ばな婦人でした。このおかあさんの教育 はつめいおう ジがなかったら、発明王エジソンは生まれ なかっただろうといわれるほどで、エジ じしん ソン自身も、いつもそうかたっています。 じんてきたいりよく ばん は きようよう ちょう
「はつはつは。 : ところでエジソンさんは、どんな方法がよいとかんがえられますか。」 すいちゅうちょうおんき 「やつばり、水中聴音機だろうな。」 「そうでしようね。わたしも、そうかんがえます。」 きんぞくせい すいちゅうちょうおんき クーリッジは、さっそく実験をはじめました。いろいろな金属製の水中聴音機をつ くって、ためしてみました。だが、なかなかうまくいきません。 ちょうしんき 「お医者さんの聴診器のようにいかないものかな。」 き きんぞくばん かん つぶやきながら、ふと気づいて、金属板のかわりに、、 しっぽうのはしをとじたゴム管 すいちゅうおと を、水中にいれてみました。すると、金属製のものよりもずっと、水中の音がよくきこ えてくるのです。 「ははあ、これだ。」 せんすいかんたんちき と、クーリッジは、すぐこれを応用して、潜水艦探知機をつくり、三キロメートルさき かいちゅうせんこう せんすいかんはつけん の海中を潜航する潜水艦を発見することができるようにしたのです。 すいちゅう しゃ じつけん おうよう きんぞくせい ほ・つほ・つ 207
おお 「大いそぎだよ。とくべつだいじなものだからね。」 っこい、なんにつかうものです ? 「え、これがですか ? 「そいつは、できたときのおたのしみだ。」 きかい レー ",Äには、 いくら首をひねってかんがえても、それがいったいなんの機械だか、クノ せつけいす けんとうもっきません。わけがわからないままに、設計図どおりにつくりあげて、エジ ソンのところへもってきました。 しよいん 「うん、よくできた。それじゃ、すぐ所員ぜんぶをあつめてくれ。重大発表をおこな エジソンが、まるで大統領のようなことをいいだしたので、みんなは、なにごとかと あつまってきました。 まえ 」カ、 えんとう み 見ると、きみような円筒に、らつばのついた機械を前にして、エジソンが、しかつめ かお らしい顔をしています。そして、おもおもしいちょうしで、 0 くび だいとうりよう じゅうだいはっぴょう 110
ものをいったら、おもしろいだろうな、とかんがえたものです にんぎよう また、姉のタンニーがかわいが 0 ていた人形は、だきおこすと、「ママー」といいまし たが、エジソンは、もっといろいろおしゃべりしないかなとおもいました。 ちくおんき そのようなおさない日のゆめが、いっかエジソンを蓄音機の発明へと、みちびいたの でしょ , つ。 ひとびと はつめい ちくおんき この蓄音機の発明こそ、「人々をよろこばせる」ということを心からねが「ていたエジ ソンにとって、ほんとうにまんぞくできるしごとだったにちがいありません。エジソン み ひと 、、ゝ、よによりもうれしかったのです。だから、エジソンの は、人がよろこぶのを見るのカナ どく たいほう 発明の中には、大砲だとか、ばくだんだとか、毒ガスだとかい「たおそろしいものは、 一つもありません。 はつめい はつめい ちくおんき また、蓄音機を発明して、それがほんとうにほこらしくおもえたのは、ほかの発明の ちくおんき ひと おおくが、人のし「ばいからヒントをえたものだ「たのに、蓄音機だけは、ま「たくエ なか あね はつめい 0 こころ
マッケンジーは、エジソンを、いつまでたっても子どもあっかいです。エジソンは、 にこにこわ , りっています。 「これを、あなたのへやまでひつばっていって、耳をあててみてください。」 「よしきた。、 ベルのやつをまかすんだな。」 じゅわき マッケンジーま、よゞ、 ( オカしコードをたらして、受話器をかかえてでていきました。エジ くち ソンは黒い小ばこについた、小さならつばに口をちかづけて、はなしかけました。 「もしもし、きこえますか、マッケンジーさん。」 エジソンが、そういったとたんに、もうマッケンジーが、とんできました。 みみくち 「すごいぞ、マイポーイ ! わしの耳に口をあててはなしたみたいだったよ。」 たんそそうわき エジソンの炭素送話器は、こうしてできあがったのです。 そうわき でんわ これは、いまっかわれている送話器とまったくおなじものです。そして、ベルの電話 えんきよりつうわ ニューヨークとフィラデルフィア、ニュ ではどうにもならなかった遠距離通話ー くろ こ みみ こ 104