こころ - みる会図書館


検索対象: 農と村に生きた尊徳 二宮金次郎
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1. 農と村に生きた尊徳 二宮金次郎

ころざしは、、 しよいよはげしくなっていました。 きんじろう 金次郎は、おじさんがこういう人ですから、ここにいるあいだに、心をきたえ、農業 こころ のぎじゅっをすっかりおばえてしまおう、と心をきめました。 み がくもん 学問も、しつかり身につ しかし、一家をたてなおすには、そればかりではたりない、 やぎよう けるひつようがある、とかんがえました。それで、夜業をすますと、まいばんおそくま ほん かながしら で、あんどんをひきよせて、ねっしんに本をよみました。まえにならった「仮名頭」や ふくしゅう だいがく 「実語教、などを復習し、「大学」もよみなおしました。 あるタがた、くらくなってから、のらからあがってきますと、おじさんが、炉ばたに きんじろう きちんとすわって、金次郎をまっていました。 きんじろう 「金次郎、ちょっとここへおいで。」 「はい どま きんじろう 金次郎は、土間にぎようぎただしくたって、頭をさげて、きくしせいをとりました。 じつごきよう ゅう か ひと あたま こころ ろ のうぎよう

2. 農と村に生きた尊徳 二宮金次郎

「なるほど。そのひまに、ひやくしようたちが死んでもかまわない、とお「しやるので すな。よろしゅうございます。使いのかえるまで、わたしたちはまっことにしましよう。 ただし、わたしたちも、ひやくしようとおなじように、なにもたべずにいましよう。」 じぶん そんとく 人のまごころというものは、つよいものです。尊徳の自分をわすれて、ひやくしよう こころ じゅうやく たちをおもう一念は、ついに、重役たちの心をうごかしてしまいました。 しろこめぐ・り お城の米倉はひらかれました。 かず このときにすくわれたひやくしようの数は、四万三百九十にもな「たということで す。しかも、小田原からは、一人もうえ死にをださなか「たのでした。 ねんにのみやそんとく 一八三七 ( 天保八 ) 年、二宮尊徳が五十一さいのときのことでした。 そんとく えど その年の三月、大久保忠真公は、江戸のやしきで、ついになくなりました。尊徳は、 しは - っそんとく おだわらはん ただざねこうゆいごん / 田原藩にも、桜町三か村でや「た仕法 ( 尊徳は、このような 忠真公の遺言にしたがい、ト たてなおしのやりかたを「報徳仕、とよんでいました。 ) をおこないました。 ひとり さくらまち まん そん 16 9

3. 農と村に生きた尊徳 二宮金次郎

とおくのへやヘはいってしまいました。 きんじろう かおいろ 波は、金次郎のしんばいげな顔色をみのがしませんでした。いそいで、まだ二つにな やたろう 弥太郎の妹のフミをだくと、あとからはいっていきました。 きんじろう すると金次郎は、とこの間をせに、うでぐみをしてかんがえこんでいましたが、 こりして、 「あ、波。フミがどうかしたのかね。」 やたろう やたろうひとり え。さきほどまで、弥太郎とおとなしくあそんでいましたが、弥太郎が一人でお もてへでましたので、あとをおって、ちょっとないただけでございます。」 「それならいいか。」 きんじろう このころ、金次郎とおくさんの波は、事業がむずかしく、あまりのつかれから、二人 とも、ほおがやせほそっていました。 こころ しんねん それでも心のおくには、もえるような信念がありますから、二人はそろってげんきな なみ なみ いもうと ま なみ じぎよう ふたり ふたり 1 4 6

4. 農と村に生きた尊徳 二宮金次郎

りえもん 「ほんとに利右衛門さんは、りつばなお子さんをおもちだ。」 りえもん きんじろう こころなか 村人から、こういわれるたびに、利右衛門はわが子ながら、金次郎に、心の中で、「あ きんじろう りがとよ、金次郎。」とかんしやするのでした。 みち りえもんむらたどうせんせんせい りえもん じつはいま、利右衛門は村田道仙先生からのかえり道なのです。利右衛門は、心もは ればれ、足もかるく、よろこびでむねがいつばいなのでした。 どうせんせんせい りえもん というのは、りちぎものの利右衛門は、たまりたまった道仙先生の医料をはらいに はんがく どうせんせんせい いったのですが、道仙先生がどうしても、半額の一両しかうけとってくれないのでした。 こころ はんぶん りえもん 利右衛門がよろこんでいるのは、先生が半分まけてくれたからではなく、心のそこか こころかんどう にんげん ら、人間のあたたかい心に感動したからです。 りよう りえもん 利右衛門が、医料のために、だいじな田地をうってこしらえた二両をもっていきます どうせんせんせい こういったのでした。 と、道仙先生は、まずさいしょに、 りえもん 「そんなにあわててはらってもらわなくてもいいのですよ。わたしは、利右衛門さんが、 むらびと あし せんせい でんち りよう こ りよう りよう こころ

5. 農と村に生きた尊徳 二宮金次郎

ますぐ、それをひらくのです。 との 「たわけたことをもうすな。お米倉は、殿のおゆるしがなければ、ひらくわけにはいゝ ぬのですぞ。」 「それは、わたくしにもわかっております。けれど、お城のためにだいじなひやくしょ じ きゅうば じゅうやく うたちが、いまにもうえ死にしようとしているときです。急場をすくうために、お重役 こめぐら との との がたのそうだんで、お米倉をひらきましても、殿さまはおいかりにはなりますまい。殿 さまは、ひやくしようたちをしんばいなされて、心をいためられておいでです。さ、さ、 まよっているときではありません。いますぐ、ひらきますよう。 じゅうやく そんとく こころ 重役たちは、尊徳のあまりのねっしんさに、心がすこしうごいたようでした。 えどはや との 「それほどまでにもうすなら、これから江戸へ早かごをしたてて、殿にうかかい、おゅ るしがでたら、ひらくことにいたそう。 そんとく かお 尊徳は、むっとした顔になりました。 こめぐら こころ しろ 168

6. 農と村に生きた尊徳 二宮金次郎

だろうと、それをたのしみにまちました。 きんじろう 、つばう、金次郎の心をおもうと、やはり、お父さんのよわっていることをしらせた し一」と くないのでした。お母さんは、この心のなやみを、のら仕事にいっそうせいだすことで まぎらせていました。 きんじろう ともきち 金次郎は、もう九さいになっていましたから、友吉のあそびあいてのかたわら、畑の ほうのてつだいもはじめていました。たいかくもよし、うで力もつよかったので、お母 さんは大だすかりでした。 とおか お父さんは、まだ十日もやすまないうちに、わたしもあすから畑にでよう、といいだ しました。それをお母さんは、 っしようけんめいとめていたのでした。 とう きんじろう ところがある朝、お父さんがにこにこしながら、金次郎にいいました。 とう 「さあ、お父さんも、すっかりからだがやすまった。きようは、お母さんにほねやすみ はたけ させて、おまえと二人で畑にでよう。 と・つ おお あさ ふたり かあ あ こころ こころ と・つ ちから はたけ かあ はたけ かあ

7. 農と村に生きた尊徳 二宮金次郎

こころ きんじろう お母さんのながしたなみだは、そのくやしなみだと、金次郎の心のうちをさっしたな囲 ひと みだと、二人の子に、人なみに大かぐらがみせてやれないなみだの、三つのなみだだっ たのです。 こうしたかなしみが、まだわすれきれないうちに、野にも山にも、春がおとずれてき ました。せめてたのしい春の野で、一家は、心のきずをなぐさめていたのです。 と・つ そがべっしょむら かあ ところがある日、お母さんの実家である曾我別所村の家から、お母さんのお父さんが かわくば きんじろう なくなった、という知らせがきました。金次郎には、おじいさんにあたる人で、川久保 たへえ 太兵衛といいました。 ひきんじろう 三月二十四日がおそうしきの日で、その日、金次郎たちは、一家四人そろって、川久 保家へいきました。 おも 、、よさけよい思いをさせら そうでなくてもかなしい日なのに、ここでまた、くやしし きんじろう にんみ れました。金次郎たち四人の身なりが、あまりにみすぼらしいというので、おそうしき かあ がっ ふたり こ かあ はるの じっか こころ やま かにん はる ひと かわく

8. 農と村に生きた尊徳 二宮金次郎

なかいことかかた川ぶしんも、ようやくおわりにちかづいてきました。 しごと りえもんびようき このころになって、利右衛門の病気はきゅうによくなり、仕事はまだむりでも、外あ るきぐ , りいは、す一こしできるよ , つになりました。 りえもん 村人は、利右衛門のすがたをみかけると、そばへよってきては、 にち きんじろう こんなことがいく日かつづくうち、しぜんと人々は、それが金次郎のやったことだ、 としるよ , つになりました。 きんじろう 人々はわらじのわけがわかり、金次郎のまごころにかんげきしてしまいました。そし て、その気持ちだけでけっこうだから、もうわらじをつくるのはやめて、はやくねて、 きんじろう からだをやすめるように、とみんなで金次郎をいさめました。 こ - っこ・つざけ 孝行酒 むらびと ひとびと かわ ひとびと そと

9. 農と村に生きた尊徳 二宮金次郎

きんじろう それにしても、十八さいともなった金次郎のたいかくは、じつにみごとなもので、ゆ うゆうと、ふりあげふりおろす、大きなきねは、すこしもおもそうにみえないのです。 さくおとこ はんぶん こころ きんじろう 作男たちは、ロではからかい半分にさわぎたてましたが、心のうちでは、金次郎には とてもかなわない、とおそれいったのでした。 くち おお 120

10. 農と村に生きた尊徳 二宮金次郎

と・つ 「ほんと、お父さん : ・・ : ? うれしいなあ、お父さんといっしょにでるの、ひさしぶり だね。」 ないしん かあ お母さんは、内心はっとしましたが、もうとめられませんでした。 っしょにでるよ。 「わたしも、 とも」ち 「おまえはほねやすみだ。そのかわり、友吉をみていてくれ。」 とう 「そうだ、そうだ、お父さんのいうとおりだ。 と・つ きんじろう 金次郎が、こんなによろこんだのは、お父さんと畑にいっしょにでるうれしさはもち おお ろんですが、お母さんをやすませてあげるよろこびも大きかったからです。 とう にち きんじろう ところで金次郎は、その一日で、お父さんが、ことのほかよわっていることをみぬい てしまいました。 しませんでした。ただ自分で、そうおもっただけで、 しかし、このことは、だれにもい、 こころ きんじろう 金次郎は、あることを、しつかりと心にきめたのでした。 かあ はたけ じぶん