そうじゅん もんぜん 宗純は、はじめたずねて、はっきりことわられると、ゆるされるまで門前でまっこと こころ を、いにきめました。 かそう こんき 華叟とじぶんと、どっちが根気がいいカ そうじゅんよる こすい ふねなか 宗純は夜になると、湖水にうかんでいる船の中でねました。そして、朝になると寺の もんぜん 門前に出かけていきました。 にち こうして、四、五日がすぎました。 あさそうじゅん てら もんぜん ある朝、宗純はいつものように、寺の門前にいました。すると、華叟がでしをつれて そうじゅんみ 出てきました。宗純を見ると、 お 「このまえのばうず、まだいるな。水をぶつかけて追いはらえ。」 で そういって、出かけていきました。 そうじゅん お おも でしたちは、ほんとうに水をもってきて、宗純にぶつかけて追いはらおうと思いまし そうじゅん たが、宗純は、そんなことにはおどろきません。で、水をかけるほうが気がひけて、 で で みず みず みず かそ・つ あさ てら
一休さんは、そこで、すだこをうんと食って出かけました。出かけたさきがある檀家 いっきゅう で、ここでまた、一休さんは酒をうんとごちそうになりました。 ( しオオカカ , り、たこか出 そして、一休さんは、とうとうはいたのです。ところが、ま、こよゝゝ てきたからたまりません。 ひとびとおも 人々は思わず、 で で 「たこが出た、たこが出た。」 とさけびました。 「このなまぐさばうず。」 と、おこる人もありました。 しかし、一休さんは、そんなことにはおどろきませんでした。 くち た で 「いや、わたしは、たこは食べなかったのだが、ロから出たのだ。けっしてたこなんか た 食べはしなかった。ほんとうに食べなかったのだ。」 た いっきゅう ひと いっきゅう いっきゅう で で だんか で
おと みかわくにやつはし 音にきく三河の国の八橋は たばかりありてかきつばはなし み しんざえもん 新左衛門は、それを見てわらいました。 「いまは、かきつばたのさくときではありません。」 「そうか、かきつばたには、ふだんざくらのようなのはないのか。」 ふたり 二人はわらいました。 ある ふたり 二人は、のどかに歩きまわって、とうとう福井のほうまで足がむくにまかせて出かけ ちから しんざえもん ましたが、ここで新左衛門は、へんに力がなくなりました。 しんざえもんかおみ 一休さんは、新左衛門の顔を見て、 「どこかわるいのではないゝ。 いっきゅう あし で 141
負けた一休さん りよこ・つ 一休さんは旅行がすきでした。よくほうぼうへ出かけていきました。 りよこう あるとき、旅行して、いなかの、とあるそまつなお寺にとまりました。一休さんはど しよくじ だ っこ , つにヘ んなところにとまろうが、また、どんなそまつな食事を出されようが、い きでした。 それは、一休さんは、もっとくるしいめにもさんざんあっていましたし、また、そん キ一 なことを気にするような男ではなかったからです。 いっきゅう 一休さんはどんなところでも、ぐっすりねむることができました。 し し ひとあ 一休さんは、知らないところで、知らない人に会って、知らないところにとまること にんげんあ いっきゅう がすきでした。どこでも、一休さんはいい人間に会うのでした。 いっきゅう いっきゅう ま いっきゅう いっきゅう おとこ で てら し いっきゅう 109
「それならひとつ、わたしがいってなおしてあげよう。」 「わざわざきていただいては、おそれいります。」 「なあに、どうせひまなのだから、かまわない。」 きがるな一休さんは、そのまま、その男とそとに出て、さかな屋の前をとおると、かれ いを四つ買わせて、それをみやげにして、そのおやじのところへ出かけていきました。 きぶん おやじは、かれいを四つもらったので、すっかり気分をわるくして、ぼうずが一休さ かんが あたま んだということも考えずに、頭からむすこをどなりつけました。 「こんなえんぎのわるいみやげをもらうやつがあるか。すぐおかえししろ、おかえしし れいぎ ろ。四つよこすなぞとは、礼儀を知らないにもほどがある。」 いっきゅう そこで、一休さんはにこにこして、かれいをしまいながら、 ししました。 おも かえ 「なにごともよかれと思ってきたのですが、お気にいらなければ、もって帰りましょ いっきゅう おとこ やまえ いっきゅう 106
ほんゅび かめがくると、一休さんは、かめの甲を二本指でトントンとたたきました。すると、 くび かめは首もしっぽも足もひっこめました。 いっきゅう そこで、一休さんはいいました。 あたまだ 「手を出すな、頭を出すな、足出すな、しっぽを出すな。六をかくしてかめは万年。」 「ありがとうございます。」 ろくぞう 六蔵はありがたがって、頭をさげました。 一休旅ごろも りよこう その後、一休さんは、蜷川といっしょに、ほうばうを旅行しました。 ふたり せさんぐうで そして、一一人は伊勢参宮に出かけました。二人はのんきなことをいって、歩いていき ました。 いっきゅうたび ふたり いっきゅう いっきゅう あし にながわ あたま あしだ だ ある まんねん 137
かねしなもの また、一休さんは、きたない身なりをして、おふせ ( ばうさんに金や品物をあたえるこ 去」にちし いえせんぞ かねも ある と ) をして歩いていました。そして、ある金持ちが、その日、その家の先祖の忌日 ( 死ん だ日とおなじ日づけの日で、供養をする日 ) にあたるので、ぼうずたちにふるまいをしてい いえまえ るので、一休さんも、その家の前に立ちました。 かみはんせん おも すると、その家では、こじきばうずと思ったので、一まいの紙と半銭をあたえて、追 いかえしました。 一休さんは、そのつぎ、その家で法事のあったとき、りつばなころもを着て出かけま こんどは下にもおかないように、ていねいにもてなされ、家にあげられて上席にすわ らせられ、おおいにごちそうされました。 つらには人を生かすことはできないのじゃ。」 いっきゅう ひと いっきゅう いっきゅう した くよ・つ し - んほ - つじ じようせき
こ - ん だが、そのえびもっかれて、大きなほらあながあったので、はいって休むと、声が あって、 『わたしの耳にはいってきたものはなんだ。早く出てくれ。』 こんどは、えびがおどろいた。それは、かめの耳だった。 かえ こんどは、そのかめが南極を見に出かけたが、さて、そのかめもまだ帰ってこないそ うだ。まだ南極にはつかないのだろう。」 でしたちはおどろきました。一休さんはうれしそうにわらいました。 おも 地上や海は、一休さんが思っているほど大きくはありませんが、しかし、宇宙はとて そうぞう も想像がっかない大きさです。 そして、それがまた、さいごではないでしよう。もっとそのほかのものがあるはずで にんげん す。人間どうしのあらそいが、どんなに小さいことであるか、だれもほんとうには知ら ちじよううみ なんきよく みみ いっきゅう おお なんきよくみ おお いっきゅう で おお はやで みみ やす うちゅう し
こえ 鴻もっかれて、海のまん中に大木が出ているので休んだ。すると、下のほうから声がし 『わたしのひげにとまるちびは、なんという鳥だゞ たいこう 大鴻はおどろいていった。 たいこ・つ おも 『わたしは北海にいる大鴻という鳥で、南極を見ようと思って、はるばるとんできたの やす です。そして、つかれて休んでいるのです。しかし、この大木はあなたのひげだったの ですか。あなたはどなたです。』 『わたしか。わたしはここで、むかしからすんでいるえびだが、わたしでさえまだ南極 を見ることはできないのだ。おまえが見ようなんてなまいきだ。』 かえ 大鴻はおどろいて北海に帰った。 こんどは、えびが南極に出かけることになって、とぶわ、とぶわ、一とびにどのくら そうぞう いとぶか、想像いじようだ。 こ・つ ほっかい うみ ほっかい なんきよく なかたいばくで とり なんきよくみ やす たいばく した ひと なんきよく
たことを光栄に思い、一休さんがじぶんたちの村にすむことをほこりにしました。 それには、また、それだけのわけがあ「たのです。 かえ こうやさんで 何年かまえのことでした。一休さんが高野山に出かけて帰 0 てくるとちゅう、この薪 のうみん 村にかか「たとき、おおぜいの農民が、ほらをふき、かね・たいこをたたき、たけやり であ や、くわや、すきをもって、や「てくるのに出会いました。 ひとびとさっき 一休さんは、その人々の殺気だ「ているのを見て、ききました。 「どこへいくのだ。」 だいかんはらさこんころ だいかんしょ 「これから代官所へいって、代官の原左近を殺すのだ。」 のうみん と、農民はいいました。 ころ 「なぜ殺すのだ。」 「あいつを生かしておいては、わたしたちはどんなめにあうかしれないのです。ゆるし ておけない男なのです。」 おとこ むら たきぎ 18 3