えさだけは十分に入れておくように、気をつかっておきました。 わたくし なか よくあ・さ はやお さて翌朝、早起きした私は、このしかけの中に、モグラかうまく入っているよう ざんねん すがたみ ねん にと念じながら、そこにとんでいきました。ところが残念ながら、モグラの姿は見 きけん よ′、じっ よくじっ られませんでした。翌日も、またその翌日も、だめでした。どうやら、モグラは危険 かん けいえん を感じて、敬遠したのでしよう。 けいせき そのあとのようすから、モグラは、このびんのまわりを歩きまわっている形跡はあ せいこ、つ りました。でも、生けどりは、どうも成功する見こみがなさそうなので、とうとう 6 、つ工、つ こんま わたくし とおか かんぜんしつばい 私も根負けして、十日であきらめてしまいました。この方法は完全な失敗でした。 じぶん しいくかんさっ 私としては、飼育観察をしたことをもとに、モグラか一日に、自分でつくったト おうふく ンネルを何回も往復すること、そして、モグラがはいあがれる高さとか、一日に食べ . り・よ、つ てき かんカ るえさの量などを考えて、自信をもってやってみたのですが、 " 敵もさるもの。と いうわけでした。 ねん モグラは、年に一、二回、それも、ぐうぜんのチャンスにしか、生けどりができな しいくかんさっ いものと、半ばあきらめていました。しかし、モグラを飼育観察しているうちに、こ わたくし なんかい じゅうぶん なか じしん み あ
えいせいてき っちなかおんど じめんちか きわめて衛生的なところです。つまり、土の中の温度は、地面近くでなければ、あま ちかてつ ふゅあたた かん にんげんちじよ、つ りかわりません。地下鉄が、夏にすずしく、冬は暖かく感じるのは、人間が地上の 動物だからです。 す れいだんほう ひろていえん モグラの地下の住みかは、冷暖房がそなわっていて、しかも、広い庭園のある人間 こ、つきゅ、っていたく の高級邸宅のようなものです。 やカい みちじようぶすいへい 実さいに野外では、モグラが地面にもりあげる、あのうねうねした道 ( 上部水平 よ、つき一 はるあき ちひょ、つ さむふゅあいた 坑 ) は、陽気のよい春と秋だけに見られます。地表がこおる寒い冬の間や、地面の あつまなっ ちかふか ていたく やけるような暑い真夏には、モグラは、 : しここちのよい地下架、〃に 、冫し氏宅〃の近くです しいくばこ ごしています。ですから、地上でモグラを飼うときは、飼育箱の中が、いつも一定の おんど おんど 温度になっているようにしなければいけません。夏はアイスノンなどで温度をさげ、 ふゆでんき あたた おんど かんり 冬は電気アンカで暖めるなどして、温度の管理 ( ほほ二〇度にする ) をします。 す ちちゅうひ 飼っているモグラに、巣をつくらせてみました。わらを地中に引きこみ、かみくだ 亠りよ、つ亠ノ、 ちょうえんけい きます。そして、わらをあむようにして、ほほ長円形 ( 長径一四センチメートル、 たんけい 短径一一センチメートル ) の巣をつくりました。 どうぶつ ちじよ、つ なっ じめん なっ
世界こほこるニホンモグラ につほんけ・ん医」ゅ、つか につほん力いこく ニホンモグラは、シーボルト ( ドイツの医者で、日本の研究家として、日本を外国 まえ 1 ) よ、つ・刀し ねん に紹介した人 ) によって、採集されました。今から一四五年ほど前の一八四二年 てんほう じだい ねん だいしよ、つぐんとくカわい、んよし ( 天保十三年 ) 、十二代将軍、徳川家慶の時代のことです。そのころ、日本にきてい よこは亠ま おく たシーポルトが、横浜でつかまえたものです。そして、このモグラは、オランダに送 めいめい がくえんとし はくぶつかんちょう られ、テミング ( 学園都市ライデンにある博物館長 ) によって命名されました。 ほぞん げんざい はくぶつかん たいせつに保存されています。 現在でも、ライデン博物〈呂に、 よこはまこ、つ よこはまちい ぎよそん ねんまえ げんざい とうぶ かながわ 今から一四五年前といえば、横浜は小さな漁村で、現在の横浜港の東部の神奈川 よこはまさん 、つみ 地区あたりの、海べりのごくせまいところにも、モグラがいたのです。この横浜産の カくもんうえ モグラが、日本代表のニホンモグラ ( アズマモグラ ) です。そして学問の上からも、 よこはま きさんち ニホンモグラの基産地は、横浜であるとされています。 ッヾこよ、ヨ 1 ロ 一方、ヨーロ ハモグラという一種類がいます。 つば、つ せかい につほんだいひょう ひと さいしゅ、つ しゆるい につほん ねん
4 モグラの行動 えいびん かん しよっかく ちょうかくえいびん モグラは、聴覚も鋭敏ですが、体毛で感じる触覚がとても鋭敏です。それは、 ち - ゅ、つ しんどうす、つすく ぶったい なか 野外のトンネルの中では、振動数の少ない物体 ( ミミズ、こん虫の幼虫など ) の動 かん おお しんどう き ( 震動 ) を、体毛で感じることが多いからです。 じつけん こんな実験をしてみました。 しいくばこそこ あっ 飼育箱の底に、厚さ三ミリメートルのガラス板 ( 三七センチメートル x 五五センチ に、シャーレ メートルのもの ) を一枚しいておきます。このガラス板のどこか なか ちょっナい ( 直径六センチメートル ) をふせておき、その中にオンプバッタを二ひき入れます。 そこにモグラを放しますと、モグラは、シャーレをのけて、バッタをつかまえて食べ ます ( ページの絵 ) 。 し しゅ、つかく あき ッタのいることを、臭覚で知ったのではなく、 これは明らかに、モグラか、ハ し じつけん おな おと ちょうかくしんどう ノタがはねる音を、聴覚と震動とによって知ったものです。同じような実験を、ミ しんど、つ けつかおな ミズでやってみました。結果は同じでした。やはり、震動によって、ミミズかいるこ し とを知ったのです。 おと かん ごくふつうには、「耳」といえば、音を感じとる働きをするもの、と考えるのか やカい たいもう え みみ たいもう はたら よ、っちゅ、つ かんが 、つご
きそ 動物のことを、いろいろ研究するときに、いちばん基礎となるのは、その動物を かんさっ よく観察することです。 ・かん、よ、つ す それによって、動物たちが、その住んでいる環竟こ、 エナしいかによくかなった体のつ せいふっしんか しゅ、っせい くりや、習性をもっているカか、わかるでしよう。また、生物の進化ということか へんか らみても、動物自身が、たえず、まわりのあらゆる状况に、うまくあわせて、変化 せいかっ しなから、たくましく、い きいきと生活をつづけている、そのたくみさが、よくつか めます。 おんど むせいぶってき しぜんかい 自然界のなかで動物は、外界の温度、光、水、土、といった無生物的な条件にあ こうさん てき かん一よ、つ す わせて、よく適した環境をもとめて、住みわけています。そのはんいは、高山、 ひろ うみ かせん さんちへいげんたはた 山地、平原、田畑、砂漠、河川、海と、たいへん広いものです。 かん、よ、つ どうぶつ せいふってき また動物は、生物的な環境のなかで生きています。つまり、ほかの動物・植物と どうぶつ ま、んが ~ さ どうぶつじしん どうぶつ どうぶつ け・ん」ゅ、つ ひかりみすっち ド ) よ、つ」よ、つ どうふっしよくぶつ じよ、つけん からだ どうぶつ
いことです。なぜでしようか。 しよくぶつは まず、モグラのえさのミミズのことを考えてみましよう。植物の葉は、日光のエ / 、、つ、十っゅ、つ にさんかたんそ ネルギーによって、空気中の二酸化炭素と、根から吸いあげた水とで、でんぶんを しよくぶつ あき つくります。このことは、植物の葉そのものができることでもあります。秋になっ ちじよ、つお て、その葉は地上に落ちてたまり、くさります。それをミミズが、えさとして食べて そだ えいようぶん 育ちます。そのミミズを、モグラが食べて、自分の栄養分としているわけです。 たいよう しよくぶつ つまり、モグラは、太陽のエネルギーを、植物とミミズから受けついで、とり入 たいよう しよくぶつは れ、生活していることになるのです。「太陽エネルギー↓植物の葉 ( 落ち ) しせんかい しよくもつれんさ ズ↓モグラ」というつながりを、自然界の食勿連直と、 序 1 、《工しいます , たいようちよくせつ もんだい つぎに、モグラが、太陽と直接ともいえるほど、かかわり合っている問題があり おんど おんど へんかふか かんけい せいかっ ます。それは、温度のことです。モグラは、温度の変化と深い関係をもって生活して 動 たいきっちみすあたた ねっげん たいよう います。大気や土、水を暖めているもととなる熱源は、太陽エネルギーの八〇パ 1 の ふくしゃねっ っちなかおんど グセントにあたる輻射熱なのです。つまり、モグラの住みかである土の中の温度は、こ ふくしゃねっ あたた おんど ひく の輻射熱によって暖められたもので、その温度が高いか低いかによって、モグラは四 せいかっ かんが じぶん 0 みず こっこ、つ
力いしゅ、つ てん しては、放したモグラを、また回収できるといういい点かありました。 また、あき箱の中に大きな石ころを入れて、モグラを放してみますと、一ー二キロ はなさ医」 がんせき グラムの石ころは、鼻先でいともかんたんにおしのけます。三 5 四キログラムの岩石 かたてオーケー すわ がんせき は片手で。しかも、座りのわるい三・五キログラムの岩石では、その下にもぐり とお こんで通りぬけます。 ちょっけい ふか こんどは、直径三〇センチメートル、深さ二〇センチメートルほどのバケツに、 っちひょうめん あいだ 四キログラムほどの土を入れました。土の表面とバケツのふちとの間は、五センチ ′、、つ・かん おも メートルくらいの空間ができます。このバケツにモグラを入れて、木のふた ( 重さ一 キログラム ) をします。そして、ふたの上に一・五キログラムと一一キログラムの重し ご、つけい おも をのせます。合計四・五キログラムの重しとなるわけですが、モグラは、それをやす おも やすと、はねのけてしまいます。さらに、重しを七・五キログラムにしてみます。こ じかん んどは、時間をかけてがんばり、最後は、ふたをずらして、バケツから逃げだしてし まいました。 い・ご . り・よ、つ たしかに、トンネルをつくるには、たいへんな力量がかかるものです。モグラは、 っち 、つ、ん
こうせん そうあんせい す。そして、土の中にまで、光線はとどきませんから、モグラには、走暗性、負の せいしつ 走光性といった性質はないのです。 モグラの目は、まぶたが切れていないので、たしかに、ものを見ることはできませ けひろ ど、ろがんき一ゅ、つ んが、目のまわりの毛が広がっていて、小さな一ミリメートルたらずの黒い眼球の そと ひかり ほ、つこ、つひかりつよ 位置が、皮ふをとおして外から見えます。ですから、光の方向や光の強さくらいは、 おも わかるのではないかと思われます。 じつけん そこで私は、モグラに、光をあてる実験を、いろいろやってみました。 しやしんさっえいようつよ ちひょう へいき 写真撮影用の強いライトをあてても、平気で地表にでてきますし、夜、三〇ワット くら けいこ、つと、つした おな かつどう の蛍光灯の下でも、まっ暗なところと同じように活動するのです。 かん あか ガラス管にモグラを入れて、四〇〇〇ルックスの明るい場所におき、ガラス かん へいき かん 管ごしに、すぐそばでのぞいても、平気でいます。こんどは、ガラス管に入れたモグ / 、ら おと でんきゅう ラを、暗いへやにおいて、音をたてないようにして、六〇ワットの電球を、モグラ てんめつ くら あか に点滅 ( つけたり消したり ) してみました。しかしモグラは、明るくなろうか、暗く ひかり はんのう なろうと、なんら光には反応しませんでした。 そ、つこうせし わたくし っちなか ひかり よる
ちか さらに、地面に近い、地下一〇 5 一五センチメートルのところを走るトンネルをつ し一」、つ じめん じようぶすいへ、 います。このトン くります。これが、地面にもりあがるトンネルで、上部水平坑と、 じゅ、つよ、つ ネルが、モグラの生活にとってもっとも重要な、えさをとる場所となるのです。 まえ はなし じめんちか っちなか しよくぶつお というのは、前にお話したように、地面近くの土の中は、植物の落ち葉、かれ葉、 ぶんかい ふしよくしつ かれ草などが分解されて、腐植質がつくられるところだからです。そこに、 むしよ、っちゅ、つ ねき いろいろな虫の幼虫などが集まり、モグラのえさとなるのです。もちろん、根切り 力い物っゅ、つ にんげんさま 虫などの害虫もたくさん食べていますが、人間様にとっては、どうしてもモグラた しばふ たはたていえんあ ちは、田畑や庭園を荒らすことになりますので、かれらはにくまれます。また、芝生 ほんど、つ つか などで見かけるモグラの塚は、本道を掘った土を、地表におしだしてできたものです。 ド」よ、つ さいきん これなども、最近とくに、ゴルフ場などで、とてもきらわれています。 ばくねした ちかふか なんといっても、モグラの巣は、地下の深いところにつくられます。大木の根の下 ちか ふか くさあっ ちかすい など、地下水の近くにまで深いところに、かれ草を集めて巣のへやをつくります。 いってい ねんかんおんど っちなか グ地下二メートルの土の中というと、まず、年間の温度が一定 ( 一 , 5 二〇度 ) である きん むきんじようたい いってい しつど ばかりでなく、湿度も一定しています。しかもバイ菌などのいない ( 無菌状態の ) むし じめん せいかっ あっ っち ちひょう
と、つみん ふゅ す。つまり、冬眠によって冬をすごすわけです。 ふゅ コウモリは、冬になると、えさにしているこん虫類かいなくなるので、木のうろ なん あなやね とか、ほら穴や屋根うらなどに姿をかくします。そして、何びきもの集団をつくっ とうみんあいだ て、かたまったままじっと春のくるのを待ちます。冬眠の間は、夏の間にたくわえ こ一ゅ、つ けっえき しま、つ た、体内の膰肱によって生命をたもっています。呼吸や血液のじゅんかんは、ゆっく たいおん りと行われ、体温は五度までにさがります。 ほにゆうどうぶつ ふゅ とうみん また、このような冬眠によって冬をすごす哺乳動物に、ヤマネがいます。ヤマネは、 こ、っち ほんしゅうちゅ、つぶ こつほんとくさんちい 印本特産の小さなけもので、本州の中部にある高地 ( 八〇〇 ~ 一八〇〇メートル ) しんりんき うえせいかっ の、森林の木の上で生活しています。リスにちょっとにていますが、リスよりもはる よよひろこっ しよくすじとお ちゅうおう せなか 」型です。背中の中央に、幅の広い黒かっ色の筋が通っている、とてもかわい かにハリ、 どうぶつ らしい動物です。 こレトり・ すみやきごや の、つ・か ふゅちか 冬近くになると、山のふもとの農家の屋根うらや、炭焼小屋に下りてきたり、小鳥 とうみん とうみん すばこ の巣箱に入り冬眠をします。このときヤマネは、丸くマリのようになって冬眠するこ ゅうめい とで有名です。 おこな ーーし やま せいめい はる すがた まる ちゅ、つるい お なつあいだ しゅうだん