1 モグラの特色 トンネル用の体 ぜんしんかたち モグラの全身の形は、それはもう、体のすみずみまでが、トンネル掘りに適する ようにできていて、たやすく土を掘れるようになっています。 はオよさ医」 せんしんえんとうけい 全身は円筒形をしていて、太くがんじようで、くびはないように見え、鼻は先がと ぜんたい がり、全体として、くさび形をしています。 さ医一 くち はなさ」 み ぜんはんしん さらにくわしく前半身を見ますと、長くつきでた鼻先は、ロより先にのびていて、 じようめん あっかわば じようぶで、しかも、しなやかによく動かせ、その上面に、厚い皮張りになってい すき つか ぶぶん る部分があります。この鼻先で、畑のやわらかい土などは手を使わないで鋤のよう はなさ一 あたま えんすいけい にもちあげ、たやすくトンネルを掘ります。この頭から鼻先までは、円錐形をして はさ医」 どへきあな てつどうよう いて、ちょうど鉄道用のトンネル・ボーリングマシンの、土壁に穴をあける刃先に、 にています くら こうせんとお っちなか 土の中のトンネルは、光線を通さないのでまっ暗ですから、目は使うことがないた 0 よ、つ ふと っち からだ なが からだ っち て めつか み てき
3 モグラの生活 、つえお っちなか 上に追いだされます。一一度と、土の中にもぐろうとはせず、ただ、土の上をあちらこ せんじゅうしゃ ちら、逃げまわっています。先住者のモグラが、その箱によくなじんでいればいる せんじゅうしやお ゅ・、つい ほど、先住者は落ちついていて、優位に立つようです。 ど、つじ また、二ひきのモグラを、同時に一つの飼育箱に放してみます。すると、たがいに はちあ はばひろ あちらこちら動きまわり、なじみません。鉢合わせすると、たがいに、あの幅広い手 あいて しいノ、ばこ うつ で自分のほおをおおい、相手をさけて、つしし。 ) こよ、飼育箱のべつべつの場所に移りま そして、そのあとは、えさをたつぶりあたえてあっても、はげしい戦いとなりま ぶぶん ゃぶ す。しまいには、弱いほうのモグラは、のどの部分などをかみ破られて死んでしまい ます。つまり共食いとなります。 しよくちゅ、つるい すがた 食虫類は 、小型のものが多いけものですが、姿に似合わず、どうも気があらい きた にんげん ようで、モグラでも、人間にかみつくことがあります。北アメリカのトガリネズミの どくせん なかには、毒腺をもっているものがいるそうです。 しめ モグラは、野外では、なわばりのまわりに、そこが自分のなわばりであることを示 じぶん やカい よわ おお じぶん っちうえ
4 モグラの行動 、刀学に くち いきおいよくおそいかカり、ロでとらえてしまいます。 ②ミミズを、ケント紙 ( 一七四センチメ 1 トル >< 一二〇センチメートル ) の上に、 じゅ、つ たいえき かみ、つえ 片すみから、自由にはわせます。紙の上には、ミミズのぬるぬるした体液がついて、 はなさ、 かみ、つ、えはたよ あとが残ります。モグラを、この紙の上に放しますと、ミミズがはったあとを、鼻先 でかぎわけながら追 ) し、ミミズをさかして歩き、とら、んます。 て医」と、つ うしぶたあ ③飼育箱の土の上に、適当に、コオロギの死がい、牛と豚の合いびき肉、サツマ ィモのかけら、八つ切りにしたカキのひと切れをおきます。モグラは、コオロギの死 しよくぶっしつ かいと、ひき肉だけを食べ、植物質のサツマイモとカキは食べません。 えき みず ④五〇〇 3 の水に、クレゾ 1 ル石けん液五 3 をとかしたものを、一〇キログラム しい ~ 、ばこひと っち の畑の土にまぶします。その土を飼育箱の一すみに入れておくと、その場所には、 モグラは入りこみません。 とお ちか てき ほにゆうどうぶつ ふつう、哺乳動物は、においをかぎわけることで、遠くから近づく敵を知ったり、 とお おすめす えものをかぎつけたりします。また、遠くから、雄が雌のいるところを知ったりしま はたけっち のこ っち、つえ 、つ、え
さてモグラは、やはり、りつばな体毛をもっている「けもの」で、食虫類と呼ば - 」、つ A 」、つ まにゆ、つい 、んぎ一よ れる、高等な哺乳類の一種です。ですから、金魚やミミズのように、日にあたったく し らいで、そうかんたんに死んでしまうことはありません。 っちなかす モグラは、土の中に巣をもち、そこでえさをさがして食べ、生活のすべてを地中で ちちゅ、つ かん」よ、つ と′、しゅ かんぜんてき ) 」う しんか いとなみます。地中という環境に、 完全に適合するように、特殊に進化した動物な のです。 ちょ、つわ では、そのモグラが、土の中でうまく調和して生きられるのは、体が、どのよう と′、ー ) ゅ し特殊なっくりに、なっているからなのでしようか まにゆ、つるし どうぶつがく ちよくりつにそくほこ、つえん で、まぎれもない哺乳類です。動物学の上では、ヒトは「直立二足歩行猿」という、 さる 猿の一種なのです。 いっしゅ っちなか たいもう 、つ、え せいかっ からだ しよくちゅ、つるい どうぶつ ちちゅう
かまえることがむずかしいものといえましよ、つ。 わたくし そこで私は、もっとうまくモグラを生けどる方法はないものかと考え、はじめ、 つぎのようなことを試してみました。 ちかやく モグラが、うねうねともちあげている畑のトンネルを掘って、その地下、約一〇 こ、つと、つ ちょっナい ふか センチメートルの深さのところに、直径五センチメートルたらずの、みごとな坑道 を見つけました。これは、モグラが、えさをあさるための通路で、そこを、モグラは、 おうふく にちなんかい 一日に何回となく往復するのです。 ふか ちょっけ、 - ゅ - 、つ、カれ」 そこで、夕方、このトンネルの下に、直径一〇センチメートル、深さ三〇センチ すいちよく ひんの中には、えさ ( ミミズ、 メートルのガラスびんを、垂直にうめこみました。、、 じめん よ、っちゅ、つ コガネムシの幼虫 ) を入れます。そして、地面にスレートやかわらをおいて、その 上から土をかけて、トンネルの中が暗くなるようにしておきました。 こうしておけば、モグラがやってきて、びんの中のえさに気をとられて、びんに入 ふか かんが ると考えたのです。そうすれば、深さが三〇センチメートルあるので、はいあがる よくあ・さ ことができなくなります。そして、少なくとも翌朝までは、うえ死にしないように、 ため ュ、つ、つ つ、つろ かんが
しいくばこ っちなか いるモグラのえさとしてあたえます。飼育箱の土の中に、ミミズをうめこんでおくと、 かつどう モグラがそれを知って、活動しはじめます。すると何びきかのミミズは、土の上に逃 げだしてきます。 こうして土の中で生きていくには、たいへんなエネルギーの量が必要です。そこ おお でモグラは、大いに食べるわけですが、食べるはしから、エネルギーとして使ってし おお まいます。ですから、ほかのけもののように大きくなれないのです。 ふゅはたら 久、も働く ミミズや、こん虫類などをいつも食べているモグラは、これらの食べ物がなくな ふゅあいだ どうぶつ ふゅ る冬の間を、どうやってすごすのでしようか。ここで、動物 ( けもの ) たちの、冬 生のすごしかたについて、ふれてみることにしましよう。 おんたい かんたいちほう すどうぶつ さむふゅあいだ 温帯や寒帯地方に住む動物のなかには、寒い冬の間、体内の新陳代謝がほとんどで かつどう 一ゅ、っそく きなくなるので、えさを何もとらずに、活動をやめて、じっと休息するものがいま っちなか ちゅ、つるい なん しんちんたいしゃ り・よ、つひつよ、つ もの っちうえ つか
3 モグラの生活 たいじゅう たいこうぶつ とくにモグラは、ミミズが大好物です。一日に、体重五七グラムのモグラか、四 ぶぶん 〇びきのミミズ ( 食べられる部分は三〇グラム ) を食べます。これは、モグラの ふゅあいだ はんぶんしよくじりよう モグラを飼、つ 体重のほば半分の食事量となります。ミミズのいなくなる冬の間、 」 ~ 亠っ - り・よ、つ うしぶたあ ときは、三〇グラムのひき肉 ( 牛と豚の合いびき肉 ) を、一日の量としてあたえて います。 じかん なお、モグラは、一二 ~ 一五時間、えさをあたえられないと、体力が弱って、二 じかんいない 〇 ~ 三〇時間以内に、うえ死にしてしまいます。 しんどう 1 ) ゅ、つ、かノ、つよ、つ、かど、 ほしよくこ、つど、つ モグラは、さかんにえささがし ( 捕食行動 ) をします。臭覚、聴覚、そして震動 っちなか かん を感じることで、えさをさぐりあてます。土の中で、「そこにミミズかいる」ことを、 てまえ 一一〇センチメートルはなれたところで知り、五 ~ 六センチメートル手前のところでは、 も、つぜん ぜんしん かんぜん 完全にさがしあてて前進します。二センチメートルほどのところから猛然とおそいか かり・ます・。 くち くち えものは、ロでとらえて、手でおさえこんで食べます。ミミズのばあい、ロでくわ えて、手でミミズのからだをしごいて、体内の土をきれいにだしてから食べます。こ っち たいじゅう たいりよくよわ
ほしよどよ」、つ」、つ の捕食行動は、ふつうはトンネルの中でします。また、地上のえものも、土の中にひ きずりこんで食べます。 よる しかし、夏のあつい夜などには、モグラは地上にでて、夜露のおりた草むらに集ま ちゅ、つるい ち一じよ、つ るこん虫類や、地上にでてきたミミズをつかまえて食べます。 モグラの好きなミミズにも、いろいろな種類がありますが、どうも、シマミミズは 好まないよ、つです。畑にたくさんいるフツウミミズという、ごくふつうのミミズか もっとも好みにあうようです。 やカい じめんちか っちなかふしよくど ミミズは、野外では、地面近くの土の中の腐植土にかくれて生活しています。モグ しんど、つ ラがおそ 0 てくることを震動で知ると、ミミズのほうも、身の危険を本能的に感じ、 ち - じよ、つ ノ、さ 地上にでて、草むらの中を逃げまわります。これを、地上にでたモグラが追いまわす 光景も見られます。ミミズにとっては、モグラがも 0 ともおそろしい敵であることを、 知っているのでしよう。 わたくしまいあさ はこけみちこ、つえんくさ ほそたけ 私は毎朝、畑の道や公園の草むらを、細い竹の棒でかきまわしながら歩きます。 ちじよ、つ すると、ミミズが何びきも地上にでて、逃げまわります。これを集めてきて、飼 0 て この この なっ なん なか しゆるい ち一じよ、つ
世界こほこるニホンモグラ につほんけ・ん医」ゅ、つか につほん力いこく ニホンモグラは、シーボルト ( ドイツの医者で、日本の研究家として、日本を外国 まえ 1 ) よ、つ・刀し ねん に紹介した人 ) によって、採集されました。今から一四五年ほど前の一八四二年 てんほう じだい ねん だいしよ、つぐんとくカわい、んよし ( 天保十三年 ) 、十二代将軍、徳川家慶の時代のことです。そのころ、日本にきてい よこは亠ま おく たシーポルトが、横浜でつかまえたものです。そして、このモグラは、オランダに送 めいめい がくえんとし はくぶつかんちょう られ、テミング ( 学園都市ライデンにある博物館長 ) によって命名されました。 ほぞん げんざい はくぶつかん たいせつに保存されています。 現在でも、ライデン博物〈呂に、 よこはまこ、つ よこはまちい ぎよそん ねんまえ げんざい とうぶ かながわ 今から一四五年前といえば、横浜は小さな漁村で、現在の横浜港の東部の神奈川 よこはまさん 、つみ 地区あたりの、海べりのごくせまいところにも、モグラがいたのです。この横浜産の カくもんうえ モグラが、日本代表のニホンモグラ ( アズマモグラ ) です。そして学問の上からも、 よこはま きさんち ニホンモグラの基産地は、横浜であるとされています。 ッヾこよ、ヨ 1 ロ 一方、ヨーロ ハモグラという一種類がいます。 つば、つ せかい につほんだいひょう ひと さいしゅ、つ しゆるい につほん ねん
1 モグラの特色 まにゆ、つる しゆいじよ、つ 八科、一〇〇〇属、三五〇〇種以上、というなかまにわかれています。哺乳類は、 亠っ一ゅ、つじよ、つ はたじま なんきよく 南極とニュージーランド、そして小さな離れ島をのぞくと、地球上のあらゆる大隆 、刀いよ、つす・ と、ほとんどの海洋に住んでいます。 そら 」り冫ドレよ、つ 陸上には、サル、ゾウ、ウマ、クマが、木の上にはリス、ムササビが生活し、空 うみ を飛ぶコウモリ、海にはクジラが、そして土の中にはモグラがいます。それぞれ、そ 十っ」ゅ、つ しんせいだい 、カん・去一よ、つ の環境によく合わせて生活をしているのです。地球は、新生代になってから、その 46 い ~ ゅ、つつなし じようたい げんだい ュにゆ、つつなし ひょうめん へんか 表面が変化し、さまざまな乳類が住みわけている状態なので、現代を、哺乳類の よ じだい 寺代とも呼んでいます。 まにゆ、つつし ところで、咐乳類の皮ふには、体毛が生えていることが特ちょうです。毛をもたな ュ・、ゆ、つつなし せきついどうぶつ まにゆ、つる し哺乳類というのはありませんし、毛をもった脊椎動物というのは、哺乳類のほかに くち む , も、つ たいじ はいません。クジラは、成体ではほとんど無毛ですが、胎児のころは、ロのまわりに、 わずかに毛をもっています。 よ じゅ、つるい ・・ゅ、つつるし つまり乳類には、みな、毛が生えているので「けもの」、または獣類と呼んでい ははおやちちそだ ます。われわれん町には、たくさんの毛が生えていますし、母親の乳で育てられるの ひ せいかっ ・せ一い 4 」し たいもう っちなか 、つえ せいかっ