1 モグラの特色 トンネル用の体 ぜんしんかたち モグラの全身の形は、それはもう、体のすみずみまでが、トンネル掘りに適する ようにできていて、たやすく土を掘れるようになっています。 はオよさ医」 せんしんえんとうけい 全身は円筒形をしていて、太くがんじようで、くびはないように見え、鼻は先がと ぜんたい がり、全体として、くさび形をしています。 さ医一 くち はなさ」 み ぜんはんしん さらにくわしく前半身を見ますと、長くつきでた鼻先は、ロより先にのびていて、 じようめん あっかわば じようぶで、しかも、しなやかによく動かせ、その上面に、厚い皮張りになってい すき つか ぶぶん る部分があります。この鼻先で、畑のやわらかい土などは手を使わないで鋤のよう はなさ一 あたま えんすいけい にもちあげ、たやすくトンネルを掘ります。この頭から鼻先までは、円錐形をして はさ医」 どへきあな てつどうよう いて、ちょうど鉄道用のトンネル・ボーリングマシンの、土壁に穴をあける刃先に、 にています くら こうせんとお っちなか 土の中のトンネルは、光線を通さないのでまっ暗ですから、目は使うことがないた 0 よ、つ ふと っち からだ なが からだ っち て めつか み てき
わたくしふゅ かなあみ しいくばこ なお、私は冬のはじめに、三〇ワットの電球を金網でつつみ、飼育箱に入れて ほおん でんきゅうあか かなあみ 保温しますが、モグラは、電球の明るさは気にしないで、その金網に身を寄せて暖 がっちゅうじゅん まっています。また十一月中旬ごろ、日なたばっこをしているモグラがいましたが、 につこ、つよ′、 だん おも これも日光浴で、暖をとっているものと思われます。 鼻ですべてがわかる しゅ、つかく かん はなし モグラの臭覚 ( においを感じる感覚 ) について、お話しましよう。 かんなが ①モグラを、内径五センチメートルのガラス管 ( 長さ七〇センチメートル ) に入 かん くち ぐち れます。ガラス管の一方の切り口 ( 入り口 ) から、えさとしてミルワーム ( こん虫 くちさきむ はなさ」 の幼虫 ) を、モグラの口先に向けてはわせます。モグラは、さかんに鼻先をふって、 ーもと こ、つど、つ たいいちだんかい 虫の位置をさぐります。これは、えさを求めるときの第一段階の行動です。つぎに ・こ、・」に′ん・刀し くち むしちか グ第二段階として、モグラの口から六センチメートルほどに虫が近づくと、モグラは虫 すす やく てまえ ちか に向かって進みます。そして、虫から約二センチメ 1 トル手前のところに近づくと、 むし よ、っちゅ、つ でんきゅう ちゅ、つ あたた むし
、かん・か′、 、」、つてつ この章では、モグラたちの地中での行動がどんなものであるかについて、感覚 動 はなし きかん 行器官というものをとおして考え、お話してきました。 からだ かんきようす グ モグラは、地中という環境に住むために、体のつくりが、すみずみまで、とても モ 力いて あんぜん うまくできています。しかし、かれらが安全に生きていくためには、害敵から逃れた せきついどうぶっそせん せいぶっしんか しぜん 自然です。しかし、生物の進化ということからながめると、脊椎動物の祖先では、 おも 十つよ、つ、か′ 聴覚はあまり重要ではなく、おそらくもたなかったと思われています。むしろ、 し 、かん・か′ ち し へいこ、つかんかくじゅ、つりよ / 、 平衡感覚 ( 重力に対して、動物が、体の位置やバランスを知る感覚 ) のほうが、 十つよ、つ、か′ v' 聴覚のもとであったのでしよう。 しんど、つ 十つよ、つ、か′ おと なか 、こ、トンネルの中のモグラを見ますと、音を聞きわける聴覚と、震動によ 実さしし こ、つと、つ たいも、つかんかくしよっかく かん って感じる体毛感覚 ( 触覚 ) とによる行動を、区別することができません。 、えんかくしよっかく当」かん はなさきふくぶ なお、モグラの鼻先や腹部の皮ふの中には、遠隔触覚器官といわれるものがあって、 ち し おすめす ・カいてご とお その働きによって、遠くにいるミミズや害敵、そして、雄・雌のおたがいの位置を し さいきん 知ることが、最近、わかってきました。 はたら ちちゅう じゅ、つよ、つ かんが どうぶつ ちちゅ、つ ひ からだ み のが
つか 体をいくぶんかたむけて、あのシャベルのような手のひらを、かわるがわるに使 ぜんしん よぶん っちあとあし じようめん っち い、撼った土をトンネルの上面におしつけながら、余分な土は後足でけって前進し はなさ医」 すき てつか っち ます。土のやわらかなところなら、手を使わないで、がんじような鼻先を、鋤のよう に使って土をもちあげ、いともかんたんにトンネルをつくりあげます。その掘る速さ じかん 一ゅ、つ じかん ひとばん ぶんかん は、一分間に三〇センチメートルです。一晩に ( 休けい時間を入れて ) 三 5 五時間 やく 掘ると、約六〇 5 九〇メートルにもなります。 にわさきどうろ ひとどお また、人通りの多い、ふみかためられた庭先や道路でさえ、その下にトンネルを、 らくらくと掘るのにはおどろかされます。 じかんはんやく こ、つど、つ ばくそうち へいきん 牧草地では、平均四五〇平がメートルの行動はんいをもち、六時間半で約七五〇 あきむぎばたけ かんさっ かつどう メートルも活動したモグラを観察しました。秋の麦畑で、ときに、なんと一キロ メートルほどにもおよぶトンネルを掘ることかあります。 おんしつなかあげどこ へいほう 実験として、一〇〇平方メートルの温室の中の揚床 ( べンチ ) の下にモグラを放し へいきん て、自由にトンネルをつくらせてみました。トンネルは、平均七五メートルありまし じつけんばしょ はち 鉢などかおいてありましたが、実験昜所と た。もちろん、べンチの下の土はかたく、 からだ つか じつけん じゅ、つ っち したっち つ はや
1 モグラの特色 ↑モグラのロ ↓長くつきでた鼻先 はなさき
とくしよく 1 モグラの特色 トンネル掘りは、この手と鼻先で : はなさき
力いしゅ、つ てん しては、放したモグラを、また回収できるといういい点かありました。 また、あき箱の中に大きな石ころを入れて、モグラを放してみますと、一ー二キロ はなさ医」 がんせき グラムの石ころは、鼻先でいともかんたんにおしのけます。三 5 四キログラムの岩石 かたてオーケー すわ がんせき は片手で。しかも、座りのわるい三・五キログラムの岩石では、その下にもぐり とお こんで通りぬけます。 ちょっけい ふか こんどは、直径三〇センチメートル、深さ二〇センチメートルほどのバケツに、 っちひょうめん あいだ 四キログラムほどの土を入れました。土の表面とバケツのふちとの間は、五センチ ′、、つ・かん おも メートルくらいの空間ができます。このバケツにモグラを入れて、木のふた ( 重さ一 キログラム ) をします。そして、ふたの上に一・五キログラムと一一キログラムの重し ご、つけい おも をのせます。合計四・五キログラムの重しとなるわけですが、モグラは、それをやす おも やすと、はねのけてしまいます。さらに、重しを七・五キログラムにしてみます。こ じかん んどは、時間をかけてがんばり、最後は、ふたをずらして、バケツから逃げだしてし まいました。 い・ご . り・よ、つ たしかに、トンネルをつくるには、たいへんな力量がかかるものです。モグラは、 っち 、つ、ん
しゅ、っせい せいかっ はなさきて カんか / 、・も、つ なお、モグラの鼻先や手のまわり、尾には、長い感覚毛といわれる毛が生えていて、 つよはたら みちか じようたい ちじよ、つす これらも強く働いて、身の近くの物体や、まわりの状態を、地上に住む視覚をもっ どうぶつおな 動物と同じように、しつかりとらえているのです。 たいようひかり もうおわかりでしよう。モグラは、けっして、太陽 ( 光 ) をきらって、土の中で 生活をしているのではありません。つまり、モグラは、目のかわりに体毛によって め へいき 生活するので、目が見えなくても平気なのです。 わたくし せいしっし こ、つど、つ 私は、モグラのこのような性質を知って、モグラを土なしで飼育し、その行動や かんさっ 習性を、いろいろ観察することができました。 ひるよる し きせつからだ 昼と夜、季節を体で知る たいよう せいめ すべての生き物は、太陽のめぐみを受けて、生ムをもちつづけています。 っちなかせいかっ かんけい モグラは、日光のとどかない土の中で生活しているので、日光とはなんら関係がな ・刀し おも いばかりか、日光は、かえって害になる、と思っていませんか。それは、とんでもな せいかっ につこ、つ につこ、つ もの み ぶったい ロ卩い っち につこ、つ たいもう っちなか
4 モグラの行動 、刀学に くち いきおいよくおそいかカり、ロでとらえてしまいます。 ②ミミズを、ケント紙 ( 一七四センチメ 1 トル >< 一二〇センチメートル ) の上に、 じゅ、つ たいえき かみ、つえ 片すみから、自由にはわせます。紙の上には、ミミズのぬるぬるした体液がついて、 はなさ、 かみ、つ、えはたよ あとが残ります。モグラを、この紙の上に放しますと、ミミズがはったあとを、鼻先 でかぎわけながら追 ) し、ミミズをさかして歩き、とら、んます。 て医」と、つ うしぶたあ ③飼育箱の土の上に、適当に、コオロギの死がい、牛と豚の合いびき肉、サツマ ィモのかけら、八つ切りにしたカキのひと切れをおきます。モグラは、コオロギの死 しよくぶっしつ かいと、ひき肉だけを食べ、植物質のサツマイモとカキは食べません。 えき みず ④五〇〇 3 の水に、クレゾ 1 ル石けん液五 3 をとかしたものを、一〇キログラム しい ~ 、ばこひと っち の畑の土にまぶします。その土を飼育箱の一すみに入れておくと、その場所には、 モグラは入りこみません。 とお ちか てき ほにゆうどうぶつ ふつう、哺乳動物は、においをかぎわけることで、遠くから近づく敵を知ったり、 とお おすめす えものをかぎつけたりします。また、遠くから、雄が雌のいるところを知ったりしま はたけっち のこ っち、つえ 、つ、え
たいじゅう 体長が一〇 5 一五センチメ 1 トル、体重は六〇 5 七〇グラムほどの小さな体です ぢから どうぶつ が、とにかく、ものすごいばか力のある動物なのです。 あとあし にわさ、 じめん なお、モグラの後足を手でもち、庭先の地面においてみます。モグラは、すぐに ちちゅ、つ じめん まえあして つか 前足 ( 手 ) を使って地面を掘りだし、地中にもぐりはじめます。こうしてモグラの ぜんはんしんちちゅう 前半身が地中に入ってしまうと、こちらのほうが根負けして、手を放すことになり、 逃げられてしまいます。 ちちゅ、つ だいていたく 地中の大邸宅 ほそなが にわさ」 十こ十・み はやお 朝、早起きして、庭先や畑を見てまわると、地面に、細長いジグザグの、ミミズ にわしばふ っちあと ばれのような土の跡がついていることに気づきます。また、庭の芝生のところどころ ぶぶんつか 住に、ポカッと、まるで土まんじゅうのような、土のもりあがった部分 ( 塚 ) を見かけ おも たりします。みなさんは、これはモグラの仕わざだ、ということは知っていると思い ます。 たいちょう あさ っち こんま じめん てはな からだ