探偵 - みる会図書館


検索対象: ヒョコタンの山羊
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1. ヒョコタンの山羊

「そりゃあ、まだなんともいえんな。キンサンのおっさんも白状せんし : : : 。ただ事情が事情だけ けんぎ に、一応の嫌疑はまぬがれんがね。」 駐在さんは、チョビひげをつまみながらいった。職務上、はっきりいわないが、キンサンが犯人 っ だということを、それとなくにおわすいい方だった。 わが名探偵たちは、そんなおとなたちの推理なんか、ちゃんちゃらおかしいと思った。そんなさ探 ようち さいなことで犯人と断定するなんて、まさに単純にして幼稚というべきである。 犯人は、キンサンの脱走を利用して、キンサンにうたがいがかかることを計算して、犯行をくわ だてたんだ。ばかな警察は、まんまとそのわなにひっかかったんだ。 それが、団長のコウちゃんをはじめ少年探偵たちの考えである。そして、彼らは、この考えを絶 対だとかたく信じていた。なせなら、彼らにとって、なにがなんでも、キンサンは犯人であっては ならないからである。 がけ 人びとは、ばつぼっ山をくだって行ったが、 / 少年探偵たちは町が見おろせる崖の上に立っていた。 町の中央にトサッ場が見えた。向こうがわの門がおもて門で、はいったところに牛馬をつなぐ広 みむね 場がある。その手前に、三棟ならんでいる長い建物が、牛と馬と豚の殺し場だ。 しゆえい おもて門のすぐ右がわに、守衛室と宿直室のある建物があり、センムがおそわれた事務所は、そ じゅうい の手前どなりに建っている。さらに、その手前に獣医室があり、トサツ人夫の休憩所がある。 いうまでも 殺し場のうらのひろい空地がふんの乾燥場で、うら門のわきの物置きみたいな家は、 だんてい だっそう きゅうけい 163

2. ヒョコタンの山羊

「こわくなんかないよ。なあ、カメちゃん。」 「そうとも、おれたち探偵だもん。」 すると、チャコちゃんまでがいったのである。 「あたいも行くわ。」 日がかげつて、すずしい風が吹いてきた。 カナカナカナ : : ヒグラシが、子どもたちの心にしみとおるようにないた。 「あっ、ヒョコタンだ。」 コウちゃんが、コテッで下の方を指した。トサッ場のうらの原つばに、ヒョコタンと弟たちが小 さく見えた。 ヒョコタンは、メー吉の首をなでている。 「キンサンがっかまらなくてよかったね。」 と、メー吉に話しかけているのかもしれないと、ゲンちゃんは思った。 探債になった海賊たち

3. ヒョコタンの山羊

1 ヒ キンサンは、けっしてやばんではない。 ち マワリだって、マッパボタンだって、みんな 海 キンサンが植えたのだ。庭にはチューリップ っ も植えてある。春には、それが白や赤や黄色 の花を咲かせる。秋になれば、コスモスのビ探 ンクや白い色が、風にさやさやゆれるはずだ。 ヒョコタンにやった山羊だって、キンサン がどんなにかわいがっていたかしれない。そ して、なんてったって、キンサンは子どもた みかた ちの一番の味方だった。そのやさしいキンサ ンが、どうしてセンムを殺したりするものか。 犯人は、だんじて、だんじてキンサンではな 、。子どもたちはそう信じた。 「おれたちで、犯人をさがし出そうよ。」 コウちゃんがいった。 「うん、少年探偵団をつくろう。」 ゲンちゃんが、すぐさんせいした。 145

4. ヒョコタンの山羊

ち 応援の警官たちが、あ 0 ちこ 0 ちとびまわり、ぬかりのないよう青年たちに注意をあたえていた。 きんちょうした空気が流れた。 海 「ぜんたーいっ っ 憲兵が軍刀をさ 0 とぬいてい 0 た。その声におどろいて、馬がいななきながら前足をあげた。憲 = 探 兵はたづなをひきしめながら、 「進めーっ。」 軍刀が、きらっとひかって、ひるがえった。 「進め。」「進め。」と、命令が波のように口からロへとったわり、山狩りの人たちは、ぞろそろと山 冫はいあがって行った。 少年探偵たちは、木の根っこやつるにつかまって、登りながら考えた。 ほかの者になんか、キンサンを見つけられてたまるもんか。きっと、おれたちが見つけるんだ。 . をし . し / とっくの昔に、どこかへ逃げてしまっていれま、 でも、だれにも見つからなければ一番いい。 と思った。 彼らには、心あたりの場所があった。昨年の秋、キンサンにつれられてクリ取りにぎたが、その 時ににわか雨にあって、かけこんだほら穴があるのだ。シダにおおわれた小さな横穴だ。もし、キ ンサンがかくれているとすれば、あそこをおいてほかにないと思った。 「いいかあ、子どもらあー。」 157

5. ヒョコタンの山羊

ち っ しき センムは意識をとりもどした。けがは思ったより軽くすんで、二週間もすれば、全快するだろう探 といわれた。ただ、よほどショックがはけしかったらしく、こうふんがなかなかおさまらなかった。 かんどふ ときどき、何かにおびえて大声を出し、看護婦さんをおどろかした。 事件の晩、センムは書き物をしていると、後に人のけはいを感じて、ふりかえろうとした。し ふろしき ゅんかん、すつぼり風呂敷をかぶされて、がーんと頭をたたかれた。センムが机にのめると、また 頭をたたかれた。そのままセンムは気をうしなってしまった。だから、犯人の顔をぜんぜん見てい なかった。ただ、なぐられる前に、大きな影がおおいかぶさってきたのを、お・ほえているたけだっ ロやかましいがんこおやじのセンムのことだから、人ににくまれていたし、金貸しもしていたの で、金をかりていた人たちのうらみをかうということもありそうだった。なにしろセンムは、とて もきびしく金をとりたてていたそうだから。 ようぎ しかし、なんといってもキンサンの容疑が一番強かった。事件発生三日後、おっさんは、警察に つれて行かれた。逮捕理由は、脱走者つまりキンサンをかくまった疑いによるものだった。しかし、 「それつ、逃けろ ! 」 コウちゃんを先頭に、わが新米の少年探偵たちはかけだした。 4 しんまい たんてい ぜんかい 147

6. ヒョコタンの山羊

も ム 所 で ジ 、何 ャ 収ひ ガ 獲 : 、ま イ もくわ モ の 皮 を む き な が ら 考 し ず ん で る て よ け い 頭 が 大 き く 見 ぇ ナこ ヒ ョ コ タ ン は の 頃 ち っ と 兀 気 な め し も ろ く に べ な の で そ り や て し ま 探 偵 た ち は の な 力、 っ た 査さ の 困 難 を 君 し ら れ た 場ば た 出 外 の 場 ツ サ ト て っ く を 下 の り り お と を し は の 探 偵 た ち 0 よ と り く し ま も な く 質 を あ ら め た ふ、 ん、 血 の お が む せ か え 、つ て る 乾 ロそ れ 以 上 い た ら も 力、 レナ ら れ そ オど サ ヤ ク カ ェ ッ ァ オ ク レ ア タ ヤ ア ア タ イ タ イ ヨ お つ か さ ん は げ し い 口を 調弯 で い つ ヒ ァ モ ド ッ ア ナ イ ョ ホ ン ト タ・ ヨ カ ク ツ タ リ ナ ン カ ナ イ ヨ ん ど は ゲ ン ち や ん が き し、 ナこ じ や あ キ ン ン し、 や ヒ ち や ん は シ ァ ク し / ナ カ ツ タ ョ ソ ン ナ コ ト モ イ サ ツ ク チ ガ ス ッ ク ナ ル マ ァ イ ツ ョ モ ケ イ サ ツ ホ ト ウ コ ウ ち や ん は お っ か ん の け ん ま く に あ っ と う さ れ な ら い た ち カ ; う よ た ち お っ さ ん を . 助 け て や り ナこ し、 よ 0 力、 ら ア を ' し ら て る ん だ オ チ ア・ オ ツ サ ガ ト オ モ ノレ カ ヒ ト 149 探偵になった海賊たち

7. ヒョコタンの山羊

「よし、きっとさがし出すそ。」 カメちゃんは、ポケットから大きな虫めがねをとり出してのそいた。カメちゃんの目が、ぐりぐ りドングリのように見えた。 子どもたちにとって、海賊から探偵になることなんか、そうさもないことだった。 「あたいも入れてね。」 チャコちゃんもいっこ。 「あたい女探偵よ。」と、にこにこした。 「また、おせつかいやぎがでしやばった。」 コウちゃんが、しぶい顔をした。 「あら、コウちゃん、よくそんなことがいえるわね。この間、島にとりのこされた時の泣きべそ顔 を忘れたの。あんたたちには、あたいがいつも必要だってこと、おぼえといてね。」 そういわれると、コウちゃんは一言もなかった。 「どう、わかった ? 」 「はい はい、わかりましたよ : そういって、コウちゃんは、石をひろうと、塀にとまっているカラスめがけて投げつけた。 「こらつ、だれだ、石を投げたのは。」 でつかい声がした。もしかしたら、おっさんをしらべていた刑事かもしれない。 146

8. ヒョコタンの山羊

ヒョ = タンのかあちゃんは、かまどの上にのつかって、サベルでかまの残飯をかきまわしている。 直径が一メートル半もある大きなかまの中には、だいこんやトトやめしやナッパやイモやキ = ウ いろいろなものが、ぐっぐっにえだし、ゆげがあがっている。 リやスイカの皮や : かあちゃんは、長靴をはいた太い足を、仁王さまのようにふんば 0 ている。腕を動かすたびに、 大きなお 0 ばいがラン = ングシャツの中で、た 0 ぶ、た 0 ぶ、ゆれている。はちまきの下から汗が 、。、ノのようにもりあがっている肩も、油汗でてらてら ムのように太い腕も / 、 ながれ落ちている。ハ ひかっている。 ヒョコタンは、 かまどの前でまきをわ 0 ている。残飯のかまどは、豚小屋にくつついていて、豚 小屋からはり出した屋根におおわれているが、夏の真昼のかげは短くて、ヒ = 0 タンのからだをか たんてい ④探偵になった海賊たち 1 かい」 ~ 、 におう 探偵になった海賊たち

9. ヒョコタンの山羊

4 探偵にな。た海賊たち・ 5 失われた太平洋 あとがき / それから そうてい・さしえ梶山俊夫 さミ安 たんてい かいぞく 166 123

10. ヒョコタンの山羊

そうさたししよう おっさんの犯行ということも、捜査の対象になっていたのだ。なせなら、キンサンのことでひどく 叱られたおっさんが、逆上してセンムを殺そうと思ったとしても、不思議ではなかったからだ。 とううしきん もう一つには、センムをおそい、金をうばって、息子の逃亡資金をつくろうとしたとも考えられ きようぼう た。あるいは、キンサンと共謀ということも推定された。 しかし、コウちゃんを団長とする、われらが少年探偵団は、警察と意見をまったくことにした。 彼らの考えは、犯人はキンサン及びおっさん以外の人間でなければならなかった。理由 ? それは かんたんだ。キンサンやおっさんは、そんな悪いことをするような人間ではないということだ。 そうさく では、犯人はだれか ? そして、捜索方法は ? 手がかりは ? そんなものは、まるつきりわか ってなかった。 それでも、わが少年探偵団の諸君は、真犯人捜索の意気にもえていた。 まず、彼らはキンサンの家へ行って、おっかさんから事情を聞くことにした。 おっかさんは、茶わんをあらっていたが、子どもたちの足音にびつくりしたようにふりかえった。 油気のない髪がひたいにたれていて、やつれた顏は、し 、っそうしなびて見えた。 「ナンノョウカ ? 」 おっかさんは、目を三角にしてどなった。 「あのう、おっさんは、あの晩、外へ出なかった ? 」 コウちゃんがきいた。 かみ すいてい そうさ , 、 148