頭 - みる会図書館


検索対象: ヒョコタンの山羊
165件見つかりました。

1. ヒョコタンの山羊

' 00 ら、しやくでならない。そのうえこの池に持 ち主があるという。それがこともあろうに、 あのやかましゃのセンムだというのだから、 なおさら腹がたつ。 「なーに、うそさ。うそにきまってらあ。」 と、ゲンちゃんはうちけしてみたものの、不 安が、やつばり頭をもちあげてきた。 トヨヒサ君がセンムにいし 、つければ、セン 一ムがとんでくるだろう。 「ここで遊んじゃいかん ! 」 センムのやっ、頭からゆげを出してどなる に力いない。 「やー と、あいつらがあかんべえをやる。おれたち は『おいこみ』の外へおつばらわれる。そし おもしろ て、あいったちが面白そうにおれたちの海賊 丸をこぐのを、指をくわえて見ていなければ

2. ヒョコタンの山羊

ま た セ カ : ジ 、豚 イ 似にに ジ イ な き だ し 、豚 た 、殺 、豚 飼か喜 ざ か つ て 行 っ た や け つ く よ う な ト サ ツ の 塀 ヒ タ の 影 が ひ よ た ん ひ よ た ん と お ど り が ら た め 息 を つ い た 輪 を か い て い る ヒ ョ コ タ は わ も の を 見 て し ま っ ナこ よ う に あ わ て て 目 そ ら し つ 長 の と が 立 て い る 黒 し、 け む が つ 空 に の ぼ っ て る ビ ト の も 、′つ を 空 の そ る し、 て ん び そ がもぐ 入ま り あ れ に よ の そ う は の た カ ; 朝 ヒ ョ コ タ ン 横当 目め で ち ら っ と ト サ ツ 場 の 建 物 を 見 た 里 い ト タ 屋 根 の 上 黒 ひ よ ろ っ る じ ゃ な し、 か ト サ ッ 場 だ よ さ れ て 肉 屋 . に 冗 ら れ る の さ り に だ つ た の 行、 く 先 が 頭 に う か ん き て 悲 し く な る の だ 行 先 は ど か っ て き ま と ヒ ョ コ タ ン は い つ も い や な 気 持 に な つ た セ ン ム の 猫 な て、 声 も そ だ カ ; れ に も ま し て れ る か わ り に 頭 を な で て く る そ ク ) 指 に は 金 の カ ; つ も は ま て い る 頭 を な で ら れ そ う い っ て い つ も と は う っ て か わ っ て に に 指ま山や人 輪わ羊ぎだ の よ う に や さ い を る だ ち ん を ヒ コ メ は 0 、 や じ に て 生 ま れ な カ ; ら の い の 名ご う ん と り っ ば な 豚 そ て ば セ ン ム は 大 び だ あ し、 つ ら を う ん と り な に だ て て や り ヒ 目 に う 力、 ん ヒョコタンと海賊たち

3. ヒョコタンの山羊

だから、子どもたちは、センムが落ちそうになったのを見て、 しい気味だと思った。どうして、 下にころげ落ちてしまわなかったかと、残念がった。石に頭でもぶつけて、目をまわしてしまえば よかったのに、と思った子さえいた。 「ひとの失敗を、笑うやつがあるかつ。」 センムが、塀の上に、からだをのり出してどなると、子どもたちは、 と、はやしながら逃げだした。 ヒョコタンも、ひょこたん、ひょこたん、歩ぎだした。 「ヒコタつ。」 センムがよんだ。 ヒョコタンは、大きな頭を重そうにふりむけた。 ぶた 「このあいだ生まれた豚の子、みんな元気かあ。」 ヒョコタンは、 0 ゅうに顔をにこにこさせて、こっノ、りした 0 「あとで見に行くけど、しつかりめんどうを見るんだぞ。」 「うん。」 ( そうだ、早く帰って、あのチビたちを見てやらなくちゃ。 ) 母豚の乳ぶさにすがりつこうと、先をあらそっている、むくむく、ころころかわいい子豚たちが、

4. ヒョコタンの山羊

子どもたちが、声のした『おいこみ』のほうを見ると、トビ職のおじさんたちが、七、八人やっ てきた。丸太をかついでいる者もいれば、大きなかなづちやシャ・ヘルをかついでいる者もいる。 「さあ、どけどけつ。」 おとなたちは、まるで戦車のようないきおいで、草やヘビイチゴの実をふんづけてやってきた。 チャコちゃんとサブとシロは、あわててわきへよった。 「さあ、おいこみのむこうへ出て行くんだ。」 「こらつ。船にのっているがきどもも、はやくおりんかつ。」 おじさんたちは、かついできた丸太やかなづちやシャベルを、草の上に投げ出した。 「おじさん、ここに何ができるの ? 」 チャコちゃんが、せなかに赤い線のある頭のはんてんを着た人にきいた。 「工場ができるんだよ。」 そういって、頭は、ずしんと、穴ほりのみを地面につきたてた。 「工場 ? 」 「そうだ。原つばも、池も、田ん・ほも、みんなならして、大きな工場をつくるんだよ。」 「なんの工場なの ? 」 「兵器工場だよ。」 「へいき ? 」 かしら かしら 203 失われた太平洋

5. ヒョコタンの山羊

「りくつなんか、どうだっていいんだ。君たちに友情があるか、どうかってことだよ。」 いじの悪い笑いをうかべていえば、トヨヒサ君も、 と、ダイスケ君が、トマトのようなほっぺたに、 にやにやしながらいった。 「ヒョコタンがかわいそうだったら、うんといいたまえ。それとも、君たちはヒョコタンを見殺し にするつもりかい。」 「ねえ、たのむよ、コウちゃん。」 ヒョコタンは、半べそかいて、コウちゃんにとりすがった。 「ねえ、みんなたのむよ。ゲンちゃん、カメちゃん。」 ヒョコタンは、米つき・ハッタのように海賊たちに、おじぎしてまわった。ジロウも、ヒョコタン のうしろから、ペこペこ頭をさげた。 くらたのまれたって、むざむざ敵に城をあ 海賊たちは、そんなに頭をさげられてもこまった。い むてき かいぞくだん けわたすようなまねはできない。無敵をほこる海賊団だもの、ドクロの「、旗の名誉にかけても、そん なみつともないことは、できるわけがないのだ。 コウちゃんもカメちゃんもゲンちゃんも、きゅっと口をむすんで、横をむいている。いつもなら 同情してくれるチャコちゃんまでが、知らん顔している。 ( ヒョコタンさえ、もっとしつかりしていれば、こんな負けかたなんかしなかったのよ。 ) と、チャコちゃんは思っていたのだ。 はためいよ

6. ヒョコタンの山羊

ヒョコタノは、リャカーをひぎひぎ泣いていた。ひざこぞうから血がながれている。手のひらも いたいのだ。だが、ヒョコタンの泣いているのは、そのせいだけではない。胸の中ががらんどうに なって、からだじゅうの力が、どこかへ行ってしまったようなのだ。頭だけがふやけて、大きくな ぶた ったように重い。そのにぶい頭の中を、豚がかけまわっているのだ。プープー鼻をならし、ロではー はー自 5 をしている。白いよだれが、だらだらたれている。 「もっとはやくかけろつ。」人間の足が豚のしりをける。つんのめった豚の鼻の穴に、土がめりこ む。キーキーと豚は歯をむいてなく。 「とっととかけろつ。」また、しりをたたかれる。まるまったしつ・ほが、ぶるんとふるえる。豚は なきなきかける。 そのあわれな姿が、ヒョコタン自身になって、目にうつるのだ。そんな自分に涙が出るのだ。 からん、からんと、リャカーの鐘がなる。 コウちゃんが目をむいた。 「・ほくがいったんじゃないよ。センムさんがいったんだよ。文句があるんなら、センムさんにいっ てくれ。」 ダイスケ君は、フットボールみたいにまんまるな顔をして笑った。 4 かね 豚になったヒョコタソ

7. ヒョコタンの山羊

と、きっと、からかわれるからだ。それに、町へ出ると、自分のきたならしさが、目立って、みじ めな気持になるのだ。 ジロウにあとおしさせて、ヒョコタンがリャカーをひく。リャカーのかじ棒に鐘がついている。 ヒョコタンが、びつこをひきひきリャカーをひつばるので、鐘はふらなくても、からん、からんと なる。 鐘をききつけると、あっちからもこっちからも、おばさんたちがごみバケツを持ってとんでくる。 夏は食物が長持ちしないし、ごみ箱にすてると、ウジがわきやすいので、残飯のあつまりがいい だが、大口は、なんといっても南町食堂だ。南町食堂は、この附近で一番大きい大衆食堂である。 顔なじみの女中さんがいて、氷のぶつかきやスイカの残りをくれることもあった。 「にいちゃん。また、スイカくれるといいね。」 ジロウが、あとおししながらいった。 「ばかっ、いやしいこというな。」 そういうヒョコタンだって、かんかんでりにてらされて、のどがかわいているこんな時に、がぶ いいだろうなあと、のどがなった。 っと、あまいスイカにくいついたら、どんなに ことしは何年ぶりだかの暑さだと、おっさんがいっていたが、まったく暑い。むぎわら帽子をか ぶっていても、頭のしんまでやけつくみたいだ。もっとも、この帽子も三年目だ。頭のてつべんに、 大きな穴があいているので、ときどき、帽子をずらして、穴の位置をかえないと、暑くてならない。 かね たべ かね 豚になったヒョコタン

8. ヒョコタンの山羊

デタイ、メデタイ。」といって、ひとりで笑っていた。そして、 コ ッパナグンチンニナリマシタ。」 「オカゲテ、リ ヒ と、だれかれなしに、頭をさげ、シ = ウチ、ウをすすめていた。 っ キンサンはかしこま 0 て、しじゅうにこにこして、さしだされるさかずきを、つぎつぎうけてい た。てらてら額がひか 0 て、目がらんらんとかがやいていた。キンサンの頭の上には、軍隊手帳と豚 ぐんぼう か兵隊の本を入れる奉公袋がぶらさが 0 ていた。その上に、新しい軍帽がかけてあ 0 た。軍帽には 星の徽章がひか 0 ていた。その星を見ながら、ヒデちゃんは遠く〈行 0 てしまうんだなあと、ヒ = たまらな ヒョコタンは、 コタンは思った。遠い遠い星の国のように手のとどかないところへ・ くさびしくな 0 た。そうそうしい送別会の席にいるのに、深い深い森の中にひとりば 0 ちですわ 0 、しれぬさびしさを感じた。 ているような、いし 「何かうたえや。」 と、みんなにいわれて、キンサンのお 0 かさんはこま「ていた。顔の前で手をふ 0 て、 「アタシナンカ、トテモトテモ : むり と、笑った。それでも、みんなは無理じいにせがんだ。 「お 0 かさんの歌のうまいのは有名だそ。かくしてもだめだ。」とか、「むすこの門出のはなむけや。」 とかいわれて、とうとうお 0 かさんはうたう気にな 0 こ。 「よう、まってましたあ。」 かどで

9. ヒョコタンの山羊

ち っ しき センムは意識をとりもどした。けがは思ったより軽くすんで、二週間もすれば、全快するだろう探 といわれた。ただ、よほどショックがはけしかったらしく、こうふんがなかなかおさまらなかった。 かんどふ ときどき、何かにおびえて大声を出し、看護婦さんをおどろかした。 事件の晩、センムは書き物をしていると、後に人のけはいを感じて、ふりかえろうとした。し ふろしき ゅんかん、すつぼり風呂敷をかぶされて、がーんと頭をたたかれた。センムが机にのめると、また 頭をたたかれた。そのままセンムは気をうしなってしまった。だから、犯人の顔をぜんぜん見てい なかった。ただ、なぐられる前に、大きな影がおおいかぶさってきたのを、お・ほえているたけだっ ロやかましいがんこおやじのセンムのことだから、人ににくまれていたし、金貸しもしていたの で、金をかりていた人たちのうらみをかうということもありそうだった。なにしろセンムは、とて もきびしく金をとりたてていたそうだから。 ようぎ しかし、なんといってもキンサンの容疑が一番強かった。事件発生三日後、おっさんは、警察に つれて行かれた。逮捕理由は、脱走者つまりキンサンをかくまった疑いによるものだった。しかし、 「それつ、逃けろ ! 」 コウちゃんを先頭に、わが新米の少年探偵たちはかけだした。 4 しんまい たんてい ぜんかい 147

10. ヒョコタンの山羊

つうしんぼ 通信簿のことで、かあちゃんにさんざん油をし・ほられたゲンちゃんは、むぎわら帽子をかぶって、 家をとび出した。むぎわら帽子には、マークが書いてある。自分ですみで書いたので、ずいぶんふ とってはいるが、どうやらドクロには見える。わんばくどもの賊団のマークである。 ゲンちゃんが原つばへ行くと、もう、カメちゃんがきていた。カメちゃんもむぎわら帽子をかぶ っている。カメちゃんは『おいこみ』の柵に、むこうむきにこしかけて、スイカを食べていた。 『おいこみ』というのは、豚をトサッ場まで送りこむ通路のことである。巾は一メートルぐらいで、 りようがわ 両側に木の柵がしてある。柵の高さも約一メートル。ヒョコタンの家のわきから原つばを横ぎって、 トサッ場へつづいている。 豚たちは、豚屋のおじさんに竹の棒でたたかれながら、柵に鼻づらをぶつけたり、仲間につきあ たったり、道のにおいを力しナ 、、・こりしながら、トサッ場へと追いこまれて行くのだ。なかには、あと もどりしようとして、うしろからきた豚の上にのつかったりするのもある。すると、豚屋のおじさ んが、思いきりけとばす。キイキイなきたてて、豚たちはトサッ場へ送りこまれ、鉄のおりにいれ られる。鉄のおりのはしは、豚殺し場の壁になっている。壁には、豚が一頭とおれるだけの入口が ある。鉄の扉があくと、一頭ずつ入口へおしやられる。入口のむこうには、・ハットをかまえた豚殺 しのおじさんがいる。バットの先には鉄がうちつけてあるので、たいていの豚は、ひとうちで殺さ とびら 2 かいぞくだん