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検索対象: 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩
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1. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

445 各巻の系図 △八の宮 常陸介 中将の君 ( 親、母君、母、上 ) 匂宮の乳母 受領 ( 家主 ) 女 ( 少将の妻、少将の方 ) 薰の随身 ( 舎人 ) 女 内舎人 左近少将 ( 少将 ) 右近大夫 姉 ( 女 ) 浮舟の乳母曾ど、 ) 占 右近 大内記 ( 家司、 0 婿、内記、式部少輔、 侍従の君・ ( 若き人 ) 大輔の君 ( 大輔のおとど ) ーー右近 大蔵大輔 ( 仲信 ) 女 少将 因幡守 弁の尼 ( 尼、尼君 ) 山雲権守時方 ( 御 守 0 君、左衛門大夫、時方朝臣 ) 宿守 △大君 ( 故姫君 ) 中の君 ( 女君、宮の御方、上、 対の御方、宮の上 浮・卅 ( 君、女君、女 )

2. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

( 現代語訳三三四ハー ) よ。右の大殿の君達ならん。疎き人、はた、ここまで来べきにもあらす。もの一九前の「几帳どもの立てちがヘ たる : こに照応。奥がまる見え。 き一うじ あ ひとへ ニ 0 この六条院の主のタ霧の子息 の聞こえあらば、誰か障子は開けたりしとかならず出で来なん。単衣も袴も、 たち。六条院に疎遠な人でないと すし いう見当だけはつく。 生絹なめりと見えつる人の御姿なれば、え人も聞きつけたまはぬならんかし」 うわさ ニ一男にかいま見られたという噂。 ひじり たが と思ひ困じてをり。かの人は、「やうやう聖になりし心を、ひとふし違へそめ一三生絹は薄く軽く、衣ずれの音 も軽いので接近に気づかない。 ニ五かみ て、さまざまなるもの思ふ人ともなるかな。その丑日世を背きなましかば、ムフはニ三薫の視線に沿って語ってきた 語り手は、「かの人」として距離を 深き山に住みはてて、かく心乱らましや」など思しつづくるも、安からず、置き、その心中を語り直す。 ニ四八の宮との親交以来しだいに 大君との 「などて、年ごろ、見たてまつらばやと思ひつらん。なかなか苦しうかひなか道心を固めてきたのに、 一件から物思う身になった意。 るべきわざにこそ」と思ふ。 ニ五大君との死別の当座。その時、 出家遁世していたならと仮想。 かたち っとめて、起きたまへる女宮の御容貌いとをかしげなめるニ六女一の宮を。年来の憧れ。 〔三〕薫、女一の宮と女 毛女一の宮をなまじかいま見て、 ニ九 ニの宮とを比べて嘆く は、これよりかならずまさるべきことかは、と見えながら、かえって近寄りがたい貴人と実感。 夭正室、女二の宮。 三 0 蛉「さらに似たまはすこそありけれ。あさましきまであてにかをりえも言はざり = 九女二の宮より女一の宮が。 三 0 この姉妹は似ていないとする。 し御さまかな。かたへは思ひなしか、をりからか」と思して、薫「いと暑しゃ。三一女一の宮の驚くべき美貌。 蜻 一つには自分の気のせいか れい これより薄き御衣奉れ。女は、例ならぬもの着たるこそ、時々につけてをかし三三薫の母女三の宮づきの女房。 三四 = 西かいま見た女一の宮と同じ衣 うすものひとへ けれ」とて、薫「あなたに参りて、大弐に、薄物の単衣の御衣縫ひてまゐれと装をわが正室に着せようとの魂胆。 ニ 0 」う ニ四 はかま あこが

3. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

憂かなれ。いま、大宮の御前にて、恨みきこえさせたまふと啓せん」とのたま 0 薫の、女一の宮が手の届かぬ存 在だとする悲嘆は、宇治の姫君た ふ。女一一の宮「いかが恨みきこえん。うたて」とのたまへば、薫「下衆になりにたちとのかなわぬ恋の悲傷に矛盾な く繋がる。その憂愁は反俗的な感 りとて、思しおとすなめりと見れば、おどろかしきこえぬとこそは聞こえめ」情として彼の日常的栄華を支える。 一六匂宮。↓一二二ハー とのたまふ。 宅宮の衣。黄色を帯びた薄紅色。 はなだ 天濃い縹 ( 薄い藍 ) 。ともに夏用。 あした 一九女一の宮の過日の美しさが、 その日は暮らして、またの朝に大宮に参りたまふ。例の、 〔一三〕薫、女一の宮を慕 弟匂宮に共通。その姉宮が「まづ ちゃうじ い中宮のもとにまいる 宮もおはしけり。丁子に深く染めたる薄物の単衣をこまや恋しき」と慕われる。「女」の呼称 は、恋情をこめた表現である。 なほし かなる直衣に着たまへる、いとこのましげなり。女の御身なりのめでたかりしニ 0 浮舟への悲嘆ゆえの面やつれ。 ニ一一面では、恋情を抑制 にも劣らず、白くきよらにて、なほありしよりは面痩せたまへる、いと見るか一三なまじ女一の宮の姿をかいま 見たばっかりに、せつない思い。 ひあり。おばえたまへりと見るにも、まづ恋しきを、いとあるまじきこととしニ三物語絵を匂宮が持参。 一西女一の宮に。「我」は匂宮。 づむるぞ、ただなりしよりは苦しき。絵をいと多く持たせて参りたまへりける、ニ五薫も、中宮の御前に ニ六源氏や紫の上の思い出話か。 毛女一の宮に献呈した残りの絵。 蛉女房してあなたにまゐらせたまひて、我も渡らせたまひぬ。 ニ ^ 自邸にいる女一一の宮をさす。 ー・カ、つ 大将も近く参りよりたまひて、御八講の尊くはべりしこと、 いにしへの御事、ニ九宮中から離れて。 三 0 もとは皇女なのに、の気持。 すこし聞こえつつ、残りたる絵見たまふついでに、薫「この里にものしたまふ三一女一の宮から女二の宮への文 通のないことを訴え、その文面に ニ九 三 0 皇女の、雲の上離れて思ひ屈したまへるこそ、いとほしう見たまふれ。姫宮の接したい願望をかなえようとする。 ニ四 ニセ まへ ニ三 ニ 0 おもや ニ六 ひとへ

4. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

のち一 せうそこ その後、姫宮の御方より、二の宮に御消息ありけり。御手一女一の宮から、女二の宮に。 〔三〕薫の女一の宮思慕 薫の願望がかなえられた。 と、わが半生の回顧 ニ女一の宮に。 などのいみじううつくしげなるを見るにもいとうれしく、 語 三「芹川の大将ーは散佚物語の題 物かくてこそ、とく見るべかりけれと思す。あまたをかしき絵ども多く、大宮も名。「とほ君」は、主人公の芹川の 氏 大将の幼名か。この絵は、女一の 源奉らせたまへり。大将殿、うちまさりてをかしきども集めて、まゐらせたまふ。宮に恋する主人公が、思い余 0 て 女君を訪れる秋の夕暮の場面。 せりかは 芹川の大将のとほ君の、女一の宮思ひかけたる秋の夕暮に、思ひわびて出でて四今の自分の気持にそっくり。 女一の宮の名も共通している。 かた 行きたる絵をかしう描きたるを、いとよく思ひ寄せらるかし。かばかり思しな五自分を、女から思慕される物 語主人公に仮想して、かえって現 実の憂愁を際だたせる。 びく人のあらましかばと思ふ身そ口惜しき。 六物語の主人公に託してかなわ をぎ ゅふべ 薫荻の葉に露ふきむすぶ秋風もタそわきて身にはしみける ぬ恋を詠む。秋の夕暮の景に照応。 セ帝や中宮の寵遇の特に厚い女 と書きても添へまほしく思せど、さやうなるつゆばかりの気色にても漏りたら一の宮は、懸想してはならぬ相手。 〈憂愁を重ねた末に思うところ は。以下、薫の心中叙述に転ずる。 しいとわづらはしげなる世なれば、はかなきことも、えほのめかし出づまじ。 九亡き大君。憂愁の原点として かくよろづに何やかやと、ものを思ひのはては、「昔の人ものしたまはましか大君に回帰する点が、薫らしい 一二七ハー四 ~ 五行にも同様の叙述。 いかにもいかにも外ざまに心を分けましゃ。時の帝の御むすめを賜ふとも、一 0 大君との死別がなければ、女 二の宮の降嫁はありえぬとする。 得たてまつらざらまし。また、さ思ふ人ありと聞こしめしながらは、かかるこしかし薫は、皇女を得た世俗的繁 栄に浴すればこそ、反世俗の退嬰 こ、 ) ろう ともなからましを、なほ心憂く、わが心乱りたまひける橋姫かな」と思ひあま的な思念に身を委ねてもいる。 ( 現代語訳三三八ハー ) ほか けしき たいえい

5. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

おとど になさいまし。あの乳母殿がほんとに気短でいらっしやっ を、女君が少し起き上がって、「ほんとに聞きにくいこと。 % て、にわかにこんなことをお勧めになったのでございまし よその人となら、負けをとるまいとか、なんとでも思うが しんばう よう。昔も今も、じっと物事に辛抱して気長にしている人 、いけれど、あのお方のことはけっして口にしないでくだ 語 物のほうが、結局はお幸せになると申します」などと言って さいな。もしあちらのお耳にでもはいるようなことがあっ 氏 いるらしい。右近が、「どうしてあの乳母殿をお引きとめ たら、困ってしまいます」などと言う。 やっかい ひと できなかったのかしら。年寄の気持には厄介なところがあ 宮は、「いったいこの女は二条院の女君とどの程度の親 めのと るものですね」と憎まれ口をきいているのは、乳母といっ族なのだろうか。じつによく似通っている感じだが」と、 た人を悪く言っているらし、。宮は、そういえば、、、に 思い比べてごらんになると、 いかにも気のひけるくらい上 もいまいましい女がおったなと、お思い出しになるにつけ 品なところは、女君のほうが格段にすぐれていて、こちら ても、夢の中のようなお気持になっている。 はただ、いかにもかわいらしく、こまかに行き届いた美し 女房たちは、聞くに堪えないくらい、あれこれの内輪話 さがじつに好ましく感じられる。たとえ、どうやらといっ をして、「宮の上こそほんとにすばらしいお幸せなお方で た器量で、どこか不足なところが目についたとしても、あ ひと いらっしゃいますね。右大臣殿があれほどの結構なご威勢れほど逢いたいという執念を燃やしていらっしやった女を、 で重々しく大騒ぎをしていらっしやるそうですが、若君が これがその当人であることを見届けながらそのままひきさ お生れになってからは、段違いの有様でいらっしやるとい がっておしまいになれるようなご気性ではないから、なお うことです。こうした出過ぎた人々がおられないので、ゆ さらのこと、こうして何もかもごらんになっては、どうし ったりしたお気持で上手に取りしきっていらっしやるから たらこの女を自分のものにすることができるだろうか、と でしよう」と言う。「こちらの女君だって大将殿さえ心底分別もどこへやら夢中におなりになって、なおそのままじ いつまでも変らずいとしがっておあげあそばすのでしたら、 っと見つめていらっしやると、右近は、「ほんとに眠くな 宮の上に負けをおとりになるはずがありますか」と一一 = ロうのりました。昨夜もなんとなしに夜明けまで起きてしまいま ひ ひと

6. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

かすみ こずえ うに目をおやりになると、霞の絶え間絶え間に梢ばかりが腰は、なんとも言いようのないおやさしさである。 ものいみ 見える。山は鏡を懸けたようにきらきらとタ日に輝いてい 御物忌は二日間ととりつくろっておありなので、ゆっく るので、昨夜雪を踏み分けてきた道中の難儀のほどなど、 りとお逢いになって、お互いにいとしい思いをいよいよお 語 物女君の気持をそそる多くの言葉を添えてお話しになる。 深めになる。右近は、万事いつものように言いつくろって、 峰の雪みぎはの氷踏みわけて君にそまどふ道はまどは お召物などをお届けした。女君は、今日は乱れた髪を少し 源 こむらさき くしけヤ . ず 梳らせて濃紫の衣に紅梅の織物など、色の取合せも好も しびら ( 峰の雪や岸辺の氷を踏み分けて、あなたへの恋の道に迷い しく着替えていらっしやる。侍従もそれまで粗末な褶を着 つつも、この道には迷わずまっすぐに逢いにきたのです ) けていたのだったが、今日ははなやかに着替えたので、宮 すずり みちょうず 「木幡の里に馬はあれど」などと、粗末な硯をお取り寄せ はその裳をおとりになって女君にお着せになり、御手水の になって、すさび書きをなさる。女君は、 お世話をおさせになる。宮は、女一の宮にこの人を仕えさ なかぞら 降りみだれみぎはにこほる雪よりも中空にてぞわれは せたら、どんなにか大事に扱ってくださることだろう、お ひと 消ぬべき そばにはじっさい身分の高い家柄の女が多いけれど、これ ( 風に吹き乱されて岸辺に凍る雪よりもはかなく、私は空の ほどの器量よしはめったにいはしまい、とごらんになって 中途で消えてしまうことでしよう ) いる。はた目に見苦しく思われるほど遊び戯れては一日中 と、書きかけては中途で消した。宮は、この「中空」とあ お過しになる。人目を忍んでどこかへ連れ出してかくまっ とが るのをお咎めになる。女君は、いかにも不都合なことを書てしまいたい旨を繰り返し仰せになる。「それまでの間、 いてしまったものよと、恥じ入って引き破った。宮は、た あの大将に逢うようなことがあったら : : : 」と、難儀なこ だでさえ見とれるばかりのご容姿であるものを、女の、いに とをあれこれとお誓わせになるので、女君がほんとに無理 ご自分がますます慕わしくおみごとなお方のように印象づ なことをと思って、返事もできずに涙さえこばしている様 けられるようにと、あらんかぎりを尽されるお言葉や御物子に、宮は、この自分が目の前にいてさえ大将を忘れるこ こはた

7. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

447 各巻の系図 前の北の方 《蜻蛉の宮 ( 蠍第宮、父宮、父 《八の宮 ( 父親王 中将の君の母、親、 常陸介 ( 常陸守、守、常陸前守 ) 宇治の宮 △大君 ( 昔の人、橋姫 ) 左近少将 ( 少将 ) 子 出雲権守時方 ( 大夫 ) 侍従の君 子達阿闍梨 ( 律師 ) 弁の尼 ( 尼君 ) 右近大夫 ( 大夫 ) 内舎人ー女 浮舟の乳母 叔父の阿闍梨 女 侍従 宮の君 ( むすめ、女君、君、姫君 ) の君 ( 右大 近徳 宮、女君、宮の上、対の御 方、宮の御二条の北の方 浮舟電 ~ 君、女、 大蔵大輔 ( 仲信 ) 大弐 小宰相の君 ( 小 大納言の君 弁のおもと 中将のおもと ( 中将の君 ) 宰相の君、

8. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

源氏物語 446 △朱雀院 △麗景殿女御 女三の宮 ( 入道の宮、母宮 ) 氏 ( 六条院 ) △源 タ霧 0 姫殿、左大臣殿 馬頭△紫の上 北の方 今上帝龕当上 明石の中宮 ( 宮、后、后 の宮、大宮 春宮 一一の宮 ( 式部卿 ) 女一の宮切宮、 六の君 匂宮寧 卿親 女二の宮 ( 殿、大将殿、君、まめ 人、大将の君、大将 宮、時の帝の御むすめ、 女宮、皇女、二の宮

9. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

すずろなる嘆きのうち忘れてしつるも、あやしと思ひ寄る人もこそと紛らはし一わけもない嘆息。 四 りちしら 薫は、女一の宮への思慕を人 に気どられぬよう警戒する。 に、さし出でたる和琴を、ただ、さながら掻き鳴らしたまふ。律の調べは、あ 語 三御簾の中からさし出した。 物やしくをりにあふと聞こゆる声なれば、聞きにくくもあらねど、きはてたま 0 秋の調子。女の調子とも。 氏 五音楽に熱心な女房は、薫が弾 源はぬを、なかなかなりと心入れたる人は消えかへり思ふ。「わが母宮も劣りた奏を中止したのを心底残念がる。 六わが母女三の宮も、女一の宮 きさいばら みかどみかど に負けをとる身分でないとする。 まふべき人かは。后腹と聞こゅばかりの隔てこそあれ、帝々の思しかしづきた 以下、薫の心中。 こと′一と るさま、異事ならざりけるを。なほ、この御あたりはいとことなりけるこそあセ女一の宮は后 ( 中宮 ) 腹、女三 の宮は女御腹。その相違はあるが、 それそれの父帝の愛育は同じ。だ やしけれ。明石の浦は、いにくかりける所かな」など思ひつづくることどもに、 が女一の宮の高貴さは格別とする。 九すくせ わが宿世はいとやむごとなしかし、まして、並べて持ちたてまつらばと思ふそ ^ 明石の中宮一族の幸運を思う。 九女二の宮を妻にいただく自分 いと難きや。 の異数な宿運に思いを致し、さら に女一の宮をも加えて二人の皇女 を妻とすることを夢想する。あま 宮の君は、この西の対にそ御方したりける。若き人々のけ 三一〕薫、宮の君を訪い りにもしたたかな願望である。語 世間の無常を思う はひあまたして、月めであへり。「いで、あはれ、これも り手の「いと難きや」とするゆえん。 一 0 式部卿宮の姫君。↓一三七ハー また同じ人そかし」と思ひ出できこえて、親王の、昔心寄せたまひしものをと = 局 ( 自分の部屋 ) としていた。 三宮の君も同じ皇族の血筋で、 わらは とのゐ あり 父宮に愛育されたのに。薫の心中。 言ひなして、そなたへおはしぬ。童のをかしき宿直姿にて、二三人出でて歩き 一三亡き式部卿宮の生前の厚志。 などしけり。見つけて入るさまどももかかやかし。これそ世の常と思ふ。南面薫を婿に所望。↓東屋一五〇ハー かた わごん か ひ

10. 完訳 日本の古典 第二十三巻 源氏物語 ㈩

もお心が落ち着かず、どうして自分は長い間、この姫宮を にいらっしやったりして、昼ごろ女宮のお部屋にお越しに みきちょう お見あげ申したいと願っていたのだろう、なまじ苦しくて なると、先ほど仰せつけになったお召物が、御几帳にうち 何のかいもないはずのことなのに、と思う。 かけてある。「なぜこれをお召しにならぬのですか。誰か 語 物〔三〕薫、女一の宮と女翌朝、大将のお目に、お起きあそば大勢見ているときには、透きとおるものを着ていると無作 氏ニの宮とを比べて嘆くした女二の宮のお顔だちがじ 0 さい 法に思われます。でも、今でしたら差支えないでしよう」 いかにもお美しく見えるのは、このお方よりもあちらの姫とおっしやって、ご自分の手で着せておあげになる。御 くれない みぐし すそ 宮が必すまさっていらっしやるわけでもあるまいにとは思袴も昨日のと同じく紅である。御髪の豊かさや、その裾の われるものの、それでもやはりまるで似てはいらっしやら風情などは、あの姫宮に負けをおとりにならないけれども、 ないのだ、あの姫宮は、驚くばかり気高く、ほのばのとしやはり人それぞれということであろうか、同じようにはと たお美しさはなんとも言いようのないお姿ではあった、ひ ても見えない。大将は氷をお取り寄せになって、女房たち とつには気のせいだろうか、折が折だったせいだろうか、 にお割らせになる。その一つを取って女宮におあげになっ とお思いになって、「ほんとに暑いことですね。もっと薄たりなさるのも、ひとりお胸のうちで興深くお思いになる。 いお召物になさいまし。女はいつもと違ったものを着てい 昔から絵に描いて、恋しい人を見る人もないではなかった、 ふぜい るのがその時々によって風情のあるものです」とおっしゃ ましてこのお方は、、いを慰めるのに不似合いでない妹宮と ひとえ って、女房に、「あちらへまいって、大弐に、薄物の単衣 いう御間柄でおありなのだと思ってはみるものの、昨日こ のお召物を仕立ててまいれと言っておくれ」と仰せつけに のようにして自分もあのお仲間になって、心ゆくまで姫宮 なる。御前に控えている女房たちは、この女宮のご器量が、 を拝することができたのであったならと思うと、我しらず いつばん 今を盛りのおみごとさでいらっしやるのを、殿がもっとお嘆息をもらさずにはいられない。「一品の宮にお便りはさ 引き立て申されるのだと、おもしろく思っている。 しあげておられますか」と大将がお尋ねになると、女宮は、 大将はいつものようにご念誦をなさる。ご自分のお部屋「宮中におりました時、主上がそう仰せられましたので、 ( 原文一二七ハー ) ひ