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クインテット! 1

292 りん 放課後の生徒会室に凛とした声が響いていた。室内に集められた一一十名ほどの生徒達は、咳 払い一つせずに教室の正面に立つ一人の人物の言葉に耳を傾けている。 いのさとりんこ つや 声の主は、細身の体型に艶やかな黒髪を伸ばした生徒会長、猪里倫子であった。 「その行事とは、生徒たちの間で俗に裏祭りと呼称されているもののことです」 裏祭りという単語を口にした瞬間、倫子は少々取っつきにくい印象のある顔をますます険し くした。 そうして教室内の生徒達を見回し、大きく息を吸い込んでから、 あ いんしゅ - っ 「創立三十周年を迎える今年、桜川高生徒会はこの悪しき因習を断ち切るために、全力を挙げ てキャンペーンに乗り出すことに決定しました ! 」 カッカッカッカツー と、手にしたチョークを背後の黒板に叩きつけるようにして「裏祭り撲滅キャンペ 1 ンーと いう文字をでかでかと書き込んだ。 「このキャンペーンの実施に際し、私は一切手心を加えるつもりはありません。どのような手 段をもってしても必ず裏祭りを根絶する所存です。そしてその最大の要になるのが と言って倫子は再び黒板に向かい、一度黒板消しで先程の文字を丁寧に消した。後先考えず に大きく書きすぎたせいで、次の文字を書くスペースがちょっぴり足りなくなったらしい。 「あ、えと、しばし待機 ! 」 かなめ ぼくめつ

クインテット! 1

遊恋子はまた泣きそうになった。 と、塀の上によじ登った少年は、 「おまえ、なまえは ? たず 耳の後ろを掻きながら訊ねた。 パッと遊恋子の顔が明るくなる。 「 : : : ゅここ、あかみねゅここですっ ! 」 「ゆ、ここ ? へんななまえ」 「 : : : はう」 遊恋子はまたまた泣きそ、つになった。 「おれは、つばきけいすけ。じゃあな、ココ。 そ、 2 言い残して椿敬介は塀の向こうに姿を消した。 宣言どおり、敬介はそれからもたびたび屋敷に顔を出し、いかにも面倒くさそうな顔をしな がら遊恋子をたくさん泣かせてやった。 「おまえのせいで、いつもシャツがびしよびしょだぜ」 と、そのたびに敬介はこばした。といって、遊恋子の涙の量が人より多いことを責めるでも なく、遊恋子が泣き終えるとちょっぴり肌寒そうにしながら湿った服を着て帰っていった。 ・ : またくるからな」

フジュンじゃないだろ!

ひたい 額に縦皺。御霊寺父が目頭を押さえるあいだに、華やかな舞踏会のはしまりだ。 きらびやかに着飾った父兄一同が、いっせいにワルツにのって踊りだす。 そこに、 「よしつ。いまだ ! 」 まぎ 剣たち四人が、どさくさに紛れてホールの入り口をくぐり抜けていた。 しゅび ワルツの演奏開始とともに、首尾よく突入を試みたのだが、 あかずきん 「なあなあ、朱雀。あそこで赤頭巾と武士が抱き合ってる」 ひげ 「なあなあ、室伏い。チュチュ着たオヤジが、髭つきのお姫さまと、クルクルまわってダン おおくすだま 目前で入り乱れる仮装のおかげで、バクダンとおばしき大薬玉の下へは近づきたくとも近づ ひるがえ 王朝風ドレスがグルグルと回転し、赤頭巾の頭巾がプンプンと翻り、武士の刀と騎士の剣と こうさく るが危うく火花を散らしてダンスのあい間に交錯だ。 それでも負けしと、剣は大薬玉目がけて駆けだすが、 や「うひや ? なんだか見たことあるよ 5 なクマの着ぐるみだぞ。あっ、あの顔つて竹中に似て はっぴえり うえ、すんごいフリル付きの小鹿模様の半被。襟になんか書いて る ? ひやあっ、危ないー なら ある ? うーんと〃最高級のおもてなし : ・ : ・奈良でいちばん、鹿ヶ谷旅館み」

かのこん 6(ナギサのぱいぱいぷー)

192 逆さまになった人が、頭から浜辺に突き刺さっているように見えるのは、気の 「ど、つしました : せんりつ 戦慄という名の震えがすびずばと駆けぬけまくっていた耕太の背に、眠そうなふたりの 声かかかった。 振りむけば、蓮と藍だった。 蓮と藍が、テントの入り口から顔だけを覗かせ、しよばしよばと眼をこすっていた。 「あ、あれ : : : 」 耕太は波打ち際の墓標を指さす。指先が、震えてしかたがない。 「ああ : : : あれですか」 「あれは、忍びこんできたので、退治しました」 すご腕の鎖使いである蓮と藍は、きつばりといった。 予想どおりの答えに、ひっく、としやっくりをしてしまった耕太の前で、はわわ、とふ たりはあくびをしだす。くひ、と噛みつぶし、涙目になった。 「あの : : : ママの、 ハへのお仕事が終わったら 「戻ってきてもらっても、 いいでしよ、つか」 「あかねセンパイのおつばいまくらじゃ 「ちょっぴり、もの足りないです : ・ れんあい のぞ

風にのってきたメアリー・ポピンズ (岩波少年文庫)

「べつにだれも、おかあさん。それに、あげちゃいやしません。ただ、わたしが思ったのは 「ただ思った ! それは、ごしんせっさま。だけど、田 5 ってもらわないと、なおありがた ね。店でいりような思うことは、みんなこのわたしがやれるんだからね ! 」コリーおばさんは、 わら ものしずかな、おそろしい声でそういうと、調子はずれの、けたたましい笑い声をたてました。 「あの子をごらん ! ちょっと見てごらん ! よわむしのふぬけ ! あの、泣きむしった ら ! 」コリーおばさんは、キイキイ声をだして、節くれだった指で、娘のアニーを指さしまし ジェインとマイケルがふりむいて見ると、アニーの、だだっぴろい悲しそうな顔に、涙がほ ろぼろ流れていました。でもふたりは、なにもいう気にはなりませんでした。コリーおばさん は、まるでちっぽけなおばあさんなのに、じぶんたちふたりは、もっと小さいような気がして おばあさんがこわかったからなのです。それでも、コリ 1 おばさんがよそをむいたとき、ジェ なみだ インは、すぐそのすきに、アニーさんにハンカチをかしてあげました。涙はあとからあとから 出てきて 、ハンカチをびしょぬれにしてしまいました。そして、アニーは、それをジェインに かえすまえに、お礼の気もちをこめて、よくしばってくれました。 、」 0 むすめ なみだ 163

トム・ソーヤーの冒険〈下〉 (岩波少年文庫)

トム、おめえ、あの箱見たか ? 」 じゅうじか 「ハック、おれ、あたり見るどこじゃなかったんだ。箱も見なかったし、十字架も見なか った。見たのは、インジャン・ジョ 1 のわきにあったビンとブリキのコップだけさ。そうだ、 それから、たるが二つに、ビンがもっとたくさん、あの部屋にあったつけよ。だから、あの ゅうれい 幽霊の出る部屋ってのは、なんのことだかわかるだろ ? 」 「なんだ ? 」 「きまってら、ウイスキーのおばけが出るのさ ! 部屋があるんだぜ、 「へえ ! おめえ、どうした ? やっ、目えさましたか ? 」 「ううん、びくっとも動かないんだ。のんだくれてたのさ。おれ、タオルひつつかんで、 すぐ逃げて来ちゃったんだ。」 わす 「おらなら、タオルは忘れちゃうぜ、きっと。」 わす 「そりや、おれは忘れないさ。もしなくしたら、おばさんに、こっぴどいめにあわされる もの。」 ゅうれい きっと、酒なし宿屋には、みんな幽霊 はこ やどや 132

小公女 (岩波少年文庫)

な 、つも、てこず 手きびしくしかっても、泣きもしなければ、こわがりもしないので、先生は、、 っていたのです。しかられれば、だまって立ったまま、ましめな顔をして、いんぎんに耳をか たむけます。ばつをあたえられれば、余分な仕事までしたり、ごはんをたべないでおっかいに いったりします。ぐちをこばしたり、ロごたえをしたりするようなことはありません。ずうず うしく口ごたえをしたりしないということが、ミンチン先生には、かえって、ずうずうしいこ とのように思われました。しかし、きのうは、ごはんをたべさせなかったうえ、ゆうべは、あ んなにこっぴどくしかっておいたのだし、きようも、おなかをすかせていなくてはならないの だから、こんどこそは、しょげかえっているにちがいない、と先生は思いました。青ざめて、 な 目を泣きはらし、悲しそうな、ヘりくだった顔をして下へおりてこなかったら、それこそ、ふ しぎというものです。 れんしゅうもんだい セーラは、、 さいクラスにフランス語を読ませたり、練習問題を見てやったりするために、 教室にはいってきました。そのとき、ミンチン先生は、はしめてセーラを見たのです。セーラ けっしよく は、血色もよく、ロもとには、ほほえみをたたえて、足どりもかるくはいってきました。ミン チン先生は、こんなおどろいたことはありませんでした。まったく、きもをつぶしてしまいま した。この子どもは、なんでできているのだろう ? しオし、これはどうしたというわけ つくえ 先生は、さっそく、セーラを机のそばへよびつけました。 よぶん 322

帰ってきたメアリー・ポピンズ (岩波少年文庫)

そして、段を二段ずっとんで、いそいであがってゆきました。うしろから、ロヾ イが、あくびをして、のびをしながら、ついてゆきます。 ゞ、、ました。「ンツ ! 」と、フリルばあやカもし ふじんへや ハンクス夫人の部屋のまえへ、しのびよりました。 そして、指を一本、ロにあてると かぎあな 「ツツ、ツツ ! 洋服だんすしか見えやしない。」と、ばあやは、身をかがめて、鍵穴からのぞ まど きこみながら、こばしました。「洋服だんすと、窓がちょっぴり。」 しゅんかん しかし、つぎの瞬間、ひどく飛びあがりました。 「ああ、びつくりした ! 」部屋の戸が、いきなり、さっとあいたので、きいきい声をあげて、 ートソン・アイにぶつかりました。 飛びのきざま、ロヾ ぎやっこ ) 戸口には、メア リー・ポビンズが立っていました。逆光でふちどられていて、たいへんきびし りよううで もうふ うさんくさそうな顔つきをしていました。その両腕には、毛布のつつみのようなものを、た へん注意ぶかく、かかえていました。 「ああ ! 」と、ブリルばあやは、款をきらしていいました。「あんただったの ! ちょうど、戸 のハンドルをみがこうとしたところでね、びかびかにね、そこへ出てきたんだから。」 メアリ 1 ・ポビンズが、戸のハンドルを見ると、たいへん、よごれていました。 かぎあな ました。 「わたしだったら、鍵穴をみがいてたっていいます ! 」と、さすようにい、 しかし、・ フリルばあやは、しらん顔をして、毛布のつつみを、やさしい目つきで、じっと見て だん だん もうふ ノ 1 トソン・ア 154

クインテット! 1

たちまち復活した主水が慌てて椿家の面々を引き留めた。 しと 「 : : : ちつ、仕留め損なったかー 小さく舌打ちする敬介。 「聞こえてるぞ、こらあ ! 殺す気かっ ! 」 ・つつと - っ 「あ 5 もう、鬱陶しい。いちいち全力でリアクション返してくんなよ」 へきえき と、敬介は辟易とした様子で主水の方に向き直りつつ、実は内心ちょっぴりホッとしていた。 やはり女子のグループに、一人だけ男の自分が交ざっているのは居心地が悪い。主水が現れた ことでそこらへんの気恥ずかしさが緩和されたのは事実だった。 なので敬介は、態度には出さねども心の中で少しだけ主水に感謝した。 しゅうべえ 「あれ ? ていうか、十兵衛は ? 一緒じゃないのか ? 」 と、登校を再開しながら、敬介はこの場に主水の相方がいないことに気づいて訊ねた。 「ああ、あいつなら今日は先に登校したぜ。なんかまた部活の連中から呼び出し喰らったらし くて」 「あ ? なんだあいつ、まだあんな連中の相手してやってんのか。律儀な奴だな」 学 敬介が何やら感心した様子で頷いていると、 話 「んー ? ねえねえ敬介。十兵衛って、誰さん ? メンツ この面子の中で唯一十兵衛と面識のないツバメが訊ねてきた。

帰ってきたメアリー・ポピンズ (岩波少年文庫)

へ、姿を消しました。 公園の出入り口に、公園番が立っていました。腕をふって、足ぶみをしては、両手に息をふき かけて、暖めていました。 「ちょっぴり、春がほしいじゃありませんか ! 」と、公園番は、メアリー・ポビンズと子ども かいかっ もました。 たちが通りすぎるときに、快活にい、 「わたしはけっこうまんぞくです ! 」と、メアリー・ポビンズは、首をそらせて、きどって 答えました。 じこまんぞく 「自己満足ってことさ ! 」と、公園番がつぶやきましたが、ロに手をあてていたので、ジ = イ ンとマイケルにきこえただけでした。 マイケルが、ぐずぐずしてあとになっていましたが、かがんで雪をあつめると、手でまるめま 「ジェイン、ちょっと ! 」と、あまったるい声で呼びました。「いいものあげる ! 」 ジェインがふりむきました。そこへ、雪の玉が、ひゅうっと風をきってとんできて、肩さきに かなき あたりました。ジ = インは、金切り声をあげて、雪のなかへとびこむと、たちまち、雪の玉が、 いりみだれてとびました。そして、あっちこっちと、きらきらとびかう雪の玉のあいだを、メア リー・ポビンズが歩いてゆきます。しかつめらしく、とりすまして、心のなかでは、毛糸の手袋 をしてウサギの毛皮の外とうを着ているじぶんは、さぞ、すてきにみえるだろうなと思っていま すがた あたた よ かた てぶくろ 293