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検索対象: 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡
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1. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

おと またの日、雨いたう降る日まで音もせねば、「むげに思ひ絶えにけり」など わらはも ゅふぐれ 言ひて、端の方にゐたるタ暮に、かささしたる童の持て来たるを、常よりもと くあけて見れば、「水増す雨の」とあるを。いとおほくよみいだしつる歌ども三引歌不明。「真菰刈る淀の沢 水雨降ればつねよりことにまさる わが恋」 ( 古今・恋一一貫之 ) に似た よりはをかし。 趣の歌か 一三何首も詠んだ歌よりはおもし 二七三ただ朝は、さしもあらざりつる空の、いと暗うかき 曇りて くら く。も ただ朝は、さしもあら、さりつる空の、いと暗うかき曇りて、雪のかきくらし一四そんなふうでもなかった空が 一五あたりを暗くして降るのも。 降るも、いと心細く見いだすほどもなく、とう白く積もりて、なほいみじう降一六はなやかな姿の男が。「びび し」は、四二段・一三六段にも用 ずいじん るに、随身だちて、ほそやかにびびしきをのこの、からかささして、そばの方例が見えるが、語義は必ずしも確 かではない。 4 なる家の戸より入りて、文をさし入れたるこそをかしけれ。ましてうちほほゑ宅「ほほゑむ」は、複雑な内容を 持った笑い方をいうが、どのよう なニュアンスがこめられているも む、いとをかし。 のかはっキ、り・し↓ない 第 二七四きらきらしきもの あした はしかた かた

2. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

ひとがた 一人形、解き縄、散米など、祈 ひ出でて、祈りの物ども作るに、紙あまた押し重ねて、いと鈍き刀して切るさ 疇に用いるもの。 ニ御幣の類であろう。 ま、一重だに断つべくも見えぬに、さる物の具となりにければ、おのが口をさ こういう時に用いるものと決 子 っているものなので。 へ引きゅがめて押し切り、目おほかる物どもして、かけ竹うち切りなど、うら のこぎり 草 四鋸か。一説、竹を裂くのに かうがう いとさかし。かつは「何の宮の、用いる刃のたくさんついた工具。 枕に神々しうしたてて、うちふるひのる事ども、 五御幣をかける竹。 うら 六「うらに」不審。「占にと解く。 その殿の若君の、いみじうおはせしを、かいのごひたるやうに、やめたてまっ の 七「告る」で述べる、告げる意か。 りたりしかば、禄おほく給はりし事。その人々召したりけれど、しるしもなか〈祈る一方では以下のように語 って聞かせる。 とく 九私がお治し申しあげたので。 りければ、今に女をなむ召す。御徳を見ること」など語るもをかし。 一 0 誰それの人々。他の祈疇師。 一一底本原本「女」。このお婆さん 下衆の家の女あるじ、痴れたる者そ。それ、をかし。 を、と自称したものとする。 三「女あるじ」で切る説もある。 まことにさかしき人をかしなどすべし。 一三三位以上の人。公卿。以下名 門の官のうち特に名誉のある兼官 をあげる。次段も同じ。 二三五上達部は 一四東宮坊の長官。摂関の子息、 一九 大臣の子孫で大・中納言の兼任。 とうぐうの とうぐうのだいぶさうのだいしゃうごんだいなごんさいしゃうのちゅうじゃうさんみの 上達部は春宮大夫。左右大将。権大納言。宰相中将。三位中将。春宮従四位下相当。 一五近衛府の長官。大納言・大臣 ごんのだいぶじじゅうのさいしゃう の兼任。名門の人が任ぜられる。 権大夫。侍従宰相。 一六定員外の大納言。大臣に昇る べき人が任じられる重職 かんだちめ ひとへ た ろく し かさ 五 にぶかたな とう

3. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

177 第 281 ~ 282 段 ゃうへ みじうしだる。土などこそ、むらむら黒きがちなれ、屋の上はただおしなべて上げたれば」。 一五薄紫。以下、車に乗っている ありあけ しづやおも 女房の服装。 白きに、あやしき賤の屋も面隠して、有明の月の隈なきに、いみじうをかし。 一六車に乗っている男の服装。 すいしゃうくき いだしぎめ しろがねなどを葺きたるやうなるに、水晶の岫など言はまほしきゃうにて、長宅出衣のさま。 のうしえり 天直衣の襟の入れ紐。紐を解く く短く、ことさらかけわたしたると見えて、言ふにもあまりてめでたき垂氷に、のはくつろいだ姿。 一九車の前にわたした仕切板。 したすだれ 下簾もかけぬ。いと高く簾を上げたれば、奥までさし入りたる月に、薄色、紅『和名抄』に「軾」を「止之岐美 ( トシ キミ ) 」と読む。 ななつやっ ニ 0 月の光のきまりわるさに女は。 梅、白きなど、七八ばかり着たる上に、濃き衣のいとあざやかなるつやなど、 しんでん りんりん 三「秦甸ノ一千余里、凜々トシ えびぞめかたもんさしぬき 月に映えてをかしう見ゆるかたはらに、葡萄染の固紋の指貫、白き衣どもあまテ氷鋪ケリ。漢家ノ三十六宮、 ふんかぎ 澄々トシテ粉錺レリ」 ( 和漢朗詠 一七 なほし ひも やまぶきくれなゐ た、山吹、紅など着こばして、直衣のいと白き紐解きたれば、ぬぎ垂れられて、集・十五夜 ) の句による。ただし八 月十五夜の詩を月という内容から さしぬきかたかた 一九 いみじうこばれ出でたり。指貫の片っ方は、とじきみの外に踏み出だされたる十二月に吟じたことになる。 一三底本原文漢字書き。「し」と読 ニ 0 など、道に人の会ひたらば、をかしと見つべし。月影のはしたなさに、うしろむべきであろう。 ニ三敬語が使ってあるのは、作者 の体験を暗示するものか。 ざまへすべり出でたるを、常に引き寄せあらはになされてわぶるもをかし。 ニ四以下この女性は作者であるか りんりん 、一ほりし しみのような筆致である。はじめの部 「凜々として氷鋪けり」といふ詩を、かへすがヘす誦んじておはするは、、 分は作者が外から車を見ている客 よひとよ 観描写であったが、体験したこと じうをかしうて、夜一夜もありかまほしきに、行く所の近くなる、くちをし。 なのでいつの間にか混じたものか。 男女相乗りの珍しい情景である。 は っち ニ四 一六 おく きめ と きめ た ひも

4. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

はぎ すこし日たけぬれば、萩などの、いと重げなりつるに、露の落つるに、枝の三竹や木など間を透かして編ん かき だ目隠しの垣。 らもん 一三「羅文」の字音という。羅文は うち動きて、人も手触れぬに、ふとかみざまへあがりたる、いとをかし。 透垣の上部につけた飾り。細い竹 こ、 ) ち いみじうをかしと言ひたる事、人の心地には、つゆをかしからじと思ふこそ、や木を菱形に交差して組んだもの。 一四くもが巣を張るのを「かく」と またをかしけれ。 一五三巻本「白き玉を」の方が解し やすい 一六上の方へはねあがるのは。 一三四七日の若菜を 宅私 ( 作者、清少納言 ) が、この ようにここで「をかし」と言ってい わかな むいか 七日の若菜を、人の六日もてさわぎ取り散らしなどするに、見も知らぬ草を、ること。 一 ^ 正月七日、七種の若菜を食し て災いを払う風習。 子どもの持て来たるを、「何とかこれを言ふ」と。とみにも言はず、「いさ」な 一九仮に、下に「問ふ」などの省略 みみなぐさ があるとみたが不審。脱文か。 ど、これかれ見合はせて、「耳無草となむ言ふ」と言ふ者のあれば、「むべなり ニ 0 さあ。疑念を持っている時に けり。聞かぬ顔なるは」など笑ふに、またをかしげなる菊の生ひ出でたるを持発する語。 ニ一耳菜草。なでしこ科の野草。 一三「耳が無い草ー即ち「聞かない 緞て来たれば、 草」ととりなして、子どもが「とみ にも」答えず知らぬ顔をしている つめどなほ耳無草こそっれなけれあまたしあれば菊もまじれり ことに一一 = ロいかけた。 第 ニ三「摘むーとつねる意の「抓む」、 と言はまほしけれど、聞き入るべくもあらず。 また「菊」と「聞く」をかける。 ニ四子どもなので理解できない。 お ニ 0

5. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

あす 一だしぬけに私が「あしたはど しき、さか思ひめぐらし、 ついでもなく、「明日はいかなる詩をか」と言ふに、、 のような詩を吟詠なさいますか」 ニ一一口 , っと。 とどこほりもなく、「人間の四月をこそは」といらへたまへる、いみじうをか 子 ニ「思ひめぐらし」は下の「なく」 なか 草しきこそ。過ぎたる事なれど、心得て言ふは、をかしき中にも、女房などこそで否定されるとみることもできる。 三「人間ノ四月芳菲尽キ、山寺 さやうの物忘れはせね、男はさもあらず。よみたる歌をだになまおばえなるを、ノ桃花始メテ盛ニ開ク : ・」 ( 白氏文 集・大林寺桃花 ) 。あとの記述によ うち 五 四 ると、三月に七月の詩を吟じたの まことにをかし。内なる人も、外なる人も、心得ずと思ひたるそ、ことわりな で今度は逆を答えた。 四男性なのに宰相中将は。 るや。 五なぜ四月の詩なのかわからず。 六 ほそどのいち てんじゃうびと 六というのは今年の三月晦日の この三月つごもり、細殿の一のロに殿上人あまた立てりしを、やうやうすべ ことなのだが。 とうの ほそどの つばね り失せなどして、ただ頭中将、中将、六位一人残りて、よろづの事一『〔ひ、経、登華殿 0 細殿。女房 0 局など がある。 一一わか よみ歌うたひなどするに、「明け果てぬなり。帰りなむ」とて、「露は別れの涙 ^ 斉信。 九宣方。 一 0 一種の娯楽としたもの。 なるべし」といふ事を、頭中将うち出だしたまへれば、源中将もろともに、し = 「露ハマサニ別ノ涙ナルペシ たなばた ず ・ : 」 ( 和漢朗詠集・七夕道真 ) 。露 いそぎたる七夕かな」と言ふを、いみじうねたが とをかしう誦んじたるに、 きめめ は織女星が牽牛星と別れる後朝の あかっき すぢ 涙であろう、という趣の詩。 りて、「暁の別れの筋の、ふとおばえつるままに言ひて、わびしうもあるわざ 三三月末なのに七夕の詩を吟じ かな」と、「すべてこのわたりにては、かかる事思ひまはさす言ふは、くちをた季節ちがいをからかった。 一三暁の別れという点でこの詩は あ かづらき しきぞかし」など言ひて、あまり明かくなりにしかば、「葛城の神、今ぞずちまさにふさわしいので、ふと思い をとこ ひとり

6. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

27 第 125 段 あをやなぎ どもの、しのぶと見ゆる二三人、桜の襖、柳などをかしうて、くくりあげたる三巻本は「あてやかにぞ見なさる る」で切れる。 すそ さうぞく 指貫の裾もあてやかに見なさるる、つきづきし。をのこに、装束をかしうした三三巻本「つきづきしきをのこ」。 一三食物を入れて携行する袋。弁 ゑぶくろいだ こどねりわらは もえぎかりぎめ おす る餌袋抱かせて、小舎人童ども、紅梅、萌黄の狩衣に、色々の、押し摺りもど当入れ。 一七 一四近衛中・少将の召し連れる少 はかま さぶらひ ろかしたる袴など着せたり。花など折らせて、侍めきてほそやかなる者など具年であるが、貴族一般の召し使う 少年にも転用したかという。 こんく して、金鼓打っこそをかしけれ。「さそかし」と見ゆる人あれど、いかでかは一五「色々の」は袴にかかるとみる。 三巻本「色々の衣」。 知らむ。うち過ぎていぬるも、さすがにさうざうしければ、「けしきを見せま一六「花を折る」は、実際に花の枝 を折るのではなく、容姿・行動な しものを」など言ふもをかし。 どをはなやかにする意に中古中期 から用いられるので、ここもそれ とみる説もある。しかし「花など かやうにて、寺に籠り、すべて例ならぬ所に、使ふ人の限りしてあるは、か 折る」が果して同じ意であるかど うか疑わしい ひなくこそおばゆれ。なほ同じほどにて、一つ、いに、をかしき事も、さまざま 宅親王・摂家・大臣以下諸家の に言ひ合はせつべき人、かならず一人二人、あまたもさそはまほし。そのある家人。 天鰐ロ。堂の前に高くかけ、そ めな めのひも こから垂した布紐で打ち鳴らす。 人の中にも、くちをしからぬもあれども、目馴れてなるべし。男なども、さ思 一九特別会いたいわけではないが、 ーし、かーし。 ふにこそあンめれ、わざとたづね呼びもてありくめるは。 ニ 0 その使う人の中で、自分のも とにある人。 三詠嘆の助詞とみる。 一二五いみじく心づきなきものは 九 一四 れい ひとりふたり ぐ わにぐち

7. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

かねずみ しとをかしくて、「『言はば一一 = ロはむ』と、兼澄が事を思ひた言はなむ」は、文句を言いたいな く」と倒し取るに、、 ら言ってもよかろう、の意。 るにや」とも、よき人ならば言はまほしけれど、「かの花盗む人はたれぞ。あ一六源兼澄か。歌の中に該当する ものはない。作者の記憶の誤りか。 宅歌のことがわかりそうな人な しかンめり。くてんしらざりけるよ」と言へば、笑ひて、いとど逃げて、引き ら言いたいところだが。 天作者の言葉。新参の作者では もていぬ。なほ殿の御心はをかしうおはすかし。茎どもに、濡れまろがれつき なく他の女房の言とみる説もある。 「くてん」不審。三巻本ナシ。 て、いかに見るかひなからましと見て、入りぬ 一九見苦しい桜をひそかに取り去 とのもりにようくわん みかうしニニ かもんづかさ 掃部司まゐりて、御格子まゐり、主殿寮の女官御きよめまゐり果てて、起ったから。 ニ 0 茎に、花がまるまってついて、 っちいにける」もしそのままだったら、さぞかし。 きさせたまへるに、花のなければ、「あなあさまし。かの花はい。 三後宮十二司の一。清掃・用度 つかさど あかっきニ四 と仰せらる。「暁、『盗む人あり』と言ふなりつるは、なほ枝などをすこし折るの雑事を司る。 一三お上げ申しあげ。 ニ五はべ ニ三宮中の清掃・乗物・灯火・燃 にやとこそ聞きつれ。誰がしつるぞ。見つや」と仰せらる。「さも侍らず。 ニ六 料などを司る。 しろ まだ暗くて、よくも見はべらざりつるを、白みたる物の侍れば、花折るにゃな = 四「かの花盗む人 : ・、をさす。 一宝作者の言。一説他の女房の言。 段ど、うしろめたさに申しはべりつると申す。「さりとも、かくはいかでか取兵下衆の白布の狩衣をさすか。 毛作者の言。春風がいたしまし -6 らむ。殿の隠させたまへるなンめり」とて笑はせたまへば、「いでよも侍らじ。 ニ ^ 「春風 : ・」と言おうと思って。 第 ニ八 春風のして侍るならむ」と啓するを、「かく言はむとて、隠すなりけり。盗み = 〈「降 ( 古 ) りにこそ降 ( 古 ) る」で、 雨が降るので古びてしまった、と ・ 4 いうわけだったのね、の意とみる。 にはあらで、ふりにこそふるなりつれ」と仰せらるるも、めづらしき事ならね ニ九 ニ 0 くき ニ七

8. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

宅敬意を表して、上げてある簾 ながえ を下ろす、とみる。三巻本「轅ど もある限りうちおろして」。 天自分の車の前に立っている車。 一九車の主に申入れをする。 ニ 0 不審。三巻本「よきところの 御車」。 そえぐるま ニ一副車。供の女房が乗る。 一 = 一粗末な車。 ニ三場所が空いている方。 あかっき 細殿にびんなき人なむ、暁にかさささせて出でけるを言ひ出でたるを、よく一西風流には遠いふるまい。 ひさし すのこ ニ七 一宝簀子に沿った廂の間を区切っ うへ つばわ て局としたもの。 聞けば、わが上なりけり。地下などいひても、目やすく、人にゆるされぬばか ほそどの ニ六 ( 細殿に ) 出入りしては困る男。 ふみも ニ九 りの人にもあらざンなるを、「あやしの事や」と思ふほどに、うへより御文持毛地下の身分とはいっても。 夭難のない家柄で。 かへり′】と ニ九清涼殿での中宮の御座所。 て来て、「返事ただいま」と仰せられたり。何事にかと思ひて見れば、大かさ 三 0 大傘の絵を描いて。 三一手だけに傘を持たせて。 のかたをかきて、人は見えず。手の限りかさをとらへさせて、しもに、 三ニあなたの所から傘をさして男 が出たその朝から。中宮がうわさ みかさ山やまの端明けし朝より 段 を作者にたすねられたもの。「あ 幻と書かせたまへり。なほはかなき事にても、めでたくのみおばえさせたまふに、やしくもわれ濡れ衣を着たるかな 第 三笠の山を人に借られて」 ( 拾遺・ ごと はづかしく、、いづきなき事ま、、ゝ 。し力でか御覧ぜられじと思ふに、さるそら言な雑藤原義孝 ) に拠る。 三三「させたまふ」は中宮への二重 敬語。作者に感じられあそばす。 どの出で来るは苦しけれど、をかしうて、こと紙に、雨をいみじう降らせて、 ずかし。いと清げなれど、またひなびあやしく、下衆も絶えず呼び寄せ、ちご 出だしすゑなどするもあるぞかし。 二一五細殿にびんなき人なむ、暁にかさささせて出でける を ほそどのニ六 あした ニ四 三三 ほ 0 ぎめ

9. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

一朝の顔に「朝顔」をかけて、下 ど、いみじうぞめでたき。 の「時ならず」を日が上りすぎて寝 くたれ顔に合わないの意と二月 殿おはしませば、寝くたれの朝顔も、時ならずや御覧ぜむと引き入らる。お に朝顔という季節外れの意をきか 子 はしますままに、「かの花は失せにけるま。 。いかにかくは盗ませしぞ。いぎたせる。 草 ニ関白の冗談。 三『忠見集』の「桜見に有明の月 枕なかりける女房たちかな。知らざりけるよ」とおどろかせたまへば、「されど、 に出でたれば我より先に露そおき ける」による。ここは作者以外の われより先にとこそ思ひてはべるめりつれ」と言ふを、いととく聞きつけさせ 四 誰かがこう思っていた、と作者が さいしゃう五 たまひて、「さ思ひつる事ぞ。世にこと人、まづ出でて見つけじ。宰相とそこ道隆に告げたもの。 四「宰相の君」であれば田二〇段 ・八七段などに見える才女。 とのほどなむとおしはかりつ」とて、いみじう笑はせたまふ。「さりげなるも 五作者。 のを、少納言は春風におほせける」と、宮の御前のうち笑はせたまへる、めで六「山田さへ今は作るを散る花 のかごとは風に負ほせざらなむ」 たし。「かごとおほせはべるなンなり。今は山田も作らむ」とうち誦んぜさせ ( 貫之集・第一 ) による。 セ作者の「春風」の言を『貫之集』 の歌で受けた中宮の機知を賞でた。 たまへるも、いとなまめきをかし。「さてもねたく見つけられにけるかな。さ ^ 『貫之集』の歌による道隆の言。 ばかりいましめつるものを。人の所にかかる痴れ者のあるこそ」とのたまはす。恨みごとを私に負わせたようでご ざいます、の意か ごと 九道隆の侍をふざけて言うもの 、とをかしう言ふかな」など、誦んぜさせたまふ。「ただ言に とばけて、か はうるさく思ひょりてはべりつかし。今朝のさまいかに侍らまし」とて笑はせ一 0 わかりにくい。 = 歌ではない普通の言回し。 一五め たまふを、小若君、「されどそれは、、 しととく見て、『雨に濡れたるなど、面伏三煩わしい思いっきでございま 「春風は、空に、し さき そら 六 やまだ ず おもてぶ

10. 完訳 日本の古典 第十三巻 枕草子 ㈡

( 現代語訳三五〇ハー ) がうるはしき、またしらががみむくつけげなるなど、おほくて、いとなげにて、一六供の者がたくさんいて。 宅暇無げ。いそがしげ。 ここかしこにゃんごとなきおばえあるこそ、法師もあらまほしきわざなンめれ。一 ^ 捨てておけない大切なものと しての世間の信望が厚いのこそ。 一九 一九この一文三巻本ナシ。法師の 親などいかにうれしからむとこそおしはからるれ。 親についての言。 ニ 0 この段を以って能因本の実質 上の章段は終る。 三二〇見苦しきもの ニ一抜き衣紋にして着ること。 一三たまに来る人。一説、並々で したすだれ きめせめ くび はない人、また一説、病人。 見苦しきもの衣の背縫ひ片寄せ着たる人。またのけ領したる人。下簾きた ニ三不釣合のさまか。 わらは かんだちめ ニ四婦人の外出姿。 なげなる上達部の御車。例ならぬ人の前に、子をゐて来たる。袴着たる童の、 おんし 4 うじ 一宝法師なのに神職の陰陽師を兼 あゆき いまや、つ あしだ つばさうぞく 足駄はきたる。それは今様の者なり。壺装束したる者の、いそぎて歩み来たる。ねる者。 かみかぶり ニ六三巻杢・紙冠」とある。額につ ニ五おんやうじ はらへ そうよう 法師陰陽師のかうぶりして祓したる。また色黒うやせ、にくげなる女のかづらける三角形の白紙で、神が僧形を 忌むのでつけるものかという。 をとこ ひげ したる、鬚がちにやせやせなる男と昼寝したる。何の見るかひに臥したるにか毛かもじ。入れ毛。 夭寝るのが当然なこと。 よる 段あらむ。夜などはかたちも見えず、また、おしなべてさることとなりにたれば、堯朝早く起きて立ち去る。寝起 きの顔は醜いから。三巻本「起き われにくげなりとて、起きゐるべきにもあらずかし。っとめてとく起きいぬる、ぬる」。 第 三 0 つまらない顔かたち。 目やすしかし。夏、昼寝して起きゐたる、いとよき人こそ、いますこしをかし三一油ぎって光るさま。 0 三ニ寝て押しつけたために顔がい 三 0 びつになること。 けれ、えせかたちは、つやめき寝腫れて、ようせずは、頬ゆがみもしつべし。 ニ六 れい かたよ 三ニ はかま ふ ニ九