オマジナイ - みる会図書館


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1. リング

214 浅川は怒りをどこにぶつけていいかわからない。 : こんなところに来るんじゃなかった。毎ゃんでも毎やみきれない、しかし、どこま さかのぼ で遡って後悔すればいいのか、あんなビデオなど見るべきじゃなかった、大石智子と岩田 秀一の死に疑念をはさむべきじゃなかった。あんなところでタクシーを拾うんじゃなかっ た。ええい、クソったれー 「おい、落ち着けっていうのが、わからねえのかい ? 早津さんに文句言ったって仕方ね えだろうが」 妙に優しく竜司は浅川の腕を握った。「考えようによっちゃあよお、オマジナイの実行 はこの島でなければできないかもしれないだろ。な、そういう可能性だってある。例の四 人のガキどもがなぜオマジナイを実行しなかったか : : : 、大島まで来るゼニがなかったか ら : ・ : 、な、有り得るだろ。この嵐を恵みの風と考えてみろや。そうすりゃあ、気分も治 まる」 「それは、オマジナイを発見してからのことだろう ! 」 浅川は竜司の手を振り払った。いい年をした男がふたり、オマジナイオマジナイと騒い でいるのを見て、早津と妻のふみ子は顔を見合わせたが、浅川にはふたりが笑っているよ うに見えた。 「なにがおかしいんですか ? ふたりに詰め寄ろうとした浅川の手を、竜司は以前よりも強く引いた

2. リング

111 たのか。それとも、単に、オマジナイを実行しなかったから殺されたのか。いや、それ以 こ、オマジナイを消してしまったのが本当に例の四人かどうか、その確認が必要だ。ひ よっとして、四人が見た時もう既にオマジナイが消されていたってこともある」 「確認するっていっても、どうやって ? 四人に聞くことはできないぜ」 浅川は冷蔵庫からビールを取り出し、グラスについで竜司の前に置いた。 「まあ、見てみろや」 竜司はビデオのラストを再生し、オマジナイを消している蚊取り線香のの終わる瞬 ねら 間を狙って一時停止させ、ゆっくりとコマ送りをしていった。行き過ぎ、戻し、また停止、 。すると、ほんの一瞬、テーブルを囲んで座る三人の人間のシーンが現れた。 コマ送り : すんでの所で、 0 のはさまれた番組のシーンが引っ掛かっていたのだ。その番組は夜十 一時から放送される全国ネットのナイトショウで、三人のうちのひとりはだれもが知って いる白髪の流行作家、ひとりは若く美しい女性、そしてもうひとりは関西を中心に活躍す る若手落語家であった。浅川は画面に顔を近づけた。 グ「おまえ、この番組知ってるだろ」 ン 竜司が聞いた。 「 Z で放送中のナイトショウだ」 「だろ ? 流行作家は司会者、女はアシスタント、でもって、落語家はこの日のゲストっ てわけだ。だからよ、この落語家をゲストに迎えた日がいつなのかわかれば、四人がオマ

3. リング

110 「子供の遊びじゃねえのか 「ガキの頃、よくこんなことしなかったか ? 恐い絵かなにかを見せて、コレを見た者は 不幸になるとか言って友達を脅すャツ。あるいは不幸の手紙とかよお」 もちろん、浅川にも経験があった。夏の夜に聞かされた怪談にも、似た。ハターンのもの があった。 「だから ? 「いや、別に。ただ、ちょっと、そんなふうに感じただけだ」 「他に何か気付いたことがあったら言ってくれ」 「そうだな、映像自体はそれほど恐いものじゃねえな。現実的なものと、抽象的なものと が混ざり合っているように見える。もし、四人の男女がこの言葉通りに死んでしまったっ て事実がなければ、〈ンこんなモンと鼻であしらうことができる。そうだろ ? 」 浅川はうなずいた。どうしようもなくやっかいなのは、ビデオの言葉が嘘でないことを 知っていることである。 「まず、第一に、四人の馬鹿がなぜ死んでしまったか、その理由を考えてみよう。ふたっ 考えられるだろ。ビデオのラストで『これを見た者全ては死ぬ運命にあり』と言い、その 後すぐオマジナイ : 、おい、これから、死の運命から逃れる方法のこと、オマジナイと 呼ぶことにしようぜ。さて、四人はそのオマジナイの部分を消してしまったから、殺され

4. リング

319 裏に挿入されてきた。そこを開く。瞬間、浅川の目の中にひとつの単語が段階的にグッグ ッグと拡大されて飛び込んできた。 増殖増殖増殖増殖 ウイルスの本能、それは、自分自身を増やすこと。『ウイルスは生命の機構を横取り して、自分自身を増やす』 「おおおおおお ! 浅川はすっとんきような声を上げた。オマジナイの意味にようやくつき当ったのだ。 オレがこの一週間のうちにやったこと、そして竜司がやらなかったこと、明らか じゃないか。オレはあのビデオをビラ・ロッグキャビンから持ち帰ると、ダビングして 竜司に見せた。オマジナイの中身、簡単じゃないか、だれにでもできることだ。ダビン グして人に見せること : 、まだ見てない人間に見せて増殖に手を貸してやればいいん だ。例の四人は、あんなイタズラをして、愚かにもビデオテープをビラ・ロッグキャビ ンンに置いてきてしまった。だから、わざわざ取りに戻ってオマジナイを実行しようとし やっ こ又よ、よ、。 どう考えてもそれ以外の解釈はできない。浅川は受話器を持ち上げて足利の番号を回 した。電話口に出たのは静だった。

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311 リング 「いくらわたしが呼んでも、先生、返事してくれなくて : : : 」 浅川は舞に泣く暇を与えなかった。 「その時、部屋の様子で何か変わったところは ? 」 舞は首を横に振った。 : ただ、受話器がフックからはずれて耳障りな音を出していました」 : 。なんのために ? 浅川はもう一 竜司は死の瞬間、舞のところに電話をかけていた : ・ 度念を押した。 「本当に竜司君はあなたに何も言い残してないんですね ? たとえば、ビデオテープのこ ととか : 「ビデオ ? 舞は、先生の死とビデオと一体どんな関係があるのとばかり顔をしかめた。死の直前に なって、竜司がオマジナイの真の意味を解き明かしたかどうか、浅川には知りようがなか 果たして、竜司はなぜ高野舞に電話をかけたのだろうか。あいつは、自分の死が近 : 。ただ単に、死ぬ前に愛す いことを知って、彼女のもとに電話したに違いないのだが : る者の声を聞きたかったっていうのか。こうは考えられないか、竜司はオマジナイの謎を 解き明かし、それを実行するために高野舞の力を借りようとした。だから、彼女のもとに 電話を入れた。つまり、オマジナイを実行するには第三者の力が必要となる。

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185 が現実である以上、原因と結果がわからなくてもただ現象面だけを捉えて対処していくし かない。我々がまずなすべきことは、オマジナイの謎を解いて生命の危機を脱することで あって、超能力の謎を解き明かすことではない。言われれば、確かにその通りだ。しかし、 浅川が竜司に期待するのは、もっと明解な答えであった。 沖に出るに従って揺れはひどくなり、浅川は船酔いのことを心配し始めていた。意識す るほどに、胸のあたりがモゾモゾしてきてしまう。うつらうつらと眠りかけていた竜司が ふと顔を上げて外を見た。海は濃い灰色に波立ち、前方にはぼんやりと島影が浮かんでい る。 「なあ、浅川。ちょっと気に掛かることがあるんだが」 「なんだ ? 「ロッグキャビンに泊まった四人のガキどもは、どうしてオマジナイを実行しなかったの ミ」イつ、つ : なんだ、そんなことか。 グ「決まってるじゃないか。ビデオの内容を信じなかったからさ」 ン 「もちろん、オレもそう思ったさ。だから、オマジナイを消すなんてイタズラをしたんだ ってな。だがな、オレはふと思い出した、高校の頃、陸上部の合宿中、夜中に斎藤が部屋 に飛び込んで来やがったんだ。覚えているだろ、斎藤 : : : 、あのうすらバカ。部員は全部 で十二人、皆同じ部屋で眠っていた。あの野郎、部屋に飛び込むなり、顎をがくがく揺ら とら

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必要であった。さて、ここで重要になるのは、何故、オレは生きているのかということ。 引これに対する回答はひとっしかないだろう。この一週間、気付かないうちに、オレはオマ ジナイを実行していたのだ ! それ以外にどんな説明がある。ようするに、オマジナイは 第三者の手を借りればだれにでもたやすくできることなんだ。しかし、ここでまた疑問点。 ではビラ・ロッグキャビンに泊まった例の四人はなぜ抜け駆けしてオマジナイを実行しな かったのか。簡単にできることなら、他の三人の前では強がって見せておいて、後でこっ そり実行してしまえばいいじゃないか。よく、考えろ。 しし力い、オレはこの一週間、な にをした。竜司は明らかにやってないことで、オレがしたことはなんなんだ ? そこまで考えると、浅川は叫び出した。 「わかるわけねえじゃねえか ! そんなこと。この一週間、オレはやったけれども竜司は やらなかったこと : 、そんなもの山程ある。冗談じゃねえ」 こぶし 浅川は、山村貞子の写真を拳で打った。 「コノヤロー。おまえ、どこまでオレを苦しめれば気がすむ」 何度も何度も山村貞子の顔面を打ち据えた。しかし、山村貞子は表情も変えず、あくま で美しさを保っている。 浅川はキッチンに行き、ウイスキーをグラスになみなみと注いだ。頭の一点に充血して しまった血を、もとに戻す必要があったからだ。グイと一気にあおろうとして、手を止め た。オマジナイの方法を思い付き、夜中に足利まで車を運転しないとも限らない、酒は控

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232 浅川は不服そうな顔をしていた。 「なあ、少しは自分の頭で考えろや、おまえさん、ちょっと人に甘え過ぎだぜ。もし、オ レになにかあって、おまえ一人でオマジナイの謎を解くハメになったらどうする ? 」 そんなことは有り得ない。浅川が死に、竜司ひとりでオマジナイを解くことはあるかも しれない、しかし、その逆のパターンはない。浅川はその点にだけは確信を持っていた。 通信部に戻ると早津が言った。 「吉野って方から電話がありましたよ。外からなので、十分したらもう一度かけ直すって 言ってました」 浅川は電話の前に座り込み、いい知らせであることを祈った。ベルが鳴った。吉野から であった。 「さっきから何度も電話してるんだが : : : 」 吉野の声にはささやかな非難が含まれている。 「すみません、食事に出ていてー 「それでと、 : ファックス届いたかい 吉野の口調がわずかに変わった。非難の響きが消え、その代わりに優しさが含まれる。 浅川はいやな予感がした。 「ええ、おかげでとても参考になりました」 浅川はそこで受話器を持つ手を左から右に代えた。

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187 ても、東京に帰ってからこっそりと実行に移すことだってできる」 嫌な予感が強まった。実は、浅川自身、このことにふと考え及んだことがあったのだ。 : つまり、もしオマジナイが実現不可能なことであったらどうしようと。 「実現不可能であったから、信じないことによって自分を納得させてしまったというわけ 浅川がその時思い浮かべたのはこんな喩えであった。何者かに殺された女が、現世にメ ッセージを残し、人の手を借りて自分の恨みを晴らそうとしている : 「おまえが何を考えているかわかるぜ、オレには。どうする ? もし、そうだったら」 もし、ある一人の人間を殺せという類の命令が込められているとしたら、自分の命を救 うために見ず知らずの人間を殺すことができるかどうか : : : 、浅川は自問した。それより も問題なのは、もしそうなった場合、オマジナイを実行するのはだれかということ。浅川 は頭を強くふった。こんなばからしいことを考えるのはやめろと。今はただ「山村貞子」 なる人物の望みが、だれにとっても実現可能なものであることを祈る他ない。 グ島の輪郭がはっきりし、元町港の桟橋が徐々にたぐり寄せられてくる。 「なあ、竜司。頼みがある」 浅川は声に力を込めた。 「なんだ ? 」 「もし、オレが間に合わなくて、つまり : : : 」浅川は死という言葉を口にしたくなかった。 たぐい

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315 リング するのは不可能だった。高校一一年の時、竜司は本当に近所に住む女子大生に乱暴を働いた のかすっか : 浅川には結局知りようがない。また、竜司が言うように、現在でもそう いった行為を繰り返しているのかどうか。特に今、妻と娘のデッドラインを明日に控え、 余計なことに頭を悩ませたくはなかった。 そして、ただ一一一 = ロ、浅川は言った。 「竜司は、僕にとっても最高の親友でした」 その言葉がうれしかったのか、舞はかわいらしい顔に笑顔とも泣き顔ともとれぬ表情を の階段を早足で降りた。 浮かべ、目だけで軽く会釈した。浅川はドアを締めて、ア。ハート 道に出て竜司のアパートから遠ざかるにつれ、自分の命を犠牲にしてまで危険なゲームに 身を投じた友の姿がひしひしと身に迫り、浅川は人目も気にせず涙を流した。 十月一一十一日日曜日 午前零時が過ぎ、いよいよ日曜日がやってきた。浅川は、手元のレポート用紙にポイン トをメモしながら、思考を整理しようとしていた。 ・ : 竜司は締め切りの直前になって、オマジナイの謎を解き、高野舞に電話をかけ、お そらく呼びつけようとしたのだ。つまり、オマジナイを実行するに当って高野舞の助けが