カーティス - みる会図書館


検索対象: アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1
9件見つかりました。

1. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

っ そこにかくれている男をひと突きにするのは、 いともたやすいことじゃないか。 さ ひめい 「それはむりだー 刺された男が悲鳴をあげるはずだ。」 すいみんやく 「あらかじめ睡眠薬でねむらせておいたら ? 「ねむらせておく ? 」 「そうさ。七時半にクレイトンと一杯やっていた男はだれだった ? ああ ! やっとわ かってきたようだな。カーティスさー カーティスこそ、クレイトンの細君とリッチの仲 つぐち しっと ほのお を告げロして、クレイトンの嫉妬の炎をあおりたてた男なんだ。そうしたうえで、クレイ りよこう トンに策をさずけたーーースコットランドへ旅行するふりをして、櫃のなかにかくれろ、最 ついたて 後の仕上げとして衝立をうごかしておけ、とね。しかしそれは、クレイトンがふたをあげ て、息抜きができるようにじゃなかった カーティス本人が、だれにも見られずにふた をあけられるようにだ。 こうみよう すべてはカーティスの入れ知恵さ、ヘイスティングズ。その巧妙さを考えてみるがい いち い。かりにリッチが、衝立の位置がずれているのに気づいて、本来の場所にもどしたとし け・いか′、 ひっ てもーーーーそう、べつにこまることはない。。 へつの計画をたてればいいんだからね。櫃のな さよう よわさいみんざい かのクレイトンは、カーティスに飲まされた弱いイ 崔眠剤の作用で、すでに昏睡におちいっ ついたて ほんにん ほんらい ひっ さいくん こんすい なか 102

2. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

ちくおんき ている。カーティスはふたをあげ、ナイフをふるうーーーそばでは蓄音機が〈ウォーキン・ ー・バック・ホーム〉を流しているという寸法さ。」 マイ・ベビ わたしはやっとのことで声をし・ほりだした。 「しかし、どうして ? なぜそんなことを ? 」 かた ボワロは肩をすくめた。 じさっ 「男はなぜ。ヒストル自殺をするんだろうかね ? なぜ二人のイタリア人は決闘なんかし ひ じようねっ じみ ないめん た ? カーティスは地味だが、内面に強い情熱を秘めた男さ。彼はマーガリータⅱクレイ ていしゅ トンに思いを焦がした。じゃまものの亭主とリッチをとりのそけば、かならず自分になび いてくるーーーすくなくとも本人はそう考えたわけだ。」 かんがい そのあと彼は、感慨をこめてつけくわえた。 きけんしゅぞく じよせい てんしん 「ああいった天真らんまんな子どもつ。ほい女性 : : : あの手の女性はきわめて危険な種族だ 簿 てぐち げいじゅってき モン・デュ よ。それにしても、まったく、なんとみごとな、芸術的な手口だったろう ! あんな男を事 じしんてんさい だんちょう こうしゆだい ロ ワ 絞首台に送るなんて、断腸の思いだよ。はばかりながら、わたし自身天才であるだけに、 かんぜんはんざい れんちゅうてんぶん ほかの連中の天分をおしむことしきりなんだ。完全犯罪だよ、きみ。このエルキュール タ ン かんぜん ボワ口がそういうんだからまちがいない。完全なる殺人 : : : たいしたものだ ! 」 ほんにん さつじん すんばう 工 モナミ けっと、つ

3. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

「さよう、じつのところスペンス夫妻は、もつばら夫婦で踊りたがりましてね。あの二人、 もっか ねっちゅう 目下ダンスに熱中しているんです・ーーーこったステップとかなんとか、いろいろやってま すよ。」 「すると、クレイトン夫人はおもにリッチ少佐と踊ったことになりますな ? 」 「そういうわけです。」 「で、そのあとポーカーをなさった ? 「ええ。」 「おひらきになったのは ? 」 「わりと早い時間でしたね。十二時ちょっとすぎだったかな。 「みなさん、いっしょにお帰りになった ? 」 あいの 「ええ。じつのところ、タクシーに合乗りしましてね。まずクレイトン夫人をおろし、つ ふさい ぎにわたし、最後にスペンス夫妻がケンジントンまでいったはすです。」 ざいたく つぎにわたしたちがたずねたのは、スペンス家だった。在宅していたのは夫人のほうだロ しようさ けだったが、 / 彼女の話は、カーティス少佐のそれとこまかなところまで一致した。ちがっ しようさ うん ていた点といえば、リッチ少佐のカード運の強さを、いくらかいやみまじりに聞かされた ふじん ふさい しようさ おど ふうふおど ふじん ふじん

4. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

しようさ 「リッチ少佐です。あたくしがいちばん負けて、カーティス少佐がそのつぎ、スペンスさ が ふさい んご夫妻がちょっと勝ってーーーでも、ほとんどリッチ少佐のひとり勝ちでしたわ。」 ーティーがおひらきになったのは、何時ごろ ? 」 しつれい 「十二時半ごろだったと思います。みんなそろって失礼しましたの。」 「なるほど。」 しあん ボワロはだまりこみ、思案にふけった。 やく 「もっとお役にたてればいいんですけどーと、クレイトン夫人はいった。「なにしろお話し できることがあまりございませんようで。 「現在に関してはね、たしかにそうかもしれません。ですが、過去に関してはいかがです、 おく ・奥さま ? ・ 「過去ですって ? 」 「そうです。なにかお心あたりのある出来事はありませんでしたか ? ー 彼女はほおを赤らめた。 じさっ 「。ヒストル自殺をしたあのいやらしい小男のことをおっしやってるんですの ? あれはあ たくしのせいではありませんわ、ボワ口さん。ほんとにあたくしの責任じゃないんです。 げんざい かん か でき ) 」と ふじん せきにん 85 ボワロの事件簿

5. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

「かならずしもその事件のことをいっているわけじゃないんですがね。 けっとう 「じゃあ、あのばかげた決闘のことでしようか ? でも、イタリアのひとには決闘はめず し らしいことじゃありません。あのかたが死なずにすんで、よかったと思っておりますわ。」 「たしかにほっとされたことでしような。 ボワロはしかつめらしくあいづちをうった。 ふしん 彼女は不審そうにボワ口を見つめた。彼は立ちあがって、その手をとった。 けん 「わたしはあなたのために決闘はしませんよ、奥さま。しかし、ご依頼の件はおひきうけ しんそう ちょっかん しましよう。きっと真相をつきとめてごらんにいれます。あなたの直感があやまっていな しんそう きず いことを祈りましよう。そして、つきとめられた真相があなたをすくうものであって、傷 つけるものではないことを。」 しようさ かいけん はじめに会見した相手はカーティス少佐だった。四十がらみの、軍人らしい体格の男で、 しようさ かみ いんしようてき 濃い黒い髪と、プロンズ色の膚が印象的だった。クレイトン夫妻とも、リッチ少佐とも、 しんぶんほうどう 数年来のつきあいだということで、その話はすべて、新聞の報道を裏づけるものだった。 じけん 事件のあった日には、クレイトンとクラブで一杯やっていたが、七時半ちょっとまえに こ じけん けっとう はだ ふさい ぐんじん たいかく

6. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

「それはばかげているよ、きみ。ちゃんとした召使いなら、なによりもさきにじゅうたん しようさ のしみに気がつくはずだ。なのにリッチ少佐ときたら、そのまま床にはいって、ぐっすり ちゅうもく ね いっさいしていないんだ。すこぶる注目すべ 寝てしまった。あとしまつらしきことは、 きようみ き、興味ある点だよ、これは。 けっこん ーのあ 「ひょっとすると、カーティスが血痕に気づいているかもしれないな いだ、レコードをとりかえていたんだから。」 わたしはふと思いついてそういっこ。 くら ついたて 「それは考えられないね。櫃のある場所は、ちょうど衝立のかげでかなり暗かったはずだ。 ばくぜん しかし待てよ、わかりかけてきたような気がするそ。漠然とだが見えてきたようだ。」 「なにがだね ? 」わたしはひざをのりだしてきいた。 せつめい かのうせい いままで考えられてきたのとはべつの説明が、といったらいいかな。よ 「可能性がさ ほうもんこうみよう し、つぎの訪問で光明が見いだせるかもしれない。」 し したい けんあん ほうもんさき つぎの訪問先は、死体の検案にあたった医師のところだった。 に うすば たんけん ひがいしゃ けんししんもん いししようげ - ん 医師の証言は、検死審問でのそれのくりかえしだった。被害者は、短剣に似た薄刃の長 きずぐち しんぞう いナイフで、心臓をひと突きにされて死んでいて、ナイフはそのまま傷口にのこされてい ひっ モナミ し めしつか とこ ティ 95 ボワロの事件簿

7. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

しゅじんまど だれもいず、主人は窓ぎわに立ってタ、、ハコをふかしていた。バ ーゴインがもどったのを見 ふろ にゆうよく て、風呂の用意はできているかときくので、できていると答えると、すぐ入浴のしたくに かかった。そのさい ーゴインは、クレイトン氏がたずねてきたことをつたえなかった。 きやくま 当然、あるじが客間で顔をあわせ、みずから送りだしたものと思ったからだ。あるじの態 にゆ、つよく 度は、平素とまったくかわらなかった。入浴し、着がえをすませたところへ、間なしにス とうちゃく ふじん しようさすがた ペンス夫妻が到着し、つづいてクレイトン夫人とカーティス少佐が姿を見せた。 せつめい しゅじん きたくいぜん ーゴインの説明によると、クレイトン氏が主人の帰宅以前に帰ったかもしれないとは、 げんかん まったく考えなかったということだった。もしそうなら、玄関のドアがしまる音が聞こえ たはずだが、ぜったいにそれを聞いてはいないというのだ。 さらに、まったくおなじ淡々とした態度で、 ーゴインは死体を発見したときのもよう かた もんだい ひっちゅうい を語った。ここへきてはじめて、わたしはこの問題の櫃に注意をむけた。かなりの大きさ かべ のもので、壁を背にして、レコード・ キャビネットとならべておいてある。黒っ。ほい、硬件 しんちゅうかざびよう 質の木でできていて、真鍮の飾り鋲がやたらに打ちつけてある。ふたはかんたんにひらい いちべっ あら たが、わたしはなかを一暼して、そっとした。きれいに洗ってあるとはいうものの、ぶき みなしみがのこっているのだ。 とうぜん ふさい たんたん したい はつけん こう

8. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

ぎろん いな点はほとんどなかったから、議論をたたかわせても無意味と思われたのである。 じけん しようさ ふさい クレイトン夫妻とリッチ少佐は、かなり長いあいだのつきあいだった。事件の起きた三 うちわあっ 月十日に、クレイトン夫妻はリッチ少佐の家にまねかれ、内輪の集まりに顔をだすことに しようさ さけ なっていた。ところが、その日の七時半ごろ、べつの友人のカーティス少佐というのと酒 をくみかわしていたクレイトンは、思いがけない急用ができてスコットランドにいくこと いいだした。 になり、八時の汽車でたっと じじようせつめい 「そんなわけだから、とちゅうでちょっとジャックのところに立ちょって、事情を説明す とうぜんしゆっせき るだけの時間しかないんだ。もっともマーガリータは、当然、出席するがね。・ほくだけが しつれい 失礼することになるが、ジャックはわかってくれるだろう。」 クレイトンはそのことばどおりに、八時二十分まえにリッチ少佐の家をおとずれた。あ しようさがいしゆっさき いにく少佐は外出先からもどっていなかったが、クレイトン氏をよく知っている少佐の じゅうばく 従僕は、おはいりになってお待ちになっては、とすすめた。それにたいしクレイトン氏件 いっぴっ ざんねん は、残念ながら時間がないので、ちょっと入れてもらって、少佐に一筆書きのこしてゆく口 えき だけにすると答え、駅へいくとちゅうで立ちょったのだとつけくわえた。 きやくまあんない じゅうばく そこで従僕は、彼を客間へ案内した。 きゅ、つよ、つ ゅうじん しようさ

9. アガサ=クリスティ推理・探偵小説集 1

しようさ きやくま じゅうばく その五分後、客間のドアがあいて、従僕をよぶ声がした。あるじのリッチ少佐で、従僕 の気がっかないうちに帰ってきていたものらしく、ちょっとひと走りしてタバコを買って じゅうほく きやくま きてくれないかというのだった。 / 従僕がそれを買ってもどってきてみると、客間にはある じゅうばく じひとりがいた。当然クレイトン氏はもう帰ったのだろうと従僕は考えた。 しよう きやく ふじん そのうち、客たちがあつまってきはじめた。顔ぶれは、クレイトン夫人、カーティス少 ふじん いちどう 佐、スペンス氏とその夫人で、一同はレコードをかけてダンスをし、ポーカーをしてその 夜をすごした。十二時ちょっとすぎに、客はひきあげた。 そうじ じゅうばく よくあさきやくま かっしよく 翌朝、客間の掃除をはじめて、従僕はぎようてんした。じゅうたんが濃い褐色のしみで しようさ と、つよ、つ 変色していたからだ。その場所は、リッチ少佐が東洋から買ってき、バグダッドの櫃とよ ぜんめん んでいる箱の下と、その前面にあたるところだった。 じゅうばく ほんのうてきひっ 本能的に櫃のふたをあけてみた従僕は、おどろいて腰をぬかしそうになった。箱のなか お しんぞう っ には、心臓をひと突きにされた男の死体が、二つ折りの形でおしこまれていたのだ。 じゅうばく けいかん きようふ じゅんかい 恐怖にあえぎながら、従僕は外へとびだすと、おりから近くを巡回していた警官をつ し はんめい し。よ、つさ たいほ かまえてきた。死体はじきにクレイトン氏と判明し、そのあとすぐにリッチ少佐が逮捕さ れた。 へんしよく さ し とうぜん し したい ふた こし ひっ